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登録販売者 合格ラボ

手引きの中身を、章ごとに積み上げる。

令和8年4月一部改訂の手引き対応|講義51本+問題480問|240分・120問・総得点7割かつ各章35%以上で合格

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登録販売者試験は総得点の7割以上(120問中84問以上)かつ、5つの章それぞれで35%以上(都道府県によっては40%以上)が合格。1章でも基準に届かないと不合格です。本試験の出題数は第1章20問・第2章20問・第3章40問・第4章20問・第5章20問。ここでは章ごとの卒業率を出しています。金色の線が6割の目安。

※ このページは試験対策のための学習用コンテンツです。医療上の助言ではありません。実際の症状や薬の使用については、必ず医師・薬剤師・登録販売者にご相談ください。出題範囲は厚生労働省の手引きの改訂で変わります。

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📚 講義の全文(51本)

登録販売者対策 の講義51本を、そのまま読める形で置いています。アプリを起動しなくても、ここだけで内容を確かめられます。各見出しを開くと、本文・用語・図表・例題・出典が出ます。

医薬品の基本と薬害

医薬品の本質

医薬品が「異物」でありリスクを伴う生命関連製品であること、情報が伴って初めて役割を果たすことを押さえます。

手引きでは、医薬品は多くの場合、人体に取り込まれて作用し、効果を発現させるものであるとされている。しかし本来、医薬品も人体にとっては異物(外来物)であり、また医薬品が人体に及ぼす作用は複雑かつ多岐に渡り、そのすべては解明されていないため、必ずしも期待される有益な効果(薬効)のみをもたらすとは限らず、好ましくない反応(副作用)を生じる場合もあるとされている。

人体に対して使用されない医薬品についても、人の健康に影響を与えるものがあるとされている。手引きは例として、殺虫剤の中には誤って人体がそれに曝されれば健康を害するおそれがあるものもあること、検査薬は検査結果について正しい解釈や判断がなされなければ医療機関を受診して適切な治療を受ける機会を失うおそれがあることを挙げている。

医薬品は、人の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人の身体の構造や機能に影響を及ぼすことを目的とする生命関連製品であり、その有用性が認められたものであるが、使用には保健衛生上のリスクを伴う。このことは、医療用医薬品と比較すればリスクは相対的に低いと考えられる一般用医薬品であっても同様であり、科学的な根拠に基づく適切な理解や判断によって適正な使用が図られる必要があるとされている。

医薬品は、効能効果、用法用量、副作用等の必要な情報が適切に伝達されることを通じて、購入者等が適切に使用することにより、初めてその役割を十分に発揮するものであり、そうした情報を伴わなければ、単なる薬物(有効成分を含有する化学物質)に過ぎないとされている。このため一般用医薬品には、製品に添付されている文書(添付文書)や製品表示に必要な情報が記載されている。

一般用医薬品は一般の生活者が自ら選択し、使用するものであるが、一般の生活者においては、添付文書や製品表示に記載された内容を見ただけでは、効能効果や副作用等について誤解や認識不足を生じることもある。そのため、その販売に専門家が関与し、専門用語を分かりやすい表現で伝えるなどの適切な情報提供を行い、また、購入者等が知りたい情報を十分に得ることができるように相談に対応することが不可欠であるとされている。

医薬品は市販後にも、医学・薬学等の新たな知見、使用成績等に基づき、その有効性、安全性等の確認が行われる仕組みになっている。それらの結果を踏まえ、リスク区分の見直し、承認基準の見直し等がなされ、販売時の取扱い、製品の成分分量、効能効果、用法用量、使用上の注意等が変更となった場合には、それが添付文書や製品表示の記載に反映される。一般用医薬品の販売に従事する専門家は、常に新しい情報の把握に努める必要があるとされている。

医薬品は人の生命や健康に密接に関連するものであるため、高い水準で均一な品質が保証されていなければならない。医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。手引きでは「法」という。)では、健康被害の発生の可能性の有無にかかわらず、異物等の混入、変質等がある医薬品を販売等してはならない旨を定めている。なおこの法律の名称は、薬事法等の一部を改正する法律(平成25年11月27日公布、平成26年11月25日施行)により「薬事法」から改められたものである。

一般用医薬品として販売される製品は、製造物責任法(平成6年法律第85号。手引きでは「PL法」という。)の対象でもある。PL法は、製造物の欠陥により、人の生命、身体、財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めており、販売した一般用医薬品に明らかな欠陥があった場合などは、PL法の対象となりえることも理解しておく必要があるとされている。

医薬品の本質に関わる手引きの主な記述
論点手引きの記述
医薬品と人体本来、人体にとっては異物(外来物)である
作用の解明作用は複雑かつ多岐に渡り、そのすべては解明されていない
人体に使用しない医薬品殺虫剤・検査薬など人の健康に影響を与えるものがある
一般用医薬品のリスク医療用医薬品と比較すればリスクは相対的に低いが、保健衛生上のリスクは伴う
情報がない場合単なる薬物(有効成分を含有する化学物質)に過ぎない
品質高い水準で均一な品質が保証されていなければならない
異物混入等健康被害の発生の可能性の有無にかかわらず販売等してはならない(法)
製造物責任一般用医薬品として販売される製品はPL法の対象でもある
異物(外来物)
手引きでは、医薬品も人体にとっては異物(外来物)であるとされている。作用が複雑かつ多岐に渡りそのすべては解明されていないため、有益な効果だけでなく副作用を生じる場合もあることの前提となる考え方である。
生命関連製品
人の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人の身体の構造や機能に影響を及ぼすことを目的とする製品。有用性が認められたものであるが、使用には保健衛生上のリスクを伴うと手引きは述べている。
単なる薬物
必要な情報を伴わない医薬品を指して手引きが用いる表現。医薬品は情報が適切に伝達され、購入者等が適切に使用して初めて役割を発揮し、情報がなければ有効成分を含有する化学物質に過ぎないとされる。
添付文書
製品に添付されている文書。効能効果、用法用量、副作用等の必要な情報が記載される。市販後の知見によりリスク区分や承認基準等が見直され記載事項が変更された場合は、その内容が反映される。
医薬品医療機器等法
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)の略称。薬事法等の一部を改正する法律(平成25年11月27日公布、平成26年11月25日施行)により「薬事法」から改称された。
PL法
製造物責任法(平成6年法律第85号)。製造物の欠陥により人の生命、身体、財産に係る被害が生じた場合の製造業者等の損害賠償責任を定める。一般用医薬品として販売される製品もその対象である。

例題 必要な情報が伴わない医薬品を、手引きは何と表現しているか。

「単なる薬物(有効成分を含有する化学物質)に過ぎない」と表現している。医薬品は情報が適切に伝達され、購入者等が適切に使用することで初めて役割を十分に発揮するとされる。

例題 異物等の混入や変質がある医薬品の販売等について、法はどう定めているか。

健康被害の発生の可能性の有無にかかわらず、販売等してはならない旨を定めている。「健康被害が起きなければよい」ではない点が問われやすい。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第1章 Ⅰ 医薬品概論

医薬品のリスク評価

用量と作用強度の関係の並び順と、GLP・GCP・GPSP・GVPがそれぞれ何の基準かを整理します。

手引きでは、医薬品は使用方法を誤ると健康被害を生じることがあり、医薬品の効果とリスクは、用量と作用強度の関係(用量-反応関係)に基づいて評価されるとされている。

投与量と効果又は毒性の関係は、薬物用量の増加に伴い、効果の発現が検出されない「無作用量」から、最小有効量を経て「治療量」に至る。治療量上限を超えると、やがて効果よりも有害反応が強く発現する「中毒量」となり、「最小致死量」を経て「致死量」に至るとされている。この並び順はそのまま問われるので確実に覚えたい。

動物実験により求められる50%致死量(LD50)は、薬物の毒性の指標として用いられるとされている。

治療量を超えた量を単回投与した後に毒性が発現するおそれが高いことは当然であるが、少量の投与でも長期投与されれば慢性的な毒性が発現する場合もある。また、少量の医薬品の投与でも発がん作用、胎児毒性や組織・臓器の機能不全を生じる場合もあるとされている。

こうした考えから、新規に開発される医薬品のリスク評価は、医薬品開発の国際的な標準化(ハーモナイゼーション)制定の流れのなかで、個々の医薬品の用量-反応関係に基づいて行われる。医薬品の安全性に関する非臨床試験の基準であるGood Laboratory Practice(GLP)の他に、医薬品毒性試験法ガイドラインに沿って、単回投与毒性試験、反復投与毒性試験、生殖・発生毒性試験、遺伝毒性試験、がん原性試験、依存性試験、抗原性試験、局所刺激性試験、皮膚感作性試験、皮膚光感作性試験などの毒性試験が厳格に実施されている。

動物実験で医薬品の安全性が確認されると、ヒトを対象とした臨床試験が行われる。ヒトを対象とした臨床試験の実施の基準には、国際的にGood Clinical Practice(GCP)が制定されており、これに準拠した手順で安全な治療量を設定することが、新規医薬品の開発に関連する臨床試験(治験)の目標の一つであるとされている。

さらに医薬品に対しては、製造販売後の調査及び試験の実施の基準としてGood Post-marketing Study Practice(GPSP)と、製造販売後安全管理の基準としてGood Vigilance Practice(GVP)が制定されている。手引きは、このように医薬品については、食品などよりもはるかに厳しい安全性基準が要求されていると述べている。

順序と基準の対応(暗記用)

無作用量 → 最小有効量 → 治療量 →(治療量上限)→ 中毒量 → 最小致死量 → 致死量
非臨床(動物): GLP  /  臨床(ヒト・治験): GCP
製造販売後の調査及び試験: GPSP  /  製造販売後安全管理: GVP
用量と作用の関係(薬物用量が増える順)と各基準
区分内容
①無作用量効果の発現が検出されない量
②最小有効量無作用量から治療量に至る途中に位置する量
③治療量最小有効量を経て至る量
④中毒量治療量上限を超えると、やがて効果よりも有害反応が強く発現する量
⑤最小致死量中毒量を経て致死量に至る途中に位置する量
⑥致死量最小致死量を経て至る量
LD50動物実験により求められる50%致死量。薬物の毒性の指標
GLP医薬品の安全性に関する非臨床試験の基準
GCPヒトを対象とした臨床試験の実施の基準
GPSP製造販売後の調査及び試験の実施の基準
GVP製造販売後安全管理の基準
用量-反応関係
用量と作用強度の関係。手引きでは、医薬品の効果とリスクはこの関係に基づいて評価されるとされ、新規に開発される医薬品のリスク評価も個々の医薬品の用量-反応関係に基づいて行われる。
無作用量
薬物用量の増加に伴う変化のうち、効果の発現が検出されない用量。ここから最小有効量を経て治療量に至るとされ、用量と作用の関係の出発点にあたる。
中毒量
治療量上限を超えると到達する、やがて効果よりも有害反応が強く発現する量。中毒量の次に最小致死量、さらに致死量が続くと手引きは述べている。
LD50
動物実験により求められる50%致死量。薬物の毒性の指標として用いられるとされている。有効性の指標ではなく毒性の指標である点が問われやすい。
GLP
Good Laboratory Practice。医薬品の安全性に関する非臨床試験の基準。ヒトを対象とした試験の基準ではない点に注意する。
GCP
Good Clinical Practice。ヒトを対象とした臨床試験の実施の基準として国際的に制定されたもの。これに準拠した手順で安全な治療量を設定することが治験の目標の一つとされる。
GPSP
Good Post-marketing Study Practice。製造販売後の調査及び試験の実施の基準。製造販売「後」の基準である点でGLP・GCPと区別する。
GVP
Good Vigilance Practice。製造販売後安全管理の基準。GPSPが製造販売後の調査及び試験の基準であるのに対し、こちらは安全管理の基準である。
ハーモナイゼーション
医薬品開発の国際的な標準化。手引きでは、新規に開発される医薬品のリスク評価がこの制定の流れのなかで、個々の医薬品の用量-反応関係に基づいて行われるとされている。

例題 治療量上限を超えると、次に現れるのはどの量か。

中毒量である。手引きでは、治療量上限を超えると、やがて効果よりも有害反応が強く発現する「中毒量」となり、「最小致死量」を経て「致死量」に至るとされている。

例題 ヒトを対象とした臨床試験の実施の基準は何か。

GCP(Good Clinical Practice)である。GLPは医薬品の安全性に関する非臨床試験の基準であり、ヒトを対象とした試験の基準ではない。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第1章 Ⅰ 医薬品概論

健康食品とセルフメディケーション

保健機能食品3種類の違いと、セルフメディケーション税制の対象がいつ広がったかを押さえます。

手引きでは、「薬(医)食同源」という言葉があるように、古くから特定の食品摂取と健康増進の関連は関心を持たれてきたとされている。特に近年では、食品やその成分についての健康増進効果の情報がメディア等を通して大量に発信され、消費者の関心も高い。

健康増進や維持の助けになることが期待されるいわゆる「健康食品」は、あくまで食品であり、医薬品とは法律上区別される。しかしながら、健康食品の中でも国が示す要件を満たす食品「保健機能食品」は、一定の基準のもと健康増進の効果等を表示することができる健康食品であるとされている。保健機能食品には現在、特定保健用食品・栄養機能食品・機能性表示食品の3種類がある。

「特定保健用食品」は、身体の生理機能などに影響を与える保健機能成分を含むもので、個別に(一部は規格基準に従って)特定の保健機能を示す効果や安全性などに関する国の審査を受け、許可されたものであるとされている。

「栄養機能食品」は、食生活において栄養成分(ビタミン、ミネラルなど)の補給を目的として摂取する者に対し、その栄養成分の機能の表示をする食品であり、個別の許可申請を行う必要がない自己認証制度であるとされている。

「機能性表示食品」は、事業者の責任で科学的根拠をもとに機能性関与成分が有する健康維持及び増進に役立つ機能を商品のパッケージに表示するものとして国に届出された商品であるが、特定保健用食品とは異なり国の個別の許可を受けたものではないとされている。

いわゆる健康食品は、その多くが摂取しやすいように錠剤やカプセル等の医薬品に類似した形状で販売されている。健康食品においても、誤った使用方法や個々の体質により健康被害を生じた例も報告されており、また、医薬品との相互作用で薬物治療の妨げになることもある。健康食品は食品であるため、摂取しても安全で害が無いかのようなイメージを強調したものも見られるが、法的にも、また安全性や効果を担保する科学的データの面でも医薬品とは異なることを十分理解しておく必要があるとされている。手引きは、一般用医薬品の販売時にも健康食品の摂取の有無について確認することは重要で、購入者等の健康に関する意識を尊重しつつも、必要があればそれらの摂取についての指導も行うべきであるとしている。

セルフメディケーションの推進は、医療費の増加やその国民負担の増大を解決し健康寿命を伸ばすという課題を解決する重要な活動のひとつであり、地域住民の健康相談を受け、一般用医薬品の販売や必要な時は医療機関の受診を勧める業務は、その推進に欠かせないとされている。登録販売者は、一般用医薬品等に関する正確で最新の知識を常に修得するよう心がけるとともに、薬剤師や医師、看護師など地域医療を支える医療スタッフあるいは行政などとも連携をとって、地域住民の健康維持・増進、生活の質(QOL)の改善・向上などに携わることが望まれる。医薬品の販売等に従事する専門家はその中でも重要な情報提供者であり、薬物療法の指導者となることを常に意識して活動することが求められる。

また、平成29年1月からは、適切な健康管理の下で医療用医薬品からの代替を進める観点から、条件を満たした場合にスイッチOTC医薬品の購入の対価について、一定の金額をその年分の総所得金額等から控除するセルフメディケーション税制が導入された。令和4年1月より、スイッチOTC医薬品以外にも腰痛や肩こり、風邪やアレルギーの諸症状に対応する一般用医薬品が税制の対象となっている。令和9年1月より、消化器官用薬や一般用検査薬も税制の対象となるとされている。

保健機能食品3種類の比較(手引きの記述による)
区分内容の表示国の関与
特定保健用食品特定の保健機能を示す効果(身体の生理機能などに影響を与える保健機能成分を含む)個別に(一部は規格基準に従って)効果や安全性などに関する国の審査を受け、許可されたもの
栄養機能食品栄養成分(ビタミン、ミネラルなど)の機能の表示個別の許可申請を行う必要がない自己認証制度
機能性表示食品機能性関与成分が有する健康維持及び増進に役立つ機能を商品のパッケージに表示国に届出された商品であるが、国の個別の許可を受けたものではない
いわゆる健康食品健康増進や維持の助けになることが期待される(保健機能食品以外)あくまで食品であり、医薬品とは法律上区別される
保健機能食品
健康食品の中でも国が示す要件を満たす食品。一定の基準のもと健康増進の効果等を表示することができる健康食品であり、特定保健用食品・栄養機能食品・機能性表示食品の3種類がある。
特定保健用食品
身体の生理機能などに影響を与える保健機能成分を含むもので、個別に(一部は規格基準に従って)特定の保健機能を示す効果や安全性などに関する国の審査を受け、許可されたもの。
栄養機能食品
食生活において栄養成分(ビタミン、ミネラルなど)の補給を目的として摂取する者に対し、その栄養成分の機能の表示をする食品。個別の許可申請を行う必要がない自己認証制度である。
機能性表示食品
事業者の責任で科学的根拠をもとに機能性関与成分が有する健康維持及び増進に役立つ機能を商品のパッケージに表示するものとして国に届出された商品。特定保健用食品とは異なり国の個別の許可を受けたものではない。
いわゆる健康食品
健康増進や維持の助けになることが期待される食品で、あくまで食品であり医薬品とは法律上区別される。その多くが摂取しやすいように錠剤やカプセル等の医薬品に類似した形状で販売されている。
セルフメディケーション税制
平成29年1月から導入された、条件を満たした場合にスイッチOTC医薬品の購入の対価について一定の金額をその年分の総所得金額等から控除する制度。令和4年1月より対象が拡大された。

例題 栄養機能食品と機能性表示食品の、国の関与のちがいは。

栄養機能食品は個別の許可申請を行う必要がない自己認証制度であり、機能性表示食品は国に届出された商品であるが特定保健用食品とは異なり国の個別の許可を受けたものではない、と手引きは述べている。

例題 セルフメディケーション税制の対象は令和4年1月にどう変わったか。

スイッチOTC医薬品以外にも、腰痛や肩こり、風邪やアレルギーの諸症状に対応する一般用医薬品が税制の対象となった。さらに令和9年1月より消化器官用薬や一般用検査薬も対象となるとされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第1章 Ⅰ 医薬品概論

薬害の歴史

5つの訴訟について、原因医薬品・健康被害・提訴と和解の経過・その後にできた仕組みを対応づけて覚えます。

手引きでは、医薬品は人体にとって本来異物であり、治療上の効能・効果とともに何らかの有害な作用(副作用)等が生じることは避けがたいものであるとされている。副作用は、眠気、口渇等の比較的よく見られるものから、死亡や日常生活に支障を来すほどの重大なものまでその程度は様々であり、それまでの使用経験を通じて知られているもののみならず、科学的に解明されていない未知のものが生じる場合もある。医薬品の副作用被害は、医薬品が十分注意して使用されたとしても起こり得るものであり、医薬品が「両刃の剣」であることを踏まえ、関係者が医薬品の安全性の確保に最善の努力を重ねていくことが重要であるとされている。

サリドマイド訴訟は、催眠鎮静剤等として販売されたサリドマイド製剤を妊婦又は妊娠していると思われる女性が使用したことにより、出生児に四肢欠損、耳の障害等の先天異常(サリドマイド胎芽症)が発生したことに対する損害賠償訴訟である。1963年6月に製薬企業を被告として、さらに翌年12月には国及び製薬企業を被告として提訴され、1974年10月に和解が成立した。サリドマイドは催眠鎮静成分として承認され、その鎮静作用を目的として胃腸薬にも配合されたが、副作用として血管新生を妨げる作用もあった。サリドマイドは血液-胎盤関門を通過して胎児に移行し、血管新生が妨げられると細胞分裂が正常に行われず器官が十分に成長しないことから、四肢欠損、視聴覚等の感覚器や心肺機能の障害等の先天異常が発生する。

血管新生を妨げる作用は、サリドマイドの鏡像異性体(光学異性体)のうち一方の異性体(S体)のみが有する作用であり、もう一方の異性体(R体)にはなく、また鎮静作用はR体のみが有するとされている。サリドマイドが摂取されるとR体とS体は体内で相互に転換するため、R体のサリドマイドを分離して製剤化しても催奇形性は避けられない。サリドマイド製剤は1957年に西ドイツ(当時)で販売が開始され、日本では1958年1月から販売されていた。1961年11月、西ドイツのレンツ博士が催奇形性について警告を発し西ドイツでは製品が回収されたが、日本では同年12月に西ドイツ企業から勧告が届き、翌年になってからもその企業から警告が発せられていたにもかかわらず、出荷停止は1962年5月まで行われず、販売停止及び回収措置は同年9月であるなど、対応の遅さが問題視された。この事件を契機に、WHO加盟国を中心に市販後の副作用情報の収集の重要性が改めて認識され、各国における副作用情報の収集体制の整備が図られることとなった。

スモン訴訟は、整腸剤として販売されていたキノホルム製剤を使用したことにより、亜急性脊髄視神経症(英名の頭文字をとってスモンと呼ばれる)に罹患したことに対する損害賠償訴訟である。スモンはその症状として、初期には腹部の膨満感から激しい腹痛を伴う下痢を生じ、次第に下半身の痺れや脱力、歩行困難等が現れる。麻痺は上半身にも拡がる場合があり、ときに視覚障害から失明に至ることもある。キノホルム製剤は1924年から整腸剤として販売されていたが、1958年頃から消化器症状を伴う特異な神経症状が報告されるようになり、米国では1960年にアメーバ赤痢への使用に限ることが勧告された。日本では1970年8月になってスモンの原因はキノホルムであるとの説が発表され、同年9月に販売が停止された。1971年5月に国及び製薬企業を被告として提訴され、1977年10月に東京地裁において和解が成立して以来、各地の地裁及び高裁において和解が勧められ、1979年9月に全面和解が成立した。スモン患者に対する施策や救済制度として、治療研究施設の整備、治療法の開発調査研究の推進、施術費及び医療費の自己負担分の公費負担、世帯更生資金貸付による生活資金の貸付のほか、重症患者に対する介護事業が講じられている。サリドマイド訴訟、スモン訴訟を契機として、1980年、医薬品の副作用による健康被害の迅速な救済を図るため、医薬品副作用被害救済制度が創設された。

HIV訴訟は、血友病患者が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が混入した原料血漿から製造された血液凝固因子製剤の投与を受けたことにより、HIVに感染したことに対する損害賠償訴訟である。国及び製薬企業を被告として、1989年5月に大阪地裁、同年10月に東京地裁で提訴された。大阪地裁、東京地裁は1995年10月、1996年3月にそれぞれ和解勧告を行い、1996年3月に両地裁で和解が成立した。本訴訟の和解を踏まえ、国はHIV感染者に対する恒久対策として、エイズ治療・研究開発センター及び拠点病院の整備や治療薬の早期提供等の様々な取り組みを推進してきている。また、1999年8月24日には、厚生大臣が出席し関係患者団体等を招いて「誓いの碑」の竣工式が行われた。再発防止に向けた取り組みとして、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(当時)との連携による承認審査体制の充実、製薬企業に対し従来の副作用報告に加えて感染症報告の義務づけ、緊急に必要とされる医薬品を迅速に供給するための「緊急輸入」制度の創設等を内容とする改正薬事法が1996年に成立し、翌年4月に施行された。

CJD訴訟は、脳外科手術等に用いられていたヒト乾燥硬膜を介してクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)に罹患したことに対する損害賠償訴訟である。CJDは、細菌でもウイルスでもないタンパク質の一種であるプリオンが原因とされ、プリオンが脳の組織に感染し、次第に認知症に類似した症状が現れ、死に至る重篤な神経難病である。ヒト乾燥硬膜の原料が採取された段階でプリオンに汚染されている場合があり、プリオン不活化のための十分な化学的処理が行われないまま製品として流通し、脳外科手術で移植された患者にCJDが発生した。国、輸入販売業者及び製造業者を被告として、1996年11月に大津地裁、1997年9月に東京地裁で提訴され、両地裁は2001年11月に和解勧告を行い、2002年3月に両地裁で和解が成立した。2002年に行われた薬事法改正に伴い、生物由来製品の安全対策強化、独立行政法人医薬品医療機器総合機構による生物由来製品による感染等被害救済制度の創設等がなされた。

C型肝炎訴訟は、出産や手術の際に特定のフィブリノゲン製剤や血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染したことに対する損害賠償訴訟である。国及び製薬企業を被告として、2002年から2007年にかけて5つの地裁で提訴されたが、2006年から2007年にかけて言い渡された5つの判決は、国及び製薬企業が責任を負うべき期間等について判断が分かれていた。このような中、C型肝炎ウイルス感染者の早期・一律救済の要請にこたえるべく、議員立法によってその解決を図るため、2008年1月に特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法(平成20年法律第2号)が制定、施行された。また、「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(最終提言)」(平成22年4月28日)を受け、医師、薬剤師、法律家、薬害被害者などの委員により構成される医薬品等行政評価・監視委員会が設置された。

手引きは、サリドマイド製剤、キノホルム製剤については過去に一般用医薬品として販売されていたこともあり、一般用医薬品の販売等に従事する専門家においては、薬害事件の歴史を十分に理解し、医薬品の副作用等による健康被害の拡大防止に関して、製薬企業や国だけでなく、医薬品の情報提供、副作用報告等を通じてその責務の一端を担っていることを肝に銘じておく必要があるとしている。

5つの訴訟の整理(原因医薬品・健康被害・提訴と和解の経過・その後にできた仕組み)
訴訟原因医薬品健康被害提訴・和解の経過その後にできた仕組み
サリドマイド訴訟催眠鎮静剤等として販売されたサリドマイド製剤(鎮静作用を目的に胃腸薬にも配合)出生児の四肢欠損、耳の障害等の先天異常(サリドマイド胎芽症)1963年6月に製薬企業を被告として提訴、翌年12月に国及び製薬企業を被告として提訴、1974年10月に和解成立WHO加盟国を中心に市販後の副作用情報の収集体制の整備。スモン訴訟とあわせ1980年に医薬品副作用被害救済制度が創設
スモン訴訟整腸剤として販売されていたキノホルム製剤亜急性脊髄視神経症(スモン)。腹部膨満感から激しい腹痛を伴う下痢、下半身の痺れや脱力、歩行困難、ときに視覚障害から失明1971年5月に国及び製薬企業を被告として提訴、1977年10月に東京地裁で和解成立、1979年9月に全面和解治療研究施設の整備、施術費及び医療費の自己負担分の公費負担、世帯更生資金貸付、重症患者に対する介護事業。1980年に医薬品副作用被害救済制度が創設
HIV訴訟HIVが混入した原料血漿から製造された血液凝固因子製剤血友病患者のHIV感染国及び製薬企業を被告として1989年5月に大阪地裁、同年10月に東京地裁で提訴。1995年10月・1996年3月に和解勧告、1996年3月に両地裁で和解成立改正薬事法が1996年成立・翌年4月施行(感染症報告の義務づけ、「緊急輸入」制度の創設等)。エイズ治療・研究開発センター及び拠点病院の整備。1999年8月24日「誓いの碑」竣工式
CJD訴訟脳外科手術等に用いられていたヒト乾燥硬膜クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)。プリオンが原因で認知症に類似した症状が現れ死に至る国、輸入販売業者及び製造業者を被告として1996年11月に大津地裁、1997年9月に東京地裁で提訴。2001年11月に和解勧告、2002年3月に両地裁で和解成立2002年の薬事法改正に伴う生物由来製品の安全対策強化、独立行政法人医薬品医療機器総合機構による生物由来製品による感染等被害救済制度の創設
C型肝炎訴訟出産や手術の際に投与された特定のフィブリノゲン製剤や血液凝固第Ⅸ因子製剤C型肝炎ウイルスへの感染国及び製薬企業を被告として2002年から2007年にかけて5つの地裁で提訴。2006年から2007年の5つの判決は判断が分かれた2008年1月に給付金の支給に関する特別措置法(平成20年法律第2号)が制定・施行。医薬品等行政評価・監視委員会の設置
サリドマイド胎芽症
催眠鎮静剤等として販売されたサリドマイド製剤を妊婦又は妊娠していると思われる女性が使用したことにより、出生児に生じた四肢欠損、耳の障害等の先天異常。血管新生が妨げられることによる。
血液-胎盤関門
サリドマイドはこれを通過して胎児に移行するとされている。胎児は成長の過程で諸器官の形成のため細胞分裂が活発に行われるが、血管新生が妨げられると細胞分裂が正常に行われない。
S体とR体
サリドマイドの鏡像異性体(光学異性体)。血管新生を妨げる作用はS体のみが有し、鎮静作用はR体のみが有する。体内で相互に転換するため、R体を分離して製剤化しても催奇形性は避けられない。
スモン(亜急性脊髄視神経症)
整腸剤として販売されていたキノホルム製剤による健康被害。初期には腹部の膨満感から激しい腹痛を伴う下痢を生じ、次第に下半身の痺れや脱力、歩行困難等が現れ、ときに視覚障害から失明に至ることもある。
医薬品副作用被害救済制度
サリドマイド訴訟、スモン訴訟を契機として、医薬品の副作用による健康被害の迅速な救済を図るため、1980年に創設された制度。
プリオン
細菌でもウイルスでもないタンパク質の一種で、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の原因とされる。脳の組織に感染し、次第に認知症に類似した症状が現れ、死に至る重篤な神経難病を引き起こす。
「誓いの碑」
HIV訴訟を踏まえ、1999年8月24日に厚生大臣が出席し関係患者団体等を招いて竣工式が行われた碑。サリドマイド、スモン、HIV感染のような被害を再び発生させないことを銘記している。
医薬品等行政評価・監視委員会
「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(最終提言)」(平成22年4月28日)を受けて設置された、医師、薬剤師、法律家、薬害被害者などの委員により構成される委員会。

例題 サリドマイド製剤の販売開始と、日本での出荷停止・回収の時期は。

1957年に西ドイツ(当時)で販売開始、日本では1958年1月から販売。1961年11月にレンツ博士が警告し西ドイツでは回収されたが、日本の出荷停止は1962年5月、販売停止及び回収措置は同年9月であった。

例題 医薬品副作用被害救済制度は、どの訴訟を契機に何年に創設されたか。

サリドマイド訴訟、スモン訴訟を契機として、1980年に創設された。生物由来製品による感染等被害救済制度(CJD訴訟を踏まえ2002年)と混同しないこと。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第1章 Ⅳ 薬害の歴史

効き目に影響する要因

副作用と不適正な使用

副作用はなぜ起こるのか、その2つの型と、不適正な使用が招く危険を整理する。

世界保健機関(WHO)の定義によれば、医薬品の副作用とは「疾病の予防、診断、治療のため、又は身体の機能を正常化するために、人に通常用いられる量で発現する医薬品の有害かつ意図しない反応」とされている。「通常用いられる量で」「有害かつ意図しない」が要点である。副作用は発生原因の観点から、薬理作用による副作用と、アレルギー(過敏反応)に大別される。

医薬品の有効成分である薬物が生体の生理機能に影響を与えることを薬理作用という。薬物は通常、複数の薬理作用を併せ持つため、期待される有益な反応(主作用)以外の反応が現れることがある。主作用以外の反応であっても、特段の不都合を生じないものであれば通常は副作用として扱われないが、好ましくないものは一般に副作用という。複数の疾病を有する人では、ある疾病のために使用された医薬品の作用が、別の疾病の症状を悪化させたり、治療を妨げたりすることもある。

アレルギーは、免疫機構が過敏に反応して好ましくない症状が引き起こされるもので、結膜炎症状、鼻炎症状、蕁麻疹や湿疹・かぶれ等の皮膚症状、血管性浮腫のようなやや広い範囲にわたる腫れ等が生じることが多い。アレルギーは医薬品の薬理作用等とは関係なく起こり得るもので、内服薬だけでなく外用薬等でも引き起こされる。有効成分だけでなく、基本的に薬理作用がない添加物(黄色4号(タートラジン)、カゼイン、亜硫酸塩(亜硫酸ナトリウム、ピロ硫酸カリウム等)等)もアレルゲンとなり得る。アレルギーには体質的・遺伝的な要素もあり、近い親族にアレルギー体質の人がいる場合には注意が必要とされる。また、医薬品の中には鶏卵や牛乳等を原材料として作られているものがあり、それらに対するアレルギーがある人では使用を避けなければならない場合もある。

一般用医薬品では、通常、その使用を中断することによる不利益よりも、重大な副作用を回避することが優先され、副作用の兆候が現れたときには基本的に使用を中止することとされている。また、副作用は血液や内臓機能への影響等のように明確な自覚症状として現れないこともあるため、継続して使用する場合には、特段の異常が感じられなくても医療機関を受診するよう専門家から促していくことも重要とされている。

医薬品の不適正な使用は、使用する人の誤解や認識不足に起因するもの(「多く飲めば早く効く」と用量を超えて服用する、大人用のものを半分にして小児に飲ませる等)と、医薬品を本来の目的以外の意図で使用するもの(乱用)に大別される。便秘薬や総合感冒薬、解熱鎮痛薬などの長期連用は、重篤な疾患の発見の遅れや、肝臓や腎臓などの器官を傷めること、精神的な依存や経済的負担の増大につながる。乱用は過量摂取による急性中毒や、繰り返しによる慢性的な臓器障害、薬物依存を生じるおそれがあり、一度形成された薬物依存から離脱することは容易ではない。必要以上の大量購入や頻回購入などを試みる不審な者には、積極的に事情を尋ねる、状況によっては販売を差し控えるなどの対応が望ましいとされている。

副作用と不適正な使用の全体像
区分内容
薬理作用による副作用主作用以外の反応のうち好ましくないもの。特段の不都合を生じないものは通常、副作用として扱われない
アレルギー(過敏反応)免疫機構の過敏な反応。薬理作用と関係なく起こり、内服薬だけでなく外用薬等でも起こり得る。添加物もアレルゲンとなり得る
誤解・認識不足による不適正使用定められた用量を超える服用、大人用を半分にして小児へ与える、長期連用(常習)など
本来の目的以外の使用(乱用)用量を意図的に超える服用、みだりに他の医薬品や酒類等と一緒に摂取。急性中毒・慢性的な臓器障害・薬物依存のおそれ
主作用
医薬品を使用したときに期待される有益な反応。薬物は通常、複数の薬理作用を併せ持つため主作用以外の反応も現れることがあり、そのうち好ましくないものが一般に副作用と呼ばれる。
アレルゲン
アレルギーを引き起こす原因物質。医薬品の有効成分だけでなく、基本的に薬理作用がない添加物(黄色4号(タートラジン)、カゼイン、亜硫酸塩等)もアレルゲンとなり得ることが知られている。
薬物依存
ある薬物の精神的な作用を体験するために、その薬物を連続的、あるいは周期的に摂取することへの強迫(欲求)を常に伴っている行動等によって特徴づけられる精神的・身体的な状態。一度形成されると離脱は容易ではない。
習慣性
明確な依存を形成するほどではないものの、習慣的に使用することにつながりやすい性質。これに対し依存性とは、物質が有する依存を形成する性質(依存形成性)のことをいう。

例題 主作用以外の反応は、すべて副作用と呼ばれるか。

呼ばれない。手引きでは、主作用以外の反応であっても、特段の不都合を生じないものであれば通常、副作用として扱われることはなく、好ましくないものについて一般に副作用というとされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第1章 Ⅱ 医薬品の効き目や安全性に影響を与える要因

相互作用と飲み合わせ

医薬品どうし・食品との相互作用がどこで起こり、何をもたらすかをつかむ。

複数の医薬品を併用した場合、又は保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品及び機能性表示食品)やいわゆる健康食品を含む特定の食品と一緒に摂取した場合に、医薬品の作用が増強したり、減弱したりすることを相互作用という。作用が増強すれば、作用が強く出過ぎたり副作用が発生しやすくなり、作用が減弱すれば、十分な効果が得られないなどの不都合を生じる。

相互作用には、医薬品が吸収、分布、代謝(体内で化学的に変化すること)又は排泄される過程で起こるものと、医薬品が薬理作用をもたらす部位において起こるものがある。相互作用を回避するには、ある医薬品を使用している期間やその前後を通じて、その医薬品との相互作用を生じるおそれのある医薬品や食品の摂取を控えなければならないのが通常である。

一般用医薬品は、一つの医薬品の中に作用の異なる複数の成分を組み合わせて含んでいることが多い。かぜ薬、解熱鎮痛薬、鎮静薬、鎮咳去痰薬、アレルギー用薬等では成分や作用が重複することが多く、通常、これらの薬効群に属する医薬品の併用は避けることとされている。緩和を図りたい症状が明確である場合には、なるべくその症状に合った成分のみが配合された医薬品が選択されることが望ましい。医療機関・薬局から交付された薬剤を使用している場合には、診療を行った医師若しくは歯科医師又は調剤した薬剤師に相談するよう説明がなされるべきである。

酒類(アルコール)は、医薬品の吸収や代謝に影響を与えることがある。アルコールは主として肝臓で代謝されるため、酒類をよく摂取する者では肝臓の代謝機能が高まっていることが多い。その結果、肝臓で代謝されるアセトアミノフェンなどでは通常よりも代謝されやすくなり、体内から医薬品が速く消失して十分な薬効が得られなくなることがある。また、代謝によって産生する物質(代謝産物)に薬効があるものの場合には作用が強く出過ぎたり、逆に、代謝産物が人体に悪影響を及ぼす医薬品の場合は副作用が現れやすくなる。

カフェインやビタミンA等のように、食品中に医薬品の成分と同じ物質が存在するために、それらを含む医薬品(例:総合感冒薬)と食品(例:コーヒー)を一緒に服用すると過剰摂取となるものもある。生薬成分等については、医薬品的な効能効果が標榜又は暗示されていなければ食品(ハーブ等)として流通可能なものもあり、そうした食品を合わせて摂取すると、生薬成分が配合された医薬品の効き目や副作用を増強させることがある。また、外用薬や注射薬であっても、食品によって医薬品の作用や代謝に影響を受ける可能性がある。

飲み合わせで注意すべき組合せ
区分起こり得ること
医薬品どうしかぜ薬・解熱鎮痛薬・鎮静薬・鎮咳去痰薬・アレルギー用薬の併用成分や作用が重複し、作用が強く出過ぎたり副作用を招く危険性が増す(併用は避ける)
酒類(アルコール)肝臓で代謝されるアセトアミノフェン等肝臓の代謝機能が高まり医薬品が速く消失し、十分な薬効が得られないことがある
食品中の同じ成分総合感冒薬とコーヒー(カフェイン)、ビタミンA過剰摂取となるものがある
生薬成分ハーブ等として流通する食品生薬成分が配合された医薬品の効き目や副作用を増強させることがある
相互作用
複数の医薬品の併用や、特定の食品と一緒に摂取した場合に、医薬品の作用が増強したり減弱したりすること。吸収・分布・代謝・排泄の過程で起こるものと、薬理作用をもたらす部位で起こるものがある。
代謝
体内で化学的に変化すること。アルコールは主として肝臓で代謝されるため、酒類をよく摂取する者では肝臓の代謝機能が高まっていることが多く、肝臓で代謝される医薬品の効き目に影響することがある。
保健機能食品
特定保健用食品、栄養機能食品及び機能性表示食品のこと。これらやいわゆる健康食品を含む特定の食品と医薬品を一緒に摂取した場合にも、相互作用が生じることがある。

例題 酒類をよく摂取する人で、アセトアミノフェンの薬効が得られにくくなることがあるのはなぜか。

手引きでは、アルコールは主として肝臓で代謝されるため、酒類をよく摂取する者では肝臓の代謝機能が高まっていることが多く、肝臓で代謝されるアセトアミノフェンなどは通常より代謝されやすくなり、体内から速く消失して十分な薬効が得られなくなることがあるとされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第1章 Ⅱ 医薬品の効き目や安全性に影響を与える要因

小児・高齢者・妊婦等への配慮とプラセボ・品質

年齢区分の目安と、小児・高齢者・妊婦等それぞれへの配慮、プラセボ効果と医薬品の品質の考え方を押さえる。

「医療用医薬品の添付文書等の記載要領の留意事項」では、おおよその目安として、新生児は生後4週未満、乳児は生後4週以上1歳未満、幼児は1歳以上7歳未満、小児は7歳以上15歳未満という年齢区分が用いられている。ただし、一般的に15歳未満を小児とすることもあり、具体的な年齢が明らかな場合は、医薬品の使用上の注意においては「3歳未満の小児」等と表現される場合がある。高齢者は、おおよその目安として65歳以上とされている。

小児は医薬品を受けつける生理機能が未発達であるため、特に配慮が必要である。小児は大人と比べて身体の大きさに対して腸が長く、服用した医薬品の吸収率が相対的に高い。血液脳関門が未発達であるため、吸収されて循環血液中に移行した医薬品の成分が脳に達しやすく、中枢神経系に影響を与える医薬品で副作用を起こしやすい。肝臓や腎臓の機能も未発達であるため、成分の代謝・排泄に時間がかかり、作用が強く出過ぎたり、副作用がより強く出ることがある。5歳未満の幼児に使用される錠剤やカプセル剤では、服用時に喉につかえやすいので注意するよう添付文書に記載されている。乳児は医薬品の影響を受けやすく状態が急変しやすいため、基本的には医師の診療が優先され、一般用医薬品による対処は最小限(夜間等、医師の診療を受けることが困難な場合)にとどめるのが望ましい。誤飲・誤用事故を防ぐため、小児が容易に手に取れる場所や目につく場所に医薬品を置かないことも重要である。

高齢者は生理機能が衰えつつあり、特に肝臓や腎臓の機能が低下していると医薬品の作用が強く現れやすく、若年時と比べて副作用を生じるリスクが高くなる。ただし基礎体力や生理機能の衰えの度合いは個人差が大きく、年齢のみから一概にリスクの程度を判断することは難しい。また、喉の筋肉が衰えて飲み込む力が弱まっている(嚥下障害)場合があり内服薬を喉に詰まらせやすいこと、医薬品の副作用で口渇を生じると誤嚥を誘発しやすくなること、基礎疾患の悪化や治療の妨げとなる場合があること、添付文書等の記載を読み取るのが難しい場合があること等にも配慮が必要である。

胎児は母体との間にある胎盤を通じて栄養分を受け取っており、胎盤には胎児の血液と母体の血液とが混ざらない仕組み(血液-胎盤関門)がある。母体が使用した医薬品の成分がどの程度胎児へ移行するのを防御されるかは未解明のことも多く、一般用医薬品でも妊婦の使用については「相談すること」としているものが多い。ビタミンA含有製剤のように妊娠前後の一定期間に通常の用量を超えて摂取すると胎児に先天異常を起こす危険性が高まるとされているものや、便秘薬のように配合成分やその用量によっては流産や早産を誘発するおそれがあるものもある。授乳婦では、使用した医薬品の成分の一部が乳汁中に移行することが知られており、乳幼児に好ましくない影響が及ぶことが知られている医薬品については、授乳期間中の使用を避けるか、使用後しばらくの間は授乳を避けることができるよう、積極的な情報提供がなされる必要がある。

医薬品を使用したとき、結果的又は偶発的に薬理作用によらない作用を生じることをプラセボ効果(偽薬効果)という。プラセボ効果は、楽観的な結果への期待(暗示効果)や、条件付けによる生体反応、時間経過による自然発生的な変化(自然緩解など)等が関与して生じると考えられている。プラセボ効果によってもたらされる反応や変化にも、望ましいもの(効果)と不都合なもの(副作用)とがあり、主観的な変化だけでなく客観的に測定可能な変化として現れることもあるが、不確実であり、それを目的として医薬品が使用されるべきではない。

医薬品に配合されている成分(有効成分及び添加物成分)には、高温や多湿、光(紫外線)等によって品質の劣化(変質・変敗)を起こしやすいものが多く、適切な保管・陳列がなされなければ、効き目が低下したり、人体に好ましくない作用をもたらす物質を生じることがある。また、適切な保管・陳列がなされたとしても、経時変化による品質の劣化は避けられない。表示されている「使用期限」は、未開封状態で保管された場合に品質が保持される期限であり、液剤などでは、いったん開封されると記載されている期日まで品質が保証されない場合がある。一般用医薬品は家庭における常備薬として購入されることも多いため、使用期限から十分な余裕をもって販売等がなされることも重要である。

年齢区分のおおよその目安(「医療用医薬品の添付文書等の記載要領の留意事項」による)
区分おおよその目安
新生児生後4週未満
乳児生後4週以上、1歳未満
幼児1歳以上、7歳未満
小児7歳以上、15歳未満(一般的に15歳未満を小児とすることもある)
高齢者65歳以上
血液脳関門
手引きでは、小児は血液脳関門が未発達であるため、吸収されて循環血液中に移行した医薬品の成分が脳に達しやすく、中枢神経系に影響を与える医薬品で副作用を起こしやすいとされている。
血液-胎盤関門
胎盤にある、胎児の血液と母体の血液とが混ざらない仕組み。母体が医薬品を使用した場合に、医薬品の成分の胎児への移行がどの程度防御されるかは、未解明のことも多いとされている。
プラセボ効果
医薬品を使用したとき、結果的又は偶発的に薬理作用によらない作用を生じること(偽薬効果)。暗示効果や条件付けによる生体反応、時間経過による自然発生的な変化(自然緩解など)等が関与して生じると考えられている。
使用期限
未開封状態で保管された場合に品質が保持される期限。液剤などでは、いったん開封されると記載されている期日まで品質が保証されない場合がある。

例題 小児で医薬品の作用が強く出過ぎることがあるのはなぜか。

手引きでは、小児は肝臓や腎臓の機能が未発達であるため、医薬品の成分の代謝・排泄に時間がかかり、作用が強く出過ぎたり、副作用がより強く出ることがあるとされている。腸が長く吸収率が相対的に高いこと、血液脳関門が未発達であることも小児の特徴である。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第1章 Ⅱ 医薬品の効き目や安全性に影響を与える要因

一般用医薬品の範囲と受診勧奨

一般用医薬品にできること・できないことの線引きと、販売時に確認すべきポイントを整理する。

一般用医薬品は、法において「医薬品のうち、その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであって、薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているもの(要指導医薬品を除く。)」(第4条第5項第4号)と定義されている。

その役割は、(1) 軽度な疾病に伴う症状の改善、(2) 生活習慣病等の疾病に伴う症状発現の予防(科学的・合理的に効果が期待できるものに限る。)、(3) 生活の質(QOL)の改善・向上、(4) 健康状態の自己検査、(5) 健康の維持・増進、(6) その他保健衛生の6つとされ、医療機関での治療を受けるほどではない体調不良や疾病の初期段階、あるいは日常において、生活者が自らの疾病の治療、予防又は生活の質の改善・向上を図ることを目的としている。

世界保健機関(WHO)によれば、セルフメディケーションとは「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」とされている。セルフメディケーションの主役は一般の生活者であり、専門家は科学的な根拠に基づいた正確な情報提供を行って支援していくことが期待されている。情報提供は必ずしも医薬品の販売に結びつけるのでなく、医療機関の受診を勧めたり(受診勧奨)、医薬品の使用によらない対処を勧めることが適切な場合があることにも留意する必要がある。

症状が重いとき(例えば、高熱や激しい腹痛がある場合、患部が広範囲である場合等)に一般用医薬品を使用することは、その役割にかんがみて適切な対処とはいえない。一般用医薬品を使用して対処した場合であっても、一定期間若しくは一定回数使用しても症状の改善がみられない又は悪化したときには、医療機関を受診して医師の診療を受ける必要がある。対処可能な範囲は使用する人によって変わり、乳幼児や妊婦等では通常の成人に比べその範囲は限られてくる。スポーツ競技者については、一般用医薬品にも使用すればドーピングに該当する成分を含んだものがあるため、相談があった場合は専門知識を有する薬剤師などへの確認が必要である。

販売時のコミュニケーションでは、購入者等の個々の状況の把握に努めることが重要となる。確認しておきたい基本的なポイントは①購入の動機、②使用者は当人か家族等か、③小児・高齢者・妊婦等が想定されるか、④医療機関で治療を受けていないか、⑤アレルギーや副作用等の経験があるか、⑥相互作用・飲み合わせで問題を生じるおそれのある医薬品の使用や食品の摂取をしていないか、の6つで、常備薬としての購入も想定して⑦すぐに使用される状況にあるか、⑧症状がある場合はいつ頃からか・原因や患部の特定はなされているか、の把握にも努めることが望ましい。第一類医薬品を販売する場合は③〜⑤を販売する薬剤師が確認しなければならず、第二類医薬品では③〜⑤を薬剤師又は登録販売者が確認するよう努めなければならない。また、購入者等が医薬品を使用する状況は随時変化する可能性があるため、販売数量は一時期に使用する必要量とする等、コミュニケーションの機会が継続的に確保されるよう配慮することも重要である。

販売時に購入者等から確認しておきたい事項(第一類医薬品は③〜⑤を薬剤師が確認、第二類医薬品は薬剤師又は登録販売者が確認に努める)
区分確認しておきたい事項
基本① 何のためにその医薬品を購入しようとしているか(購入者等のニーズ、購入の動機)
基本②その医薬品を使用するのは情報提供を受けている当人か、又はその家族等が想定されるか
基本③その医薬品を使用する人として、小児や高齢者、妊婦等が想定されるか
基本④その医薬品を使用する人が医療機関で治療を受けていないか
基本⑤その医薬品を使用する人が過去にアレルギーや医薬品による副作用等の経験があるか
基本⑥相互作用や飲み合わせで問題を生じるおそれのある他の医薬品の使用や食品の摂取をしていないか
常備薬も想定⑦その医薬品がすぐに使用される状況にあるか(対処しようとする症状等が現にあるか)
常備薬も想定⑧症状等がある場合、それはいつ頃からか、その原因や患部等の特定はなされているか
一般用医薬品
医薬品のうち、その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであって、薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているもの(要指導医薬品を除く)。
セルフメディケーション
世界保健機関(WHO)によれば「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」。その主役は一般の生活者であり、専門家は科学的な根拠に基づいた正確な情報提供で支援することが期待されている。
受診勧奨
医療機関の受診を勧めること。専門家の情報提供は必ずしも医薬品の販売に結びつけるのではなく、受診勧奨や医薬品の使用によらない対処を勧めることが適切な場合があることに留意する必要がある。

例題 第二類医薬品を販売する場合、③〜⑤の事項の確認はどのように定められているか。

手引きでは、第二類医薬品を販売する場合は、③〜⑤の事項を販売する薬剤師又は登録販売者が確認するよう努めなければならないとされている。第一類医薬品では、販売する薬剤師が確認しなければならない。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第1章 Ⅲ 適切な医薬品選択と受診勧奨

人体の構造と働き

消化器系

口腔から肛門までの消化管と、唾液腺・肝臓・胆嚢・膵臓という消化腺のはたらきを、消化酵素と栄養分の吸収を軸に整理します。

消化器系は、飲食物を消化して生命を維持していくため必要な栄養分として吸収し、その残滓を体外に排出する器官系である。これに関わる器官として、口腔・咽頭・食道・胃・小腸・大腸・肛門からなる消化管と、唾液腺・肝臓・胆嚢・膵臓などの消化腺がある。消化管は口腔から肛門まで続く管で、平均的な成人で全長約9mある。

飲食物はそのままの形で栄養分として利用できず、消化管で吸収される形に分解する必要があり、これを消化という。消化には、消化腺から分泌される消化液に含まれる消化酵素の作用によって飲食物を分解する化学的消化と、口腔における咀嚼や消化管の運動によって内容物を細かくして消化液と混和する機械的消化とがある。

口腔では、歯が歯周組織(歯肉、歯根膜、歯槽骨、セメント質)によって上下の顎の骨に固定されている。歯冠の表面はエナメル質で覆われ、体で最も硬い部分となっており、その下には象牙質と呼ばれる硬い骨状の組織があって、神経や血管が通る歯髄を取り囲んでいる。舌の表面には舌乳頭という無数の小さな突起があり、味覚を感知する味蕾が分布している。唾液腺から分泌される唾液には、デンプンをデキストリンや麦芽糖に分解する消化酵素であるプチアリン(唾液アミラーゼ)が含まれるほか、リゾチーム等の殺菌・抗菌物質を含み、唾液によって口腔内のpHはほぼ中性に保たれて酸による歯の齲蝕を防いでいる。

咽頭は口腔から食道に通じる食物路と、呼吸器の気道とが交わるところである。嚥下が起きるときには喉頭の入り口にある弁(喉頭蓋)が反射的に閉じ、飲食物が喉頭や気管に流入せずに食道へと送られる。食道は直径1~2cmの管状の器官で、消化液の分泌腺はない。嚥下された飲食物は重力によって胃に落ち込むのではなく、食道の運動によって胃に送られる。食道の上端と下端には括約筋があり、胃の内容物が食道や咽頭に逆流しないよう防いでいる。

胃は、食道から内容物が送られてくると、その刺激に反応して胃壁の平滑筋が弛緩し容積が拡がる(胃適応性弛緩)。粘膜表面の孔は胃腺につながって塩酸(胃酸)のほかペプシノーゲンなどを分泌しており、ペプシノーゲンは胃酸によって、タンパク質を消化する酵素であるペプシンとなる。タンパク質がペプシンによって半消化された状態をペプトンという。胃粘液に含まれる成分は、小腸におけるビタミンB12の吸収にも重要な役割を果たしている。内容物の胃内の滞留時間は、炭水化物主体の食品の場合には比較的短く、脂質分の多い食品の場合には比較的長い。

小腸は全長6~7mの管状の臓器で、十二指腸、空腸、回腸の3部分に分かれる。十二指腸は胃から連なる約25cmのC字型に彎曲した部分で、彎曲部には膵臓からの膵管と胆嚢からの胆管の開口部がある。十二指腸で分泌される腸液に含まれる成分の働きによって、膵液中のトリプシノーゲンがトリプシンになる。十二指腸に続く部分の概ね上部40%が空腸、残り約60%が回腸である。腸管粘膜上の消化酵素として、半消化されたタンパク質をアミノ酸まで分解するエレプシン、炭水化物を単糖類まで分解するマルターゼ、ラクターゼ等がある。小腸の内壁には輪状のひだがあり、粘膜表面は絨毛に覆われ、絨毛を構成する細胞の表面にはさらに微絨毛が密生して吸収効率を高めている。

炭水化物とタンパク質は、消化酵素の作用によってそれぞれ単糖類、アミノ酸に分解されて吸収される。脂質(トリグリセリド)は消化酵素(リパーゼ)の作用によって分解を受けるが、小腸粘膜の上皮細胞で吸収されると脂質に再形成され、乳状脂粒(カイロミクロンとも呼ばれる)となる。その際、脂溶性ビタミンも一緒に取り込まれる。

膵臓は胃の後下部に位置する細長い臓器で、弱アルカリ性の膵液を十二指腸へ分泌し、胃で酸性となった内容物を中和する。膵液はトリプシノーゲンのほか、デンプンを分解するアミラーゼ(膵液アミラーゼ)、脂質を分解するリパーゼなど多くの消化酵素を含み、膵臓は炭水化物、タンパク質、脂質のそれぞれを消化するすべての酵素の供給を担っている。また膵臓は、血糖値を調節するホルモン(インスリン及びグルカゴン)等を血液中に分泌する内分泌腺でもある。

胆嚢は、肝臓で産生された胆汁を濃縮して蓄える器官で、十二指腸に内容物が入ってくると収縮して腸管内に胆汁を送り込む。胆汁に含まれる胆汁酸塩は脂質の消化を容易にし、脂溶性ビタミンの吸収を助ける。腸内に放出された胆汁酸塩の大部分は小腸で再吸収されて肝臓に戻される(腸肝循環)。胆汁に含まれるビリルビン(胆汁色素)は赤血球中のヘモグロビンが分解されて生じた老廃物である。

肝臓は横隔膜の直下に位置する大きい臓器で、胆汁を産生するほか、栄養分の代謝・貯蔵(ブドウ糖をグリコーゲンとして蓄える。ビタミンA、D等の脂溶性ビタミンのほかビタミンB6やB12等の水溶性ビタミンの貯蔵臓器でもある)、生体に有害な物質の無毒化・代謝(アルコールはアセトアルデヒドに代謝されたのちさらに代謝されて酢酸となる。アンモニアは尿素へと代謝される)、生体物質の産生(コレステロール、フィブリノゲン等の血液凝固因子、アルブミン等)を担う。必須アミノ酸以外のアミノ酸を生合成することもできる。

大腸は盲腸、虫垂、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸からなる管状の臓器で、内壁粘膜に絨毛がない点で小腸と区別される。大腸では水分とナトリウム、カリウム、リン酸等の電解質の吸収が行われて固形状の糞便が形成され、消化はほとんど行われない。大腸内には腸内細菌が多く存在して食物繊維を発酵分解し、血液凝固や骨へのカルシウム定着に必要なビタミンK等の物質も産生している。糞便の成分の大半は水分で、食物の残滓は約5%に過ぎない。肛門は直腸粘膜が皮膚へと連なる体外への開口部で、境目には歯状線と呼ばれる線があり、周囲は肛門括約筋で囲まれている。

主な消化酵素と、その分泌される場所・はたらき
分泌される場所消化酵素はたらき
唾液腺(唾液)プチアリン(唾液アミラーゼ)デンプンをデキストリンや麦芽糖に分解する
胃(胃液)ペプシン(ペプシノーゲンが胃酸により変化)タンパク質を消化する(半消化された状態をペプトンという)
膵臓(膵液)トリプシン(トリプシノーゲンが十二指腸で変化)ペプトンをさらに細かく消化する
膵臓(膵液)アミラーゼ(膵液アミラーゼ)デンプンを分解する
膵臓(膵液)リパーゼ脂質を分解する
小腸(腸管粘膜上)エレプシン半消化されたタンパク質をアミノ酸まで分解する
小腸(腸管粘膜上)マルターゼ、ラクターゼ炭水化物を単糖類(ブドウ糖、ガラクトース、果糖)まで分解する
化学的消化
消化液に含まれる消化酵素の作用によって飲食物を分解すること。これに対し、口腔における咀嚼や消化管の運動などによって消化管の内容物を細かくし、消化液と混和して化学的消化を容易にすることを機械的消化という。
プチアリン
唾液に含まれる消化酵素で、唾液アミラーゼともいう。デンプンをデキストリンや麦芽糖に分解する。唾液にはこのほかリゾチーム等の殺菌・抗菌物質も含まれ、口腔粘膜の保護・洗浄、殺菌等の作用がある。
ペプシノーゲン
胃腺から塩酸(胃酸)とともに分泌される物質で、胃酸によって、タンパク質を消化する酵素であるペプシンとなり、胃酸とともに胃液として働く。タンパク質がペプシンによって半消化された状態をペプトンという。
胃適応性弛緩
中身が空の状態では扁平に縮んでいる胃に、食道から内容物が送られてくると、その刺激に反応して胃壁の平滑筋が弛緩し、容積が拡がること。
トリプシン
膵液中のトリプシノーゲンが、十二指腸で分泌される腸液に含まれる成分の働きによって変化したもの。胃で半消化されたタンパク質(ペプトン)をさらに細かく消化する酵素である。
絨毛
十二指腸の上部を除く小腸の内壁にある輪状のひだの粘膜表面を覆う突起で、柔突起ともいう。絨毛を構成する細胞の表面にはさらに微絨毛が密生し、吸収効率を高めている。大腸の内壁粘膜には絨毛がない。
乳状脂粒
脂質(トリグリセリド)が消化酵素(リパーゼ)の作用によって分解を受け、小腸粘膜の上皮細胞で吸収された後に脂質へ再形成されたもの。リポタンパク質の一種でカイロミクロンとも呼ばれ、その際に脂溶性ビタミンも一緒に取り込まれる。
腸肝循環
腸内に放出された胆汁酸塩の大部分が、小腸で再吸収されて肝臓に戻されること。胆汁酸塩は脂質の消化を容易にし、また脂溶性ビタミンの吸収を助ける。
グリコーゲン
小腸で吸収されたブドウ糖が血液によって肝臓に運ばれ、蓄えられた形。ブドウ糖が重合してできた高分子多糖で、血糖値が下がったときなど必要に応じてブドウ糖に分解されて血液中に放出される。

例題 デンプンを分解する消化酵素を、手引きに出てくる範囲で2つ挙げてください。

唾液に含まれるプチアリン(唾液アミラーゼ)と、膵液に含まれるアミラーゼ(膵液アミラーゼ)。プチアリンはデンプンをデキストリンや麦芽糖に分解するとされている。

例題 小腸と大腸の内壁の違いは何ですか。

小腸の内壁(十二指腸の上部を除く)は輪状のひだの粘膜表面が絨毛に覆われているのに対し、大腸は内壁粘膜に絨毛がない点で小腸と区別される、とされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第2章 Ⅰ 人体の構造と働き 1 内臓器官(1)消化器系

呼吸器系と循環器系

鼻腔から肺胞までの気道の構造とガス交換、そして心臓・血管・血液・脾臓・リンパ系という循環器系のしくみをまとめます。

呼吸器系は呼吸を行うための器官系で、鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支、肺からなる。鼻腔から気管支までの呼気及び吸気の通り道を気道といい、そのうち咽頭・喉頭までの部分を上気道、気管から気管支、肺までの部分を下気道という。呼吸器は常時外気と接触する器官であり、様々な異物、病原物質の侵入経路となるため、幾つもの防御機構が備わっている。

鼻腔の入り口(鼻孔)にある鼻毛は、空気中の塵、埃等を吸い込まないようにするフィルターの役目を果たしている。鼻腔の内壁は粘膜で覆われた棚状の凸凹になっており、吸入された空気に効率よく適度な湿り気と温もりを与える。鼻腔の内壁には粘液分泌腺が多く分布して鼻汁を分泌し、鼻汁にはリゾチームが含まれ、気道の防御機構の一つとなっている。

咽頭は鼻腔と口腔につながっており、消化管と気道の両方に属する。咽頭の後壁には扁桃があり、扁桃はリンパ組織(白血球の一種であるリンパ球が密集する組織)が集まってできていて、気道に侵入してくる細菌、ウイルス等に対する免疫反応が行われる。喉頭は咽頭と気管の間にある軟骨に囲まれた円筒状の器官で、軟骨の突起した部分(喉頭隆起)がいわゆる「のどぼとけ」である。喉頭は発声器としての役割もあり、呼気で喉頭上部にある声帯を振動させて声が発せられる。

喉頭から肺へ向かう気道が左右の肺へ分岐するまでの部分を気管といい、そこから肺の中で複数に枝分かれする部分を気管支という。喉頭の大部分と気管から気管支までの粘膜は線毛上皮で覆われており、吸い込まれた粉塵、細菌等の異物は気道粘膜から分泌される粘液にからめ取られ、線毛運動による粘液層の連続した流れによって気道内部から咽頭へ向けて排出され、唾液とともに嚥下される。

肺は胸部の左右両側に1対ある。肺自体には肺を動かす筋組織がないため、自力で膨らんだり縮んだりするのではなく、横隔膜や肋間筋によって拡張・収縮して呼吸運動が行われている。肺の内部で気管支が細かく枝分かれし、末端の球状の袋部分を肺胞という。肺胞の壁は非常に薄く、周囲を毛細血管が網のように取り囲んでいる。肺胞と毛細血管を取り囲んで支持している組織を間質という。肺胞の壁を介して、心臓から送られてくる血液から二酸化炭素が肺胞気中に拡散し、代わりに酸素が血液中の赤血球に取り込まれるガス交換が行われる。

循環器系は体液(血液やリンパ液)を体内に循環させ、酸素、栄養分等を全身の組織へ送り、老廃物を排泄器官へ運ぶための器官系で、心臓、血管系、血液、脾臓、リンパ系からなる。血管系が心臓を中心とする閉じた管(閉鎖循環系)であるのに対して、リンパ系は末端がリンパ毛細管となって組織の中に開いている開放循環系である。

心臓は心筋でできた握りこぶし大の袋状の臓器で、内部は上部左右の心房、下部左右の心室の4つの空洞に分かれている。心房で血液を集めて心室に送り、心室から血液を拍出する。血液が確実に一方向に流れるよう、心室には血液を取り込む側と送り出す側にそれぞれ弁があり、拍動と協調して交互に開閉する。心臓の右側部分(右心房、右心室)は全身から集まってきた血液を肺へ送り出し、肺でのガス交換が行われた血液は心臓の左側部分(左心房、左心室)に入り、そこから全身に送り出される。

心臓から拍出された血液を送る血管を動脈、心臓へ戻る血液を送る血管を静脈という。いずれも血管壁が収縮すると血管は細くなり、弛緩すると拡張し、心拍数と同様に自律神経系によって制御される。動脈は弾力性があり圧力がかかっても耐えられるようになっており、血圧は通常、上腕部の動脈で測定される。静脈にかかる圧力は比較的低いため血管壁は動脈よりも薄く、四肢を通る静脈では静脈弁が発達して血液の逆流を防いでいる。毛細血管は動脈と静脈の間をつなぐ細い血管で、その薄い血管壁を通して酸素と栄養分が血液中から組織へ運び込まれ、それと交換に二酸化炭素や老廃物が組織から血液中へ取り込まれる。消化管壁を通っている毛細血管の大部分は門脈と呼ばれる血管に集まって肝臓に入る。

血液は血漿と血球からなる。血漿は90%以上が水分からなり、アルブミン、グロブリン等のタンパク質のほか微量の脂質、糖質、電解質を含む。アルブミンは血液の浸透圧を保持する働きがあるほか、ホルモンや医薬品の成分等と複合体を形成して、それらが血液によって運ばれるときに代謝や排泄を受けにくくする。グロブリンはその多くが免疫反応において異物を特異的に認識する抗体としての役割を担い、免疫グロブリンとも呼ばれる。血液の粘稠性は主として血漿の水分量や赤血球の量で決まり、血中脂質量はほとんど影響を与えない。

赤血球は中央部がくぼんだ円盤状の細胞で、血液全体の約40%を占め、赤い血色素(ヘモグロビン)を含む。ヘモグロビンは鉄分と結合したタンパク質で、酸素量の多いところで酸素分子と結合し、酸素が少なく二酸化炭素が多いところで酸素分子を放出する。二酸化炭素はヘモグロビンとほとんど結合せず、血漿中に溶け込んで末梢組織から肺へ運ばれる。赤血球は骨髄で産生され、その数が少なすぎたりヘモグロビン量が欠乏すると貧血症状が現れる。白血球は体内に侵入した細菌やウイルス等の異物に対する防御を受け持つ細胞で、好中球は最も数が多く白血球の約60%を占めて食作用によって異物を取り込んで分解し、リンパ球は白血球の約1/3を占めて異物を認識したり(T細胞リンパ球)抗体を産生したりし(B細胞リンパ球)、単球は約5%と少ないが最も大きく強い食作用を持ち組織の中ではマクロファージと呼ばれる。血小板は、損傷部位に粘着・凝集して傷口を覆い、フィブリノゲンが重合して線維状のフィブリンとなる止血の仕組みで重要な役割を担っている。

脾臓は握りこぶし大のスポンジ状臓器で、胃の後方の左上腹部に位置する。主な働きは、脾臓内を流れる血液から古くなった赤血球を濾し取って処理することである。健康な赤血球には柔軟性があるので脾臓内の網目構造をすり抜けられるが、古くなって柔軟性が失われた赤血球は引っかかり、マクロファージによって壊される。脾臓にはリンパ球が増殖、密集する組織もあり、免疫応答に関与する。リンパ系には心臓のようにポンプの働きをする器官がなく、リンパ液の流れは主に骨格筋の収縮によるもので、流速は血流に比べて緩やかである。リンパ液は血漿の一部が組織中へ滲み出た組織液がリンパ管に入ったもので、血漿とほとんど同じ成分からなるがタンパク質が少なく、リンパ球を含む。リンパ管には逆流防止のための弁があり、最終的に鎖骨の下にある静脈につながる。

血液の成分とそのはたらき
区分成分主な特徴・はたらき
血漿血漿90%以上が水分。アルブミン、グロブリン等のタンパク質のほか、微量の脂質、糖質、電解質を含む
血漿アルブミン血液の浸透圧を保持する。ホルモンや医薬品の成分等と複合体を形成し、代謝や排泄を受けにくくする
血漿グロブリンその多くが免疫反応で異物を特異的に認識する抗体(免疫グロブリン)としての役割を担う
血球赤血球血液全体の約40%を占める。ヘモグロビンが酸素を運ぶ。骨髄で産生される
血球白血球(好中球)白血球の約60%で最も数が多い。食作用によって細菌やウイルス等を取り込んで分解する
血球白血球(リンパ球)白血球の約1/3。異物を認識するT細胞リンパ球と、抗体を産生するB細胞リンパ球がある
血球白血球(単球)白血球の約5%と少ないが最も大きく強い食作用を持つ。組織中ではマクロファージと呼ばれる
血球血小板損傷部位に粘着・凝集して傷口を覆い、フィブリンによる血液凝固の仕組みで重要な役割を担う
上気道と下気道
鼻腔から気管支までの呼気及び吸気の通り道を気道といい、そのうち咽頭・喉頭までの部分を上気道、気管から気管支、肺までの部分を下気道という。
扁桃
咽頭の後壁にあり、粘膜表面が凸凹している組織。リンパ組織(白血球の一種であるリンパ球が密集する組織)が集まってできていて、気道に侵入してくる細菌、ウイルス等に対する免疫反応が行われる。分泌腺ではない。
肺胞
肺の内部で気管支が細かく枝分かれした末端の、ブドウの房のような構造の球状の袋部分。壁は非常に薄く周囲を毛細血管が取り囲み、その壁を介して血液から二酸化炭素が拡散し、代わりに酸素が赤血球に取り込まれるガス交換が行われる。
間質
肺胞と毛細血管を取り囲んで支持している組織のこと。
門脈
消化管壁を通っている毛細血管の大部分が集まって肝臓に入る血管。消化管で吸収された物質が一度肝臓を通って代謝や解毒を受けた後に、血流に乗って全身を循環する仕組みとなっている。
アルブミン
血漿中のタンパク質の一つ。血液の浸透圧を保持する(血漿成分が血管から組織中に漏れ出るのを防ぐ)働きがあるほか、ホルモンや医薬品の成分等と複合体を形成して、それらが血液によって運ばれるときに代謝や排泄を受けにくくする。
好中球
白血球のうち最も数が多く、約60%を占めるもの。血管壁を通り抜けて組織の中に入り込むことができ、感染が起きた組織に遊走して集まり、細菌やウイルス等を食作用によって取り込んで分解する。
単球
白血球の約5%と少ないが最も大きく、強い食作用を持つもの。血管壁を通り抜けて組織の中に入り込むことができ、組織の中ではマクロファージ(貪食細胞)と呼ばれる。
フィブリン
血小板から放出される酵素によって起こる血液凝固反応で、血漿タンパク質の一種であるフィブリノゲンが傷口で重合してできる線維状の物質。フィブリン線維に赤血球や血小板などが絡まり合い、血餅となって傷口をふさぐ。

例題 肺が自力で膨らんだり縮んだりできないのはなぜですか。

肺自体には肺を動かす筋組織がないため。手引きでは、横隔膜や肋間筋によって拡張・収縮して呼吸運動が行われている、とされている。

例題 全身から集まってきた血液は、心臓のどの部分に入りますか。

心臓の右側部分(右心房、右心室)に入り、そこから肺へ送り出される。肺でガス交換が行われた血液は左側部分(左心房、左心室)に入り、そこから全身に送り出されるとされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第2章 Ⅰ 人体の構造と働き 1 内臓器官(2)呼吸器系・(3)循環器系

泌尿器系と感覚器官

腎臓のネフロンと副腎、尿路のしくみと、目・鼻・耳という感覚器官の構造とはたらきを押さえます。

泌尿器系は、血液中の老廃物を尿として体外へ排泄するための器官系である。泌尿器のほかに広義の排泄器官としては、二酸化炭素を排出する呼吸器や、老廃物を汗として排出する外皮等も含まれるが、生命活動によって生じた老廃物の排出のほとんどは泌尿器系によって行われている。

腎臓は横隔膜の下、背骨の左右両側に位置する一対の空豆状の臓器で、内側中央部のくびれた部分に尿管、動脈、静脈、リンパ管等がつながっている。腎臓に入る動脈は細かく枝分かれして、毛細血管が小さな球状になった糸球体を形成する。糸球体の外側を袋状のボウマン嚢が包み込んでおり、これを腎小体という。ボウマン嚢から1本の尿細管が伸びて、腎小体と尿細管とで腎臓の基本的な機能単位(ネフロン)を構成している。

腎小体では、肝臓でアミノ酸が分解されて生成する尿素など、血液中の老廃物が濾過され、原尿として尿細管へ入る。そのほか、血球やタンパク質以外の血漿成分も腎小体で濾過される。尿細管では、原尿中のブドウ糖やアミノ酸等の栄養分及び血液の維持に必要な水分や電解質が再吸収される。その結果、老廃物が濃縮され、余分な水分、電解質とともに最終的に尿となる。

腎臓には、心臓から拍出される血液の1/5~1/4が流れている。血液中の老廃物の除去のほか、水分及び電解質(特にナトリウム)の排出調節が行われており、血液の量と組成を維持して血圧を一定範囲内に保つ上でも重要な役割を担っている。また腎臓には内分泌腺としての機能もあり、骨髄における赤血球の産生を促進するホルモンを分泌する。食品から摂取あるいは体内で生合成されたビタミンDは、腎臓で活性型ビタミンDに転換されて、骨の形成や維持の作用を発揮する。

副腎は左右の腎臓の上部にそれぞれ附属し、皮質と髄質の2層構造からなる。副腎皮質では副腎皮質ホルモンが産生・分泌され、その一つであるアルドステロンは体内に塩分と水を貯留し、カリウムの排泄を促す作用があり、電解質と水分の排出調節の役割を担っている。一方、副腎髄質では、自律神経系に作用するアドレナリン(エピネフリン)とノルアドレナリン(ノルエピネフリン)が産生・分泌される。

左右の腎臓と膀胱は尿管でつながっており、腎臓から膀胱を経て尿道に至る尿の通り道を尿路という。尿のほとんどは水分で、尿素、尿酸等の老廃物、その他微量の電解質、ホルモン等を含む。尿は血液が濾過されて作られるため、糞便とは異なり、健康な状態であれば細菌等の微生物は存在しない。膀胱は下腹部の中央に位置し尿を一時的に溜める袋状の器官で、尿が溜まってくると刺激が脳に伝わって尿意が生じ、膀胱の出口にある膀胱括約筋が緩むと同時に膀胱壁の排尿筋が収縮し、尿が尿道へと押し出される。女性は尿道が短いため、細菌などが侵入したとき膀胱まで感染を生じやすい。男性では膀胱の真下に尿道を取り囲むように前立腺があり、加齢とともに肥大して尿道を圧迫し、排尿困難等を生じることがある。

目は視覚情報の受容器官で、眼球と、眼瞼、結膜、涙器、眼筋等からなる。眼球の外側は、正面前方付近(黒目の部分)のみ透明な角膜が覆い、その他の部分は強膜という乳白色の比較的丈夫な結合組織が覆っている。角膜と水晶体の間は組織液(房水)で満たされ、眼内に一定の圧(眼圧)を生じさせている。透明な角膜や水晶体には血管が通っておらず、房水によって栄養分や酸素が供給される。水晶体の前には虹彩があり、瞳孔を散大・縮小させて眼球内に入る光の量を調節している。水晶体から網膜までの眼球内は、硝子体という透明のゼリー状組織で満たされている。

角膜に射し込んだ光は、角膜、房水、水晶体、硝子体を透過しながら屈折して網膜に焦点を結ぶが、主に水晶体の厚みを変化させることによって遠近の焦点調節が行われている。水晶体は、その周りを囲んでいる毛様体の収縮・弛緩によって、近くの物を見るときには丸く厚みが増し、遠くの物を見るときには扁平になる。網膜には光を受容する細胞(視細胞)が密集していて、視細胞が受容した光の情報は網膜内の神経細胞を介して神経線維に伝えられ、網膜の神経線維は眼球の後方で束になって視神経となる。視細胞には色を識別する細胞と、わずかな光でも敏感に反応する細胞の二種類があり、後者が光を感じる反応にはビタミンAが不可欠であるため、ビタミンAが不足すると夜間視力の低下(夜盲症)を生じる。

眼瞼(まぶた)は眼球の前面を覆う薄い皮膚のひだで、素早くまばたき運動ができるよう皮下組織が少なく薄くできているため、内出血や裂傷を生じやすく、むくみ等の全身的な体調不良の症状が現れやすい部位である。結膜は眼瞼の裏側と眼球前方の強膜とを結ぶように覆っており、結膜の充血では白目の部分だけでなく眼瞼の裏側も赤くなるのに対し、強膜が充血したときは眼瞼の裏側は赤くならず、白目の部分がピンク味を帯びる。涙器は涙液を分泌する涙腺と、涙液を鼻腔に導出する涙道からなり、涙腺は上眼瞼の裏側にある分泌腺で血漿から涙液を産生する。涙液には、異物を洗い流す、角膜に酸素や栄養分を供給する、リゾチームや免疫グロブリン等を含み角膜や結膜を感染から防御する等の働きがある。眼筋は6本あり、眼球を上下左右斜めの各方向に向ける。

鼻は嗅覚情報の受容器官で、鼻腔上部の粘膜にある嗅細胞をにおい分子が刺激すると、その刺激が脳の嗅覚中枢へ伝えられる。においに対する感覚は非常に鋭敏であるが順応を起こしやすい。鼻腔は薄い板状の軟骨と骨でできた鼻中隔によって左右に仕切られており、鼻中隔の前部は毛細血管が豊富に分布し粘膜が薄いため、傷つきやすく鼻出血を起こしやすい。鼻の周囲の骨内には鼻腔に隣接した空洞があり、それらを総称して副鼻腔という。副鼻腔はいずれも鼻腔と細い管でつながっているが、その管は非常に狭いため、鼻腔粘膜が腫れると副鼻腔の開口部がふさがりやすくなり、炎症を生じることがある。

耳は聴覚情報と平衡感覚を感知する器官で、外耳、中耳、内耳からなる。外耳は側頭部から突出した耳介と、耳介で集められた音を鼓膜まで伝導する外耳道からなり、外耳道にある耳垢腺(汗腺の一種)や皮脂腺からの分泌物に埃や外耳道上皮の老廃物などが混じって耳垢となる。中耳は外耳と内耳をつなぐ部分で、鼓膜、鼓室、耳小骨、耳管からなり、鼓室の内部では互いに連結した微細な3つの耳小骨が鼓膜の振動を増幅して内耳へ伝導する。鼓室は耳管という管で鼻腔や咽頭と通じており、小さな子供では耳管が太く短くて走行が水平に近いため、鼻腔からウイルスや細菌が侵入し感染が起こりやすい。内耳は聴覚器官である蝸牛と、平衡器官である前庭の2つの部分からなり、蝸牛は渦巻き形をした器官で内部はリンパ液で満たされている。前庭は水平・垂直方向の加速度を感知する耳石器官と、体の回転や傾きを感知する半規管に分けられる。

泌尿器系と感覚器官の主な部位とはたらき
区分部位主なはたらき
泌尿器系腎小体(糸球体+ボウマン嚢)血液中の老廃物を濾過して原尿とする。血球やタンパク質以外の血漿成分も濾過される
泌尿器系尿細管原尿中のブドウ糖やアミノ酸等の栄養分、必要な水分や電解質を再吸収する
泌尿器系副腎皮質アルドステロン等の副腎皮質ホルモンを産生・分泌する
泌尿器系副腎髄質アドレナリンとノルアドレナリンを産生・分泌する
泌尿器系膀胱尿を一時的に溜める。膀胱括約筋が緩むと同時に排尿筋が収縮し、尿が尿道へ押し出される
角膜・房水角膜と水晶体の間を房水が満たし眼圧を生じる。血管のない角膜・水晶体に栄養分と酸素を供給する
水晶体・毛様体毛様体の収縮・弛緩で水晶体の厚みが変わり、近くを見るときは丸く厚みが増す
虹彩瞳孔を散大・縮小させて眼球内に入る光の量を調節する
網膜視細胞が密集し、受容した光の情報を神経細胞を介して神経線維に伝える。神経線維は視神経となる
鼻腔・副鼻腔鼻腔上部の嗅細胞がにおい分子の刺激を受ける。副鼻腔は鼻腔と細い管でつながる骨内の空洞
中耳(鼓膜・鼓室・耳小骨・耳管)3つの耳小骨が鼓膜の振動を増幅して内耳へ伝導する。耳管は鼻腔や咽頭と通じている
内耳(蝸牛・前庭)蝸牛は聴覚器官、前庭は平衡器官。いずれも内部はリンパ液で満たされている
ネフロン
腎臓の基本的な機能単位。糸球体とその外側を包むボウマン嚢からなる腎小体と、ボウマン嚢から伸びる1本の尿細管とで構成される。
原尿
腎小体で血液中の老廃物が濾過されて尿細管へ入ったもの。血球やタンパク質以外の血漿成分も腎小体で濾過される。尿細管でブドウ糖やアミノ酸等の栄養分、水分、電解質が再吸収された結果、最終的に尿となる。
アルドステロン
副腎皮質で産生・分泌される副腎皮質ホルモンの一つ。体内に塩分と水を貯留し、カリウムの排泄を促す作用があり、電解質と水分の排出調節の役割を担っている。
副腎髄質
副腎の2層構造のうち内側の層。自律神経系に作用するアドレナリン(エピネフリン)とノルアドレナリン(ノルエピネフリン)が産生・分泌される。外側の皮質では副腎皮質ホルモンが産生・分泌される。
房水
角膜と水晶体の間を満たしている組織液で、眼内に一定の圧(眼圧)を生じさせている。透明な角膜や水晶体には血管が通っておらず、房水によって栄養分や酸素が供給される。
毛様体
水晶体の周りを囲んでいる組織。その収縮・弛緩によって水晶体は、近くの物を見るときには丸く厚みが増し、遠くの物を見るときには扁平になり、遠近の焦点調節が行われる。
涙器
涙液を分泌する涙腺と、涙液を鼻腔に導出する涙道からなる。涙腺は上眼瞼の裏側にある分泌腺で、血漿から涙液を産生する。涙液はリゾチーム、免疫グロブリン等を含み、角膜や結膜を感染から防御する。
副鼻腔
鼻の周囲の骨内にある、鼻腔に隣接した目と目の間、額部分、頬の下、鼻腔の奥の空洞の総称。骨の強さや形を保ちつつ重量を軽くしている。いずれも鼻腔と細い管でつながっている。
耳管
中耳の鼓室と鼻腔や咽頭を通じさせている管。急な気圧変化で鼓膜の内外に気圧差が生じたとき、耳抜き動作で意識的に開けると気圧の均衡が戻る。小さな子供では太く短く走行が水平に近い。
蝸牛と前庭
内耳を構成する2つの部分。蝸牛は渦巻き形をした聴覚器官で、リンパ液の振動が聴細胞の感覚毛を揺らして聴神経が刺激される。前庭は平衡器官で、耳石器官と半規管に分けられる。

例題 ネフロンは何と何で構成されますか。

腎小体(糸球体とボウマン嚢)と尿細管。この2つで腎臓の基本的な機能単位を構成するとされている。

例題 近くの物を見るとき、水晶体はどうなりますか。

毛様体の収縮・弛緩によって丸く厚みが増す。遠くの物を見るときには扁平になるとされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第2章 Ⅰ 人体の構造と働き 1 内臓器官(4)泌尿器系/2 目、鼻、耳などの感覚器官

運動器官と神経系

皮膚・骨・筋という運動器官の構造と、中枢神経系・末梢神経系、とりわけ交感神経と副交感神経の効果器への作用を対比で覚えます。

身体を覆う皮膚と、汗腺、皮脂腺、乳腺等の皮膚腺、爪や毛等の角質を総称して外皮系という。皮膚には、身体の維持と保護(バリア機能)、体水分の保持、熱交換、外界情報の感知という機能がある。熱交換では、体温が上がり始めると皮膚を通っている毛細血管に血液がより多く流れるように血管が開いて体外へより多くの熱を排出し、また汗腺から汗を分泌してその蒸発時の気化熱を利用して体温を下げる。逆に体温が下がり始めると血管は収縮して放熱を抑える。

皮膚は、表皮、真皮、皮下組織の3層構造からなる。表皮は最も外側にある角質層と生きた表皮細胞の層に分けられ、角質層はケラチンでできた板状の角質細胞と、セラミド(リン脂質の一種)を主成分とする細胞間脂質で構成されており、皮膚のバリア機能を担っている。皮膚の色は表皮や真皮に沈着したメラニン色素によるもので、メラニン色素は表皮の最下層にあるメラニン産生細胞(メラノサイト)で産生され、紫外線から皮膚組織を防護する役割がある。真皮は線維芽細胞とその細胞で産生されたコラーゲン、フィブリリン、エラスチン等の線維性のタンパク質からなる結合組織の層で、皮膚の弾力と強さを与えており、毛細血管や知覚神経の末端が通っている。真皮の下には皮下組織があり、脂肪細胞が多く集まって皮下脂肪層となり、外気の熱や寒さから体を守るとともに、衝撃から体を保護し、脂質としてエネルギー源を蓄える。

毛根を鞘状に包んでいる毛包には、立毛筋と皮脂腺がつながっている。立毛筋は気温や感情の変化などの刺激により収縮し、毛穴が隆起する立毛反射(いわゆる「鳥肌」)が生じる。皮脂腺は腺細胞が集まってできており、脂分を蓄えて死んだ腺細胞自身が分泌物(皮脂)となって毛穴から排出される。汗腺には、腋窩(わきのした)などの毛根部に分布するアポクリン腺(体臭腺)と、手のひらなど毛根がないところも含め全身に分布するエクリン腺の二種類がある。汗はエクリン腺から分泌され、体温調節のための発汗は全身の皮膚に生じるが、精神的緊張による発汗は手のひらや足底、脇の下、顔面などの限られた皮膚に生じる。

骨格系は骨と関節からなる。骨の基本構造は、主部となる骨質、骨質表面を覆う骨膜、骨質内部の骨髄、骨の接合部にある関節軟骨の四組織からなる。骨の機能には、身体各部の支持機能、臓器保護機能、運動機能、造血機能(骨髄で産生される造血幹細胞から赤血球、白血球、血小板が分化することにより体内に供給する)、貯蔵機能(カルシウムやリン等の無機質を蓄える)がある。骨は生きた組織であり、成長が停止した後も一生を通じて破壊(骨吸収)と修復(骨形成)が行われ、吸収と形成のバランスが取られることにより一定の骨密度が保たれる。無機質は骨に硬さを与え、有機質(タンパク質及び多糖体)は骨の強靱さを保つ。

筋組織は、その機能や形態によって骨格筋、平滑筋、心筋に分類される。このうち運動器官とされるのは骨格筋であり、関節を構成する骨に腱を介してつながっている。腱は結合組織のみでできているため伸縮性はあまりない。骨格筋は横縞模様(横紋)が見えるので横紋筋とも呼ばれ、収縮力が強く自分の意識どおりに動かすことができる随意筋であるが、疲労しやすく長時間の動作は難しい。平滑筋は筋線維に横縞模様がなく、消化管壁、血管壁、膀胱等に分布し、比較的弱い力で持続的に収縮する。心筋は心臓壁にある筋層を構成する筋組織で、不随意筋であるが筋線維には横縞模様があり、強い収縮力と持久力を兼ね備えている。随意筋(骨格筋)は体性神経系(運動神経)で支配されるのに対して、不随意筋(平滑筋及び心筋)は自律神経系に支配されている。

神経系は、その働きにより中枢神経系と末梢神経系とに大別される。中枢神経系は脳と脊髄から構成される。脳は知覚、運動、記憶、情動、意思決定等の働きを行っており、脳の下部には自律神経系、ホルモン分泌等の様々な調節機能を担っている部位(視床下部など)がある。脳における血液の循環量は心拍出量の約15%、酸素の消費量は全身の約20%、ブドウ糖の消費量は全身の約25%と多い。

脳の血管は末梢に比べて物質の透過に関する選択性が高く、タンパク質などの大分子や小分子でもイオン化した物質は血液中から脳の組織へ移行しにくい。このように、脳の毛細血管が中枢神経の間質液環境を血液内の組成変動から保護するように働く機能を血液脳関門という。小児では、血液脳関門が未発達であるため、循環血液中に移行した医薬品の成分が脳の組織に達しやすい。脳は脊髄と、延髄でつながっており、延髄には心拍数を調節する心臓中枢、呼吸を調節する呼吸中枢等がある。脊髄は脊椎の中にあり、脳と末梢の間で刺激を伝えるほか、末梢からの刺激の一部に対して脳を介さずに刺激を返す場合があり、これを脊髄反射と呼ぶ。

末梢神経系は、その機能に着目して、随意運動、知覚等を担う体性神経系と、消化管の運動や血液の循環等のように生命や身体機能の維持のため無意識に働いている機能を担う自律神経系に分類される。自律神経系は交感神経系と副交感神経系からなり、概ね、交感神経系は体が闘争や恐怖等の緊張状態に対応した態勢をとるように働き、副交感神経系は体が食事や休憩等の安息状態となるように働く。効果を及ぼす各臓器・器官(効果器)に対して、交感神経系と副交感神経系の二つの神経系が支配しており(自律神経系の二重支配)、通常、両者は互いに拮抗して働き、一方が活発になっているときには他方は活動を抑制して効果器を制御している。

効果器に伸びる自律神経は、節前線維と節後線維からできている。交感神経の節後線維の末端から放出される神経伝達物質はノルアドレナリンであり、副交感神経の節後線維の末端から放出される神経伝達物質はアセチルコリンである。ただし、汗腺を支配する交感神経線維の末端では、例外的にアセチルコリンが伝達物質として放出される。効果器に対してアドレナリン様の作用を有する成分をアドレナリン作動成分、アセチルコリン様の作用を有する成分をコリン作動成分といい、それらと逆に、アドレナリンの働きを抑える作用を有する成分を抗アドレナリン成分、アセチルコリンの働きを抑える作用を有する成分を抗コリン成分という。

効果器ごとの作用は対比で覚えるとよい。目では交感神経系が瞳孔散大、副交感神経系が瞳孔収縮。気管、気管支では交感神経系が拡張、副交感神経系が収縮。心臓では交感神経系が心拍数増加、副交感神経系が心拍数減少。胃では交感神経系が血管の収縮、副交感神経系が胃液分泌亢進。腸では交感神経系が運動低下、副交感神経系が運動亢進。肝臓では交感神経系がグリコーゲンの分解(ブドウ糖の放出)、副交感神経系がグリコーゲンの合成。膀胱では交感神経系が排尿筋の弛緩(排尿抑制)、副交感神経系が排尿筋の収縮(排尿促進)である。皮膚の立毛筋収縮と汗腺の発汗亢進は交感神経系の働きで、副交感神経系については手引きの表では「-」とされている。

交感神経系と副交感神経系が効果器に及ぼす作用の対比(手引きの表)
効果器交感神経系副交感神経系
瞳孔散大瞳孔収縮
唾液腺少量の粘性の高い唾液を分泌唾液分泌亢進
心臓心拍数増加心拍数減少
末梢血管収縮(→血圧上昇)拡張(→血圧降下)
気管、気管支拡張収縮
血管の収縮胃液分泌亢進
運動低下運動亢進
肝臓グリコーゲンの分解(ブドウ糖の放出)グリコーゲンの合成
皮膚立毛筋収縮
汗腺発汗亢進
膀胱排尿筋の弛緩(→排尿抑制)排尿筋の収縮(→排尿促進)
角質層
表皮の最も外側にある層。細胞膜が丈夫な線維性のタンパク質(ケラチン)でできた板状の角質細胞と、セラミド(リン脂質の一種)を主成分とする細胞間脂質で構成されており、皮膚のバリア機能を担っている。
アポクリン腺とエクリン腺
汗腺の二種類。アポクリン腺(体臭腺)は腋窩などの毛根部に分布し、エクリン腺は手のひらなど毛根がないところも含め全身に分布する。汗はエクリン腺から分泌される。
立毛筋
毛根を鞘状に包んでいる毛包につながっている筋。気温や感情の変化などの刺激により収縮し、毛穴が隆起する立毛反射(いわゆる「鳥肌」)が生じる。交感神経系の働きで収縮する。
造血機能
骨の機能の一つ。骨髄で産生される造血幹細胞から赤血球、白血球、血小板が分化することにより、体内に供給する。すべての骨の骨髄で造血が行われるわけではない。
随意筋と不随意筋
自分の意識どおりに動かすことができる筋を随意筋といい、骨格筋がこれにあたる。意識的にコントロールできない筋組織を不随意筋といい、平滑筋と心筋がこれにあたる。随意筋は体性神経系、不随意筋は自律神経系に支配されている。
血液脳関門
脳の毛細血管が中枢神経の間質液環境を血液内の組成変動から保護するように働く機能。脳の血管は末梢に比べて物質の透過に関する選択性が高い。小児では未発達であるため、循環血液中に移行した医薬品の成分が脳の組織に達しやすい。
脊髄反射
脊髄が、末梢からの刺激の一部に対して脳を介さずに刺激を返すこと。脊髄は脊椎の中にあり、通常は脳と末梢の間で刺激を伝えている。
自律神経系の二重支配
効果を及ぼす各臓器・器官(効果器)に対して、交感神経系と副交感神経系の二つの神経系が支配していること。通常、両者は互いに拮抗して働き、一方が活発なときには他方は活動を抑制する。
ノルアドレナリンとアセチルコリン
交感神経の節後線維の末端から放出される神経伝達物質がノルアドレナリン、副交感神経の節後線維の末端から放出される神経伝達物質がアセチルコリンである。ただし汗腺を支配する交感神経線維の末端では例外的にアセチルコリンが放出される。

例題 交感神経系が活発になったとき、膀胱と気管支はそれぞれどうなりますか。

膀胱では排尿筋が弛緩して排尿が抑制され、気管、気管支は拡張するとされている。副交感神経系ではそれぞれ排尿筋の収縮(排尿促進)、気管支の収縮となる。

例題 汗腺を支配する交感神経線維の末端から放出される神経伝達物質は何ですか。

アセチルコリン。交感神経の節後線維の末端から放出される神経伝達物質は通常ノルアドレナリンであるが、汗腺を支配する交感神経線維の末端では例外的にアセチルコリンが放出されるとされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第2章 Ⅰ 人体の構造と働き 3 皮膚、骨・関節、筋肉などの運動器官/4 脳や神経系の働き

薬の働きと主な副作用

薬の吸収と代謝・排泄

内服薬・坐剤・外用薬それぞれの吸収経路と、肝初回通過効果・血漿タンパク質との結合・腎排泄という薬物動態の基本を押さえます。

手引きでは、医薬品の作用には、有効成分が消化管などから吸収されて循環血液中に移行し、全身を巡って薬効をもたらす全身作用と、特定の狭い身体部位において薬効をもたらす局所作用とがあるとされている。内服した医薬品が全身作用を現すまでには、消化管からの吸収、代謝と作用部位への分布という過程を経るためある程度の時間が必要であるのに対し、局所作用は医薬品の適用部位が作用部位である場合が多いため、反応は比較的速やかに現れる。内服薬は全身作用を示すものが多いが、膨潤性下剤や生菌製剤等のように有効成分が消化管内で作用するものもあり、その場合に現れる作用は局所作用である。また、局所作用を目的とする医薬品で全身性の副作用が生じたり、逆に全身作用を目的とする医薬品で局所的な副作用が生じることもある。

内服薬のほとんどは、有効成分が消化管から吸収されて循環血液中に移行し、全身作用を現す。錠剤、カプセル剤等の固形剤は、消化管で吸収される前に消化管内で崩壊して有効成分が溶け出さなければならないが、腸溶性製剤のような特殊なものを除き、胃で有効成分が溶出するものが大部分である。有効成分は主に小腸で吸収される。一般に消化管からの吸収は、濃度の高い方から低い方へ受動的に拡散していく現象であり、吸収量や吸収速度は消化管内容物や他の医薬品の作用によって影響を受けるとされている。

坐剤は、肛門から挿入して直腸内で溶解させ、薄い直腸内壁の粘膜から有効成分を吸収させるものである。直腸の粘膜下には静脈が豊富に分布して通っており、有効成分は容易に循環血液中に入るため、内服の場合よりも全身作用が速やかに現れるとされている。抗狭心症薬のニトログリセリン(舌下錠、スプレー)や禁煙補助薬のニコチン(咀嚼剤)のように、口腔粘膜から吸収されて全身作用を現すものもある。これらの部位を通っている静脈血は肝臓を経由せずに心臓に至るため、吸収された成分は初めに肝臓で代謝を受けることなく全身に分布する。鼻腔粘膜に適用する点鼻薬も、一般用医薬品はいずれも局所作用を目的とするが、鼻腔粘膜の下には毛細血管が豊富なため成分が循環血液中に移行しやすく、全身性の副作用を生じることがある。点眼薬は鼻涙管を通って鼻粘膜から吸収されることがあるため、場合によっては点眼する際に目頭の鼻涙管の部分を押さえ、有効成分が鼻に流れるのを防ぐ必要がある。含嗽薬(うがい薬)は多くが唾液や粘液によって食道へ流れてしまうため咽頭粘膜からの吸収による全身的な副作用は少ないが、アレルギー反応は微量の抗原でも生じるため、点眼薬や含嗽薬でもショック(アナフィラキシー)等を生じることがある。皮膚に適用する医薬品は、通常、皮膚表面から循環血液中へ移行する量は比較的少ないが、血液中に移行した有効成分は肝臓で代謝を受ける前に全身に分布するため、適用部位の面積(使用量)や使用回数などによっては全身作用が現れることがある。

経口投与後、消化管で吸収された有効成分は、消化管の毛細血管から血液中へ移行し、その血液は全身循環に入る前に門脈という血管を経由して肝臓を通過する。このため吸収された有効成分は、まず肝臓に存在する酵素の働きにより代謝を受け、全身循環に移行する有効成分の量は消化管で吸収された量よりも肝臓で代謝を受けた分だけ少なくなる。これを肝初回通過効果(first-pass effect)という。肝機能が低下した人では医薬品を代謝する能力が低いため、正常な人に比べて全身循環に到達する有効成分の量がより多くなり、効き目が過剰に現れたり、副作用を生じやすくなったりするとされている。

循環血液中に移行した有効成分は、主として肝細胞の薬物代謝酵素によって代謝を受ける。多くの有効成分は血液中で血漿タンパク質と結合して複合体を形成しており、複合体を形成している有効成分の分子は薬物代謝酵素の作用で代謝されず、トランスポーターによって輸送されることもないため、代謝や分布が制限され、血中濃度の低下は徐々に起こる。循環血液中の有効成分の多くは、未変化体又は代謝物の形で腎臓から尿中に排泄される。腎機能が低下した人では有効成分の尿中への排泄が遅れて血中濃度が下がりにくく、効き目が過剰に現れたり副作用を生じやすくなったりする。複合体は腎臓で濾過されないため、有効成分が長く循環血液中に留まり、作用が持続する原因となるとされている。

医薬品が摂取された後、有効成分の血中濃度は吸収されるにつれて上昇し、最小有効濃度(閾値)を超えたときに薬効が現れる。血中濃度はある時点でピーク(最高血中濃度)に達し、その後は代謝・排泄の速度が吸収・分布の速度を上回るため低下していき、最小有効濃度を下回ると薬効は消失する。一度に大量に摂取したり十分な間隔をあけずに追加摂取して血中濃度を高くしても、ある濃度以上になるとより強い薬効は得られなくなり薬効は頭打ちとなるが、有害な作用(副作用や毒性)は現れやすくなる。全身作用を目的とする医薬品の多くは、血中濃度が最小有効濃度と毒性が現れる濃度域(危険域、中毒域)の間の範囲(有効域、治療域)に維持されるよう、使用量及び使用間隔が定められている。

吸収・代謝・排泄の要点(適用経路と動態)
区分要点注意
内服薬(消化管吸収)主に小腸で吸収。濃度の高い方から低い方へ受動的に拡散。大部分は胃で溶出(腸溶性製剤は例外)吸収量・速度は消化管内容物や他の医薬品の影響を受ける
坐剤直腸内で溶解し、直腸粘膜から吸収。内服より全身作用が速やか肝臓を経由せず全身に分布。粘膜に障害があるときは使用を避ける
点鼻薬一般用医薬品はすべて局所作用目的鼻腔粘膜下の毛細血管から循環血液中に移行しやすく全身性の副作用も
点眼薬鼻涙管を通って鼻粘膜から吸収されることがある目頭の鼻涙管の部分を押さえて鼻に流れるのを防ぐ
皮膚(塗り薬・貼り薬)循環血液中へ移行する量は比較的少ない使用量・回数によっては全身作用が現れることがある
肝初回通過効果門脈経由で肝臓を通過し代謝され、全身循環に移行する量が減る肝機能低下者では効き目過剰・副作用が生じやすい
腎排泄未変化体又は代謝物の形で腎臓から尿中へ排泄腎機能低下者では排泄が遅れ血中濃度が下がりにくい
肝初回通過効果
消化管で吸収された有効成分が門脈を経由して肝臓を通過する際にまず代謝を受け、全身循環に移行する量が吸収された量より少なくなること。first-pass effect ともいう。
血漿タンパク質との複合体
多くの有効成分は血液中で血漿タンパク質と結合して複合体を形成する。複合体は薬物代謝酵素で代謝されず、腎臓で濾過もされないため、血中濃度の低下が徐々になり作用が持続する原因となる。
最小有効濃度
生体の反応としての薬効が現れる血中濃度の閾値。血中濃度がこれを超えたときに薬効が現れ、下回ると薬効は消失する。
徐放性製剤
服用後の作用を持続させるため、有効成分がゆっくりと溶出するように作られた内服薬。

例題 坐剤の全身作用は内服の場合より速やかに現れるとされているのはなぜか。

直腸の粘膜下には静脈が豊富に分布しており、有効成分が容易に循環血液中に入るため。さらにこの静脈血は肝臓を経由せずに心臓に至るので、初めに肝臓で代謝を受けることなく全身に分布する。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第2章 Ⅱ 薬が働く仕組み

剤形ごとの違いと適切な使用方法

錠剤・口腔内崩壊錠・チュアブル錠・散剤・液剤・カプセル剤と、軟膏剤・クリーム剤など外用剤形の特徴と正しい使い方を区別できるようになります。

医薬品がどのような形状で使用されるかは、その医薬品の使用目的と有効成分の性状とに合わせて決められる。こうした医薬品の形状のことを剤形という。有効成分を消化管から吸収させ全身に分布させる剤形としては、錠剤(内服)、口腔用錠剤、カプセル剤、散剤・顆粒剤、経口液剤・シロップ剤等があり、患部局所に直接適用する剤形としては、軟膏剤、クリーム剤、外用液剤、貼付剤、スプレー剤等がある。外用の剤形の多くは有効成分が同じであっても配合されている添加剤等に違いがあり、剤形によっては症状を悪化させてしまう場合もあるため、患部の状態に応じて適切な剤形が選択されなければならないとされている。

錠剤(内服)は、内服用医薬品の剤形として最も広く用いられている。一定の形状に成型された固形製剤であるため、飛散させずに服用できる点や、有効成分の苦味や刺激性を口中で感じることなく服用できる点が特徴である一方、高齢者や乳幼児等では飲み込みにくいことがある。服用するときは適切な量の水(又はぬるま湯)とともに飲み込まなければならず、水が少なかったり水なしで服用すると、錠剤が喉や食道に張り付いて、薬効が現れないのみならず喉や食道の粘膜を傷めるおそれがある。錠剤(内服)は胃や腸で崩壊し有効成分が溶出することが薬効発現の前提となるため、例外的な場合を除いて口中で噛み砕いて服用してはならない。特に腸内での溶解を目的として表面をコーティングした腸溶錠の場合等は、厳に慎まなければならない。

水なしで服用できる錠剤として、口腔内崩壊錠とチュアブル錠がある。口腔内崩壊錠は、口の中の唾液で速やかに溶ける工夫がなされているため水なしで服用でき、固形物を飲み込むことが困難な高齢者や乳幼児、水分摂取が制限されている場合でも、口の中で溶かした後に唾液と一緒に容易に飲み込むことができる。チュアブル錠は、口の中で舐めたり噛み砕いたりして服用する剤形であり、水なしでも服用できる。口腔用錠剤には、トローチ剤・ドロップ剤と舌下錠がある。トローチ剤・ドロップ剤は薬効を期待する部位が口の中や喉であるものが多く、飲み込まずに口の中で舐めて徐々に溶かして使用する。舌下錠は有効成分を舌下で溶解させ、口腔粘膜から吸収させる。

散剤は粉末状、顆粒剤は小さな粒状にしたものである。錠剤を飲み込むことが困難な人には錠剤より服用しやすいが、口の中に広がって歯(入れ歯を含む)の間に挟まったり、苦味や渋味を強く感じる場合がある。服用するときは飛散を防ぐため、あらかじめ少量の水(又はぬるま湯)を口に含んだ上で服用したり、何回かに分けて少しずつ服用するなどの工夫をするとよく、口中に残ったときはさらに水などを口に含み口腔内をすすぐようにして飲み込む。顆粒剤は粒の表面がコーティングされているものもあるので、噛み砕かずに水などで飲み込む。経口液剤は液状の内服用剤形で、固形製剤よりも飲み込みやすく、既に有効成分が液中に溶けたり分散したりしているため、服用後比較的速やかに消化管から吸収される。血中濃度が上昇しやすいため、習慣性や依存性がある成分が配合されているものでは本来の目的と異なる不適正な使用がなされることがある。経口液剤は苦味やにおいが強く感じられることがあるので、小児に用いる医薬品では白糖等の糖類を混ぜたシロップ剤とすることが多い。カプセル剤はカプセル内に散剤や顆粒剤、液剤等を充填した剤形で、特徴は錠剤とほぼ同様であるが、カプセルの原材料として広く用いられるゼラチンはブタなどのタンパク質を主成分としているため、ゼラチンに対してアレルギーを持つ人は使用を避けるなどの注意が必要である。また水なしで服用するとゼラチンが喉や食道に貼り付くことがあるため、必ず適切な量の水(又はぬるま湯)とともに服用する。

外用局所に適用する剤形のうち、軟膏剤とクリーム剤は基剤の違いにより大別され、いずれも有効成分が適用部位に留まりやすいという特徴がある。一般的には、軟膏剤は油性の基剤で皮膚への刺激が弱く、適用部位を水から遮断したい場合等に用い、患部が乾燥していてもじゅくじゅくと浸潤していても使用できる。クリーム剤は油性基剤に水分を加えたもので、患部を水で洗い流したい場合等に用いられるが、皮膚への刺激が強いため傷等への使用は避ける必要があるとされている。外用液剤は外用の液状製剤で、軟膏剤やクリーム剤に比べて患部が乾きやすいという特徴があり、適用部位に直接的な刺激感等を与える場合がある。貼付剤は皮膚に貼り付けて用いる剤形でテープ剤及びパップ剤があり、適用部位に有効成分が一定時間留まるため薬効の持続が期待できる反面、適用部位にかぶれなどを起こす場合もある。スプレー剤は有効成分を霧状にする等して局所に吹き付ける剤形で、手指等では塗りにくい部位や、広範囲に適用する場合に適している。

主な剤形の特徴と使い方
剤形特徴注意・使い方
錠剤(内服)飛散せず、苦味・刺激性を感じずに服用できる適切な量の水とともに服用。噛み砕かない(腸溶錠は特に厳禁)
口腔内崩壊錠唾液で速やかに溶け、水なしで服用できる高齢者・乳幼児や水分摂取が制限されている場合にも適する
チュアブル錠舐めたり噛み砕いたりして服用水なしでも服用できる
トローチ剤・ドロップ剤薬効を期待する部位が口の中や喉飲み込まずに口の中で舐めて徐々に溶かす
散剤・顆粒剤錠剤が飲み込みにくい人にも服用しやすい顆粒剤は表面コーティングのものがあり噛み砕かない
経口液剤・シロップ剤服用後、比較的速やかに吸収される習慣性・依存性のある成分では不適正使用に注意。小児にはシロップ剤
カプセル剤特徴は錠剤とほぼ同様ゼラチンアレルギーの人は使用を避ける。必ず水とともに服用
軟膏剤油性基剤。皮膚への刺激が弱い水から遮断したい場合等。乾燥した患部にも浸潤した患部にも使用可
クリーム剤油性基剤に水分を加えたもの水で洗い流したい場合等。刺激が強く傷等への使用は避ける
外用液剤患部が乾きやすい直接的な刺激感等を与える場合がある
貼付剤(テープ剤・パップ剤)有効成分が一定時間留まり薬効の持続が期待できる適用部位にかぶれなどを起こす場合がある
スプレー剤霧状にして局所に吹き付ける塗りにくい部位や広範囲への適用に適する
口腔内崩壊錠
口の中の唾液で速やかに溶ける工夫がなされた錠剤。水なしで服用でき、固形物を飲み込むことが困難な高齢者や乳幼児、水分摂取が制限されている場合でも服用しやすい。
チュアブル錠
口の中で舐めたり噛み砕いたりして服用する剤形。水なしでも服用できる。
腸溶錠
腸内での溶解を目的として錠剤表面をコーティングしたもの。口中で噛み砕いて服用することは厳に慎まなければならない。
シロップ剤
経口液剤は苦味やにおいが強く感じられることがあるため、小児に用いる医薬品で白糖等の糖類を混ぜたもの。

例題 軟膏剤とクリーム剤はどのように使い分けるとされているか。

軟膏剤は油性の基剤で皮膚への刺激が弱く、適用部位を水から遮断したい場合等に用い、患部が乾燥していても浸潤していても使用できる。クリーム剤は油性基剤に水分を加えたもので患部を水で洗い流したい場合等に用いるが、皮膚への刺激が強いため傷等への使用は避ける。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第2章 Ⅱ 薬が働く仕組み

全身に現れる副作用

ショック(アナフィラキシー)、皮膚粘膜眼症候群と中毒性表皮壊死融解症、肝機能障害、偽アルドステロン症、抵抗力の低下について、初期症状と数値を正確に押さえます。

ショック(アナフィラキシー)は、生体異物に対する即時型のアレルギー反応の一種である。医薬品の場合、以前にその医薬品によって蕁麻疹等のアレルギーを起こしたことがある人で起きる可能性が高い。一般に、顔や上半身の紅潮・熱感、皮膚の痒み、蕁麻疹、口唇や舌・手足のしびれ感、むくみ(浮腫)、吐きけ、顔面蒼白、手足の冷感、冷や汗、息苦しさ・胸苦しさなど、複数の症状が現れる。一旦発症すると病態は急速に悪化することが多く、適切な対応が遅れるとチアノーゼや呼吸困難等を生じ、死に至ることがある。発症後の進行が非常に速やかな(通常、2時間以内に急変する)ことが特徴であり、直ちに救急救命処置が可能な医療機関を受診する必要がある。

皮膚粘膜眼症候群は、38℃以上の高熱を伴って、発疹・発赤、火傷様の水疱等の激しい症状が比較的短時間のうちに全身の皮膚、口、眼等の粘膜に現れる病態で、最初に報告をした二人の医師の名前にちなんでスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)とも呼ばれる。発生頻度は人口100万人当たり年間1〜6人と報告されている。発症機序の詳細は不明であり、発症の可能性がある医薬品の種類も多いため、発症の予測は極めて困難である。

中毒性表皮壊死融解症(TEN)は、38℃以上の高熱を伴って広範囲の皮膚に発赤が生じ、全身の10%以上に火傷様の水疱、皮膚の剥離、びらん等が認められ、かつ、口唇の発赤・びらん、眼の充血等の症状を伴う病態で、最初に報告をした医師の名前にちなんでライエル症候群とも呼ばれる。皮膚粘膜眼症候群と関連のある病態と考えられており、症例の多くが皮膚粘膜眼症候群の進展型とみられる。発生頻度は人口100万人当たり年間0.4〜1.2人と報告されている。いずれも一旦発症すると多臓器障害の合併症等により致命的な転帰をたどることがあり、皮膚症状が軽快した後も眼や呼吸器等に障害が残ることがある重篤な疾患である。38℃以上の高熱、目の充血・目やに・まぶたの腫れ・目が開けづらい、口唇の違和感・口唇や陰部のただれ、排尿・排便時の痛み、喉の痛み、広範囲の皮膚の発赤等の症状が持続したり急激に悪化したりする場合には、原因と考えられる医薬品の使用を中止して直ちに皮膚科の専門医を受診する必要がある。特に、両眼に現れる急性結膜炎は、皮膚や粘膜の変化とほぼ同時期又は半日〜1日程度先行して生じることが知られており、前兆である可能性を疑うことが重要である。両症候群とも、原因医薬品の使用開始後2週間以内に発症することが多いが、1ヶ月以上経ってから起こることもある。

医薬品により生じる肝機能障害は、有効成分又はその代謝物の直接的肝毒性が原因で起きる中毒性のものと、有効成分に対する抗原抗体反応が原因で起きるアレルギー性のものに大別される。軽度の場合は自覚症状がなく、健康診断等の血液検査(肝機能検査値の悪化)で初めて判明することが多い。主な症状に、全身の倦怠感、黄疸のほか、発熱、発疹、皮膚の掻痒感、吐きけ等がある。黄疸とは、ビリルビン(黄色色素)が胆汁中へ排出されず血液中に滞留することにより生じる、皮膚や白眼が黄色くなる病態であり、過剰となった血液中のビリルビンが尿中に排出されることにより尿の色が濃くなることもある。漫然と原因医薬品を使用し続けると、不可逆的な病変(肝不全)を生じ、死に至ることもある。

偽アルドステロン症は、体内に塩分(ナトリウム)と水が貯留し、体からカリウムが失われることによって生じる病態である。副腎皮質からのアルドステロン分泌が増加していないにもかかわらずこのような状態となることから、偽アルドステロン症と呼ばれている。主な症状に、手足の脱力、血圧上昇、筋肉痛、こむら返り、倦怠感、手足のしびれ、頭痛、むくみ(浮腫)、喉の渇き、吐きけ・嘔吐等があり、病態が進行すると筋力低下、起立不能、歩行困難、痙攣等を生じる。低身長、低体重など体表面積が小さい者や高齢者で生じやすく、原因医薬品の長期服用後に初めて発症する場合もある。また、複数の医薬品や、医薬品と食品との間の相互作用によって起きることがある。初期症状に不審を感じつつも重症化させてしまう例が多い。

医薬品の使用が原因で血液中の白血球(好中球)が減少し、細菌やウイルスの感染に対する抵抗力が弱くなって、突然の高熱、悪寒、喉の痛み、口内炎、倦怠感等の症状を呈することがある。進行すると重症の細菌感染を繰り返し、致命的となることもある。ステロイド性抗炎症薬や抗癌薬などが、そのような易感染性をもたらすことが知られている。初期においてはかぜ等の症状と見分けることが難しいため、原因医薬品の使用を漫然と継続して悪化させる場合がある。このほか、医薬品の使用が原因で血液中の血小板が減少し、鼻血、歯ぐきからの出血、手足の青あざ(紫斑)や口腔粘膜の血腫等の内出血、経血が止まりにくい(月経過多)等の症状が現れることがある。

全身に現れる副作用のまとめ
副作用名初期症状・特徴注意
ショック(アナフィラキシー)紅潮・熱感、痒み、蕁麻疹、しびれ感、むくみ、吐きけ、顔面蒼白、冷や汗、息苦しさ等が複数現れる通常2時間以内に急変。直ちに救急救命処置が可能な医療機関へ
皮膚粘膜眼症候群(SJS)38℃以上の高熱+発疹・発赤、火傷様の水疱が全身の皮膚・口・眼等の粘膜に出現頻度は100万人当たり年間1〜6人。使用開始後2週間以内が多いが1ヶ月以上後もある
中毒性表皮壊死融解症(TEN)38℃以上の高熱+全身の10%以上に火傷様の水疱・皮膚の剥離・びらん等頻度は100万人当たり年間0.4〜1.2人。多くがSJSの進展型。両眼の急性結膜炎が先行することも
肝機能障害全身の倦怠感、黄疸、発熱、発疹、皮膚の掻痒感、吐きけ等。軽度では自覚症状がないことが多い漫然と使用を続けると肝不全に至ることも。中毒性とアレルギー性に大別
偽アルドステロン症手足の脱力、血圧上昇、筋肉痛、こむら返り、倦怠感、むくみ、喉の渇き等体表面積が小さい者や高齢者で生じやすい。長期服用後に初めて発症することも
病気等に対する抵抗力の低下白血球(好中球)減少により突然の高熱、悪寒、喉の痛み、口内炎、倦怠感等初期はかぜと見分けにくい。ステロイド性抗炎症薬等が易感染性をもたらす
血小板減少鼻血、歯ぐきからの出血、紫斑や口腔粘膜の血腫等の内出血、月経過多等脳内出血等への進行予防のため気付いたら直ちに使用を中止し早期に受診
ショック(アナフィラキシー)
生体異物に対する即時型のアレルギー反応の一種。発症後の進行が非常に速やかで、通常2時間以内に急変することが特徴。
皮膚粘膜眼症候群(SJS)
38℃以上の高熱を伴って発疹・発赤、火傷様の水疱等が短時間のうちに全身の皮膚・口・眼等の粘膜に現れる病態。発生頻度は人口100万人当たり年間1〜6人。
中毒性表皮壊死融解症(TEN)
38℃以上の高熱を伴い、全身の10%以上に火傷様の水疱・皮膚の剥離・びらん等が認められる病態。ライエル症候群とも呼ばれ、発生頻度は人口100万人当たり年間0.4〜1.2人。
黄疸
ビリルビン(黄色色素)が胆汁中へ排出されず血液中に滞留することにより生じる、皮膚や白眼が黄色くなる病態。
偽アルドステロン症
アルドステロン分泌が増加していないにもかかわらず、体内に塩分(ナトリウム)と水が貯留し、体からカリウムが失われる病態。

例題 皮膚粘膜眼症候群と中毒性表皮壊死融解症の発生頻度はそれぞれどのように報告されているか。

皮膚粘膜眼症候群(SJS)は人口100万人当たり年間1〜6人、中毒性表皮壊死融解症(TEN)は人口100万人当たり年間0.4〜1.2人と報告されている。いずれも発症機序の詳細は不明で、発症の予測は困難とされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第2章 Ⅲ 症状からみた主な副作用

精神神経系と体の局所の副作用(その1)

精神神経障害・無菌性髄膜炎と、消化器系(消化性潰瘍・イレウス様症状)、呼吸器系(間質性肺炎・喘息)の副作用の初期症状を押さえます。

医薬品の副作用によって中枢神経系が影響を受け、物事に集中できない、落ち着きがなくなる等のほか、不眠、不安、震え(振戦)、興奮、眠気、うつ等の精神神経症状を生じることがある。眠気は比較的軽視されがちであるが、乗物や危険な機械類の運転操作中に眠気を生じると重大な事故につながる可能性が高いので、眠気を催すことが知られている医薬品を使用した後は、そのような作業に従事しないよう十分注意することが必要である。精神神経症状は、医薬品の大量服用や長期連用、乳幼児への適用外の使用等の不適正な使用がなされた場合に限らず、通常の用法・用量でも発生することがあるとされている。

無菌性髄膜炎は、髄膜炎のうち髄液に細菌が検出されないものをいう。大部分はウイルスが原因と考えられているが、マイコプラズマ感染症やライム病、医薬品の副作用等によって生じることもある。医薬品の副作用が原因の場合、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、関節リウマチ等の基礎疾患がある人で発症リスクが高い。多くの場合発症は急性で、首筋のつっぱりを伴った激しい頭痛、発熱、吐きけ・嘔吐、意識混濁等の症状が現れる。早期に原因医薬品の使用を中止すれば速やかに回復し、予後は比較的良好であることがほとんどであるが、重篤な中枢神経系の後遺症が残った例も報告されている。また、過去に軽度の症状を経験した人が再度同じ医薬品を使用することにより再発し、急激に症状が進行する場合がある。

消化性潰瘍は、胃や十二指腸の粘膜組織が傷害されて、粘膜組織の一部が粘膜筋板を超えて欠損する状態であり、医薬品の副作用により生じることも多い。胃のもたれ、食欲低下、胸やけ、吐きけ、胃痛、空腹時にみぞおちが痛くなる、消化管出血に伴って糞便が黒くなるなどの症状が現れる。自覚症状が乏しい場合もあり、貧血症状(動悸や息切れ等)の検査時や突然の吐血・下血によって発見されることもある。

イレウスとは腸内容物の通過が阻害された状態をいう。腸管自体は閉塞していなくても、医薬品の作用によって腸管運動が麻痺して腸内容物の通過が妨げられると、激しい腹痛やガス排出(おなら)の停止、嘔吐、腹部膨満感を伴う著しい便秘が現れる(イレウス様症状)。腹痛などの症状のために水分や食物の摂取が抑制され、嘔吐がない場合でも脱水状態となることがある。悪化すると、腸内容物の逆流による嘔吐が原因で脱水症状を呈したり、腸内細菌の異常増殖によって全身状態の衰弱が急激に進行する可能性がある。小児や高齢者のほか、普段から便秘傾向のある人は発症のリスクが高い。また、下痢治癒後の便秘を放置して症状を悪化させてしまうことがある。

間質性肺炎は、通常の肺炎が気管支又は肺胞が細菌に感染して炎症を生じたものであるのに対し、肺の中で肺胞と毛細血管を取り囲んで支持している組織(間質)が炎症を起こしたものである。発症すると肺胞と毛細血管の間のガス交換効率が低下して血液に酸素を十分取り込むことができず、体内は低酸素状態となる。そのため、息切れ・息苦しさ等の呼吸困難、空咳(痰の出ない咳)、発熱等の症状を呈する。一般的に、医薬品の使用開始から1〜2週間程度で起きることが多い。息切れは初期には登坂等の運動時に感じられるが、病態が進行すると平地歩行や家事等の軽労作時にも意識されるようになる。必ずしも発熱は伴わない。これらの症状はかぜや気管支炎の症状と区別が難しいこともあり、細心の注意を払って鑑別が行われている。症状が一過性に現れ自然と回復することもあるが、悪化すると肺線維症(肺が線維化を起こして硬くなる状態)に移行することがある。

喘息は、原因となる医薬品(アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症成分を含む解熱鎮痛薬など)の使用後、短時間(1時間以内)のうちに鼻水・鼻づまりが現れ、続いて咳、喘鳴(息をするとき喉がゼーゼー又はヒューヒュー鳴る)及び呼吸困難を生じる。これらの症状は時間とともに悪化し、顔面の紅潮や目の充血、吐きけ、腹痛、下痢等を伴うこともある。内服薬のほか、坐薬や外用薬でも誘発されることがある。合併症を起こさない限り、原因となった医薬品の有効成分が体内から消失すれば症状は寛解する。軽症例は半日程度で回復するが、重症例は24時間以上持続し、窒息による意識消失から死に至る危険もある。通年性(非アレルギー性)の鼻炎や慢性副鼻腔炎(蓄膿症)、鼻茸(鼻ポリープ)、嗅覚異常等、鼻の疾患を合併している人や、成人になってから喘息を発症した人、季節に関係なく喘息発作が起こる人等で発症しやすい。特に、これまでに医薬品(内服薬に限らない)で喘息発作を起こしたことがある人は重症化しやすいので、同種の医薬品の使用を避ける必要がある。

精神神経系・消化器系・呼吸器系の副作用のまとめ
副作用名初期症状・特徴注意
精神神経障害集中できない、落ち着きがなくなる、不眠、不安、震え(振戦)、興奮、眠気、うつ等通常の用法・用量でも発生することがある。眠気を催す医薬品の使用後は運転操作をしない
無菌性髄膜炎急性の発症が多く、首筋のつっぱりを伴った激しい頭痛、発熱、吐きけ・嘔吐、意識混濁等全身性エリテマトーデス等の基礎疾患がある人でリスク高。再使用で再発し急激に進行することも
消化性潰瘍胃のもたれ、食欲低下、胸やけ、胃痛、空腹時のみぞおちの痛み、糞便が黒くなる等自覚症状が乏しく、貧血症状の検査や突然の吐血・下血で発見されることもある
イレウス様症状激しい腹痛、ガス排出の停止、嘔吐、腹部膨満感を伴う著しい便秘小児・高齢者・便秘傾向のある人でリスク高。嘔吐がなくても脱水となることがある
間質性肺炎息切れ・息苦しさ、空咳(痰の出ない咳)、発熱等。使用開始から1〜2週間程度で起きることが多いかぜや気管支炎と区別が難しい。必ずしも発熱は伴わない。悪化で肺線維症に移行することも
喘息使用後1時間以内に鼻水・鼻づまり、続いて咳・喘鳴・呼吸困難坐薬や外用薬でも誘発。重症例は24時間以上持続し窒息の危険。鼻疾患合併者等で発症しやすい
無菌性髄膜炎
髄膜炎のうち髄液に細菌が検出されないもの。医薬品の副作用が原因の場合、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、関節リウマチ等の基礎疾患がある人で発症リスクが高い。
イレウス様症状
腸管自体は閉塞していなくても、医薬品の作用で腸管運動が麻痺して腸内容物の通過が妨げられた状態。激しい腹痛、ガス排出の停止、嘔吐、腹部膨満感を伴う著しい便秘が現れる。
間質性肺炎
肺の中で肺胞と毛細血管を取り囲んで支持している組織(間質)が炎症を起こしたもの。ガス交換効率が低下し、息切れ・空咳・発熱等を呈する。
肺線維症
肺が線維化を起こして硬くなる状態。間質性肺炎が悪化すると移行することがある。

例題 間質性肺炎の副作用に気付くうえで、かぜとの関係で注意すべき点は何か。

息切れ・息苦しさ、空咳、発熱等の症状はかぜや気管支炎の症状と区別が難しいことがある。医薬品の使用開始から1〜2週間程度で起きることが多く、必ずしも発熱は伴わないとされている点を押さえておく。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第2章 Ⅲ 症状からみた主な副作用

体の局所に現れる副作用(その2)

うっ血性心不全・不整脈、排尿困難・尿閉、眼圧上昇(急性緑内障発作)、接触皮膚炎・光線過敏症・薬疹の初期症状と注意点を押さえます。

うっ血性心不全とは、全身が必要とする量の血液を心臓から送り出すことができなくなり、肺に血液が貯留して、種々の症状を示す疾患である。息切れ、疲れやすい、足のむくみ、急な体重の増加、咳とピンク色の痰などを認めた場合は、うっ血性心不全の可能性を疑い、早期に医師の診療を受ける必要がある。心不全の既往がある人は、薬剤による心不全を起こしやすい。不整脈とは、心筋の自動性や興奮伝導の異常が原因で心臓の拍動リズムが乱れる病態で、めまい、立ちくらみ、全身のだるさ(疲労感)、動悸、息切れ、胸部の不快感、脈の欠落等の症状が現れる。不整脈の種類によっては失神(意識消失)することもあり、そのような場合は生死に関わる危険な不整脈を起こしている可能性があるので、自動体外式除細動器(AED)の使用を考慮するとともに、直ちに救急救命処置が可能な医療機関を受診する必要がある。不整脈は代謝機能の低下によって発症リスクが高まることがあるので、腎機能や肝機能の低下、併用薬との相互作用等に留意すべきであり、特に高齢者においてそのような配慮が重要である。

医薬品の使用が原因となって腎障害を生じることがある。尿量の減少、ほとんど尿が出ない、逆に一時的に尿が増える、むくみ(浮腫)、倦怠感、発疹、吐きけ・嘔吐、発熱、尿が濁る・赤みを帯びる(血尿)等の症状が現れたときは、原因と考えられる医薬品の使用を中止して速やかに医師の診療を受ける必要がある。また、副交感神経系の機能を抑制する作用がある成分が配合された医薬品を使用すると、膀胱の排尿筋の収縮が抑制され、尿が出にくい、尿が少ししか出ない、残尿感がある等の症状を生じることがある。これが進行すると、尿意があるのに尿が全く出なくなったり(尿閉)、下腹部が膨満して激しい痛みを感じるようになる。これらの症状は前立腺肥大等の基礎疾患がない人でも現れることが知られており、男性に限らず女性においても報告されている。多くの場合、原因となる医薬品の使用を中止することにより症状は速やかに改善するが、医療機関における処置を必要とする場合もある。このほか、尿の回数増加(頻尿)、排尿時の疼痛、残尿感等の膀胱炎様症状が現れることもある。

眼球内の角膜と水晶体の間を満たしている眼房水が排出されにくくなると、眼圧が上昇して視覚障害を生じることがある。例えば、抗コリン作用がある成分が配合された医薬品によって眼圧が上昇し(急性緑内障発作)、眼痛や眼の充血に加え、急激な視力低下を来すことがある。特に眼房水の出口である隅角が狭くなっている閉塞隅角緑内障がある人では厳重な注意が必要である。眼圧の上昇に伴って、頭痛や吐きけ・嘔吐等の症状が現れることもある。高眼圧を長時間放置すると、視神経が損傷して不可逆的な視覚障害(視野欠損や失明)に至るおそれがあり、速やかに眼科専門医の診療を受ける必要がある。また、医薬品によっては瞳の拡大(散瞳)による異常な眩しさや目のかすみ等の副作用が現れることがあり、そのような症状が乗物や機械類の運転操作中に現れると重大な事故につながるおそれがあるので、散瞳を生じる可能性のある成分が配合された医薬品を使用した後は、そうした作業は避けなければならない。

接触皮膚炎は、化学物質や金属等に皮膚が反応して、強い痒みを伴う発疹・発赤、腫れ、刺激感、水疱・ただれ等の激しい炎症症状や、色素沈着、白斑等を生じるもので、外用薬の副作用で生じることもある。いわゆる「肌に合わない」という状態であり、同じ医薬品が触れても発症するか否かはその人の体質によって異なる。接触皮膚炎は医薬品が触れた皮膚の部分にのみ生じ、正常な皮膚との境界がはっきりしているのが特徴である(アレルギー性皮膚炎の場合は、発症部位は医薬品の接触部位に限定されない)。通常は1週間程度で症状は治まるが、再びその医薬品に触れると再発する。かぶれ症状が太陽光線(紫外線)に曝されて初めて起こることもあり、これを光線過敏症という。その症状は医薬品が触れた部分だけでなく、全身へ広がって重篤化する場合がある。貼付剤の場合は剥がした後でも発症することがある。光線過敏症が現れた場合は、原因と考えられる医薬品の使用を中止して、皮膚に医薬品が残らないよう十分に患部を洗浄し、遮光(白い生地や薄手の服は紫外線を透過するおそれがあるので不可)して速やかに医師の診療を受ける必要がある。

薬疹は、医薬品によって引き起こされるアレルギー反応の一種で、発疹・発赤等の皮膚症状を呈する場合をいう。あらゆる医薬品で起きる可能性があり、同じ医薬品でも生じる発疹の型は人によって様々である。赤い大小の斑点(紅斑)、小さく盛り上がった湿疹(丘疹)のほか、水疱を生じることもある。蕁麻疹は強い痒みを伴うが、それ以外の場合は痒みがないか、たとえあったとしてもわずかなことが多い。皮膚以外に、眼の充血や口唇・口腔粘膜に異常が見られることもあり、特に発熱を伴って眼や口腔粘膜に異常が現れた場合は、急速に皮膚粘膜眼症候群や中毒性表皮壊死融解症等の重篤な病態へ進行することがあるので厳重な注意が必要である。薬疹は医薬品の使用後1〜2週間で起きることが多いが、長期使用後に現れることもある。アレルギー体質の人や以前に薬疹を起こしたことがある人で生じやすいが、それまで薬疹を経験したことがない人であっても、暴飲暴食や肉体疲労が誘因となって現れることがある。痒み等の症状に対して一般の生活者が自己判断で対症療法を行うことは、原因の特定を困難にするおそれがあるため避けるべきである。以前薬疹を経験したことがある人が再度同種の医薬品を使用すると、ショック(アナフィラキシー)、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症等のより重篤なアレルギー反応を生じるおそれがあるので、同種の医薬品の使用を避けなければならない。

循環器・泌尿器・感覚器・皮膚の副作用のまとめ
副作用名初期症状・特徴注意
うっ血性心不全息切れ、疲れやすい、足のむくみ、急な体重の増加、咳とピンク色の痰心不全の既往がある人は薬剤による心不全を起こしやすい
不整脈めまい、立ちくらみ、全身のだるさ、動悸、息切れ、胸部の不快感、脈の欠落等失神する場合はAEDの使用を考慮し直ちに受診。腎・肝機能低下や併用薬に留意(特に高齢者)
排尿困難・尿閉尿が出にくい、尿が少ししか出ない、残尿感。進行すると尿が全く出なくなり下腹部の激しい痛み副交感神経系を抑制する成分が原因。前立腺肥大がない人や女性でも現れる
眼圧上昇(急性緑内障発作)眼痛、眼の充血、急激な視力低下。頭痛や吐きけ・嘔吐を伴うことも抗コリン作用がある成分が原因。閉塞隅角緑内障の人は厳重注意。放置で視野欠損や失明のおそれ
接触皮膚炎強い痒みを伴う発疹・発赤、腫れ、水疱・ただれ等。触れた部分にのみ生じ境界がはっきり通常1週間程度で治まるが、再び触れると再発する
光線過敏症太陽光線(紫外線)に曝されて初めて起こるかぶれ症状全身へ広がり重篤化することも。貼付剤は剥がした後でも発症。患部洗浄と遮光をして受診
薬疹紅斑、丘疹、水疱等。蕁麻疹以外は痒みがないかわずかなことが多い使用後1〜2週間で多い。発熱を伴い眼や口腔粘膜に異常が出たらSJS・TENへの進行に厳重注意
うっ血性心不全
全身が必要とする量の血液を心臓から送り出すことができなくなり、肺に血液が貯留して種々の症状を示す疾患。息切れ、足のむくみ、急な体重増加、咳とピンク色の痰などが特徴。
尿閉
排尿困難が進行し、尿意があるのに尿が全く出なくなった状態。前立腺肥大等の基礎疾患がない人でも現れ、男性に限らず女性でも報告されている。
急性緑内障発作
抗コリン作用がある成分が配合された医薬品によって眼圧が上昇し、眼痛や眼の充血に加え急激な視力低下を来すもの。閉塞隅角緑内障がある人では厳重な注意が必要。
光線過敏症
かぶれ症状が太陽光線(紫外線)に曝されて初めて起こるもの。症状は医薬品が触れた部分だけでなく全身へ広がって重篤化する場合があり、貼付剤では剥がした後でも発症することがある。
薬疹
医薬品によって引き起こされるアレルギー反応の一種で、発疹・発赤等の皮膚症状を呈するもの。医薬品の使用後1〜2週間で起きることが多いが、長期使用後に現れることもある。

例題 接触皮膚炎とアレルギー性皮膚炎は、発症部位の点でどのように区別されるとされているか。

接触皮膚炎は医薬品が触れた皮膚の部分にのみ生じ、正常な皮膚との境界がはっきりしているのが特徴である。これに対しアレルギー性皮膚炎の場合は、発症部位は医薬品の接触部位に限定されないとされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第2章 Ⅲ 症状からみた主な副作用

精神神経・呼吸器の薬

かぜ薬と解熱鎮痛薬

かぜ薬にどの区分の成分が何のために入っているか、解熱鎮痛成分ごとの性質と年齢・妊娠に関わる注意を区別できるようになります。

手引きでは、「かぜ」(感冒)の症状は、くしゃみ、鼻汁・鼻閉(鼻づまり)、咽喉痛、咳、痰等の呼吸器症状と、発熱、頭痛、関節痛、全身倦怠感等の全身症状が組み合わさって現れるとされている。かぜは単一の疾患ではなく、医学的にはかぜ症候群といい、主にウイルスが鼻や喉などに感染して起こる上気道の急性炎症の総称で、通常は数日〜1週間程度で自然寛解し、予後は良好である。かぜの約8割はウイルスの感染が原因であるが、それ以外に細菌の感染や、まれに冷気や乾燥、アレルギーのような非感染性の要因による場合もある。原因となるウイルスは200種類を超えるといわれている。急激な発熱を伴う場合や、症状が4日以上続くとき、又は症状が重篤なときは、かぜではない可能性が高いとされている。インフルエンザ(流行性感冒)は、かぜと同様にウイルスの呼吸器感染によるものであるが、感染力が強く、また、重症化しやすいため、かぜとは区別して扱われる。

かぜ薬(総合感冒薬)は、かぜの諸症状の緩和を目的として使用される医薬品の総称である。手引きでは、かぜ薬はウイルスの増殖を抑えたり、ウイルスを体内から除去するものではなく、諸症状の緩和を図る対症療法薬であるとされている。また、かぜであるからといって必ずしもかぜ薬を選択するのが最適とは限らず、発熱、咳、鼻水など症状がはっきりしている場合には、解熱鎮痛薬、鎮咳去痰薬、鼻炎を緩和させる薬などを選択することが望ましいとされている。存在しない症状に対する不要な成分が配合されていると、無意味に副作用のリスクを高めることとなる。

かぜ薬の配合成分は、目的ごとに区分して覚えるのが近道である。発熱を鎮め痛みを和らげる解熱鎮痛成分(アスピリン、サリチルアミド、エテンザミド、アセトアミノフェン、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリン等)、くしゃみや鼻汁を抑える抗ヒスタミン成分(クロルフェニラミンマレイン酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩、メキタジン、クレマスチンフマル酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩等)と抗コリン成分(ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミド)、鼻粘膜の充血を和らげ気管・気管支を拡げるアドレナリン作動成分(メチルエフェドリン塩酸塩、メチルエフェドリンサッカリン塩、プソイドエフェドリン塩酸塩、生薬のマオウ)、咳を抑える鎮咳成分(コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、ノスカピン、チペピジンヒベンズ酸塩、クロペラスチン塩酸塩等)、痰の切れを良くする去痰成分(グアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸カリウム、ブロムヘキシン塩酸塩、エチルシステイン塩酸塩等)がある。アドレナリン作動成分もコデイン類も依存性があることに留意が必要とされ、コデインリン酸塩水和物とジヒドロコデインリン酸塩は12才未満の小児には使用禁忌となっている。

炎症による腫れを和らげる抗炎症成分としては、トラネキサム酸とグリチルリチン酸二カリウムが挙げられている。トラネキサム酸は体内での起炎物質の産生を抑制することで炎症の発生を抑え、腫れを和らげるが、凝固した血液を溶解されにくくする働きもあるため、血栓のある人(脳血栓、心筋梗塞、血栓性静脈炎等)や血栓を起こすおそれのある人に使用する場合は、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談するなどの対応が必要とされている。グリチルリチン酸二カリウムの作用本体であるグリチルリチン酸は、化学構造がステロイド性抗炎症成分に類似していることから抗炎症作用を示すと考えられているが、大量に摂取すると偽アルドステロン症を生じるおそれがある。むくみ、心臓病、腎臓病又は高血圧のある人や高齢者では偽アルドステロン症を生じるリスクが高いため、それらの人に1日最大服用量がグリチルリチン酸として40mg以上の製品を使用する場合は相談が必要とされ、どのような人が対象であっても1日最大服用量が40mg以上となる製品は長期連用を避ける。なお、医薬品ではグリチルリチン酸としての1日摂取量が200mgを超えないよう用量が定められている。

解熱鎮痛薬の働きの中心にはプロスタグランジンがある。プロスタグランジンはホルモンに似た働きをする物質で、痛みが脳へ伝わる際にそのシグナルを増幅し、脳の下部にある温熱中枢に作用して体温を通常よりも高く維持するように調節するほか、炎症の発生にも関与する。解熱に関しては、中枢神経系におけるプロスタグランジンの産生抑制作用のほか、腎臓における水分の再吸収を促して循環血流量を増し、発汗を促進する作用も寄与している。この循環血流量の増加は心臓の負担を増大させ、末梢におけるプロスタグランジンの産生抑制は腎血流量を減少させる。また、プロスタグランジンの胃酸分泌調節作用や胃腸粘膜保護作用が妨げられると、胃酸分泌が増加するとともに胃壁の血流量が低下して胃粘膜障害を起こしやすくなるため、なるべく空腹時を避けて服用することとなっている場合が多い。心臓病、腎臓病、肝臓病又は胃・十二指腸潰瘍のある人では、使用する前にその適否につき相談することが望ましいとされている。

個々の解熱鎮痛成分では、年齢や妊娠に関する注意が繰り返し問われる。アスピリン(別名アセチルサリチル酸)、サザピリン、サリチル酸ナトリウムは、ライ症候群の発生が示唆されていることから、15歳未満の小児に対してはいかなる場合も一般用医薬品として使用してはならない。エテンザミド及びサリチルアミドについては、水痘(水疱瘡)又はインフルエンザにかかっている15歳未満の小児に対して使用を避ける必要がある。アスピリンには血液を凝固しにくくさせる作用もあるため、出産予定日12週間以内の使用を避ける。イブプロフェンも、一般用医薬品においては15歳未満の小児に対しいかなる場合も使用してはならず、出産予定日12週以内の妊婦は服用しないこととされている。アセトアミノフェンは主として中枢作用によって解熱・鎮痛をもたらすため、末梢における抗炎症作用は期待できず、その分ほかの解熱鎮痛成分のような胃腸障害は少ないが、食後の服用が推奨されている。イソプロピルアンチピリンは解熱・鎮痛作用が比較的強い一方で抗炎症作用は弱く、現在では一般用医薬品で唯一のピリン系解熱鎮痛成分である。

生薬成分が解熱又は鎮痛をもたらす仕組みは、化学的に合成された成分とは異なるものと考えられており、アスピリン等の使用を避けなければならない場合にも使用できるとされている。ジリュウはフトミミズ科の生薬で、そのエキスを製剤化した製品は「感冒時の解熱」が効能・効果となっている。シャクヤクはボタン科のシャクヤクの根を基原とし、鎮痛鎮痙作用、鎮静作用を示す。ボウイはツヅラフジ科のオオツヅラフジの蔓性の茎及び根茎を基原とし、鎮痛、尿量増加(利尿)等の作用を期待して用いられる。このほか、骨格筋の緊張をもたらす脊髄反射を抑制するメトカルバモールは「筋肉のこり」を和らげる目的で用いられ、鎮静作用があるため服用後は乗物又は機械類の運転操作をしないこととされている。

この節の漢方処方製剤としては、かぜ薬に配合される、又は単独でかぜの症状緩和に用いられるものとして葛根湯、麻黄湯、小柴胡湯、柴胡桂枝湯、小青竜湯、桂枝湯、香蘇散、半夏厚朴湯、麦門冬湯が挙げられている。これらのうち半夏厚朴湯を除くいずれもカンゾウを含み、麻黄湯のほか葛根湯と小青竜湯にはマオウを含む。葛根湯は体力中等度以上のものの感冒の初期(汗をかいていないもの)等に、麻黄湯は体力充実してかぜのひきはじめで寒気がして発熱・頭痛があるものに、桂枝湯は体力虚弱で汗が出るもののかぜの初期に、香蘇散は体力虚弱で神経過敏で気分がすぐれず胃腸の弱いもののかぜの初期・血の道症に適すとされる。小柴胡湯は、インターフェロン製剤で治療を受けている人では間質性肺炎の副作用が現れるおそれが高まるため使用を避ける必要がある。鎮痛の目的で用いられる漢方処方製剤には芍薬甘草湯、桂枝加朮附湯、桂枝加苓朮附湯、薏苡仁湯、麻杏薏甘湯、疎経活血湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、呉茱萸湯、釣藤散があり、呉茱萸湯以外はカンゾウを含む。芍薬甘草湯は症状があるときのみの服用にとどめ連用を避けることとされ、心臓病の診断を受けた人では使用を避ける必要がある。

受診勧奨の場面も頻出である。かぜ薬について手引きは、一定期間又は一定回数使用して症状の改善がみられない場合は、漫然と使用を継続せず医療機関を受診するよう促すべきであるとし、高熱、黄色や緑色に濁った膿性の鼻汁・痰、喉(扁桃)の激しい痛みや腫れ、呼吸困難を伴う激しい咳といった症状がみられる場合や、慢性の呼吸器疾患、心臓病、糖尿病等の基礎疾患がある人の場合は、初めから医療機関での診療を受けることが望ましいとしている。小児のかぜでは急性中耳炎を併発しやすく、2歳未満の乳幼児には医師の診断を受けさせることを優先し、止むを得ない場合にのみ服用させることとされている。解熱鎮痛薬については、発熱が1週間以上続いている場合等は受診が必要とされ、通常、体温が38℃以下であればひきつけや著しい体力消耗等のおそれはなく、平熱になるまで解熱鎮痛薬を用いる必要はないとされている。頭痛が頻繁に出現して24時間以上続く場合や一般用医薬品を使用しても痛みを抑えられない場合は、自己治療で対処できる範囲を超えていると判断され、症状が現れないうちに予防的に使用することは適切でない。また、かぜ薬・解熱鎮痛薬の服用期間中は飲酒を避けることとされている。

かぜ薬・解熱鎮痛薬の主な配合成分(成分名・分類・はたらき・注意)
成分名分類はたらき注意
アスピリン(アセチルサリチル酸)サリチル酸系解熱鎮痛成分解熱・鎮痛・抗炎症15歳未満の小児にはいかなる場合も使用しない。他の解熱鎮痛成分より胃腸障害を起こしやすい。出産予定日12週間以内は使用を避ける
エテンザミド/サリチルアミドサリチル酸系解熱鎮痛成分エテンザミドは痛みが神経を伝わるのを抑える働きが強い水痘(水疱瘡)又はインフルエンザにかかっている15歳未満の小児には使用を避ける
アセトアミノフェン解熱鎮痛成分主として中枢作用で解熱・鎮痛。末梢の抗炎症作用は期待できない胃腸障害は少ないが食後の服用が推奨。定められた用量を超えた使用や日頃から酒類をよく摂取する人で重篤な副作用が起こりやすい
イブプロフェン解熱鎮痛成分解熱・鎮痛のほか抗炎症作用も示す15歳未満の小児にはいかなる場合も使用しない。胃・十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、クローン病の既往歴がある人は再発のおそれ。出産予定日12週以内の妊婦は服用しない
イソプロピルアンチピリンピリン系解熱鎮痛成分解熱・鎮痛は比較的強いが抗炎症作用は弱い一般用医薬品で唯一のピリン系。ピリン疹等のアレルギー症状を起こしたことがある人は使用しない
ジリュウ生薬(解熱)フトミミズ科の生薬。エキス製剤は「感冒時の解熱」が効能・効果生薬成分の解熱の仕組みは合成成分と異なると考えられている
シャクヤク/ボタンピ生薬(鎮痛)鎮痛鎮痙作用、鎮静作用を示し内臓の痛みにも用いられる
ボウイ生薬(鎮痛)鎮痛、尿量増加(利尿)等の作用日本薬局方収載のボウイは煎薬として筋肉痛、神経痛、関節痛に用いられる
トラネキサム酸抗炎症成分体内での起炎物質の産生を抑制し炎症・腫れを抑える凝固した血液を溶解されにくくするため、血栓のある人・血栓を起こすおそれのある人は相談
グリチルリチン酸二カリウム抗炎症成分ステロイド性抗炎症成分に類似した化学構造による抗炎症作用1日最大服用量がグリチルリチン酸として40mg以上の製品は長期連用を避ける。偽アルドステロン症に留意
メチルエフェドリン塩酸塩/マオウアドレナリン作動成分・生薬鼻粘膜の充血を和らげ、気管・気管支を拡げる依存性がある
クロルフェニラミンマレイン酸塩等抗ヒスタミン成分くしゃみや鼻汁を抑える眠気や口渇が現れることがある
ベラドンナ総アルカロイド/ヨウ化イソプロパミド抗コリン成分抗コリン作用で鼻汁分泌やくしゃみを抑える排尿困難が現れることがある
ケイ酸アルミニウム/酸化マグネシウム等制酸成分解熱鎮痛成分による胃腸障害の軽減胃腸薬のように胃腸症状に対する薬効を標榜することは認められていない
メトカルバモール骨格筋弛緩成分骨格筋の緊張をもたらす脊髄反射を抑制し「筋肉のこり」を和らげる眠気、めまい、ふらつき。服用後は乗物又は機械類の運転操作をしない
対症療法薬
病気の原因そのものを取り除くのではなく、現れている症状を和らげることを目的とする薬。手引きでは、かぜ薬はウイルスの増殖を抑えたり除去したりするものではなく、諸症状の緩和を図る対症療法薬であるとされている。
プロスタグランジン
ホルモンに似た働きをする物質で、病気や外傷があるときに活発に産生される。痛みのシグナルを増幅し、温熱中枢に作用して体温を高く維持するよう調節するほか、炎症の発生や胃酸分泌調節・胃腸粘膜保護にも関与するとされる。
ライ症候群
主として小児が水痘やインフルエンザ等のウイルス性疾患に罹っているときに、激しい嘔吐や意識障害、痙攣等の急性脳症の症状を呈する症候群。発生はまれだが死亡率が高く、サリチル酸系解熱鎮痛成分で特に留意される。
偽アルドステロン症
グリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸、カンゾウ等で生じることがある重篤な副作用。むくみ、心臓病、腎臓病又は高血圧のある人や高齢者では生じるリスクが高いとされる。
ACE処方
アセトアミノフェン、カフェイン、エテンザミドの組合せを、それぞれの頭文字から呼んだもの。エテンザミドは痛みが神経を伝わっていくのを抑える働きが強く、作用の仕組みの違いによる相乗効果が期待される。
アスピリン喘息
解熱鎮痛成分によって生じることがある喘息。手引きでは、アスピリン特有の副作用ではなく、他の解熱鎮痛成分でも生じる可能性があるとされている。

例題 アスピリンとイブプロフェンに共通する、小児に関する注意は何か。

手引きでは、いずれも一般用医薬品において15歳未満の小児に対してはいかなる場合も使用してはならないとされている。アスピリンはライ症候群の発生が示唆されていることが理由として挙げられている。なお、エテンザミド・サリチルアミドは「水痘又はインフルエンザにかかっている15歳未満の小児」に限って使用を避けるとされており、条件が異なる。

例題 アセトアミノフェンが他の解熱鎮痛成分と大きく異なる点は何か。

主として中枢作用によって解熱・鎮痛をもたらすため、末梢における抗炎症作用は期待できない点である。その分、他の解熱鎮痛成分のような胃腸障害は少なく空腹時に服用できる製品もあるが、食後の服用が推奨されている。

例題 かぜ薬に配合される漢方処方製剤のうち、カンゾウを含まないものはどれか。

半夏厚朴湯である。手引きでは、かぜ薬に配合される漢方処方成分等として挙げられた葛根湯、麻黄湯、小柴胡湯、柴胡桂枝湯、小青竜湯、桂枝湯、香蘇散、半夏厚朴湯、麦門冬湯のうち、半夏厚朴湯を除くいずれもが構成生薬としてカンゾウを含むとされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第3章 Ⅰ 精神神経に作用する薬 1 かぜ薬/2 解熱鎮痛薬

眠気を促す薬・防ぐ薬・鎮暈薬・小児の疳

睡眠改善薬の抗ヒスタミン成分、鎮静成分、カフェイン、乗物酔い防止薬の各成分、小児の疳の生薬について、はたらきと年齢の注意を整理します。

催眠鎮静薬は、寝つきが悪い、眠りが浅い、いらいら感、緊張感、精神興奮、精神不安といった症状が生じたときに睡眠を促したり、精神の昂ぶりを鎮めたりすることを目的に使用される医薬品である。手引きでは、生体内情報伝達物質であるヒスタミンは脳の下部にある睡眠・覚醒に関与する部位で神経細胞の刺激を介して覚醒の維持や調節を行う働きを担っており、脳内におけるヒスタミン刺激が低下すると眠気を促すとされている。ジフェンヒドラミン塩酸塩は、抗ヒスタミン成分の中でも特にそのような中枢作用が強い。

抗ヒスタミン成分を主薬とする催眠鎮静薬は、睡眠改善薬として一時的な睡眠障害(寝つきが悪い、眠りが浅い)の緩和に用いられるものであり、慢性的に不眠症状がある人や、医療機関において不眠症の診断を受けている人を対象とするものではない。妊娠中にしばしば生じる睡眠障害はホルモンのバランスや体型の変化等が原因であり睡眠改善薬の適用対象ではないため、妊婦又は妊娠していると思われる女性には使用を避ける。小児及び若年者では抗ヒスタミン成分により眠気とは反対の神経過敏や中枢興奮などが現れることがあり、特に15歳未満の小児ではそうした副作用が起きやすいため、抗ヒスタミン成分を含有する睡眠改善薬の使用は避ける。睡眠改善薬では、目が覚めたあとも注意力の低下や寝ぼけ様症状、判断力の低下等の一時的な意識障害、めまい、倦怠感を起こすことがあるので、翌日まで眠気やだるさを感じるときには、それらの症状が消失するまで自動車の運転等、危険を伴う機械の操作は避ける。

鎮静成分であるブロモバレリル尿素とアリルイソプロピルアセチル尿素は、いずれも脳の興奮を抑え、痛覚を鈍くする作用がある。少量でも眠気を催しやすく、それにより重大な事故を招くおそれがあるため、これらの成分が配合された医薬品を使用した後は、乗物や危険を伴う機械類の運転操作は避ける必要がある。また、反復して摂取すると依存を生じることが知られており、本来の目的から逸脱した使用(乱用)がなされることがあることに留意が必要とされる。ブロモバレリル尿素は胎児に障害を引き起こす可能性があるため、妊婦又は妊娠していると思われる女性は使用を避けるべきである。鎮静作用を期待する生薬成分としては、チョウトウコウ(アカネ科のカギカズラ等の通例とげ)、サンソウニン(クロウメモドキ科のサネブトナツメの種子)、カノコソウ(別名キッソウコン、オミナエシ科のカノコソウの根及び根茎)、チャボトケイソウ(別名パッシフローラ、南米原産のトケイソウ科の植物)、ホップ(アサ科のホップの成熟した球果状の果穂)があり、生薬成分のみからなる鎮静薬であっても、複数の鎮静薬の併用や長期連用は避けるべきとされている。神経質、精神不安、不眠等の改善を目的とした漢方処方製剤には酸棗仁湯、加味帰脾湯、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蛎湯があり、柴胡加竜骨牡蛎湯以外はいずれもカンゾウを含む。酸棗仁湯は1週間位服用して症状の改善がみられない場合には、漫然と服用を継続せず医療機関を受診するなどの対応が必要とされる。

眠気防止薬は、眠気や倦怠感を除去することを目的とした医薬品であり、主な有効成分としてカフェイン(無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン等を含む)が配合されている。カフェインは脳に軽い興奮状態を引き起こし、一時的に眠気や倦怠感を抑える効果があるが、脳が過剰に興奮すると副作用として振戦(震え)、めまい、不安、不眠、頭痛等を生じることがある。眠気防止に関連しない作用として、腎臓におけるナトリウムイオン(同時に水分)の再吸収抑制があり、尿量の増加(利尿)をもたらす。安全使用の観点から留意すべき作用に胃液分泌亢進作用があり、副作用として胃腸障害(食欲不振、悪心・嘔吐)が現れることがあるため、胃酸過多の人や胃潰瘍のある人は服用を避ける。また、心筋を興奮させる作用もあり副作用として動悸が現れることがあるため、心臓病のある人は服用を避ける。カフェインには作用は弱いながら反復摂取により依存を形成する性質があるため、「短期間の服用にとどめ、連用しないこと」という注意喚起がなされている。

カフェインの量に関する数値も押さえておきたい。手引きでは、眠気防止薬におけるカフェインの1回摂取量はカフェインとして200mg、1日摂取量はカフェインとして500mgが上限とされている。カフェインは他の医薬品(かぜ薬、解熱鎮痛薬、乗物酔い防止薬、滋養強壮保健薬等)や医薬部外品、食品(お茶、コーヒー等)にも含まれているため、それらが眠気防止薬と同時に摂取されるとカフェインが過量となり、中枢神経系や循環器系等への作用が強く現れるおそれがある。吸収されて循環血液中に移行したカフェインの一部は血液-胎盤関門を通過して胎児に到達することが知られており、また摂取されたカフェインの一部は乳汁中に移行する。乳児は肝臓が未発達なためカフェインの代謝により多くの時間を要し、授乳期間中はカフェインの総摂取量が継続して多くならないよう留意する。成長期の小児の発育には睡眠が重要であることから小児用の眠気防止薬はなく、15歳未満の小児に使用されることがないよう注意が必要とされている。かぜ薬やアレルギー用薬などを使用したことによる眠気を抑えるために眠気防止薬を使用するのは適切ではない。

鎮暈薬(乗物酔い防止薬)は、乗物酔い(動揺病)によるめまい、吐きけ、頭痛を防止し、緩和することを目的とする医薬品である。抗めまい成分のジフェニドール塩酸塩は、内耳にある前庭と脳を結ぶ神経(前庭神経)の調節作用のほか、内耳への血流を改善する作用を示し、日本においては専ら抗めまい成分として用いられている。抗ヒスタミン成分は延髄にある嘔吐中枢への刺激や内耳の前庭における自律神経反射を抑える作用を示す。ジメンヒドリナートはジフェンヒドラミンテオクル酸塩の一般名で、専ら乗物酔い防止薬に配合される抗ヒスタミン成分である。メクリジン塩酸塩は他の抗ヒスタミン成分と比べて作用が現れるのが遅く持続時間が長い。抗コリン成分のスコポラミン臭化水素酸塩水和物は、消化管からよく吸収され他の抗コリン成分と比べて脳内に移行しやすいとされるが、肝臓で速やかに代謝されてしまうため、抗ヒスタミン成分等と比べて作用の持続時間は短い。このほか、鎮静成分(ブロモバレリル尿素等)、キサンチン系成分(カフェイン、ジプロフィリン)、局所麻酔成分(アミノ安息香酸エチル)が配合されることがある。

鎮暈薬では年齢に関わる注意が集中する。プロメタジン塩酸塩等のプロメタジンを含む成分については、外国において乳児突然死症候群や乳児睡眠時無呼吸発作のような致命的な呼吸抑制を生じたとの報告があるため、15歳未満の小児では使用を避ける必要がある。アミノ安息香酸エチルが配合されている場合には、6歳未満への使用は避ける必要がある。また、3歳未満では乗物酔いが起こることはほとんどないとされ、乗物酔い防止薬に3歳未満の乳幼児向けの製品はない。抗めまい成分、抗ヒスタミン成分、抗コリン成分及び鎮静成分にはいずれも眠気を促す作用があり、抗コリン成分では散瞳による目のかすみや異常なまぶしさを引き起こすことがあるため、乗物の運転操作をするときは乗物酔い防止薬の使用を控える必要がある。乗物酔い防止薬には主として吐きけを抑えることを目的とした成分も配合されるが、つわりに伴う吐きけへの対処として使用することは適当でないとされている。乗物酔いに伴う一時的な症状としてでなく、日常においてめまいが度々生じる場合には、基本的に医療機関を受診するなどの対応が必要である。

小児鎮静薬は、小児の夜泣き、ひきつけ、疳の虫等の症状を鎮めるほか、小児における虚弱体質、消化不良などの改善を目的とする医薬品(生薬製剤・漢方処方製剤)である。配合生薬としては、緊張や興奮を鎮め血液の循環を促す作用等を期待して用いられるゴオウ、ジャコウ、ウシ科のサイカレイヨウ(高鼻レイヨウ)等の角を基原とし緊張や興奮を鎮める作用等を期待して用いられるレイヨウカク、ジンチョウゲ科の材を基原とし鎮静、健胃、強壮などの作用を期待して用いられるジンコウのほか、リュウノウ、動物胆、チョウジ、サフラン、ニンジン、カンゾウ等が挙げられている。漢方処方製剤は、用法用量において適用年齢の下限が設けられていない場合にあっても、生後3ヶ月未満の乳児には使用しないこととなっている。小児の疳を適応症とする主な漢方処方製剤としては柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、小建中湯があり、柴胡加竜骨牡蛎湯以外はいずれもカンゾウを含む。夜泣きに用いる場合、1週間位服用しても症状の改善がみられないときは、いったん服用を中止して専門家に相談する等の対応が必要である。手引きでは、購入者等が「作用が穏やかで小さな子供に使っても副作用が無い」などといった安易な考えで使用することを避けるよう情報提供に努める必要があるとされ、小児鎮静薬を保護者側の安眠等を図ることを優先して使用することは適当でないとされている。

眠気を促す薬・防ぐ薬・鎮暈薬・小児鎮静薬の主な成分(成分名・分類・はたらき・注意)
成分名分類はたらき注意
ジフェンヒドラミン塩酸塩抗ヒスタミン成分(睡眠改善薬)脳内のヒスタミン刺激を低下させ眠気を促す。中枢作用が特に強い15歳未満の小児、妊婦は使用を避ける。翌日まで眠気やだるさが残るときは運転等を避ける
ブロモバレリル尿素鎮静成分脳の興奮を抑え、痛覚を鈍くする依存性。妊婦は使用を避ける。使用後は乗物・危険を伴う機械類の運転操作を避ける
アリルイソプロピルアセチル尿素鎮静成分脳の興奮を抑え、痛覚を鈍くする依存性。使用後は乗物・危険を伴う機械類の運転操作を避ける
チョウトウコウ生薬(鎮静)アカネ科のカギカズラ等の通例とげ。神経の興奮・緊張緩和生薬のみの鎮静薬でも併用や長期連用は避ける
サンソウニン生薬(鎮静)クロウメモドキ科のサネブトナツメの種子同上
カノコソウ(別名キッソウコン)生薬(鎮静)オミナエシ科のカノコソウの根及び根茎食品(ハーブ等)として流通するものとの併用でリスクが高まることがある
チャボトケイソウ(別名パッシフローラ)生薬(鎮静)南米原産のトケイソウ科の植物。開花期における茎及び葉が薬用部位同上
ホップ生薬(鎮静)アサ科のホップの成熟した球果状の果穂同上
カフェイン(無水カフェイン等)キサンチン系(眠気防止)脳に軽い興奮状態を起こし一時的に眠気・倦怠感を抑える。利尿作用もある1回200mg・1日500mgが上限。胃酸過多や胃潰瘍のある人、心臓病のある人は服用を避ける。連用しない。15歳未満の小児に使用しない
ジフェニドール塩酸塩抗めまい成分前庭神経の調節作用、内耳への血流改善排尿困難の人や緑内障の診断を受けた人は相談が望ましい。散瞳による異常な眩しさ、口渇等
ジメンヒドリナート抗ヒスタミン成分(鎮暈薬)嘔吐中枢への刺激や内耳の前庭における自律神経反射を抑えるジフェンヒドラミンテオクル酸塩の一般名。眠気を促す作用があるため乗物の運転操作をするときは使用を控える
メクリジン塩酸塩抗ヒスタミン成分(鎮暈薬)他の抗ヒスタミン成分と比べ作用が現れるのが遅く持続時間が長い専ら乗物酔い防止薬に配合される
プロメタジン塩酸塩抗ヒスタミン成分(鎮暈薬)乗物酔いによるめまい・吐きけ等を抑える外国で致命的な呼吸抑制の報告があり、15歳未満の小児では使用を避ける
スコポラミン臭化水素酸塩水和物抗コリン成分中枢に作用して自律神経系の混乱を軽減、末梢では消化管の緊張を低下脳内に移行しやすいが肝臓で速やかに代謝され持続時間は短い。散瞳による目のかすみ・異常なまぶしさ
ジプロフィリンキサンチン系成分脳に軽い興奮を起こさせ平衡感覚の混乱によるめまいを軽減カフェインが配合されていても他成分による眠気が解消されるわけではない
アミノ安息香酸エチル局所麻酔成分胃粘膜への麻酔作用によって嘔吐刺激を和らげる6歳未満への使用は避ける
ゴオウ/ジャコウ生薬(小児の疳)緊張や興奮を鎮め、血液の循環を促す作用等「小さな子供に使っても副作用が無い」という安易な考えでの使用は避ける
レイヨウカク生薬(小児の疳)ウシ科のサイカレイヨウ(高鼻レイヨウ)等の角。緊張や興奮を鎮める同上
ジンコウ生薬(小児の疳)ジンチョウゲ科のジンコウ等の材。鎮静、健胃、強壮などの作用同上
カンゾウ生薬(小児の疳では主に健胃)小児の疳の生薬製剤では主として健胃作用を期待し配合量は比較的少ないグリチルリチン酸の総量が継続して多くならないよう注意。乳幼児では体重当たりの摂取量が多くなることがある
睡眠改善薬
抗ヒスタミン成分を主薬とする催眠鎮静薬のこと。一時的な睡眠障害(寝つきが悪い、眠りが浅い)の緩和に用いられ、慢性的に不眠症状がある人や不眠症の診断を受けている人を対象とするものではないとされている。
ジフェニドール塩酸塩
抗めまい成分。内耳にある前庭と脳を結ぶ神経(前庭神経)の調節作用のほか、内耳への血流を改善する作用を示す。排尿困難の症状がある人や緑内障の診断を受けた人では症状を悪化させるおそれがあり、相談が望ましいとされる。
ジメンヒドリナート
ジフェンヒドラミンテオクル酸塩の一般名で、専ら乗物酔い防止薬に配合される抗ヒスタミン成分。嘔吐中枢への刺激や内耳の前庭における自律神経反射を抑える作用を示す。
キサンチン系成分
カフェイン(無水カフェイン、クエン酸カフェイン等を含む)やジプロフィリン等の総称。鎮暈薬では脳に軽い興奮を起こさせて平衡感覚の混乱によるめまいを軽減させる目的で配合される。
疳の虫
小児に現れる夜泣き、ひきつけ等とあわせて挙げられる症状。手引きでは、身体的な問題がなく生じるこれらの症状は成長に伴って自然に治まるのが通常であり、発達段階の一時的な症状と保護者が達観することも重要とされている。
動揺病
乗物酔いのこと。乗物酔い防止薬は、動揺病によるめまい、吐きけ、頭痛を防止し、緩和することを目的とする医薬品とされている。

例題 眠気防止薬におけるカフェインの1回摂取量と1日摂取量の上限はいくらか。

手引きでは、1回摂取量はカフェインとして200mg、1日摂取量はカフェインとして500mgが上限とされている。カフェインはかぜ薬や解熱鎮痛薬、乗物酔い防止薬、食品にも含まれるため、同時に摂取されると過量となるおそれがある。

例題 乗物酔い防止薬で年齢の下限が示されている成分と数値を挙げよ。

プロメタジン塩酸塩等のプロメタジンを含む成分は15歳未満の小児では使用を避ける必要があり、アミノ安息香酸エチルが配合されている場合は6歳未満への使用は避ける必要がある。また、3歳未満では乗物酔いが起こることはほとんどないとされ、3歳未満の乳幼児向けの製品はない。

例題 小児の疳を適応症とする漢方処方製剤の、年齢に関する共通の注意は何か。

手引きでは、漢方処方製剤は用法用量において適用年齢の下限が設けられていない場合にあっても、生後3ヶ月未満の乳児には使用しないこととなっているとされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第3章 Ⅰ 精神神経に作用する薬 3 眠気を促す薬/4 眠気を防ぐ薬/5 鎮暈薬(乗物酔い防止薬)/6 小児の疳を適応症とする生薬製剤・漢方処方製剤

鎮咳去痰薬と口腔咽喉薬・うがい薬

鎮咳成分・気管支拡張成分・去痰成分・殺菌消毒成分の区別と、コデイン類やカンゾウ・ヨウ素系成分に関する注意をまとめて押さえます。

手引きでは、咳は気管や気管支に何らかの異変が起こったときに、その刺激が中枢神経系に伝わり、延髄にある咳嗽中枢の働きによって引き起こされる反応であるとされている。したがって咳はむやみに抑え込むべきではないが、長く続く咳は体力の消耗や睡眠不足をまねくなどの悪影響もある。気道粘膜からの粘液に、気道に入り込んだ異物や粘膜上皮細胞の残骸などが混じって痰となり、痰が気道粘膜上に滞留すると呼吸の妨げとなるため、反射的に咳が生じて痰を排除しようとする。鎮咳去痰薬は、咳を鎮める、痰の切れを良くする、また、喘息症状を和らげることを目的とする医薬品の総称であり、錠剤、カプセル剤、顆粒剤等のほか、口腔咽喉薬の目的を兼ねたトローチ剤やドロップ剤がある。

中枢神経系に作用して咳を抑える鎮咳成分のうち、コデインリン酸塩水和物とジヒドロコデインリン酸塩は、その作用本体であるコデイン、ジヒドロコデインがモルヒネと同じ基本構造を持ち、依存性がある成分であり、麻薬性鎮咳成分とも呼ばれる。長期連用や大量摂取によって倦怠感や虚脱感、多幸感等が現れることがあり、薬物依存につながるおそれがある。これに対してノスカピン、ノスカピン塩酸塩水和物、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、チペピジンヒベンズ酸塩、チペピジンクエン酸塩、ジメモルファンリン酸塩、クロペラスチン塩酸塩、クロペラスチンフェンジゾ酸塩等は非麻薬性鎮咳成分とも呼ばれる。フェノールフタリン酸デキストロメトルファンは主にトローチ剤・ドロップ剤に配合される鎮咳成分である。中枢性の鎮咳作用を示す生薬成分としてハンゲ(サトイモ科のカラスビシャクのコルク層を除いた塊茎)が配合されている場合もある。

コデイン類の注意は頻出である。コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩は、妊娠中に摂取された場合、吸収された成分の一部が血液-胎盤関門を通過して胎児へ移行することが知られており、分娩時服用により新生児に呼吸抑制が現れたとの報告がある。また、母乳移行により乳児でモルヒネ中毒が生じたとの報告があり、授乳中の人は服用しないか、授乳を避ける必要がある。そのほか、胃腸の運動を低下させる作用も示し、副作用として便秘が現れることがある。小児の呼吸抑制発生リスクを可能な限り低減する観点から、原則、コデイン類を含む本剤を12歳未満の小児等に使用しないよう注意喚起を行うこと等の予防的な措置がとられ、切換え後には12歳未満の小児への使用を禁忌とする使用上の注意の改訂を再度実施することとされた。

気管支を拡げる成分としては、メチルエフェドリン塩酸塩、メチルエフェドリンサッカリン塩、トリメトキノール塩酸塩水和物、メトキシフェナミン塩酸塩等のアドレナリン作動成分があり、交感神経系を刺激して気管支を拡張させる作用を示す。同様の作用を示す生薬成分としてマオウ(マオウ科の植物の地上茎)があり、気管支拡張のほか発汗促進、利尿等の作用も期待される。アドレナリン作動成分及びマオウは、交感神経系への刺激作用によって心臓血管系や肝臓でのエネルギー代謝等にも影響が生じることが考えられ、心臓病、高血圧、糖尿病又は甲状腺機能亢進症の診断を受けた人では症状を悪化させるおそれがあるため、使用する前に相談がなされるべきである。メチルエフェドリン塩酸塩、メチルエフェドリンサッカリン塩、マオウは中枢神経系に対する作用が他の成分に比べ強いとされ、依存性がある。一方、ジプロフィリン等のキサンチン系成分は、自律神経系を介さずに気管支の平滑筋に直接作用して弛緩させることで気管支を拡張させる。キサンチン系成分は中枢神経系を興奮させる作用も示し、甲状腺機能障害又はてんかんの診断を受けた人では症状の悪化を招くおそれがあり相談が必要とされ、心臓刺激作用により副作用として動悸が現れることがある。

去痰成分は、作用の仕組みごとに分けて覚えるとよい。気道粘膜からの粘液の分泌を促進する作用を示すものにグアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸カリウム、クレゾールスルホン酸カリウム等、痰の中の粘性タンパク質を溶解・低分子化して粘性を減少させるものにエチルシステイン塩酸塩、メチルシステイン塩酸塩、カルボシステイン等がある。カルボシステインは粘液成分の含量比を調整し痰の切れを良くする作用も持つ。ブロムヘキシン塩酸塩は、分泌促進作用・溶解低分子化作用・線毛運動促進作用を示す。なお、抗ヒスタミン成分は気道粘膜での粘液分泌を抑制することで痰が出にくくなることがあるため、痰の切れを良くしたい場合は併用に注意する必要があるとされている。

気道の炎症を和らげる抗炎症成分としてはトラネキサム酸、グリチルリチン酸二カリウム等があり、グリチルリチン酸を含む生薬成分としてカンゾウ(マメ科の植物の根及びストロンで、ときには周皮を除いたもの)が用いられることもある。カンゾウについては、グリチルリチン酸による抗炎症作用のほか、気道粘膜からの粘液分泌を促す等の作用も期待される。カンゾウを大量に摂取するとグリチルリチン酸の大量摂取につながり偽アルドステロン症を起こすおそれがあるため、むくみ、心臓病、腎臓病又は高血圧のある人や高齢者に1日最大服用量がカンゾウ(原生薬換算)として1g以上の製品を使用する場合は相談が必要とされ、どのような人が対象であっても1日最大服用量が1g以上となる製品は長期連用を避ける。甘草湯は構成生薬がカンゾウのみからなる漢方処方製剤で、体力に関わらず使用でき、激しい咳、咽喉痛、口内炎、しわがれ声に用いられるが、短期間の服用に止め連用しないこととされており、5〜6回使用しても咳や喉の痛みが鎮まらない場合には、いったん使用を中止し医師の診療を受けるなどの対応が必要である。

鎮咳去痰薬に配合される生薬成分は基原と作用の対応が問われる。キョウニン(バラ科のホンアンズ、アンズ等の種子)は体内で分解されて生じた代謝物の一部が延髄の呼吸中枢、咳嗽中枢を鎮静させる作用を示すとされる。ナンテンジツ(メギ科のシロミナンテン又はナンテンの果実)は知覚神経・末梢運動神経に作用して咳止めに効果があるとされる。ゴミシ(マツブサ科のチョウセンゴミシの果実)は鎮咳作用を期待して用いられる。去痰作用を期待して用いられるのはシャゼンソウ(オオバコ科のオオバコの花期の全草)、オウヒ(バラ科のヤマザクラ又はカスミザクラの樹皮)、セネガ(ヒメハギ科のセネガ又はヒロハセネガの根)、オンジ(ヒメハギ科のイトヒメハギの根及び根皮)、セキサン(ヒガンバナ科のヒガンバナ鱗茎、エキスは別名を白色濃厚セキサノールという)である。キキョウ(キキョウ科のキキョウの根)は痰又は痰を伴う咳に用いられ、バクモンドウ(ユリ科のジャノヒゲの根の膨大部)は鎮咳、去痰、滋養強壮等の作用を期待して用いられる。セネガ・オンジは摂取により糖尿病の検査値に影響を生じることがあり、1日最大配合量がセネガ原生薬として1.2g以上、又はオンジとして1g以上を含有する製品では、使用上の注意において成分及び分量に関連する注意として記載されている。咳止めや痰を出しやすくする漢方処方製剤には甘草湯のほか半夏厚朴湯、柴朴湯、麦門冬湯、五虎湯、麻杏甘石湯、神秘湯があり、半夏厚朴湯を除くいずれもカンゾウを含み、五虎湯・麻杏甘石湯・神秘湯はマオウを含む。

口腔咽喉薬は、口腔内又は咽頭部の粘膜に局所的に作用して炎症による痛み、腫れ等の症状の緩和を主たる目的とするもので、鎮咳成分や気管支拡張成分、去痰成分は配合されていない。含嗽薬(うがい薬)は、口腔及び咽頭の殺菌・消毒・洗浄、口臭の除去等を目的として、用時水に希釈又は溶解してうがいに用いる外用液剤である。トローチ剤やドロップ剤は口中に含み、噛まずにゆっくり溶かすようにして使用されることが重要で、噛み砕いて飲み込んでしまうと効果は期待できない。噴射式の液剤では、息を吸いながら噴射すると気管支や肺に入ってしまうおそれがあるため、軽く息を吐きながら噴射することが望ましい。含嗽薬は調製した濃度が濃すぎても薄すぎても効果が十分得られず、一般的に薬液を10〜20mL程度口に含み、顔を上向きにして咽頭の奥まで薬液が行き渡るようにガラガラを繰り返してから吐き出し、それを数回繰り返すのが効果的なうがいの仕方とされる。含嗽薬の使用後すぐに食事を摂ると、殺菌消毒効果が薄れやすい。

口腔咽喉薬・含嗽薬の配合成分としては、抗炎症成分のグリチルリチン酸二カリウム、トラネキサム酸のほか、炎症を生じた粘膜組織の修復を促すアズレンスルホン酸ナトリウム(水溶性アズレン)、殺菌消毒成分のセチルピリジニウム塩化物、デカリニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物、ポビドンヨード、ヨウ化カリウム、ヨウ素、クロルヘキシジングルコン酸塩、クロルヘキシジン塩酸塩、チモール等が用いられる。ヨウ素系殺菌消毒成分又はクロルヘキシジングルコン酸塩若しくはクロルヘキシジン塩酸塩が配合されたものでは、まれにショック(アナフィラキシー)のような全身性の重篤な副作用を生じることがあり、これらの成分に対するアレルギーの既往歴がある人では使用を避ける必要がある。ヨウ素系殺菌消毒成分が口腔内に使用される場合、結果的にヨウ素の摂取につながり、甲状腺におけるホルモン産生に影響を及ぼす可能性があるため、バセドウ病や橋本病などの甲状腺疾患の診断を受けた人では相談がなされるべきである。ポビドンヨードが配合された含嗽薬では、その使用によって銀を含有する歯科材料が変色することがある。また、ヨウ素はレモン汁やお茶などに含まれるビタミンC等の成分と反応すると脱色を生じて殺菌作用が失われるため、そうした食品を摂取した直後の使用や混合は避けることが望ましい。クロルヘキシジングルコン酸塩が配合された含嗽薬については、口腔内に傷やひどいただれのある人では強い刺激を生じるおそれがあるため使用を避ける必要がある。局所保護成分としてグリセリンが配合される場合があり、生薬成分では咽頭粘膜をひきしめる(収斂)作用のラタニア(クラメリア科)、収斂作用のほか抗菌作用も期待されるミルラ(カンラン科のミルラノキ等の樹脂)が挙げられている。喉の痛み等を鎮めることを目的とする漢方処方製剤には桔梗湯、駆風解毒散・駆風解毒湯、白虎加人参湯、響声破笛丸があり、いずれも構成生薬としてカンゾウを含む。

受診勧奨も繰り返し問われる。鎮咳去痰薬に解熱成分は配合されておらず発熱を鎮める効果は期待できないため、発熱を伴うときは呼吸器に細菌やウイルス等の感染を生じている可能性がある。咳がひどく痰に線状の血が混じることがある、又は黄色や緑色の膿性の痰を伴うような場合には早めに医療機関を受診することが望ましい。痰を伴わない乾いた咳が続く場合には間質性肺炎等の初期症状である可能性があり、その原因が医薬品の副作用によることもある。咳や痰、息切れ等の症状が長期間にわたっている場合には慢性気管支炎や肺気腫などの慢性閉塞性肺疾患(COPD)の可能性があり、喫煙に伴う症状のため鎮咳去痰薬を漫然と長期間にわたって使用することは適当でない。喘息については、一時的に症状を抑えることができたとしてもしばらくすると発作が繰り返し現れ、喘息発作が重積すると生命に関わる呼吸困難につながることもあるため、早期に医療機関での診療を受けるなどの対応が必要である。口腔咽喉薬・含嗽薬では、飲食物を飲み込むときに激しい痛みを感じるような場合には扁桃蜂巣炎や扁桃膿瘍などを生じている可能性もあり、また喉を酷使したりしていないにもかかわらず症状が数週間以上続く場合には喉頭癌等の重大な疾患が原因となっている可能性もあるとされている。

鎮咳去痰薬・口腔咽喉薬・含嗽薬の主な成分(成分名・分類・はたらき・注意)
成分名分類はたらき注意
コデインリン酸塩水和物/ジヒドロコデインリン酸塩麻薬性鎮咳成分延髄の咳嗽中枢に作用して咳を抑える依存性。原則12歳未満の小児等には使用しない。便秘。授乳中は服用しないか授乳を避ける
デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物非麻薬性鎮咳成分咳嗽中枢に作用して咳を抑えるフェノールフタリン酸デキストロメトルファンは主にトローチ剤・ドロップ剤に配合される
ノスカピン/チペピジンヒベンズ酸塩/クロペラスチン塩酸塩非麻薬性鎮咳成分咳嗽中枢に作用して咳を抑える
ハンゲ生薬(鎮咳)サトイモ科のカラスビシャクのコルク層を除いた塊茎。中枢性の鎮咳作用
メチルエフェドリン塩酸塩/メトキシフェナミン塩酸塩等アドレナリン作動成分(気管支拡張)交感神経系を刺激して気管支を拡張させる心臓病・高血圧・糖尿病・甲状腺機能亢進症の診断を受けた人は相談。メチルエフェドリンは依存性がある
マオウ生薬(気管支拡張)マオウ科の植物の地上茎。気管支拡張のほか発汗促進、利尿依存性。上記と同じ基礎疾患のある人は相談。高齢者は慎重に使用
ジプロフィリン等キサンチン系成分自律神経系を介さず気管支の平滑筋に直接作用して弛緩させる甲状腺機能障害又はてんかんの診断を受けた人は相談。心臓刺激作用により動悸
グアイフェネシン/グアヤコールスルホン酸カリウム等去痰成分気道粘膜からの粘液の分泌を促進する
エチルシステイン塩酸塩/カルボシステイン等去痰成分痰の中の粘性タンパク質を溶解・低分子化。カルボシステインは粘液成分の含量比も調整
ブロムヘキシン塩酸塩去痰成分分泌促進・溶解低分子化・線毛運動促進の作用を示す
カンゾウ生薬(抗炎症)グリチルリチン酸による抗炎症作用のほか、気道粘膜からの粘液分泌を促す1日最大服用量が原生薬換算1g以上の製品は長期連用を避ける。偽アルドステロン症に留意
キョウニン生薬(鎮咳)バラ科のホンアンズ、アンズ等の種子。代謝物が延髄の呼吸中枢、咳嗽中枢を鎮静
ナンテンジツ生薬(鎮咳)メギ科のシロミナンテン等の果実。知覚神経・末梢運動神経に作用して咳止め
ゴミシ生薬(鎮咳)マツブサ科のチョウセンゴミシの果実。鎮咳作用
シャゼンソウ生薬(去痰)オオバコ科のオオバコの花期の全草。去痰作用日本薬局方収載のものは煎薬として咳に対して用いられる
オウヒ生薬(去痰)バラ科のヤマザクラ又はカスミザクラの樹皮。去痰作用
キキョウ生薬(去痰)キキョウ科のキキョウの根。痰又は痰を伴う咳に用いられる
セネガ/オンジ生薬(去痰)ヒメハギ科の植物を基原とする生薬。去痰作用糖尿病の検査値に影響を生じることがあり、セネガ原生薬1.2g以上又はオンジ1g以上を含有する製品では注意が記載される
セキサン生薬(去痰)ヒガンバナ科のヒガンバナ鱗茎。エキスは別名を白色濃厚セキサノールという
バクモンドウ生薬(鎮咳去痰)ユリ科のジャノヒゲの根の膨大部。鎮咳、去痰、滋養強壮等
セチルピリジニウム塩化物等殺菌消毒成分口腔内及び咽頭部において局所的に細菌等を死滅させ増殖を抑える噛み砕いて飲み込むと殺菌消毒作用は期待できない
ポビドンヨード/ヨウ化カリウム/ヨウ素ヨウ素系殺菌消毒成分口腔内や喉の殺菌・消毒甲状腺疾患の診断を受けた人は相談。ビタミンCと反応して脱色し殺菌作用が失われる。銀を含有する歯科材料が変色することがある
クロルヘキシジングルコン酸塩殺菌消毒成分口腔内や喉の殺菌・消毒口腔内に傷やひどいただれのある人は使用を避ける。まれにショック(アナフィラキシー)
アズレンスルホン酸ナトリウム抗炎症成分(組織修復)炎症を生じた粘膜組織の修復を促す
グリセリン局所保護成分喉の粘膜を刺激から保護する複方ヨード・グリセリンはヨウ化カリウム等を加えたもので喉の患部に塗布して用いる
ラタニア生薬(口腔咽喉薬)クラメリア科の根。咽頭粘膜をひきしめる(収斂)作用
ミルラ生薬(口腔咽喉薬)カンラン科のミルラノキ等の樹脂。収斂作用のほか抗菌作用
咳嗽中枢
延髄にある、咳を引き起こす中枢。気管や気管支の異変による刺激が中枢神経系に伝わり、この咳嗽中枢の働きによって咳という反応が引き起こされるとされている。
麻薬性鎮咳成分
コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩のこと。作用本体のコデイン、ジヒドロコデインがモルヒネと同じ基本構造を持ち依存性がある。原則12歳未満の小児等には使用しないこととされている。
非麻薬性鎮咳成分
ノスカピン、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、チペピジンヒベンズ酸塩、ジメモルファンリン酸塩、クロペラスチン塩酸塩等の呼称。咳嗽中枢に作用して咳を抑えるが、麻薬性鎮咳成分と区別される。
白色濃厚セキサノール
セキサン(ヒガンバナ科のヒガンバナ鱗茎を基原とする生薬)のエキスの別名。セキサンは去痰作用を期待して鎮咳去痰薬に配合される生薬成分で、手引きでは基原と作用、この別名があわせて示されている。
含嗽薬
うがい薬のこと。口腔及び咽頭の殺菌・消毒・洗浄、口臭の除去等を目的として、用時水に希釈又は溶解してうがいに用いる、又は患部に塗布した後に水でうがいする外用液剤とされている。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性気管支炎や肺気腫などを含む疾患。咳や痰、息切れ等の症状が長期間にわたっている場合に可能性が挙げられ、喫煙がリスク要因の一つとして指摘されている。

例題 去痰成分の作用の仕組みを3つに分けて説明せよ。

手引きでは、気道粘膜からの粘液の分泌を促進するもの(グアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸カリウム、クレゾールスルホン酸カリウム等)、痰の中の粘性タンパク質を溶解・低分子化して粘性を減少させるもの(エチルシステイン塩酸塩、メチルシステイン塩酸塩、カルボシステイン等)、粘液成分の含量比を調整し痰の切れを良くするもの(カルボシステイン)に分けられ、さらにブロムヘキシン塩酸塩は分泌促進・溶解低分子化・線毛運動促進の作用を示すとされている。

例題 カンゾウについて、長期連用を避けるとされる1日最大服用量はいくらか。

1日最大服用量がカンゾウ(原生薬換算)として1g以上となる製品は、どのような人が対象であっても長期連用を避けるとされている。かぜ薬の項でのグリチルリチン酸としての40mg以上という値と混同しないよう区別して覚えたい。

例題 含嗽薬の効果的な使い方として手引きに示されている内容は何か。

一般的に、薬液を10〜20mL程度口に含み、顔を上向きにして咽頭の奥まで薬液が行き渡るようにガラガラを繰り返してから吐き出し、それを数回繰り返すのが効果的なうがいの仕方とされる。調製した濃度が濃すぎても薄すぎても効果が十分得られず、使用後すぐに食事を摂ると殺菌消毒効果が薄れやすいとされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第3章 Ⅱ 呼吸器官に作用する薬 1 咳止め・痰を出しやすくする薬(鎮咳去痰薬)/2 口腔咽喉薬、うがい薬(含嗽薬)

胃腸の薬

胃の薬(制酸薬・健胃薬・消化薬)

制酸・健胃・消化・胃粘膜保護修復・消泡・胃液分泌抑制の各成分が、それぞれ何を狙って配合されるかを区別できるようになります。

胃の働きに異常が生じると、胃液の分泌量の増減や食道への逆流が起こったり、胃液による消化作用から胃自体を保護する働きや胃の運動が低下して、胸やけや胃の不快感、消化不良、胃もたれ、食欲不振等の症状として現れる。胃の働きに異常がなくても、食べすぎたときのように胃内容物の量に対して処理する働きが追いつかないことで腹部に不調を感じる場合もある。吐きけや嘔吐は延髄にある嘔吐中枢の働きによって起こり、消化管での刺激が副交感神経系を通じて嘔吐中枢を刺激する経路も知られている。

手引きでは、制酸薬は胃液の分泌亢進による胃酸過多や、それに伴う胸やけ、腹部の不快感、吐きけ等の症状を緩和することを目的とする医薬品、健胃薬は弱った胃の働きを高めること(健胃)を目的とする医薬品、消化薬は炭水化物・脂質・タンパク質等の分解に働く酵素を補う等により胃や腸の内容物の消化を助けることを目的とする医薬品とされている。健胃薬に配合される生薬成分は独特の味や香りを有し、唾液や胃液の分泌を促して胃の働きを活発にする作用があるとされる。

一般用医薬品には、制酸・胃粘膜保護・健胃・消化・整腸・鎮痛鎮痙・消泡等それぞれの作用を目的とする成分を組み合わせたいわゆる総合胃腸薬もある。制酸と健胃のように相反する作用を期待するものが配合されている場合もあるが、胃腸の状態によりそれら成分に対する反応が異なり、総じて効果がもたらされると考えられている。ただし、消化不良、胃痛、胸やけなど症状がはっきりしている場合は、症状に合った成分のみが配合された製品が選択されることが望ましいとされている。

制酸成分は、中和反応によって胃酸の働きを弱めることを目的とし、炭酸水素ナトリウム(重曹)、乾燥水酸化アルミニウムゲルやジヒドロキシアルミニウムモノアセテート等のアルミニウムを含む成分、ケイ酸マグネシウム・酸化マグネシウム・炭酸マグネシウム等のマグネシウムを含む成分、合成ヒドロタルサイト・メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等の両方を含む成分、沈降炭酸カルシウム・リン酸水素カルシウム等のカルシウムを含む成分がある。メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、胃酸の中和作用のほか、胃粘膜にゼラチン状の皮膜を形成して保護する作用もあるとされる。生薬のボレイも、含まれる炭酸カルシウムによる作用を期待して用いられる。

制酸成分を主体とする胃腸薬は、酸度の高い食品と一緒に使用すると中和作用が低下することが考えられるため、炭酸飲料等での服用は適当でないとされている。アルミニウムを含む成分は、透析療法を受けている人が長期間服用してアルミニウム脳症・アルミニウム骨症を引き起こしたとの報告があり、透析療法を受けている人では使用を避け、透析治療を受けていない人でも長期連用は避ける必要がある。腎臓病の診断を受けた人では無機塩類の排泄が遅れたり体内に貯留しやすくなるため、使用前に医師又は薬剤師に相談がなされるべきとされている。制酸成分はかぜ薬や解熱鎮痛薬等にも配合されていることが多く、併用により高カルシウム血症・高マグネシウム血症等を生じるおそれがある。

健胃成分は、味覚や嗅覚を刺激して反射的な唾液や胃液の分泌を促すもので、オウバク・オウレン・センブリ・ゲンチアナ・リュウタンは苦味、ケイヒやコウボク・ショウキョウ・チョウジ・チンピ・ソウジュツ・ビャクジュツ等は香り(芳香性健胃生薬)による健胃作用を期待して用いられる。ユウタンは苦味による健胃作用のほか消化補助成分として配合される場合もある。これら生薬成分が配合された健胃薬は、散剤をオブラートで包む等、味や香りを遮蔽する方法で服用されると効果が期待できない。味覚や嗅覚への刺激以外の作用による健胃成分としては、乾燥酵母(栄養素の補給)とカルニチン塩化物がある。

消化成分は、ジアスターゼ、プロザイム、ニューラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ又はその複合酵素(ビオジアスターゼ、タカヂアスターゼ)等が酵素を補う目的で配合される。胆汁末や動物胆(ユウタンを含む)、ウルソデオキシコール酸、デヒドロコール酸は胆汁の分泌を促す作用(利胆作用)があるとされ、消化を助ける効果を期待して用いられる。これらは肝臓の働きを高める作用もあるとされるが、肝臓病の診断を受けた人ではかえって症状を悪化させるおそれがあり、使用前に相談がなされるべきとされている。

胃粘膜保護・修復成分には、アズレンスルホン酸ナトリウム(水溶性アズレン)、アルジオキサ、スクラルファート、ゲファルナート、ソファルコン、テプレノン、セトラキサート塩酸塩、トロキシピド、銅クロロフィリンカリウム、銅クロロフィリンナトリウム、メチルメチオニンスルホニウムクロライド等がある。生薬のアカメガシワも胃粘膜保護作用を期待して用いられる。アルジオキサ(アラントインと水酸化アルミニウムの複合体)とスクラルファートはアルミニウムを含む成分であるため、透析を受けている人では使用を避ける必要がある。ソファルコン、テプレノンはまれに重篤な副作用として肝機能障害を生じることがある。セトラキサート塩酸塩は体内で代謝されてトラネキサム酸を生じることから、血栓のある人・血栓を起こすおそれのある人では相談がなされるべきとされている。

そのほか、胃粘膜の炎症を和らげる抗炎症成分としてグリチルリチン酸二カリウム等やカンゾウ、消泡成分として気泡の分離を促すジメチルポリシロキサン(別名ジメチコン)、胃液分泌抑制成分としてアセチルコリンの働きを抑えるロートエキスやピレンゼピン塩酸塩が配合される場合がある。ピレンゼピン塩酸塩は消化管の運動にはほとんど影響を与えずに胃液の分泌を抑えるとされるが、抗コリン作用により排尿困難・動悸・目のかすみを生じることがあり、排尿困難の症状がある人や緑内障の診断を受けた人では相談が必要で、使用後は乗物又は機械類の運転操作を避ける必要がある。

受診勧奨として手引きでは、一般用医薬品の胃薬は基本的に一時的な胃の不調に伴う諸症状を緩和する目的で使用されるものであり、慢性的に胸やけや胃部不快感、胃部膨満感等の症状が現れる場合、又は医薬品をやめると症状がぶり返して医薬品が手放せないような場合には、食道裂孔ヘルニア、胃・十二指腸潰瘍、胃ポリープ等を生じている可能性も考えられ、医療機関を受診するなどの対応が必要であるとされている。嘔吐に発熱や下痢、めまいや興奮を伴う場合等も同様で、特に乳幼児や高齢者で嘔吐が激しい場合には医師の診療を受けることが優先されるべきとされている。

胃の薬の服用方法について手引きでは、消化を助け、胃もたれを改善し、胃をすっきりさせる効果を主とする製剤は食後服用のものが多く、空腹時や就寝時の胸やけ、ストレスによる胃酸の出すぎなどを抑える効果を主とする製剤は食間や就寝前の服用のものが多いとされている。どちらの効果も有する製剤では食後又は食間の服用指示のものが多い。また、医療機関で処方された医療用医薬品を服用している場合は、副作用による胃の不快感を防止するために胃の薬も処方されている場合があるので、販売時には胃の薬が処方されていないか必ず確認する必要があるとされている。

胃の薬の主な配合成分(手引き 第3章Ⅲ-1)
成分名分類はたらき注意
炭酸水素ナトリウム(重曹)制酸中和反応で胃酸の働きを弱める腎臓病では無機塩類の排泄が遅れるため相談
乾燥水酸化アルミニウムゲル等制酸(アルミニウム)中和反応で胃酸の働きを弱める透析療法を受けている人は使用を避ける。長期連用も避ける
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム制酸(Al+Mg)中和作用のほか胃粘膜にゼラチン状の皮膜を形成して保護透析療法を受けている人は使用を避ける
沈降炭酸カルシウム/ボレイ制酸(カルシウム)中和反応で胃酸の働きを弱める(ボレイは含まれる炭酸カルシウムによる)併用で高カルシウム血症のおそれ。便秘に注意
オウバク、オウレン、センブリ、ゲンチアナ、リュウタン健胃(苦味)苦味で反射的に唾液・胃液の分泌を促すオブラート等で味を遮蔽すると効果が期待できない
ケイヒ、コウボク、ショウキョウ、チョウジ、チンピ健胃(香り)香りで反射的に唾液・胃液の分泌を促す同上(香りを遮蔽しない)
ユウタン健胃(苦味)苦味による健胃作用。消化補助成分として配合される場合もある動物胆(ウシ等由来)も同様の作用
乾燥酵母健胃(その他)胃腸の働きに必要な栄養素を補給して胃の働きを高める味覚・嗅覚への刺激によらない
カルニチン塩化物健胃(その他)胃液分泌を促す、胃の運動を高める、胃壁の循環血流を増す等胃腸薬や滋養強壮保健薬に用いられる
ジアスターゼ、リパーゼ、セルラーゼ、ビオジアスターゼ消化炭水化物・脂質・タンパク質・繊維質等の分解に働く酵素を補う
ウルソデオキシコール酸、デヒドロコール酸、胆汁末、動物胆消化(利胆)胆汁の分泌を促し消化を助ける肝臓病の診断を受けた人は悪化のおそれがあり相談
アルジオキサ、スクラルファート胃粘膜保護・修復胃粘膜を覆って保護し、荒れた胃粘膜の修復を促すアルミニウムを含むため透析を受けている人は使用を避ける
ソファルコン、テプレノン胃粘膜保護・修復胃粘液の分泌を促す等まれに肝機能障害。肝臓病の人は相談
セトラキサート塩酸塩胃粘膜保護・修復胃粘膜の保護・修復代謝されトラネキサム酸を生じる。血栓のある人等は相談
ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)消泡消化管内容物中に発生した気泡の分離を促す
ロートエキス、ピレンゼピン塩酸塩胃液分泌抑制アセチルコリンの働きを抑え、過剰な胃液の分泌を抑える胃腸鎮痛鎮痙薬・乗物酔い防止薬との併用を避ける。運転操作を避ける
制酸
中和反応によって胃酸の働きを弱めること。手引きでは、胃液の分泌亢進による胃酸過多や、それに伴う胸やけ、腹部の不快感、吐きけ等の症状を緩和することを目的とするとされている。
健胃
弱った胃の働きを高めること。配合される生薬成分は独特の味や香りを有し、味覚や嗅覚を刺激して反射的な唾液や胃液の分泌を促し、胃の働きを活発にする作用があるとされる。
利胆作用
胆汁の分泌を促す作用。胆汁末や動物胆、ウルソデオキシコール酸、デヒドロコール酸にあるとされ、消化を助ける効果を期待して用いられる。肝臓の働きを高める作用もあるとされる。
アルミニウム脳症
体内でアルミニウムが過剰に存在する場合に、脳にアルミニウムが蓄積することで発生する脳症。アルミニウムが脳の組織に付着して脳神経系の伝達を妨げ、言語障害等を引き起こすとされる。
消泡
消化管内容物中に発生した気泡の分離を促すこと。気泡の体積の増加によって消化管が刺激され腹部の膨満感として知覚されるため、消泡により気体の吸収・排出が容易となる。
食道裂孔ヘルニア
胃の一部が横隔膜の上に飛び出して、胃液が食道に逆流しやすくなる状態。慢性的な胸やけ等が続く場合に可能性が考えられ、医療機関の受診が必要とされる。

例題 メタケイ酸アルミン酸マグネシウムには、制酸作用のほかにどのような作用があるとされているか。

胃粘膜にゼラチン状の皮膜を形成して保護する作用。制酸成分でありながら胃粘膜保護にも働く点が問われやすい。

例題 生薬成分が配合された健胃薬を、散剤としてオブラートに包んで服用するのは適当か。

適当でない。健胃生薬は味や香りで反射的に唾液や胃液の分泌を促すため、味や香りを遮蔽すると効果が期待できないとされている。

例題 セトラキサート塩酸塩について、相談することとされているのはどのような人か。

血栓のある人、血栓を起こすおそれのある人。体内で代謝されてトラネキサム酸を生じ、生じた血栓が分解されにくくなることが考えられるためとされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第3章 Ⅲ 胃腸に作用する薬 1 胃の薬(制酸薬、健胃薬、消化薬)

腸の薬(整腸薬・止瀉薬・瀉下薬)と浣腸薬・駆虫薬

整腸・止瀉・瀉下の各成分の作用機序と、浣腸薬・駆虫薬の使い方の注意を整理します。

腸における消化、栄養成分や水分の吸収が正常に行われなかったり、腸管がその内容物を送り出す運動に異常が生じると、便秘や軟便、下痢といった症状が現れる。水分の吸収は大半が小腸で行われ、大腸では腸内容物が糞便となる過程で適切な水分量に調整がなされる。腸の働きは自律神経系により制御されており、異常を生じる要因は腸自体やその内容物によるものだけでなく、腸以外の病気等が自律神経系を介して腸の働きに異常を生じさせる場合もある。

手引きでは、整腸薬は腸の調子や便通を整える(整腸)、腹部膨満感、軟便、便秘に用いられることを目的とする医薬品、止瀉薬は下痢、食あたり、吐き下し、水あたり、下り腹、軟便等に用いられることを目的とする医薬品、瀉下薬(下剤)は便秘症状及び便秘に伴う諸症状の緩和、又は腸内容物の排除に用いられることを目的とする医薬品とされている。

整腸成分としては、腸内細菌のバランスを整えることを目的にビフィズス菌、アシドフィルス菌、ラクトミン、乳酸菌、酪酸菌等の生菌成分が用いられる。ケツメイシ、ゲンノショウコ、アセンヤク等の生薬成分も整腸作用を期待して配合される場合がある。トリメブチンマレイン酸塩は、消化管(胃及び腸)の平滑筋に直接作用して消化管の運動を調整する作用(消化管運動が低下しているときは亢進的に、亢進しているときは抑制的に働く)があるとされる。まれに重篤な副作用として肝機能障害を生じることがあり、肝臓病の診断を受けた人では相談がなされるべきとされている。

止瀉成分のうち収斂成分は、腸粘膜のタンパク質と結合して不溶性の膜を形成し、腸粘膜をひきしめることにより腸粘膜を保護する。次没食子酸ビスマス、次硝酸ビスマス等のビスマスを含む成分、タンニン酸アルブミン、生薬のゴバイシ・オウバク・オウレン等がある。ビスマスを含む成分は収斂作用のほか腸内で発生した有毒物質を分解する作用も持つとされ、オウバク・オウレンは収斂作用のほか抗菌作用・抗炎症作用も期待して用いられる。収斂成分を主体とする止瀉薬は、細菌性の下痢や食中毒のときに使用して腸の運動を鎮めるとかえって状態を悪化させるおそれがあり、急性の激しい下痢又は腹痛・腹部膨満・吐きけ等の症状を伴う人では安易な使用を避けることが望ましいとされている。

ビスマスを含む成分は、海外において長期連用した場合に精神神経症状(不安、記憶力減退、注意力低下、頭痛等)が現れたとの報告があり、1週間以上継続して使用しないこととされている。アルコールと一緒に摂取されると循環血液中への移行が高まって精神神経症状を生じるおそれがあり、服用時は飲酒を避ける必要がある。胃潰瘍や十二指腸潰瘍の診断を受けた人では相談が必要とされ、循環血液中に移行したビスマスは血液-胎盤関門を通過することが知られており、妊婦又は妊娠していると思われる女性では使用を避けるべきとされている。タンニン酸アルブミンに含まれるアルブミンは牛乳のタンパク質(カゼイン)から精製された成分であるため、牛乳にアレルギーがある人では使用を避ける必要がある。

ロペラミド塩酸塩が配合された止瀉薬は、食べすぎ・飲みすぎによる下痢、寝冷えによる下痢の症状に用いられることを目的としており、食あたりや水あたりによる下痢については適用対象でない。本成分を含む一般用医薬品では15歳未満の小児には適用がない。使用は短期間にとどめ、2〜3日間使用しても症状の改善がみられない場合には医師の診療を受けるなどの対応が必要である。腸管の運動を低下させる作用を示すため胃腸鎮痛鎮痙薬との併用は避ける必要があり、便秘を避けなければならない肛門疾患がある人では使用を避けるべきとされている。中枢神経系を抑制する作用もありめまいや眠気が現れることがあるため運転操作を避け、服用時は飲酒しないこととされている。乳汁中に移行することが知られており、母乳を与える女性では使用を避けるか使用期間中の授乳を避けるべきとされている。

腸内殺菌成分としては、ベルベリン塩化物、タンニン酸ベルベリン、アクリノール等が細菌感染による下痢の症状を鎮めることを目的として用いられる。ベルベリンは生薬のオウバクやオウレンの中に存在する物質のひとつで、抗菌作用のほか抗炎症作用も併せ持つとされる。タンニン酸ベルベリンは、タンニン酸(収斂作用)とベルベリン(抗菌作用)の化合物であり、消化管内でタンニン酸とベルベリンに分かれてそれぞれ止瀉に働くことを期待して用いられる。下痢の予防で服用したり症状が治まったのに漫然と服用したりすると、腸内細菌のバランスを崩し腸内環境を悪化させることもある。吸着成分としては、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、天然ケイ酸アルミニウム、ヒドロキシナフトエ酸アルミニウム等が、腸管内の異常発酵等によって生じた有害な物質を吸着させる目的で用いられる。木クレオソートは、過剰な腸管の(蠕動)運動を正常化し、あわせて水分や電解質の分泌も抑える止瀉作用がある。

瀉下成分のうち小腸刺激性瀉下成分であるヒマシ油は、小腸でリパーゼの働きによって生じる分解物が小腸を刺激することで瀉下作用をもたらすと考えられている。急激で強い瀉下作用(峻下作用)を示すため、激しい腹痛又は悪心・嘔吐の症状がある人、妊婦又は妊娠していると思われる女性、3歳未満の乳幼児では使用を避けることとされている。防虫剤や殺鼠剤を誤って飲み込んだ場合のような脂溶性の物質による中毒には使用を避ける必要がある。乳汁中に移行して乳児に下痢を引き起こすおそれがあり、母乳を与える女性では使用を避けるか使用期間中の授乳を避ける必要がある。

大腸刺激性瀉下成分としては、センナ、センノシド、ダイオウ、ビサコジル、ピコスルファートナトリウム等が用いられ、アロエ、ジュウヤク、ケンゴシ等の生薬成分もある。センノシドは胃や小腸で消化されないが、大腸に生息する腸内細菌によって分解され、分解生成物が大腸を刺激して瀉下作用をもたらすと考えられている。ビサコジルは大腸のうち特に結腸や直腸の粘膜を刺激して排便を促すとされ、結腸での水分の吸収を抑えて糞便のかさを増大させる働きもあるとされる。腸溶性製剤の場合、胃内でビサコジルが溶け出すおそれがあるため、服用前後1時間以内は制酸成分を含む胃腸薬の服用や牛乳の摂取を避けることとされている。ピコスルファートナトリウムは胃や小腸では分解されないが、大腸の腸内細菌によって分解されて大腸への刺激作用を示すようになる。刺激性瀉下成分が配合された瀉下薬は一般に流産・早産を誘発するおそれがあり、特にセンナ及びセンノシドが配合された瀉下薬は妊婦では使用を避けるべきとされている。

無機塩類として酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム等は、腸内容物の浸透圧を高めることで糞便中の水分量を増し、また大腸を刺激して排便を促す。腎臓病の診断を受けた人では高マグネシウム血症を生じるおそれがあり相談が必要とされる。硫酸ナトリウムは血液中の電解質のバランスが損なわれ心臓の負担が増加し心臓病を悪化させるおそれがあるため、心臓病の診断を受けた人では相談が必要とされる。膨潤性瀉下成分のカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、プランタゴ・オバタの種子又は種皮は、腸管内で水分を吸収して糞便のかさを増やし柔らかくする作用を目的とし、使用と併せて十分な水分摂取が重要とされる。ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)は腸内容物に水分が浸透しやすくする作用があり、マルツエキスは主成分の麦芽糖が腸内細菌によって分解して生じるガスによって便通を促すとされ、主に乳幼児の便秘に用いられる。

浣腸薬は、便秘の場合に排便を促すことを目的として直腸内に適用される医薬品で、注入剤と坐剤がある。繰り返し使用すると直腸の感受性の低下(いわゆる慣れ)が生じて効果が弱くなるため連用しないこととされ、便秘以外のときに直腸内容物の排除を目的として用いることは適当でない。直腸の急激な動きに刺激されて流産・早産を誘発するおそれがあるため、妊婦又は妊娠していると思われる女性では使用を避けるべきとされている。注入剤にはグリセリンやソルビトールが用いられ、浸透圧の差によって腸管壁から水分を取り込んで直腸粘膜を刺激する。グリセリンが配合された浣腸薬では排便時に血圧低下を生じて立ちくらみが現れるとの報告があり、高齢者又は心臓病の診断を受けた人では相談が必要とされ、痔出血の症状がある人では溶血や腎不全のおそれがあるため相談が必要とされる。坐剤にはビサコジルのほか炭酸水素ナトリウム等が用いられ、炭酸水素ナトリウムは直腸内で徐々に分解して炭酸ガスの微細な気泡を発生することで直腸を刺激する。

駆虫薬は腸管内の寄生虫を駆除するために用いられ、一般用医薬品の駆虫薬が対象とする寄生虫は回虫と蟯虫である。腸管内に生息する虫体にのみ作用し、虫卵や腸管内以外に潜伏した幼虫には駆虫作用が及ばないため、再度駆虫を必要とする場合には1ヵ月以上間隔を置いてから使用することとされている。一度に多く服用しても駆虫効果が高まることはなく、複数の駆虫薬を併用しても効果が高まることはない。空腹時に使用することとされているものが多く、ヒマシ油を使用すると腸管内で駆虫成分が吸収されやすくなり副作用を生じる危険性が高まるため、ヒマシ油との併用は避ける必要がある。駆虫成分は、サントニン(回虫の自発運動を抑える)、カイニン酸(回虫に痙攣を起こさせる)、ピペラジンリン酸塩(アセチルコリン伝達を妨げて回虫及び蟯虫の運動筋を麻痺させる)、パモ酸ピルビニウム(蟯虫の呼吸や栄養分の代謝を抑えて殺虫作用を示す)がある。

腸の薬・浣腸薬・駆虫薬の主な配合成分(手引き 第3章Ⅲ-2、Ⅲ-4)
成分名分類はたらき注意
ビフィズス菌、アシドフィルス菌、ラクトミン、乳酸菌、酪酸菌整腸(生菌)腸内細菌のバランスを整える腸内殺菌成分配合の止瀉薬と併用すると働きが弱められる
トリメブチンマレイン酸塩整腸消化管の平滑筋に直接作用し、運動が低下時は亢進的に、亢進時は抑制的に働くまれに肝機能障害。肝臓病の人は相談
次没食子酸ビスマス、次硝酸ビスマス止瀉(収斂)腸粘膜をひきしめて保護。腸内の有毒物質を分解する作用も1週間以上継続して使用しない/服用時は飲酒を避ける/妊婦は使用を避ける
タンニン酸アルブミン止瀉(収斂)腸粘膜のタンパク質と結合し不溶性の膜を形成牛乳アレルギーの人は使用を避ける。まれにショック
ロペラミド塩酸塩止瀉腸管の運動を低下させる。水分・電解質の分泌も抑える食あたり・水あたりは適用外。15歳未満は適用なし。授乳・運転・飲酒を避ける
ベルベリン塩化物、タンニン酸ベルベリン、アクリノール止瀉(腸内殺菌)細菌感染による下痢の症状を鎮める予防目的や漫然とした服用は腸内環境を悪化させる
天然ケイ酸アルミニウム、沈降炭酸カルシウム、カオリン、薬用炭止瀉(吸着)腸管内の異常発酵等で生じた有害物質を吸着アルミニウムを含む成分は透析を受けている人は避ける
木クレオソート止瀉(生薬)過剰な腸管の蠕動運動を正常化し、水分・電解質の分泌も抑える医薬品に使えるのは木材原料の木クレオソート
ヒマシ油瀉下(小腸刺激性)小腸でリパーゼが生じた分解物が小腸を刺激妊婦・3歳未満・激しい腹痛や悪心嘔吐のある人は避ける。授乳回避。駆虫薬と併用しない
センナ、センノシド、ダイオウ瀉下(大腸刺激性)腸内細菌が分解した生成物が大腸を刺激妊婦は避ける(センナ・センノシド)。授乳を避ける
ビサコジル瀉下(大腸刺激性)結腸・直腸の粘膜を刺激。結腸での水分吸収を抑える腸溶性製剤は服用前後1時間以内の制酸成分・牛乳を避ける
ピコスルファートナトリウム瀉下(大腸刺激性)大腸の腸内細菌に分解されて大腸を刺激刺激性瀉下薬は連用で効果が弱くなる。頓服で使用
酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム瀉下(無機塩類)腸内容物の浸透圧を高め糞便中の水分量を増す腎臓病の人は高マグネシウム血症のおそれがあり相談
硫酸ナトリウム瀉下(無機塩類)同上心臓病の人は悪化のおそれがあり相談
カルメロースナトリウム、プランタゴ・オバタ瀉下(膨潤性)水分を吸収して糞便のかさを増やし柔らかくする十分な水分摂取が重要
ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)瀉下腸内容物に水分が浸透しやすくする
マルツエキス瀉下麦芽糖が腸内細菌に分解されて生じるガスで便通を促す作用は比較的穏やか。水分不足による便秘には効果が期待できない
グリセリン、ソルビトール浣腸(注入剤)浸透圧の差で腸管壁から水分を取り込み直腸粘膜を刺激高齢者・心臓病・痔出血の人は相談。妊婦は避ける。連用しない
炭酸水素ナトリウム浣腸(坐剤)直腸内で分解して炭酸ガスの微細な気泡を発生し直腸を刺激まれに重篤な副作用としてショック
サントニン駆虫回虫の自発運動を抑える肝臓病の人は相談。一時的に物が黄色く見える、耳鳴り、口渇
カイニン酸(マクリ)駆虫回虫に痙攣を起こさせる
ピペラジンリン酸塩駆虫アセチルコリン伝達を妨げ回虫・蟯虫の運動筋を麻痺させる痙攣・貧血・著しい栄養障害・肝臓病・腎臓病の人は相談
パモ酸ピルビニウム駆虫蟯虫の呼吸や栄養分の代謝を抑えて殺虫作用尿や糞便が赤く着色。ヒマシ油・脂質の多い食事・飲酒を避ける
収斂
腸粘膜のタンパク質と結合して不溶性の膜を形成し、腸粘膜をひきしめること。手引きでは、これにより腸粘膜を保護することを目的として収斂成分が配合されるとされている。
峻下作用
急激で強い瀉下作用のこと。ヒマシ油が示すとされ、激しい腹痛又は悪心・嘔吐の症状がある人、妊婦、3歳未満の乳幼児では使用を避けることとされている。
腸溶性製剤
胃内で分解されて効果が低下したり胃粘膜に無用な刺激をもたらすのを避けるため、腸内で溶けるようにコーティング等された製品。ビサコジル内服薬に多い。
しぶり腹
残便感があり、繰り返し腹痛を伴い便意を催すもの。手引きでは、体力中等度以下で腹部膨満感のあるもののしぶり腹、腹痛、下痢、便秘に桂枝加芍薬湯が適すとされると記されている。
高マグネシウム血症
血液中のマグネシウム濃度が異常に高くなり、脱力感、低血圧、呼吸障害などが現れる状態。重症の場合には心停止が起こることもあるとされる。
過敏性腸症候群
腸管の組織自体に形態的な異常はないにもかかわらず、腸が正常に機能せず、腹痛や下痢・便秘などを生じる病気。下痢と便秘が繰り返し現れ、症状が長引く場合は受診が必要とされる。

例題 ロペラミド塩酸塩が配合された止瀉薬は、食あたりや水あたりによる下痢に用いてよいか。

適用対象でない。手引きでは食べすぎ・飲みすぎによる下痢、寝冷えによる下痢を目的とし、発熱を伴う下痢や血便のある場合等は本剤の適用対象でない可能性があるとされている。

例題 ビサコジルの腸溶性製剤で、服用前後1時間以内に避けることとされているものは何か。

制酸成分を含む胃腸薬の服用と牛乳の摂取。胃内でビサコジルが溶け出すおそれがあるためとされている。

例題 駆虫薬とヒマシ油を併用してはいけないのはなぜか。

ヒマシ油を使用すると腸管内で駆虫成分が吸収されやすくなり、全身性の副作用を生じる危険性が高まるためとされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第3章 Ⅲ 胃腸に作用する薬 2 腸の薬(整腸薬、止瀉薬、瀉下薬)/4 その他の消化器官用薬

胃腸鎮痛鎮痙薬と胃腸の漢方処方製剤

抗コリン成分・パパベリン・局所麻酔成分の違いと、胃腸に用いる漢方処方製剤の適する体質を押さえます。

急な胃腸の痛みは、主として胃腸の過剰な動き(痙攣)によって生じる。消化管の運動は副交感神経系の刺激によって亢進し、副交感神経系は胃液分泌の亢進にも働く。そのため、副交感神経の伝達物質であるアセチルコリンと受容体の反応を妨げることでその働きを抑える成分(抗コリン成分)が、胃痛、腹痛、さしこみ(疝痛、癪)を鎮めること(鎮痛鎮痙)のほか、胃酸過多や胸やけに対する効果も期待して用いられる。

胃腸鎮痛鎮痙薬に配合される抗コリン成分としては、メチルベナクチジウム臭化物、ブチルスコポラミン臭化物、メチルオクタトロピン臭化物、ジサイクロミン塩酸塩、オキシフェンサイクリミン塩酸塩、チキジウム臭化物等がある。抗コリン作用を示すアルカロイドを豊富に含む生薬成分として、ロートエキスが用いられることも多い。

これらの成分が副交感神経系の働きを抑える作用は消化管に限定されないため、散瞳による目のかすみや異常な眩しさ、顔のほてり、頭痛、眠気、口渇、便秘、排尿困難等の副作用が現れることがある。重大な事故につながるおそれがあるため、抗コリン成分が配合された医薬品を使用した後は乗物又は機械類の運転操作を避ける必要がある。また、排尿困難の症状がある人、心臓病又は緑内障の診断を受けた人では症状の悪化を招くおそれがあり、使用前に医師又は薬剤師に相談がなされるべきとされている。高齢者では排尿困難や緑内障の基礎疾患を持つ場合が多く、一般的に口渇や便秘の副作用が現れやすいため、慎重な使用が重要とされている。

ブチルスコポラミン臭化物については、まれに重篤な副作用としてショック(アナフィラキシー)を生じることが知られている。ロートエキスについては、吸収された成分の一部が母乳中に移行して乳児の脈が速くなる(頻脈)おそれがあるため、母乳を与える女性では使用を避けるか使用期間中の授乳を避ける必要があり、ロートエキスにより母乳が出にくくなることがある。メチルオクタトロピン臭化物についても、吸収された成分の一部が母乳中に移行することが知られている。

パパベリン塩酸塩は、消化管の平滑筋に直接働いて胃腸の痙攣を鎮める作用を示すとされる。抗コリン成分と異なり胃液分泌を抑える作用は見出されない。また、抗コリン成分と異なり自律神経系を介した作用ではないが、眼圧を上昇させる作用を示すことが知られており、緑内障の診断を受けた人では症状の悪化を招くおそれがあるため相談がなされるべきとされている。

局所麻酔成分としては、消化管の粘膜及び平滑筋に対する麻酔作用による鎮痛鎮痙の効果を期待して、アミノ安息香酸エチル、オキセサゼインが配合されている場合がある。いずれも痛みが感じにくくなることで重大な消化器疾患や状態の悪化等を見過ごすおそれがあり、長期間にわたって漫然と使用することは避けることとされている。アミノ安息香酸エチルはメトヘモグロビン血症を起こすおそれがあるため6歳未満の小児への使用は避ける必要がある。オキセサゼインは局所麻酔作用のほか胃液分泌を抑える作用もあるとされ、胃腸鎮痛鎮痙薬と制酸薬の両方の目的で使用される。精神神経系の副作用として頭痛、眠気、めまい、脱力感が現れることがあり、妊娠中や小児における安全性は確立されておらず、妊婦又は妊娠していると思われる女性、15歳未満の小児では使用を避けることとされている。鎮痛鎮痙作用を期待する生薬成分としてはエンゴサク、シャクヤク等がある。

相互作用として、胃腸鎮痛鎮痙薬に配合されている成分は胃腸以外に対する作用も示すものがほとんどであり、複数の胃腸鎮痛鎮痙薬が併用された場合、泌尿器系や循環器系、精神神経系などに対する副作用が現れやすくなるため、胃腸鎮痛鎮痙薬を使用している間は他の胃腸鎮痛鎮痙薬の使用を避けることとされている。抗コリン成分はかぜ薬、乗物酔い防止薬、鼻炎用内服薬等にも配合されている場合があり、抗コリン作用を有する成分を含有する医薬品どうしが併用されると抗コリン作用が増強され、排尿困難、目のかすみや異常な眩しさ、頭痛、眠気、口渇、便秘等の副作用が現れやすくなる。

受診勧奨として手引きでは、痛みが次第に強くなる、痛みが周期的に現れる、嘔吐や発熱を伴う、下痢や血便・血尿を伴う、原因不明の痛みが30分以上続く等の場合には、基本的に医療機関を受診するなどの対応が必要であるとされている。医師の診療を受けるまでの当座の対処として一般用医薬品が使用されると、痛みの発生部位が不明確となり原因の特定を困難にすることがあるので、原因不明の腹痛に安易に胃腸鎮痛鎮痙薬を使用することは好ましくないとされている。腹部の痛みは必ずしも胃腸に生じたものとは限らず、月経困難症、胆嚢炎、胆管炎、胆石症、急性膵炎などのように胃腸以外の臓器に起因する場合があり、血尿を伴って側腹部に痛みが生じた時は腎臓や尿路の病気が疑われる。下痢に伴う腹痛については基本的に下痢への対処が優先され、胃腸鎮痛鎮痙薬の適用となる症状でない。

胃の不調を改善する目的で用いられる漢方処方製剤としては、安中散、人参湯(理中丸)、平胃散、六君子湯等があり、いずれも構成生薬としてカンゾウを含む。安中散は体力中等度以下で、腹部は力がなくて、胃痛又は腹痛があって、ときに胸やけや、げっぷ、胃もたれ、食欲不振、吐きけ、嘔吐などを伴うものの神経性胃炎、慢性胃炎、胃腸虚弱に適すとされる。人参湯(理中丸)は体力虚弱で、疲れやすくて手足などが冷えやすいものの胃腸虚弱、下痢、嘔吐、胃痛、腹痛、急・慢性胃炎に適すとされ、下痢又は嘔吐に用いる場合には1週間位使用しても症状の改善がみられないときはいったん使用を中止して専門家に相談がなされるべきとされている。平胃散は体力中等度以上で、胃がもたれて消化が悪く、ときに吐きけ、食後に腹が鳴って下痢の傾向のあるものの食べすぎによる胃のもたれ、急・慢性胃炎、消化不良、食欲不振に適すとされ、急性胃炎に用いる場合には5〜6回使用しても改善がみられないときは中止して相談するとされている。六君子湯は体力中等度以下で、胃腸が弱く、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいものの胃炎、胃腸虚弱、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐に適すとされ、まれに重篤な副作用として肝機能障害を生じることが知られている。

腸の不調を改善する目的で用いられる漢方処方製剤としては、桂枝加芍薬湯、大黄甘草湯、大黄牡丹皮湯、麻子仁丸等がある。このうち桂枝加芍薬湯及び大黄甘草湯は構成生薬としてカンゾウを含み、大黄甘草湯、大黄牡丹皮湯及び麻子仁丸は構成生薬としてダイオウを含む。桂枝加芍薬湯は体力中等度以下で、腹部膨満感のあるもののしぶり腹、腹痛、下痢、便秘に適すとされ、1週間位服用して改善がみられない場合は中止して相談するとされている。大黄甘草湯は体力に関わらず使用でき便秘等の症状の緩和に適すとされるが、体の虚弱な人、胃腸が弱く下痢しやすい人では激しい腹痛を伴う下痢等の副作用が現れやすく不向きとされる。大黄牡丹皮湯は体力中等度以上で、下腹部痛があって、便秘しがちなものの月経不順、月経困難、月経痛、便秘、痔疾に適すとされる。麻子仁丸は体力中等度以下で、ときに便が硬く塊状なものの便秘等の症状の緩和に適すとされるが、胃腸が弱く下痢しやすい人では不向きとされる。ダイオウを含む漢方処方製剤を使用している間は、他の瀉下薬の使用を避ける必要があるとされている。

胃腸鎮痛鎮痙薬の成分と胃腸の漢方処方製剤(手引き 第3章Ⅲ-1、Ⅲ-2、Ⅲ-3)
成分名・処方名分類はたらき・適すとされる体質注意
ブチルスコポラミン臭化物抗コリン成分アセチルコリンと受容体の反応を妨げ胃腸の痙攣を鎮めるまれにショック(アナフィラキシー)。運転操作を避ける
メチルベナクチジウム臭化物、ジサイクロミン塩酸塩、チキジウム臭化物、オキシフェンサイクリミン塩酸塩抗コリン成分同上。胃酸過多や胸やけへの効果も期待される排尿困難・心臓病・緑内障の人は相談。高齢者は慎重に
メチルオクタトロピン臭化物抗コリン成分同上吸収された成分の一部が母乳中に移行する
ロートエキス抗コリン成分(生薬)抗コリン作用を示すアルカロイドを豊富に含む母乳中に移行し乳児が頻脈になるおそれ。母乳が出にくくなることがある
パパベリン塩酸塩鎮痙消化管の平滑筋に直接働いて痙攣を鎮める。胃液分泌を抑える作用はない眼圧を上昇させる。緑内障の人は相談
アミノ安息香酸エチル局所麻酔成分消化管の粘膜・平滑筋への麻酔作用で鎮痛鎮痙メトヘモグロビン血症のおそれ。6歳未満は使用を避ける
オキセサゼイン局所麻酔成分局所麻酔作用のほか胃液分泌を抑える作用もある妊婦・15歳未満は使用を避ける。頭痛、眠気、めまい、脱力感
エンゴサク、シャクヤク鎮痛鎮痙(生薬)鎮痛鎮痙作用を期待して配合される
安中散漢方(胃)体力中等度以下で腹部は力がなく胃痛・腹痛があるものの神経性胃炎、慢性胃炎、胃腸虚弱カンゾウを含む
人参湯(理中丸)漢方(胃)体力虚弱で疲れやすく手足などが冷えやすいものの胃腸虚弱、下痢、嘔吐、胃痛、腹痛、急・慢性胃炎カンゾウを含む。下痢・嘔吐では1週間位で改善なければ中止し相談
平胃散漢方(胃)体力中等度以上で胃がもたれて消化が悪いものの食べすぎによる胃のもたれ、急・慢性胃炎、消化不良、食欲不振カンゾウを含む。急性胃炎では5〜6回で改善なければ中止し相談
六君子湯漢方(胃)体力中等度以下で胃腸が弱く食欲がなくみぞおちがつかえるものの胃炎、胃腸虚弱、胃下垂、消化不良カンゾウを含む。まれに肝機能障害
桂枝加芍薬湯漢方(腸)体力中等度以下で腹部膨満感のあるもののしぶり腹、腹痛、下痢、便秘カンゾウを含む。1週間位で改善なければ中止し相談
大黄甘草湯漢方(腸)体力に関わらず使用できる。便秘、便秘に伴う頭重、のぼせ等の緩和カンゾウ・ダイオウを含む。虚弱な人・下痢しやすい人は不向き。他の瀉下薬を避ける
大黄牡丹皮湯漢方(腸)体力中等度以上で下腹部痛があって便秘しがちなものの月経不順、月経困難、月経痛、便秘、痔疾ダイオウを含む。虚弱な人・下痢しやすい人は不向き。他の瀉下薬を避ける
麻子仁丸漢方(腸)体力中等度以下でときに便が硬く塊状なものの便秘等の緩和ダイオウを含む。下痢しやすい人は不向き。他の瀉下薬を避ける
鎮痙
胃腸の過剰な動き(痙攣)を鎮めること。抗コリン成分はアセチルコリンと受容体の反応を妨げることで、パパベリン塩酸塩は平滑筋に直接働くことで鎮痙作用を示すとされる。
疝痛
発作性の間欠的な痛みのこと。手引きでは、抗コリン成分が胃痛、腹痛、さしこみ(疝痛、癪)を鎮めること(鎮痛鎮痙)のほか、胃酸過多や胸やけに対する効果も期待して用いられるとされている。
メトヘモグロビン血症
赤血球中のヘモグロビンの一部がメトヘモグロビンに変化して酸素運搬能力が低下し、貧血症状を呈する病気。アミノ安息香酸エチルで起こるおそれがあり、6歳未満には使用を避ける。
急性腹症
腸管の狭窄、閉塞、腹腔内器官の炎症等。腹痛が著しい場合や便秘に伴って吐きけや嘔吐が現れた場合に可能性があり、安易に瀉下薬・浣腸薬を使用せず受診が必要とされる。
反復性臍疝痛
小児で内臓に異常がないにもかかわらず、へその周りに激しい痛みが繰り返し現れるもの。精神的なストレスによる自律神経系の乱れが主な原因と考えられている。
アルカロイド
主に植物由来のアルカリ性化合物の総称(一部、中性や弱酸性を示すものもある)。手引きでは、抗コリン作用を示すアルカロイドを豊富に含む生薬成分としてロートエキスが用いられることも多いとされている。

例題 パパベリン塩酸塩と抗コリン成分の違いを2点挙げよ。

パパベリン塩酸塩は消化管の平滑筋に直接働く(自律神経系を介した作用ではない)点と、胃液分泌を抑える作用が見出されない点。ただし眼圧を上昇させるため緑内障の人は相談が必要とされる。

例題 アミノ安息香酸エチルを6歳未満の小児に使用しないこととされているのはなぜか。

メトヘモグロビン血症を起こすおそれがあるためとされている。

例題 手引きが胃腸鎮痛鎮痙薬について受診勧奨を求めているのはどのような場合か。

痛みが次第に強くなる、痛みが周期的に現れる、嘔吐や発熱を伴う、下痢や血便・血尿を伴う、原因不明の痛みが30分以上続く等の場合。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第3章 Ⅲ 胃腸に作用する薬 3 胃腸鎮痛鎮痙薬(漢方処方製剤はⅢ-1、Ⅲ-2)

心臓・血液・排泄・婦人薬

心臓や血液に作用する薬

強心薬の生薬成分、高コレステロール改善成分、貧血用薬(鉄製剤)の成分と服用の注意が整理できるようになる。

動悸は「心臓の拍動が強く若しくは速くなり、又は脈拍が乱れ、それが不快に感じられる」もの、息切れは「息をすると胸苦しさや不快感があり、意識的な呼吸運動を必要とする」ものと手引きでは説明される。気つけとは、心臓の働きの低下による一時的なめまい、立ちくらみ等の症状に対して、意識をはっきりさせたり、活力を回復させる効果のことである。強心薬は、心筋に作用してその収縮力を高めるとされる成分(強心成分)を主体として配合される。

強心成分としては、センソ、ゴオウ、ジャコウ、ロクジョウ等の生薬成分が用いられる。センソはヒキガエル科のアジアヒキガエル等の耳腺の分泌物を基原とし、微量で強い強心作用を示す。皮膚や粘膜に触れると局所麻酔作用を示すため、センソが配合された丸薬、錠剤等の内服固形製剤は口中で噛み砕くと舌等が麻痺することがあり、噛まずに服用することとされている。有効域が比較的狭い成分で、1日用量中センソ5mgを超えて含有する医薬品は劇薬に指定されており、一般用医薬品では1日用量が5mg以下となるよう定められている。通常用量においても悪心(吐きけ)、嘔吐の副作用が現れることがある。

ジャコウはシカ科のジャコウジカの雄の麝香腺分泌物を基原とし、強心作用のほか、呼吸中枢を刺激して呼吸機能を高めたり、意識をはっきりさせる等の作用があるとされる。ゴオウはウシ科のウシの胆嚢中に生じた結石を基原とし、強心作用のほか、末梢血管の拡張による血圧降下、興奮を静める等の作用があるとされる。ロクジョウはシカ科のシカの雄鹿の角化していない幼角を基原とし、強心作用のほか、強壮、血行促進等の作用があるとされる。強心成分以外では、中枢神経系の刺激作用による気つけの効果を期待してリュウノウ(主要な物質としてボルネオール)、鎮静作用等を期待してシンジュが配合される場合がある。

漢方処方製剤の苓桂朮甘湯は、体力中等度以下で、めまい、ふらつきがあり、ときにのぼせや動悸があるものの立ちくらみ、めまい、頭痛、耳鳴り、動悸、息切れ、神経症、神経過敏に適すとされる。強心作用が期待される生薬は含まれず、主に利尿作用により水毒の排出を促すことを主眼とする。構成生薬としてカンゾウを含む。強心薬は一般に、5〜6日間使用して症状の改善がみられない場合には、医療機関の受診が勧奨される。

コレステロールの産生及び代謝は主として肝臓で行われる。低密度リポタンパク質(LDL)はコレステロールを肝臓から末梢組織へ運び、高密度リポタンパク質(HDL)は末梢組織のコレステロールを取り込んで肝臓へ運ぶ。LDLが140mg/dL以上、HDLが40mg/dL未満、中性脂肪が空腹時150mg/dL以上のいずれかである状態を脂質異常症という。高コレステロール改善成分としては、腸管におけるコレステロールの吸収を抑える大豆油不けん化物(ソイステロール)、コレステロールと結合して代謝されやすいコレステロールエステルを形成し肝臓における代謝を促すリノール酸・ポリエンホスファチジルコリン、LDL等の異化排泄を促進しリポタンパクリパーゼ活性を高めてHDL産生を高めるパンテチンが用いられる。ビタミンB2(リボフラビン酪酸エステル等)はコレステロールの生合成抑制と排泄・異化促進作用等を有するとされ、摂取によって尿が黄色くなることがあるが異常ではない。ビタミンE(トコフェロール酢酸エステル)は過酸化脂質の生成を抑え、末梢血行障害の緩和等を目的として用いられる。高コレステロール改善薬は痩身効果を目的とする医薬品ではない。

貧血用薬(鉄製剤)は、鉄欠乏性貧血に対して不足している鉄分を補充することにより造血機能の回復を図る医薬品で、フマル酸第一鉄、溶性ピロリン酸第二鉄、可溶性含糖酸化鉄、クエン酸鉄アンモニウムなどが用いられる。鉄製剤を服用すると便が黒くなることがあるが、これは使用の中止を要する副作用等の異常ではない。ただし服用前から便が黒い場合は消化管内で出血している場合もあるため、服用前の便の状況との対比が必要である。鉄以外では、鉄の代謝や輸送に重要な役割を持つ銅(硫酸銅)、ビタミンB12の構成成分であるコバルト(硫酸コバルト)、エネルギー合成を促進するマンガン(硫酸マンガン)が配合される場合があり、ビタミンC は消化管内で鉄が吸収されやすい状態に保つことを目的として用いられる。

鉄分の吸収は空腹時のほうが高いとされているが、消化器系への副作用を軽減するには食後に服用することが望ましい。服用の前後30分にタンニン酸を含む飲食物(緑茶、紅茶、コーヒー、ワイン、柿等)を摂取すると、タンニン酸と反応して鉄の吸収が悪くなることがあるので、服用前後はそれらの摂取を控えることとされている。貧血の症状がみられる以前から予防的に使用することは適当でなく、2週間程度使用しても改善がみられない場合には受診を促す。

その他の循環器用薬として、末梢の血行を促してうっ血を除くコウカ、心筋の酸素利用効率を高めて収縮力を高めるユビデカレノン(別名コエンザイムQ10、15歳未満の小児向けの製品はない)、ニコチン酸が遊離して末梢の血液循環を改善するヘプロニカート・イノシトールヘキサニコチネート、毛細血管の補強・強化を期待して用いられるルチンがある。漢方処方製剤では、体力中等度以上でのぼせ気味で顔面紅潮する人の高血圧随伴症状等に適すとされる三黄瀉心湯(ダイオウを含み、使用中は瀉下薬の併用を避ける)、体力中等度以下で顔色が悪くて疲れやすい人の高血圧随伴症状に適すとされる七物降下湯(15歳未満の小児への使用は避ける)がある。

心臓や血液に作用する薬の主な成分(成分名|区分|はたらき|注意)
成分名・処方名区分はたらき注意
センソ強心成分微量で強い強心作用噛まずに服用。1日用量中5mg超は劇薬。通常用量でも悪心・嘔吐
ジャコウ強心成分強心、呼吸中枢刺激、意識をはっきりさせる
ゴオウ強心成分強心、末梢血管拡張による血圧降下、興奮を静める
ロクジョウ強心成分強心、強壮、血行促進
リュウノウ強心成分以外中枢神経系の刺激作用による気つけ
シンジュ強心成分以外鎮静作用
苓桂朮甘湯漢方処方製剤利尿作用により水毒の排出を促す(体力中等度以下のめまい・動悸等)強心作用が期待される生薬は含まれない。カンゾウを含む
大豆油不けん化物(ソイステロール)高コレステロール改善成分腸管におけるコレステロールの吸収を抑える消化器系の副作用
リノール酸・ポリエンホスファチジルコリン高コレステロール改善成分コレステロールエステルを形成し、肝臓における代謝を促す消化器系の副作用
パンテチン高コレステロール改善成分LDL等の異化排泄を促進し、HDL産生を高める消化器系の副作用
ビタミンB2(リボフラビン酪酸エステル等)ビタミン成分コレステロールの生合成抑制と排泄・異化促進、過酸化脂質分解等尿が黄色くなるが、中止を要する異常ではない
ビタミンE(トコフェロール酢酸エステル)ビタミン成分過酸化脂質の生成を抑え、末梢血管の血行を促進
フマル酸第一鉄・溶性ピロリン酸第二鉄等貧血用薬(鉄分)不足した鉄分を補充し造血機能の回復を図る便が黒くなる。服用前後30分のタンニン酸を含む飲食物を控える
硫酸銅貧血用薬(鉄以外)鉄の代謝や輸送に重要な役割。ヘモグロビン産生を助ける
硫酸コバルト貧血用薬(鉄以外)ビタミンB12の構成成分。骨髄での造血機能を高める
硫酸マンガン貧血用薬(鉄以外)エネルギー合成を促進
ビタミンC(アスコルビン酸等)貧血用薬(ビタミン)消化管内で鉄が吸収されやすい状態に保つ
コウカその他の循環器用薬末梢の血行を促してうっ血を除く
ユビデカレノン(コエンザイムQ10)その他の循環器用薬心筋の酸素利用効率を高めて収縮力を高める15歳未満の小児向けの製品はない。強心薬等との併用を避ける
ヘプロニカート・イノシトールヘキサニコチネートその他の循環器用薬ニコチン酸が遊離し、末梢の血液循環を改善
ルチンその他の循環器用薬毛細血管の補強・強化
三黄瀉心湯漢方処方製剤体力中等度以上、のぼせ気味で顔面紅潮の高血圧随伴症状・痔出血等ダイオウを含む。使用中は瀉下薬の併用を避ける
七物降下湯漢方処方製剤体力中等度以下、顔色が悪く疲れやすい人の高血圧随伴症状15歳未満の小児への使用は避ける
気つけ
心臓の働きの低下による一時的なめまい、立ちくらみ等の症状に対して、意識をはっきりさせたり、活力を回復させる効果のこと。リュウノウなどが中枢神経系の刺激作用によるこの効果を期待して用いられる。
脂質異常症
医療機関で測定する検査値として、LDLが140mg/dL以上、HDLが40mg/dL未満、中性脂肪が空腹時150mg/dL以上のいずれかである状態をいう。自覚症状を伴わないため、偶然又は生活習慣病を生じて指摘されることが多い。
鉄欠乏性貧血
赤血球に含まれる色素ヘモグロビンの生合成に必要な鉄分が不足して生じる貧血。貧血のうち鉄製剤で改善できるのは鉄欠乏性貧血のみで、年長乳児や幼児、月経血損失のある女性、妊婦・母乳を与える女性は鉄欠乏状態を生じやすい。
水毒
漢方の考え方で、体の水分が停滞したり偏在して、その循環が悪いことを意味する。苓桂朮甘湯は強心作用が期待される生薬を含まず、主に利尿作用により水毒の排出を促すことを主眼とする。

例題 センソが配合された内服固形製剤の服用方法について、手引きではどう説明されているか。

センソは皮膚や粘膜に触れると局所麻酔作用を示すため、丸薬、錠剤等の内服固形製剤は口中で噛み砕くと舌等が麻痺することがあり、噛まずに服用することとされている。1日用量中センソ5mgを超えて含有する医薬品は劇薬である点とあわせて頻出。

例題 鉄製剤の服用前後に控えるべき飲食物は何か。

服用の前後30分にタンニン酸を含む飲食物(緑茶、紅茶、コーヒー、ワイン、柿等)を摂取すると、タンニン酸と反応して鉄の吸収が悪くなることがあるため、服用前後は摂取を控えることとされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第3章 Ⅳ 心臓などの器官や血液に作用する薬

排泄に関わる部位に作用する薬

痔の病態、外用・内用痔疾用薬の成分、泌尿器用薬とこの節の漢方処方の使い分けが整理できるようになる。

痔は、肛門付近の血管がうっ血し、肛門に負担がかかることによって生じる肛門の病気の総称で、主な病態として痔核、裂肛、痔瘻がある。痔核は肛門に存在する細かい血管群が部分的に拡張し、肛門内にいぼ状の腫れが生じたもので、一般に「いぼ痔」と呼ばれる。歯状線より上部の直腸粘膜にできた痔核を内痔核と呼び、直腸粘膜には知覚神経が通っていないため自覚症状が少ない。歯状線より下部の肛門の出口側にできた痔核を外痔核と呼び、排便と関係なく出血や患部の痛みを生じる。裂肛は肛門の出口からやや内側の上皮に傷が生じた状態で、一般に「切れ痔」と呼ばれる。痔瘻は肛門内部の肛門腺窩に糞便の滓が溜まって炎症・化膿を生じた状態である。

外用痔疾用薬は、坐剤、軟膏剤(注入軟膏を含む)又は外用液剤である。局所に適用されるものであるが、坐剤及び注入軟膏では成分の一部が直腸粘膜から吸収されて循環血流中に入りやすく、全身的な影響を生じることがある。局所麻酔成分(リドカイン、リドカイン塩酸塩、アミノ安息香酸エチル、ジブカイン塩酸塩、プロカイン塩酸塩等)は、周辺の知覚神経に作用して刺激の神経伝導を可逆的に遮断し、痔に伴う痛み・痒みを和らげる。リドカイン、リドカイン塩酸塩、アミノ安息香酸エチル又はジブカイン塩酸塩が配合された坐剤及び注入軟膏では、まれに重篤な副作用としてショック(アナフィラキシー)を生じることがある。

痒みを和らげる成分として、抗ヒスタミン成分(ジフェンヒドラミン塩酸塩等)のほか、局所刺激成分として熱感刺激を生じさせるクロタミトン、冷感刺激を生じさせるカンフル、ハッカ油、メントール等が配合される場合がある。抗炎症成分としては、ヒドロコルチゾン酢酸エステル、プレドニゾロン酢酸エステル等のステロイド性抗炎症成分が配合される場合があり、これらが配合された坐剤及び注入軟膏は、その含有量によらず長期連用を避ける必要がある。比較的緩和な抗炎症作用を示す成分としてグリチルレチン酸(グリチルリチン酸が分解されてできる成分)もある。組織修復成分としてはアラントイン、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイネート(別名アルクロキサ)が用いられる。

止血成分としては、血管収縮作用による止血効果を期待してテトラヒドロゾリン塩酸塩、メチルエフェドリン塩酸塩、エフェドリン塩酸塩、ナファゾリン塩酸塩等のアドレナリン作動成分が配合されることがある。メチルエフェドリン塩酸塩が配合された坐剤及び注入軟膏は、心臓病、高血圧、糖尿病又は甲状腺機能障害の診断を受けた人では症状を悪化させるおそれがあり、使用前に相談がなされるべきである。粘膜表面に不溶性の膜を形成する収斂保護止血成分として、タンニン酸、酸化亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム、卵黄油等がある。殺菌消毒成分(クロルヘキシジン塩酸塩、セチルピリジニウム塩化物等)、生薬成分のシコン(新陳代謝促進、殺菌、抗炎症)、セイヨウトチノミ(血行促進、抗炎症)も配合される場合がある。

内用痔疾用薬は生薬成分を中心に配合され、外用痔疾用薬と併せて用いると効果的である。オウゴン(シソ科のコガネバナの周皮を除いた根)とセイヨウトチノミは主に抗炎症作用を、カイカ(マメ科のエンジュの蕾)とカイカク(マメ科のエンジュの成熟果実)は主に止血効果を期待して用いられる。カルバゾクロムは毛細血管を補強、強化して出血を抑える働きがあるとされる。漢方処方製剤の乙字湯は、体力中等度以上で大便がかたく便秘傾向のあるものの痔核(いぼ痔)、切れ痔、便秘、軽度の脱肛に適すとされ、通常ダイオウを含み、まれに重篤な副作用として肝機能障害、間質性肺炎を生じることが知られている。芎帰膠艾湯は、体力中等度以下で冷え症で、出血傾向があり胃腸障害のないものの痔出血、貧血、月経異常・月経過多・不正出血、皮下出血に適すとされる。いずれもカンゾウを含む。

その他の泌尿器用薬では、ウワウルシ(ツツジ科のクマコケモモの葉)が、利尿作用のほか、経口摂取後に尿中に排出される分解代謝物が抗菌作用を示し、尿路の殺菌消毒効果を期待して用いられる。日本薬局方収載のウワウルシ、カゴソウ(シソ科のウツボグサの花穂)は、煎薬として残尿感、排尿に際して不快感のあるものに用いられる。利尿作用を期待して、キササゲ、サンキライ、ソウハクヒ(日本薬局方収載品は煎薬として尿量減少に用いられる)、モクツウ(アケビ科のアケビ又はミツバアケビの蔓性の茎)、ブクリョウも配合される場合がある。

泌尿器用の漢方処方製剤として、牛車腎気丸・八味地黄丸・六味丸はいずれも体力中等度以下で疲れやすい人の排尿困難、頻尿、むくみ等に適すとされる。八味地黄丸は残尿感、夜間尿、軽い尿漏れにも適すとされ、胃腸の弱い人・下痢しやすい人では使用を避け、のぼせが強く赤ら顔で体力の充実している人には不向きとされる。猪苓湯は体力に関わらず使用でき、排尿異常があり、ときに口が渇くものの排尿困難、排尿痛、残尿感、頻尿、むくみに適すとされる。竜胆瀉肝湯は体力中等度以上で、下腹部に熱感や痛みがあるものの排尿痛、残尿感、尿の濁り、こしけ(おりもの)、頻尿に適すとされ、カンゾウを含む。残尿感や尿量減少は膀胱炎や前立腺肥大などによっても起こることがあり、その場合は一般用医薬品によって対処することは適当でない。

痔疾用薬・泌尿器用薬の主な成分(成分名|区分|はたらき|注意)
成分名・処方名区分はたらき注意
リドカイン、アミノ安息香酸エチル、ジブカイン塩酸塩等局所麻酔成分(外用)知覚神経の伝導を可逆的に遮断し、痛み・痒みを和らげる坐剤・注入軟膏でまれにショック(アナフィラキシー)
ジフェンヒドラミン塩酸塩等抗ヒスタミン成分(外用)痔に伴う痒みを和らげる
クロタミトン局所刺激成分(外用)熱感刺激を生じさせ、痒みを抑える
カンフル、ハッカ油、メントール局所刺激成分(外用)冷感刺激を生じさせ、痒みを抑える
ヒドロコルチゾン酢酸エステル、プレドニゾロン酢酸エステルステロイド性抗炎症成分(外用)肛門部の炎症や痒みを和らげる坐剤・注入軟膏は含有量によらず長期連用を避ける
グリチルレチン酸抗炎症成分(外用)比較的緩和な抗炎症作用(グリチルリチン酸の分解物)
アラントイン、アルクロキサ組織修復成分(外用)肛門部の創傷の治癒を促す
テトラヒドロゾリン塩酸塩、メチルエフェドリン塩酸塩等アドレナリン作動成分(外用)血管収縮作用による止血メチルエフェドリン塩酸塩は心臓病・高血圧・糖尿病・甲状腺機能障害の人は相談
タンニン酸、酸化亜鉛等収斂保護止血成分(外用)粘膜表面に不溶性の膜を形成し、保護・止血
クロルヘキシジン塩酸塩、セチルピリジニウム塩化物等殺菌消毒成分(外用)痔疾患に伴う局所の感染を防止
シコン生薬成分(外用)新陳代謝促進、殺菌、抗炎症
オウゴン、セイヨウトチノミ生薬成分(内用)主に抗炎症作用
カイカ(蕾)、カイカク(成熟果実)生薬成分(内用)主に止血効果
カルバゾクロム止血成分(内用)毛細血管を補強・強化して出血を抑える
乙字湯漢方処方製剤(痔)体力中等度以上、大便がかたく便秘傾向のいぼ痔・切れ痔・脱肛ダイオウ・カンゾウを含む。まれに肝機能障害・間質性肺炎
芎帰膠艾湯漢方処方製剤(痔)体力中等度以下・冷え症・出血傾向の痔出血、貧血、月経過多等カンゾウを含む。胃腸が弱く下痢しやすい人には不向き
ウワウルシ尿路消毒成分利尿のほか、分解代謝物が抗菌作用を示し尿路を殺菌消毒
カゴソウ、キササゲ、サンキライ、ソウハクヒ、モクツウ利尿成分(生薬)利尿作用
牛車腎気丸・八味地黄丸・六味丸漢方処方製剤(泌尿器)体力中等度以下、疲れやすい人の排尿困難・頻尿・むくみ等のぼせが強く赤ら顔で体力充実の人には不向き(牛車腎気丸・八味地黄丸)
猪苓湯漢方処方製剤(泌尿器)体力に関わらず使用できる。排尿困難、排尿痛、残尿感、頻尿、むくみ
竜胆瀉肝湯漢方処方製剤(泌尿器)体力中等度以上、下腹部に熱感や痛みがある排尿痛・残尿感・尿の濁り等カンゾウを含む
内痔核
直腸粘膜と皮膚の境目となる歯状線より上部の直腸粘膜にできた痔核。直腸粘膜には知覚神経が通っていないため自覚症状が少なく、排便時に痔核がはみ出る脱肛や出血等の症状が現れる。
痔瘻
肛門内部に存在する肛門腺窩と呼ばれる小さなくぼみに糞便の滓が溜まって炎症・化膿を生じた状態。体力低下等により抵抗力が弱まっているときに起こりやすく、進行すると肛門周囲の皮膚部分から膿が溢れ、激痛を生じる。
収斂保護止血成分
粘膜表面に不溶性の膜を形成することによる粘膜の保護・止血を目的とする成分。タンニン酸、酸化亜鉛、硫酸アルミニウムカリウム、卵黄油等が外用痔疾用薬に配合される場合がある。
尿路消毒成分
ウワウルシは利尿作用のほか、経口的に摂取した後、尿中に排出される分解代謝物が抗菌作用を示し、尿路の殺菌消毒効果を期待して用いられる。日本薬局方収載品は煎薬として残尿感、排尿に際して不快感のあるものに用いられる。

例題 ステロイド性抗炎症成分が配合された坐剤・注入軟膏の使用上の注意は何か。

手引きでは、ステロイド性抗炎症成分が配合された坐剤及び注入軟膏は、その含有量によらず長期連用を避ける必要があるとされている。「含有量が少なければ長期連用してよい」とする選択肢は誤り。

例題 猪苓湯と竜胆瀉肝湯の体力(証)の違いは何か。

猪苓湯は体力に関わらず使用できるとされるのに対し、竜胆瀉肝湯は体力中等度以上で下腹部に熱感や痛みがあるものに適すとされる。泌尿器用の漢方処方では体力の条件の入れ替えが定番の出題である。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第3章 Ⅴ 排泄に関わる部位に作用する薬

婦人薬

婦人薬の適用対象(月経前症候群・更年期障害・血の道症)、女性ホルモン成分の注意、この節の漢方処方の証が整理できるようになる。

女性の月経は、子宮内膜が剥がれ落ち、血液(経血)と共に排出される生理現象で、月経周期は個人差があり約21日〜40日と幅がある。視床下部や下垂体で産生されるホルモンと、卵巣で産生される女性ホルモンが月経周期に関与する。加齢とともに卵巣からの女性ホルモンの分泌が減少していき、やがて月経が停止して妊娠可能な期間が終了することを閉経といい、閉経の前後には更年期(閉経周辺期)と呼ばれる移行的な時期がある。

血の道症は、臓器・組織の形態的異常がなく、抑うつや寝つきが悪くなる、神経質、集中力の低下等の精神神経症状が現れる病態で、月経、妊娠、分娩、産褥、更年期等の生理現象や、流産、人工妊娠中絶、避妊手術などを原因とする異常生理によって起こるとされ、範囲が更年期障害よりも広く、年齢的に必ずしも更年期に限らない。月経の約10〜3日前に現れ、月経開始と共に消失する腹部膨満感、頭痛、乳房痛などの身体症状や感情の不安定、抑うつなどの精神症状を主体とするものを月経前症候群という。婦人薬は、血の道症、更年期障害、月経異常及びそれらに随伴する冷え症、月経痛、腰痛、頭痛、のぼせ、肩こり、めまい、動悸、息切れ等に用いられる。

女性ホルモン成分として、人工的に合成された女性ホルモンの一種であるエチニルエストラジオールは、エストラジオールを補充するもので、膣粘膜又は外陰部に適用されるものがあり、適用部位から吸収されて循環血液中に移行する。妊娠中の女性ホルモン成分の摂取によって胎児の先天性異常の発生が報告されており、妊婦又は妊娠していると思われる女性では使用を避ける必要がある。吸収された成分の一部が乳汁中に移行することが考えられ、母乳を与える女性では使用を避けるべきである。長期連用により血栓症を生じるおそれがあり、また、乳癌や脳卒中などの発生確率が高まる可能性もあるため、継続して使用する場合には医療機関を受診するよう促すべきである。

生薬成分では、サフラン(アヤメ科のサフランの柱頭)、コウブシ(カヤツリグサ科のハマスゲの根茎)が、鎮静、鎮痛のほか、女性の滞っている月経を促す作用を期待して配合される場合がある。日本薬局方収載のサフランを煎じて服用する製品は、冷え症及び血色不良に用いられる。センキュウ(セリ科のセンキュウの根茎)、トウキ(セリ科のトウキ又はホッカイトウキの根)、ジオウ(ゴマノハグサ科のアカヤジオウ等の根)は、血行を改善し、血色不良や冷えの症状を緩和するほか、強壮、鎮静、鎮痛等の作用を期待して用いられる。このほか鎮痛・鎮痙のシャクヤク・ボタンピ、鎮静のサンソウニン・カノコソウ、抗炎症のカンゾウ、利尿のモクツウ・ブクリョウ等が配合される場合がある。

婦人薬の漢方処方製剤には、温経湯、温清飲、加味逍遙散、桂枝茯苓丸、五積散、柴胡桂枝乾姜湯、四物湯、桃核承気湯、当帰芍薬散等がある。このうち温経湯、加味逍遙散、五積散、柴胡桂枝乾姜湯、桃核承気湯は構成生薬としてカンゾウを含み、五積散はマオウを、桃核承気湯はダイオウを含む。当帰芍薬散は体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴えるものの月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害などに適すとされる。加味逍遙散は体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものに適すとされ、まれに重篤な副作用として肝機能障害、腸間膜静脈硬化症を生じることが知られている。桂枝茯苓丸は比較的体力があり、ときに下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどを訴えるものに適すとされる。

温経湯は体力中等度以下で手足がほてり唇が乾くもの、温清飲は体力中等度で皮膚はかさかさして色つやが悪くのぼせるもの、五積散は体力中等度又はやや虚弱で冷えがあるもの、柴胡桂枝乾姜湯は体力中等度以下で冷え症、貧血気味、神経過敏なもの、四物湯は体力虚弱で冷え症で皮膚が乾燥、色つやの悪い体質で胃腸障害のないもの、桃核承気湯は体力中等度以上でのぼせて便秘しがちなものに、それぞれ適すとされる。内服で用いられる婦人薬は比較的作用が穏やかで、ある程度長期間使用することによって効果が得られるとされるが、1ヶ月位使用して症状の改善がみられず、日常生活に支障を来すようであれば、医療機関を受診するなどの対応が必要である。月経以外の不規則な出血(不正出血)がある場合には、すみやかに医療機関を受診して専門医の診療を受けるなどの対応が必要である。

婦人薬の主な成分・漢方処方(成分名|区分|はたらき|注意)
成分名・処方名区分はたらき・適すとされる証注意
エチニルエストラジオール女性ホルモン成分エストラジオールを補充(膣粘膜又は外陰部に適用)妊婦・授乳婦は使用を避ける。長期連用で血栓症、乳癌や脳卒中の発生確率が高まる可能性
サフラン、コウブシ生薬成分鎮静、鎮痛、滞っている月経を促す
センキュウ、トウキ、ジオウ生薬成分血行を改善し血色不良や冷えを緩和、強壮、鎮静、鎮痛
当帰芍薬散漢方処方製剤体力虚弱、冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすいものの月経不順・更年期障害等胃腸の弱い人には不向き
加味逍遙散漢方処方製剤体力中等度以下、のぼせ感・肩こり・精神不安やいらだち、ときに便秘傾向カンゾウを含む。まれに肝機能障害・腸間膜静脈硬化症
桂枝茯苓丸漢方処方製剤比較的体力があり、下腹部痛・肩こり・のぼせて足冷えを訴えるもの体の虚弱な人には不向き。まれに肝機能障害
温経湯漢方処方製剤体力中等度以下、手足がほてり唇が乾くものの月経不順・更年期障害等カンゾウを含む。胃腸の弱い人には不向き
温清飲漢方処方製剤体力中等度、皮膚はかさかさして色つやが悪くのぼせるものまれに肝機能障害
五積散漢方処方製剤体力中等度又はやや虚弱で冷えがあるものの月経痛・更年期障害・感冒等マオウ・カンゾウを含む
柴胡桂枝乾姜湯漢方処方製剤体力中等度以下、冷え症・貧血気味・神経過敏で動悸、息切れがあるものカンゾウを含む。まれに間質性肺炎・肝機能障害
四物湯漢方処方製剤体力虚弱、冷え症で皮膚が乾燥し色つやが悪く胃腸障害のないもの体の虚弱な人、胃腸の弱い人、下痢しやすい人には不向き
桃核承気湯漢方処方製剤体力中等度以上、のぼせて便秘しがちなものの月経不順・月経痛等ダイオウ・カンゾウを含む。体の虚弱な人には不向き
月経前症候群
月経の約10〜3日前に現れ、月経開始と共に消失する腹部膨満感、頭痛、乳房痛などの身体症状や感情の不安定、抑うつなどの精神症状を主体とするもの。血の道症のうち特にこの型をいう。
血の道症
臓器・組織の形態的異常がなく、抑うつや寝つきが悪くなる、神経質、集中力の低下等の精神神経症状が現れる病態。月経、妊娠、分娩、産褥、更年期等の生理現象や異常生理によって起こるとされ、範囲は更年期障害より広く、必ずしも更年期に限らない。
更年期障害
更年期に月経周期が不規則になるほか、不定愁訴として血の道症の症状に加え、冷え症、腰痛、頭痛、頭重、ほてり、のぼせ、立ちくらみ等の症状が起こる症候群。
エチニルエストラジオール
人工的に合成された女性ホルモンの一種で、エストラジオールを補充するもの。妊婦又は妊娠していると思われる女性、母乳を与える女性では使用を避ける。長期連用により血栓症を生じるおそれがあり、乳癌や脳卒中などの発生確率が高まる可能性もある。

例題 月経前症候群とはどのような症状か。

手引きでは、月経の約10〜3日前に現れ、月経開始と共に消失する腹部膨満感、頭痛、乳房痛などの身体症状や感情の不安定、抑うつなどの精神症状を主体とするものを月経前症候群というとされている。「月経終了と共に消失」と入れ替える誤り選択肢に注意。

例題 婦人薬の漢方処方のうち「比較的体力があり」とされるのはどれか。

桂枝茯苓丸である。当帰芍薬散・四物湯は体力虚弱、加味逍遙散・温経湯・柴胡桂枝乾姜湯は体力中等度以下、桃核承気湯は体力中等度以上とされており、体力(証)の対応が繰り返し問われる。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第3章 Ⅵ 婦人薬

アレルギー・鼻・眼の薬

内服アレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む)

アレルギーが起こる仕組み(ヒスタミン)と、抗ヒスタミン成分・プソイドエフェドリン塩酸塩・抗コリン成分・漢方処方製剤の要点を区別できるようになります。

どのような物質がアレルゲン(抗原)となるかは人によって異なり、複数の物質がアレルゲンとなることもある。主なものとして、小麦、卵、乳、そば、落花生、えび、かに等の食品、ハウスダスト(室内塵)、家庭用品が含有する化学物質や金属等が知られ、スギやヒノキ、ブタクサ等の花粉のように季節性のものもある。アレルゲンが皮膚や粘膜から体内に入り込むと、その物質を特異的に認識した免疫グロブリン(抗体)によって肥満細胞が刺激され、ヒスタミンやプロスタグランジン等の生理活性物質が遊離する。遊離したヒスタミンは受容体と反応することで、血管拡張、血管透過性亢進等の作用を示す。なお蕁麻疹には、アレルゲンとの接触以外に、皮膚への物理的な刺激等によって生じるもの(寒冷蕁麻疹、日光蕁麻疹、心因性蕁麻疹など)や、傷んだ食品(特にサバなどの生魚)に生成したヒスタミン様物質の摂取によって生じるものもある。

内服アレルギー用薬は、蕁麻疹や湿疹、かぶれ及びそれらに伴う皮膚の痒み又は鼻炎に用いられる内服薬の総称で、抗ヒスタミン成分を主体として配合されている。抗ヒスタミン成分に、急性鼻炎、アレルギー性鼻炎又は副鼻腔炎による諸症状の緩和を目的として、鼻粘膜の充血や腫れを和らげる成分(アドレナリン作動成分)や鼻汁分泌やくしゃみを抑える成分(抗コリン成分)等を組み合わせて配合されたものを鼻炎用内服薬という。

抗ヒスタミン成分は、肥満細胞から遊離したヒスタミンが受容体と反応するのを妨げることにより、ヒスタミンの働きを抑える。クロルフェニラミンマレイン酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩、クレマスチンフマル酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩、メキタジン、ケトチフェンフマル酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩、ロラタジン等が用いられる。ヒスタミンは脳の下部で覚醒の維持・調節を担っており、抗ヒスタミン成分によりその働きが抑えられると眠気が促されるため、服用後は乗物又は機械類の運転操作を避けることとされている。また抗コリン作用も示すため、排尿困難や口渇、便秘等の副作用が現れることがあり、排尿困難の症状がある人や緑内障の診断を受けた人は使用前に医師・薬剤師に相談がなされるべきである。ジフェンヒドラミンを含む成分は、一部が乳汁に移行して乳児に昏睡を生じるおそれがあるため、母乳を与える女性は使用を避けるか、使用する場合には授乳を避ける。メキタジンは、まれに重篤な副作用としてショック(アナフィラキシー)、肝機能障害、血小板減少を生じることがある。

プソイドエフェドリン塩酸塩は、他のアドレナリン作動成分に比べて中枢神経系に対する作用が強く、副作用として不眠や神経過敏が現れることがある。心臓病、高血圧、糖尿病又は甲状腺機能障害の診断を受けた人、前立腺肥大による排尿困難の症状がある人では、症状を悪化させるおそれがあり、使用を避ける必要がある。パーキンソン病の治療でセレギリン塩酸塩等のモノアミン酸化酵素阻害剤の処方を受けている人では、プソイドエフェドリンの代謝が妨げられて副作用が現れやすくなるおそれが高く、使用を避ける必要がある。また、プソイドエフェドリン塩酸塩とメチルエフェドリン塩酸塩は依存性がある成分であり、長期間の連用は薬物依存につながるおそれがある。メチルエフェドリン塩酸塩は、血管収縮作用により痒みを鎮める効果を期待してアレルギー用薬でも用いられることがある。

抗コリン成分(ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミド等)は、鼻腔内の粘液分泌腺からの粘液の分泌を抑えるとともに、鼻腔内の刺激を伝達する副交感神経系の働きを抑えることによって、鼻汁分泌やくしゃみを抑える。ベラドンナはナス科の草本で、葉や根に、副交感神経系から放出されるアセチルコリンの働きを抑えるアルカロイドを含む。そのほか、抗炎症成分(グリチルリチン酸二カリウム、トラネキサム酸等)、ビタミン成分、生薬成分としてシンイ(鎮静、鎮痛)、サイシン(鎮痛、鎮咳、利尿等。鼻閉への効果)、ケイガイ(発汗、解熱、鎮痛等。鼻閉への効果)が配合される場合がある。

漢方処方製剤では、皮膚の症状を主とする人に適すとされるものとして茵蔯蒿湯、十味敗毒湯、消風散、当帰飲子等が、鼻の症状を主とする人に適すとされるものとして葛根湯加川芎辛夷、小青竜湯、荊芥連翹湯、辛夷清肺湯等がある。このうち茵蔯蒿湯と辛夷清肺湯を除き、いずれも構成生薬としてカンゾウを含み、葛根湯加川芎辛夷は構成生薬としてマオウを含む。受診勧奨としては、アレルギー用薬の使用は基本的に対症療法であり、長期の連用は避け、5〜6日間使用しても症状の改善がみられない場合には医師の診療を受けるなどの対応が必要とされる。一般用医薬品(漢方処方製剤を含む)にはアトピー性皮膚炎による慢性湿疹等の治療を目的とするものはなく、皮膚感染症(たむし、疥癬等)による症状には感染症そのものへの対処を優先する必要がある。

内服アレルギー用薬(鼻炎用内服薬)の主な成分・処方
成分名・処方名分類はたらき注意
クロルフェニラミンマレイン酸塩、ロラタジン等抗ヒスタミン成分遊離したヒスタミンと受容体の反応を妨げる眠気(運転操作を避ける)。抗コリン作用で排尿困難・口渇・便秘
ジフェンヒドラミンを含む成分抗ヒスタミン成分同上乳汁に移行し乳児に昏睡のおそれ。授乳婦は使用か授乳を避ける
メキタジン抗ヒスタミン成分同上まれにショック、肝機能障害、血小板減少
プソイドエフェドリン塩酸塩アドレナリン作動成分鼻粘膜の血管を収縮させ充血・腫れを和らげる心臓病・高血圧・糖尿病・甲状腺機能障害・前立腺肥大による排尿困難では使用を避ける。依存性あり
メチルエフェドリン塩酸塩アドレナリン作動成分血管収縮。痒みを鎮める目的でも用いられる依存性あり
ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミド抗コリン成分鼻汁分泌やくしゃみを抑えるベラドンナはナス科。アセチルコリンの働きを抑える
シンイ/サイシン/ケイガイ生薬成分鎮静・鎮痛/鼻閉への効果/発汗・解熱・鎮痛、鼻閉への効果
葛根湯加川芎辛夷漢方(鼻の症状)鼻づまり、蓄膿症(副鼻腔炎)、慢性鼻炎構成生薬にマオウとカンゾウを含む
辛夷清肺湯漢方(鼻の症状)濃い鼻汁、鼻づまり、慢性鼻炎、蓄膿症カンゾウを含まない。肝機能障害・間質性肺炎・腸間膜静脈硬化症
茵蔯蒿湯漢方(皮膚の症状)口渇・便秘傾向の蕁麻疹、口内炎、湿疹・皮膚炎、皮膚の痒みカンゾウを含まない
当帰飲子漢方(皮膚の症状)冷え症で皮膚が乾燥するものの湿疹・皮膚炎、痒み胃腸が弱く下痢しやすい人は不向き
肥満細胞
マスト細胞ともいい、血管周囲、特に皮膚・皮下組織、肺、消化管、肝臓に存在して免疫機構の一端を担う細胞。生理活性物質を貯蔵して細胞自体が大きくなることから付いた名称で、肥満症とは関連しない。
ヒスタミン
細胞間の刺激の伝達を担う生理活性物質。受容体と反応して血管拡張・血管透過性亢進等の作用を示すほか、脳の下部では覚醒の維持・調節を行う働きを担っている。
抗コリン作用
アセチルコリンの働きを抑える作用。抗ヒスタミン成分もこの作用を示すため、排尿困難や口渇、便秘等の副作用が現れることがある。
モノアミン酸化酵素阻害剤
セレギリン塩酸塩等。パーキンソン病の治療のため医療機関で処方される。プソイドエフェドリンの代謝を妨げて副作用が現れやすくなるおそれがあるため、併用は避ける必要がある。

例題 プソイドエフェドリン塩酸塩の使用を避ける必要があるのはどのような人か。

手引きでは、心臓病、高血圧、糖尿病又は甲状腺機能障害の診断を受けた人、前立腺肥大による排尿困難の症状がある人では症状を悪化させるおそれがあり、使用を避ける必要があるとされている。セレギリン塩酸塩等のモノアミン酸化酵素阻害剤で治療中の人も避ける。

例題 この節の漢方処方製剤のうち、構成生薬としてカンゾウを含まないものはどれか。

茵蔯蒿湯と辛夷清肺湯。この2つを除き、いずれもカンゾウを含む。また葛根湯加川芎辛夷はマオウも含む。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第3章 Ⅶ 内服アレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む。)

鼻に用いる薬(鼻炎用点鼻薬)

急性鼻炎・アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎の違いと、点鼻薬のアドレナリン作動成分による二次充血、その他の配合成分と正しい使い方が分かるようになります。

急性鼻炎は、鼻腔内に付着したウイルスや細菌が原因となって生じる鼻粘膜の炎症で、かぜの随伴症状として現れることが多い。アレルギー性鼻炎は、ハウスダストや花粉等のアレルゲンに対する過敏反応によって引き起こされる鼻粘膜の炎症で、スギ等の花粉がアレルゲンとなって生じるものは一般に「花粉症」と呼ばれる。副鼻腔炎は、こうした鼻粘膜の炎症が副鼻腔にも及んだもので、慢性のものは一般に「蓄膿症」と呼ばれる。

鼻炎用点鼻薬は、急性鼻炎、アレルギー性鼻炎又は副鼻腔炎による諸症状のうち、鼻づまり、鼻みず(鼻汁過多)、くしゃみ、頭重の緩和を目的として鼻腔内に適用される外用液剤である。鼻炎用内服薬との主な違いは、鼻粘膜の充血を和らげる成分(アドレナリン作動成分)が主体となり、抗ヒスタミン成分や抗炎症成分が配合されていても鼻腔内における局所的な作用を目的としている点である。剤形はスプレー式で鼻腔内に噴霧するものが多い。使用にあたっては、噴霧後に鼻汁とともに逆流する場合があるので使用前に鼻をよくかんでおくこと、使用後には鼻に接した部分を清潔なティッシュペーパー等で拭き、必ずキャップを閉めた状態で保管すること、容器はなるべく直接鼻に触れないようにすること、他人と点鼻薬を共有しないことが必要とされる。

アドレナリン作動成分としては、交感神経系を刺激して鼻粘膜を通っている血管を収縮させることにより鼻粘膜の充血や腫れを和らげることを目的として、ナファゾリン塩酸塩、フェニレフリン塩酸塩、テトラヒドロゾリン塩酸塩等が用いられる。これらが配合された点鼻薬は、過度に使用されると鼻粘膜の血管が反応しなくなり、逆に血管が拡張して二次充血を招き、鼻づまり(鼻閉)がひどくなりやすい。点鼻薬は局所(鼻腔内)に適用されるものだが、成分が鼻粘膜を通っている血管から吸収されて循環血液中に入りやすく、全身的な影響を生じることがある。

抗ヒスタミン成分としては、ヒスタミンの働きを抑えることによりくしゃみや鼻汁等の症状の緩和を目的として、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ケトチフェンフマル酸塩等が配合されている場合がある。抗アレルギー成分のクロモグリク酸ナトリウムは、肥満細胞からヒスタミンの遊離を抑える作用を示し、花粉、ハウスダスト等による鼻アレルギー症状の緩和を目的として、通常、抗ヒスタミン成分と組み合わせて配合される。アレルギー性でない鼻炎や副鼻腔炎に対しては無効で、3日間使用して症状の改善がみられない場合はアレルギー以外の原因の可能性が考えられる。減感作療法等のアレルギー治療を受けている人はその妨げとなるおそれがあるため使用前に相談が必要で、まれに重篤な副作用としてアナフィラキシーを、その他の副作用として鼻出血や頭痛を生じることがある。

そのほか、局所麻酔成分(リドカイン、リドカイン塩酸塩等)が鼻粘膜の過敏性や痛みや痒みを抑える目的で、殺菌消毒成分(ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物、セチルピリジニウム塩化物)が鼻粘膜を清潔に保ち細菌による二次感染を防止する目的で配合される場合がある。これらの殺菌消毒成分はいずれも陽性界面活性成分で、黄色ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌又はカンジダ等の真菌類に対する殺菌消毒作用を示すが、結核菌やウイルスには効果がない。抗炎症成分としてはグリチルリチン酸二カリウムが配合される場合があり、ステロイド性抗炎症成分が配合されている場合には長期連用を避ける必要がある。

一般用医薬品の鼻炎用点鼻薬の対応範囲は、急性又はアレルギー性の鼻炎及びそれに伴う副鼻腔炎であり、蓄膿症などの慢性のものは対象となっていない。アドレナリン作動成分のように鼻以外の器官や臓器に影響を及ぼすおそれがある成分も配合されていることから長期連用は避けることとされ、3日位使用しても症状の改善がみられない場合には、漫然と使用を継続せずに医療機関(耳鼻科)を受診するなどの対応が必要である。鼻粘膜が腫れてポリープ(鼻茸)となっている場合には、一般用医薬品により対処を図ることは適当でなく、医療機関における治療が必要となる。

鼻炎用点鼻薬の主な配合成分
成分名分類はたらき注意
ナファゾリン塩酸塩、フェニレフリン塩酸塩、テトラヒドロゾリン塩酸塩アドレナリン作動成分交感神経系を刺激し血管を収縮させ、鼻粘膜の充血や腫れを和らげる過度の使用で二次充血を招き鼻づまりが悪化。血管から吸収され全身的な影響も
クロルフェニラミンマレイン酸塩、ケトチフェンフマル酸塩抗ヒスタミン成分ヒスタミンの働きを抑え、くしゃみや鼻汁等を緩和
クロモグリク酸ナトリウム抗アレルギー成分肥満細胞からのヒスタミンの遊離を抑えるアレルギー性でない鼻炎・副鼻腔炎には無効。まれにアナフィラキシー
リドカイン、リドカイン塩酸塩局所麻酔成分鼻粘膜の過敏性や痛み・痒みを抑える
ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物、セチルピリジニウム塩化物殺菌消毒成分細菌による二次感染を防止(黄色ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌、カンジダ等に有効)結核菌やウイルスには効果がない
グリチルリチン酸二カリウム抗炎症成分鼻粘膜の炎症を和らげるステロイド性抗炎症成分配合の場合は長期連用を避ける
二次充血
アドレナリン作動成分が配合された点鼻薬を過度に使用したとき、鼻粘膜の血管が反応しなくなり、逆に血管が拡張して充血を招く現象。鼻づまり(鼻閉)がひどくなりやすい。
花粉症
アレルギー性鼻炎のうち、スギ等の花粉がアレルゲンとなって生じるものの一般的な呼び名。
蓄膿症
副鼻腔炎(鼻粘膜の炎症が副鼻腔にも及んだもの)のうち慢性のものの一般的な呼び名。一般用医薬品の鼻炎用点鼻薬の対応範囲には含まれない。
陽性界面活性成分
ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物、セチルピリジニウム塩化物等の殺菌消毒成分。黄色ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌、カンジダ等の真菌類に殺菌消毒作用を示すが、結核菌やウイルスには効果がない。

例題 アドレナリン作動成分配合の点鼻薬を過度に使用するとどうなるか。

手引きでは、鼻粘膜の血管が反応しなくなり、逆に血管が拡張して二次充血を招き、鼻づまり(鼻閉)がひどくなりやすいとされている。3日位使用しても改善がみられない場合は耳鼻科の受診などの対応が必要。

例題 点鼻薬の殺菌消毒成分が効かない病原体は何か。

ベンザルコニウム塩化物等の陽性界面活性成分は、黄色ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌、カンジダ等の真菌類には殺菌消毒作用を示すが、結核菌やウイルスには効果がないとされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第3章 Ⅷ 鼻に用いる薬

眼科用薬(点眼薬・洗眼薬)

点眼薬の4つの区分と正しい点眼方法(1滴の量と結膜嚢、目頭の押さえ、コンタクトレンズ)、主な配合成分のはたらきが分かるようになります。

眼科用薬は、目の疲れやかすみ、痒み等の症状の緩和を目的として、結膜嚢(結膜で覆われた眼瞼(まぶた)の内側と眼球の間の空間)に適用する外用薬(点眼薬、洗眼薬、コンタクトレンズ装着液)である。コンタクトレンズ装着液は、あらかじめ定められた範囲内の成分のみを含む等の基準に当てはまる製品は医薬部外品として認められている。一般用医薬品の点眼薬は、主たる配合成分から、人工涙液(涙液成分を補い、目の疲れや乾き、コンタクトレンズ装着時の不快感等に用いる)、一般点眼薬(目の疲れや痒み、結膜充血等の症状を抑える成分を配合)、抗菌性点眼薬(抗菌成分を配合し、結膜炎(はやり目)やものもらい(麦粒腫)、眼瞼炎(まぶたのただれ)等に用いる)、アレルギー用点眼薬(抗ヒスタミン成分や抗アレルギー成分を配合し、目のアレルギー症状の緩和を目的とする)に大別される。洗眼薬は目の洗浄、眼病予防に用いられ、涙液成分のほか抗炎症成分、抗ヒスタミン成分等が用いられる。

点眼方法では、容器の先端が眼瞼(まぶた)や睫毛(まつげ)に触れると雑菌が薬液に混入して汚染を生じる原因となるため、触れないように注意しながら1滴ずつ正確に点眼する。1滴の薬液の量は約50μLであるのに対して結膜嚢の容積は30μL程度とされており、一度に何滴も点眼しても効果が増すわけではなく、むしろ薬液が鼻腔内へ流れ込み、鼻粘膜や喉から吸収されて副作用を起こしやすくなる。点眼後はしばらく眼瞼を閉じて薬液を結膜嚢内に行き渡らせ、その際、目頭を押さえると薬液が鼻腔内へ流れ込むのを防ぐことができ、効果的とされる。別の人が使用している点眼薬は中身が汚染されている可能性があり共用は避ける。容器に記載されている使用期限は未開封の状態におけるものである。

コンタクトレンズをしたままでの点眼は、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズに関わらず、添付文書に使用可能と記載されていない限り行うべきでない。通常、ソフトコンタクトレンズは水分を含みやすく、防腐剤(ベンザルコニウム塩化物、パラオキシ安息香酸ナトリウム等)などの配合成分がレンズに吸着されて角膜に障害を引き起こす原因となるおそれがあるため、装着したままの点眼は避けることとされている製品が多い。ただし1回使い切りタイプとして防腐剤を含まない製品では、ソフトコンタクトレンズ装着時にも使用できるものがある。

ネオスチグミンメチル硫酸塩は、コリンエステラーゼの働きを抑える作用を示し、毛様体におけるアセチルコリンの働きを助けることで、目の調節機能を改善する効果を目的として用いられる。目の充血を除去する目的では、結膜を通っている血管を収縮させるナファゾリン塩酸塩、ナファゾリン硝酸塩、エフェドリン塩酸塩、テトラヒドロゾリン塩酸塩等のアドレナリン作動成分が配合される場合があるが、緑内障と診断された人では眼圧の上昇をまねき、緑内障を悪化させたり治療を妨げるおそれがあるため使用前に相談がなされるべきで、連用又は頻回に使用すると異常なまぶしさを感じたり、かえって充血を招くことがある。抗炎症成分としてはグリチルリチン酸二カリウム、ベルベリン硫酸塩、イプシロン-アミノカプロン酸(炎症の原因となる物質の生成を抑える)、プラノプロフェン(非ステロイド性抗炎症成分)が、組織修復成分としてアズレンスルホン酸ナトリウムやアラントインが、収斂成分として硫酸亜鉛水和物(タンパク質と結合して皮膜を形成し保護)が、目の乾きの改善にはコンドロイチン硫酸ナトリウムや精製ヒアルロン酸ナトリウム等が用いられる。

目の痒みを抑える成分としては、ヒスタミンの働きを抑えるジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ケトチフェンフマル酸塩等の抗ヒスタミン成分が配合されている場合があり、鼻炎用点鼻薬と併用した場合には眠気が現れることがあるため、乗物又は機械類の運転操作を避ける必要がある。抗アレルギー成分のクロモグリク酸ナトリウムは肥満細胞からのヒスタミン遊離を抑え、通常、抗ヒスタミン成分と組み合わせて配合されるが、アレルギー性でない結膜炎等には無効である。抗菌成分としては、細菌感染(ブドウ球菌や連鎖球菌)による結膜炎やものもらい(麦粒腫)、眼瞼炎などの化膿性の症状の改善を目的として、スルファメトキサゾール等のサルファ剤が用いられる。すべての細菌に対して効果があるわけではなく、ウイルスや真菌の感染に対する効果はないので、3〜4日使用しても症状の改善がみられない場合には眼科専門医の診療を受けるなどの対応が必要で、サルファ剤によるアレルギー症状を起こしたことがある人では使用を避けるべきである。ホウ酸は洗眼薬として結膜嚢の洗浄・消毒に用いられるほか、防腐効果を期待して点眼薬の添加物(防腐剤)として配合されることもある。

受診勧奨としては、一般用医薬品の点眼薬には緑内障の症状を改善できるものはなく、配合成分によっては緑内障の悪化につながるおそれもある。目の痛みが激しい場合には、急性緑内障、角膜潰瘍、眼球への外傷等を生じている可能性があり、すみやかに眼科専門医による適切な処置が施されなければ視力障害等の後遺症を生じるおそれがある。目の症状は目以外の病気による可能性、特に脳が原因であることも多く知られており、目に何らかの異常が現れたときには医療機関を受診し専門医の診療を受けるよう促すべきとされている。

眼科用薬の主な配合成分
成分名分類はたらき注意
ネオスチグミンメチル硫酸塩調節機能改善成分コリンエステラーゼを抑え、毛様体のアセチルコリンの働きを助ける
ナファゾリン塩酸塩、テトラヒドロゾリン塩酸塩等アドレナリン作動成分結膜の血管を収縮させ目の充血を除去緑内障の人は相談。連用・頻回使用で異常なまぶしさや、かえって充血
イプシロン-アミノカプロン酸、プラノプロフェン抗炎症成分炎症の原因となる物質の生成を抑えるプラノプロフェンは非ステロイド性抗炎症成分
アズレンスルホン酸ナトリウム、アラントイン組織修復成分炎症を生じた眼粘膜の組織修復を促す
硫酸亜鉛水和物収斂成分眼粘膜のタンパク質と結合して皮膜を形成し、外部の刺激から保護
コンドロイチン硫酸ナトリウム、精製ヒアルロン酸ナトリウム目の乾きを改善する成分角膜の乾燥を防ぐ
ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩等抗ヒスタミン成分ヒスタミンの働きを抑え、目の痒みを和らげる鼻炎用点鼻薬と併用すると眠気。運転操作を避ける
クロモグリク酸ナトリウム抗アレルギー成分肥満細胞からのヒスタミン遊離を抑えるアレルギー性でない結膜炎等には無効。まれにアナフィラキシー
スルファメトキサゾール等(サルファ剤)抗菌成分細菌感染による結膜炎・ものもらい・眼瞼炎等の化膿性の症状を改善ウイルス・真菌には無効。3〜4日で改善なければ眼科受診
ホウ酸抗菌成分結膜嚢の洗浄・消毒。点眼薬の防腐剤としても
結膜嚢
結膜で覆われた眼瞼(まぶた)の内側と眼球の間の空間。眼科用薬はここに適用する。容積は30μL程度とされ、1滴の薬液の量(約50μL)より小さい。
人工涙液
涙液成分を補うことを目的とする点眼薬。目の疲れや乾き、コンタクトレンズ装着時の不快感等に用いられる。
サルファ剤
スルファメトキサゾール等の抗菌成分。細菌感染による結膜炎やものもらい、眼瞼炎などの化膿性の症状の改善に用いられるが、すべての細菌に効果があるわけではなく、ウイルスや真菌には効果がない。
ネオスチグミンメチル硫酸塩
コリンエステラーゼの働きを抑え、毛様体におけるアセチルコリンの働きを助けることで、目の調節機能を改善する成分。

例題 一度に何滴も点眼すると効果は増すか。

増さない。手引きでは、1滴の薬液の量は約50μLであるのに対して結膜嚢の容積は30μL程度とされており、何滴も点眼するとむしろ薬液が鼻腔内へ流れ込み、鼻粘膜や喉から吸収されて副作用を起こしやすくなるとされている。

例題 点眼後に目頭を押さえるのはなぜか。

手引きでは、点眼後にしばらく眼瞼(まぶた)を閉じて薬液を結膜嚢内に行き渡らせる際、目頭を押さえると薬液が鼻腔内へ流れ込むのを防ぐことができ、効果的とされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第3章 Ⅸ 眼科用薬

皮膚・歯や口中・禁煙

皮膚に用いる薬(その1)殺菌消毒成分と抗炎症成分

きず口の殺菌消毒成分の効き目の範囲と、ステロイド性・非ステロイド性抗炎症成分の使用上の注意(長期連用・広範囲・化膿部位・光線過敏症)を区別できるようになります。

外皮用薬は、皮膚表面に生じた創傷や症状、又は皮膚の下にある毛根、血管、筋組織、関節等の症状を改善・緩和するため、外用局所に直接適用される医薬品である。適用する皮膚表面に汚れや皮脂が多く付着していると有効成分の浸透性が低下するため、患部を清浄にしてから使用することが重要で、表皮の角質層が柔らかくなり有効成分が浸透しやすくなることから、入浴後に用いるのが効果的とされる。剤形による注意として、塗り薬はいったん手の甲などに必要量を取ってから患部に塗布することが望ましく、貼付剤は同じ部位に連続して貼付するとかぶれ等を生じやすくなる。スプレー剤・エアゾール剤は目の周囲や粘膜への使用を避け、患部から十分離して噴霧し、連続して噴霧する時間は3秒以内とすることが望ましい。

きず口等の殺菌消毒成分は、それぞれ効き目の範囲が異なる。アクリノールは黄色の色素で、連鎖球菌、黄色ブドウ球菌などの化膿菌に殺菌消毒作用を示すが、真菌、結核菌、ウイルスには効果がなく、比較的刺激性が低く創傷患部にしみにくい。オキシドール(過酸化水素水)の作用は、活性酸素による酸化と発生する酸素の泡立ちによる物理的な洗浄効果で、持続性は乏しく組織への浸透性も低い。ヨウ素系(ポビドンヨード、ヨードチンキ)は結核菌を含む一般細菌類、真菌類、ウイルスに殺菌消毒作用を示すが、殺菌力はアルカリ性になると低下するため石けん分をよく洗い落としてから使用する。まれにショック(アナフィラキシー)を生じることがあり、ヨウ素に対するアレルギーの既往がある人は使用を避ける。クロルヘキシジングルコン酸塩・クロルヘキシジン塩酸塩は一般細菌類、真菌類に比較的広い殺菌消毒作用を示すが、結核菌やウイルスには作用がない。消毒用エタノールは皮膚刺激性が強く、脱脂綿やガーゼに浸して患部に貼付することは避けるべきとされる。

ステロイド性抗炎症成分(デキサメタゾン、プレドニゾロン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン等)は、副腎皮質ホルモンと共通する化学構造(ステロイド骨格)を持つ化合物で、患部局所の炎症を抑え、特に痒みや発赤などの皮膚症状を抑える。一方で末梢組織の免疫機能を低下させる作用も示すため、水痘(水疱瘡)、みずむし、たむし等又は化膿している患部には使用を避ける。体の一部分に生じた一時的な皮膚症状の緩和が目的であり、広範囲に生じた皮膚症状や慢性の湿疹・皮膚炎を対象とするものではない。コルチゾンに換算して1g又は1mL中0.025mgを超えて含有する製品では特に長期連用を避け、患部が広範囲の人は短期間でも吸収量が相対的に多くなるため、適用部位を限る等、過度の使用を避けるべきである。

非ステロイド性抗炎症成分(NSAIDs)のうち、インドメタシン、ケトプロフェン、フェルビナク、ピロキシカム、ジクロフェナクナトリウムは、皮膚の下層にある骨格筋や関節部まで浸透してプロスタグランジンの産生を抑え、筋肉痛、関節痛、腰痛、捻挫等に用いられる。殺菌作用はないため皮膚感染症には効果がなく、みずむし、たむし等又は化膿している患部への使用は避ける。喘息を起こしたことがある人は使用を避け、妊婦は胎児への影響を考慮して使用を避けるべきとされる。ケトプロフェンはまれに重篤な光線過敏症を生じることがあり、チアプロフェン酸、スプロフェン、フェノフィブラート、オキシベンゾン、オクトクリレンでアレルギーを起こしたことがある人は使用を避ける。ピロキシカムにも光線過敏症の副作用があり、野外活動が多い人は他の成分の製品を選ぶことが望ましい。ウフェナマートは皮膚の炎症によるほてりや痒み等の緩和に、イブプロフェンピコノールは専らにきび治療薬として用いられる。

皮膚に用いる薬(その1)の主な成分
成分名分類はたらき注意
アクリノール殺菌消毒黄色の色素。連鎖球菌・黄色ブドウ球菌などの化膿菌に殺菌消毒作用。真菌・結核菌・ウイルスには効果がない比較的刺激性が低い。衣類等に付くと黄色く着色
オキシドール(過酸化水素水)殺菌消毒化膿菌に殺菌消毒作用。活性酸素による酸化と酸素の泡立ちによる洗浄効果持続性が乏しく浸透性も低い。目の周りは避ける
ポビドンヨード殺菌消毒(ヨウ素系)結核菌を含む一般細菌類・真菌類・ウイルスに殺菌消毒作用。PVPにヨウ素を結合させ徐々に遊離アルカリ性で殺菌力低下。ヨウ素アレルギー既往は使用を避ける。まれにショック
ヨードチンキ殺菌消毒(ヨウ素系)ヨウ素・ヨウ化カリウムをエタノールに溶解したもの皮膚刺激性が強い。粘膜・目の周りは避け、化膿部位では悪化のおそれ
クロルヘキシジングルコン酸塩殺菌消毒一般細菌類・真菌類に比較的広い殺菌消毒作用結核菌・ウイルスには作用がない
エタノール(消毒用エタノール)殺菌消毒手指・皮膚の消毒、創傷面の殺菌・消毒刺激性が強い。脱脂綿等に浸して貼付しない。粘膜・目の周りは避ける
デキサメタゾン、プレドニゾロン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン等ステロイド性抗炎症患部局所の炎症を抑え、痒みや発赤を抑える水痘・みずむし・たむし・化膿部位は避ける。長期連用・広範囲の使用を避ける
ウフェナマート非ステロイド性抗炎症細胞膜の安定化、活性酸素の生成抑制等により抗炎症作用。ほてり・痒み等の緩和刺激感(ヒリヒリ感)、熱感、乾燥感
インドメタシン、ケトプロフェン、フェルビナク、ピロキシカム、ジクロフェナクナトリウム非ステロイド性抗炎症骨格筋や関節部まで浸透しプロスタグランジンの産生を抑える。筋肉痛・関節痛等喘息既往・妊婦は避ける。みずむし等・化膿部位は避ける。ケトプロフェン・ピロキシカムは光線過敏症
サリチル酸メチル、サリチル酸グリコールその他(鎮痛)主として局所刺激により血行を促し、知覚神経に軽い麻痺を起こして鎮痛
イブプロフェンピコノールその他吹き出物(面皰)の拡張を抑える。専らにきび治療薬外用での鎮痛作用はほとんど期待されない
ステロイド性抗炎症成分
副腎皮質ホルモンと共通する化学構造(ステロイド骨格)を持つ人工合成の抗炎症成分。患部局所の炎症を抑える一方、末梢組織の免疫機能を低下させるため、水痘・みずむし・たむし・化膿部位には使用を避ける。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
分子内にステロイド骨格を持たず、プロスタグランジンの産生を抑える作用(抗炎症作用)を示す成分の総称。外用ではインドメタシン、ケトプロフェン、フェルビナク、ピロキシカム等がある。
光線過敏症
紫外線により、使用中又は使用後しばらくしてから重篤な症状が現れることがある副作用。ケトプロフェン配合の外皮用薬では、使用中及び使用後も当分の間、天候にかかわらず塗布部を紫外線に当てないようにする。
アレルギー感作
その物質をアレルゲンとして免疫機構が認識するようになること。感作された物質と化学構造が類似する成分でもアレルギーを起こすおそれが大きくなる。

例題 ヨウ素系殺菌消毒成分を石けんと併用するときの注意は?

ヨウ素の殺菌力はアルカリ性になると低下するため、石けん分をよく洗い落としてから使用する。『高まる』と入れ替える誤り選択肢が定番。

例題 ケトプロフェン配合の外皮用薬を使い終えたら、すぐに戸外活動をしてよい?

手引きでは、使用中だけでなく使用後も当分の間は、天候にかかわらず戸外活動を避け、塗布部を衣服等で覆い紫外線に当たるのを避ける必要があるとされている。ラップフィルム等の通気性の悪いもので覆うのは適当でない。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第3章 Ⅹ 皮膚に用いる薬

皮膚に用いる薬(その2)保護・抗菌・抗真菌・毛髪用薬

きず口の保護・保湿成分、にきびの抗菌成分、みずむしの抗真菌成分と剤形の選び方、頭皮・毛根に作用する成分、温感・冷感刺激成分を整理します。

きず口の保護と修復に関わる成分として、酸化亜鉛は患部のタンパク質と結合して皮膜を形成し、皮膚を保護する。ピロキシリン(ニトロセルロース)も創傷面に薄い皮膜を形成して保護する目的で用いられる。いずれも患部が浸潤又は化膿している場合や傷が深いときは、表面だけを乾燥させてかえって症状を悪化させるおそれがあり、使用を避ける。組織修復成分としてアラントインやビタミンA油、血管収縮成分(止血)としてナファゾリン塩酸塩等のアドレナリン作動成分が配合される。血行促進成分のヘパリン類似物質は抗炎症作用や保湿作用も期待されるが、血液凝固を抑える働きがあるため、出血しやすい人や出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑症など)の診断を受けた人では使用を避ける。

角質軟化成分では、サリチル酸が角質成分を溶解することにより角質軟化作用を示し、抗菌・抗真菌・抗炎症作用も期待されてにきび用薬等にも配合される。イオウは角質層のケラチンを変質させることにより角質軟化作用を示し、抗菌・抗真菌作用も期待される。保湿成分としては、グリセリン、尿素、白色ワセリン、オリブ油、ヘパリン類似物質等が角質層の水分保持量を高め、皮膚の乾燥を改善する目的で用いられる。

にきび、吹き出物は最も一般的に生じる化膿性皮膚疾患で、皮膚常在菌であるにきび桿菌(アクネ菌)が毛穴で繁殖して生じる。洗顔等により皮膚を清浄に保つことが基本で、油分の多い化粧品は悪化させることがある。抗菌成分は作用機序で区別する。サルファ剤(スルファジアジン等)は細菌のDNA合成を阻害、バシトラシンは細胞壁合成を阻害、フラジオマイシン硫酸塩とクロラムフェニコールはタンパク質合成を阻害することにより抗菌作用を示す。

みずむし、たむしは皮膚糸状菌(白癬菌)という真菌類が皮膚に寄生して起こる表在性真菌感染症で、部位により、みずむし(手足の白癬)、ぜにたむし(体部白癬)、いんきんたむし(頑癬)と呼ばれる。剤形の選択が重要で、一般的に、じゅくじゅくと湿潤している患部には軟膏が適すとされ、液剤は有効成分の浸透性が高いが刺激が強く、皮膚が厚く角質化している部分に適している。湿疹か皮膚糸状菌による感染かはっきりしない場合に抗真菌成分を使用することは適当でない。抗真菌成分は、イミダゾール系(オキシコナゾール硝酸塩、クロトリマゾール、ミコナゾール硝酸塩等)が皮膚糸状菌の細胞膜を構成する成分の産生を妨げ、又は細胞膜の透過性を変化させて増殖を抑える。アモロルフィン塩酸塩・ブテナフィン塩酸塩・テルビナフィン塩酸塩は細胞膜を構成する成分の産生を妨げ、シクロピロクスオラミンは細胞膜の輸送機能を妨げ、ウンデシレン酸は患部を酸性にして発育を抑え、ピロールニトリンは菌の呼吸や代謝を妨げる(単独では作用が弱く他の成分と組み合わせる)。2週間位使用しても症状が良くならない場合は、他の薬に切り換えず、いったん使用を中止して医療機関(皮膚科)を受診する。

毛髪用薬では、カルプロニウム塩化物が末梢組織においてアセチルコリンに類似した作用(コリン作用)を示し、頭皮の血管を拡張して毛根への血行を促す発毛効果を期待して用いられ、副作用としてコリン作用による発汗、寒気、震え、吐きけが現れることがある。エストラジオール安息香酸エステルは女性ホルモン成分で、妊婦は使用を避けるべきである。生薬ではカシュウ(タデ科ツルドクダミの塊根。頭皮の脂質代謝を高め余分な皮脂を取り除く)、チクセツニンジン(血行促進・抗炎症)、ヒノキチオール(抗菌・抗炎症)が用いられる。局所刺激成分では、冷感刺激成分(メントール、カンフル、ハッカ油、ユーカリ油等)が打撲や捻挫など急性の腫れや熱感を伴う症状に適すとされ、温感刺激成分(カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミド等)を主薬とする貼付剤は、コタツ等の保温器具で温めると強い痛みや低温やけどのおそれがあるため、入浴1時間前には剥がし、入浴後はほてりが鎮まってから貼付する。

皮膚に用いる薬(その2)の主な成分
成分名分類はたらき注意
酸化亜鉛収斂・皮膚保護患部のタンパク質と結合して皮膜を形成し保護浸潤・化膿している患部、深い傷には使用を避ける
アラントイン、ビタミンA油組織修復損傷皮膚の組織の修復を促す
ナファゾリン塩酸塩血管収縮創傷面の血管を収縮させて止血
ヘパリン類似物質血行促進血行促進のほか抗炎症作用・保湿作用も期待血液凝固を抑えるため出血性血液疾患の人は使用を避ける
サリチル酸角質軟化角質成分を溶解。抗菌・抗真菌・抗炎症作用も期待
イオウ角質軟化角質層のケラチンを変質させる。抗菌・抗真菌作用も期待
グリセリン、尿素、白色ワセリン等保湿角質層の水分保持量を高め皮膚の乾燥を改善
サルファ剤(スルファジアジン等)抗菌細菌のDNA合成を阻害
バシトラシン抗菌細菌の細胞壁合成を阻害
フラジオマイシン硫酸塩、クロラムフェニコール抗菌細菌のタンパク質合成を阻害
イミダゾール系(オキシコナゾール硝酸塩、ミコナゾール硝酸塩等)抗真菌皮膚糸状菌の細胞膜成分の産生を妨げ、透過性を変化させるかぶれたことがある人は他のイミダゾール系も避ける
アモロルフィン塩酸塩、ブテナフィン塩酸塩、テルビナフィン塩酸塩抗真菌皮膚糸状菌の細胞膜を構成する成分の産生を妨げる
シクロピロクスオラミン抗真菌細胞膜に作用し増殖・生存に必要な物質の輸送機能を妨げる
ウンデシレン酸、ウンデシレン酸亜鉛抗真菌患部を酸性にして皮膚糸状菌の発育を抑える
ピロールニトリン抗真菌菌の呼吸や代謝を妨げる単独では作用が弱く他の抗真菌成分と組み合わせる
カルプロニウム塩化物頭皮・毛根コリン作用で頭皮の血管を拡張し毛根への血行を促す副作用として発汗、寒気、震え、吐きけ
メントール、カンフル、ハッカ油、ユーカリ油冷感刺激血行促進、知覚神経の麻痺による鎮痛・鎮痒急性の腫れ・熱感を伴う症状に適す。目の周り・粘膜は避ける
カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミド等温感刺激末梢血管を拡張させて血行を促す保温器具で温めない。入浴1時間前に剥がし、入浴後はほてりが鎮まってから貼付
皮膚糸状菌(白癬菌)
みずむし、たむし等の原因となる真菌類の一種。皮膚に寄生して表在性真菌感染症を起こす。スリッパやタオルなどを介して他の保菌者やペットから感染することも多い。
うおのめ(鶏眼)とたこ(胼胝)
いずれも機械的刺激や圧迫の繰り返しで角質層が厚くなったもの。うおのめは角質の芯が真皮にくい込み圧迫されると痛むのに対し、たこは角質層の単純な肥厚で芯がなく、通常、痛みは伴わない。
毛嚢炎(疔)
にきび桿菌ではなく黄色ブドウ球菌などの化膿菌が毛穴から侵入し、皮脂腺、汗腺で増殖して生じた吹き出物。にきびに比べて痛みや腫れが顕著で、顔面に生じたものを面疔という。
コリン作用
アセチルコリンに類似した作用。カルプロニウム塩化物はコリンエステラーゼによる分解を受けにくく作用が持続し、副作用として局所又は全身性の発汗、それに伴う寒気、震え、吐きけが現れることがある。

例題 じゅくじゅくと湿潤しているみずむしの患部に適した剤形は?

手引きでは、一般的にじゅくじゅくと湿潤している患部には軟膏が適すとされている。液剤は浸透性が高いが刺激が強く、皮膚が厚く角質化している部分に適している。

例題 サルファ剤とバシトラシンの作用機序の違いは?

サルファ剤は細菌のDNA合成を阻害し、バシトラシンは細胞壁合成を阻害する。フラジオマイシン硫酸塩・クロラムフェニコールはタンパク質合成を阻害する。機序の入れ替えが定番の出題。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第3章 Ⅹ 皮膚に用いる薬

歯や口中に用いる薬と禁煙補助剤

歯痛薬・歯槽膿漏薬・口内炎用薬の配合成分と、禁煙補助剤(咀嚼剤)の正しい使い方・使用を避ける人を整理します。

歯痛は多くの場合、歯の齲蝕(むし歯)とそれに伴う歯髄炎によって起こる。歯痛薬(外用)は齲蝕による歯痛を応急的に鎮める医薬品であり、歯の齲蝕が修復されることはなく、早めに医療機関(歯科)を受診して治療を受けることが基本となる。局所麻酔成分(アミノ安息香酸エチル、ジブカイン塩酸塩、テーカイン等)は、齲蝕により露出した歯髄を通っている知覚神経の伝達を遮断して痛みを鎮める。殺菌消毒成分(フェノール、歯科用フェノールカンフル、オイゲノール、セチルピリジニウム塩化物等)は齲蝕部分の細菌の繁殖を抑えるが、粘膜刺激を生じることがあるため歯以外の口腔粘膜や唇に付着しないよう注意する。生薬のサンシシ(アカネ科のクチナシの果実)は抗炎症作用を期待して用いられる。

歯槽膿漏薬は、歯肉炎・歯槽膿漏の諸症状(歯肉からの出血や膿、腫れ、口臭等)の緩和を目的とし、外用薬のほか内服薬もあり、併せて用いると効果的である。外用薬には殺菌消毒成分(セチルピリジニウム塩化物、クロルヘキシジングルコン酸塩等)、抗炎症成分(グリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸)、止血成分(カルバゾクロム)、組織修復成分(アラントイン)等が配合される。口腔内に適用されるステロイド性抗炎症成分は、含有量によらず長期連用を避ける必要がある。内服薬には、カルバゾクロムやフィトナジオン(ビタミンK1、血液の凝固機能を正常に保つ)、銅クロロフィリンナトリウム(組織修復のほか口臭を抑える)、ビタミンC(コラーゲン代謝を改善し毛細血管を強化)、ビタミンE(歯周組織の血行を促す)等が配合される。

口内炎用薬は、口内炎、舌炎の緩和を目的として口腔内局所に適用される外用薬である。抗炎症成分としてグリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸等が用いられ、口腔粘膜の組織修復を促す作用を期待してアズレンスルホン酸ナトリウム(水溶性アズレン)が配合されることもある。殺菌消毒成分としてセチルピリジニウム塩化物、クロルヘキシジン塩酸塩、アクリノール、ポビドンヨード等、生薬としてシコン(ムラサキ科のムラサキの根。組織修復促進・抗菌)が用いられる。口内炎や舌炎は通常1〜2週間で自然寛解するが、一度に複数箇所に発生して食事に著しい支障を来す場合や、長期間症状が長引く場合、再発を繰り返す場合には受診が必要とされる。漢方処方製剤の茵蔯蒿湯は、体力中等度以上で口渇があり、尿量少なく、便秘するものの口内炎等に適すとされ、構成生薬としてダイオウを含む。

禁煙補助剤は、ニコチン置換療法に使用されるニコチンを有効成分とする医薬品で、口腔粘膜から吸収させる咀嚼剤と、1日1回皮膚に貼付するパッチ製剤がある。咀嚼剤は、菓子のガムのように噛むと唾液が多く分泌され、ニコチンが唾液とともに飲み込まれて口腔粘膜からの吸収が十分なされず、吐きけや腹痛等の副作用も現れやすくなるため、ゆっくりと断続的に噛む。大量に使用しても禁煙達成が早まるものではなく、1度に2個以上の使用は避ける。口腔内が酸性になるとニコチンの吸収が低下するため、コーヒーや炭酸飲料など口腔内を酸性にする食品を摂取した後しばらくは使用を避ける。使用を避ける必要がある人として、顎の関節に障害がある人(咀嚼剤)、脳梗塞・脳出血等の急性期脳血管障害や重い心臓病等の基礎疾患がある人(3ヶ月以内の心筋梗塞発作がある人、重い狭心症や不整脈と診断された人)、うつ病と診断されたことのある人、妊婦又は妊娠していると思われる女性、母乳を与える女性が手引きに挙げられている。非喫煙者はニコチンに対する耐性がなく、吐きけ、めまい、腹痛などの症状が現れやすい。ニコチンは交感神経系を興奮させる作用を示し、アドレナリン作動成分が配合された医薬品との併用によりその作用を増強させるおそれがある。禁煙補助剤は喫煙を完全に止めたうえで使用することとされ、使用中又は使用直後の喫煙は血中のニコチン濃度が急激に高まるおそれがあり避ける。高血圧、糖尿病(インスリン製剤を使用している人)、心臓疾患等の診断を受けた人は、使用前に医師又は薬剤師に相談するなどの対応が必要である。

歯や口中に用いる薬・禁煙補助剤の主な成分
成分名分類はたらき注意
アミノ安息香酸エチル、ジブカイン塩酸塩、テーカイン歯痛薬|局所麻酔露出した歯髄の知覚神経の伝達を遮断して痛みを鎮める
フェノール、歯科用フェノールカンフル、オイゲノール歯痛薬|殺菌消毒齲蝕部分の細菌の繁殖を抑える口腔粘膜や唇に付着しないよう注意
サンシシ歯痛薬|生薬抗炎症作用(アカネ科のクチナシの果実)
セチルピリジニウム塩化物、クロルヘキシジングルコン酸塩歯槽膿漏薬|殺菌消毒歯肉溝での細菌の繁殖を抑えるクロルヘキシジンは口腔内適用でまれにショック
カルバゾクロム歯槽膿漏薬|止血炎症を起こした歯周組織からの出血を抑える
フィトナジオン(ビタミンK1)歯槽膿漏薬(内服)|止血血液の凝固機能を正常に保つ
銅クロロフィリンナトリウム歯槽膿漏薬(内服)|組織修復歯周組織の修復を促し、歯肉炎に伴う口臭を抑える
ビタミンC(アスコルビン酸等)歯槽膿漏薬(内服)|ビタミンコラーゲン代謝を改善し、毛細血管を強化
アズレンスルホン酸ナトリウム(水溶性アズレン)口内炎用薬|組織修復口腔粘膜の組織修復を促す
シコン口内炎用薬|生薬組織修復促進、抗菌(ムラサキ科のムラサキの根)
茵蔯蒿湯口内炎用薬|漢方体力中等度以上で口渇があり、便秘するものの口内炎等に適すダイオウを含む。まれに重篤な肝機能障害
ニコチン禁煙補助剤ニコチン置換療法に使用。咀嚼剤とパッチ製剤1度に2個以上使用しない。コーヒー・炭酸飲料の後は避ける。重い心臓病・うつ病診断歴・妊婦・授乳婦等は使用を避ける
歯槽膿漏
歯と歯肉の境目にある溝(歯肉溝)で細菌が繁殖して起こる歯肉炎が重症化し、炎症が歯周組織全体に広がった状態(歯周炎)。歯肉からの出血や膿、腫れ、口臭、口腔内の粘り等の症状が現れる。
ニコチン置換療法
ニコチンの摂取方法を喫煙以外に換えて離脱症状の軽減を図りながら徐々に摂取量を減らし、最終的にニコチン摂取をゼロにする方法。禁煙補助剤はこの療法に使用される医薬品である。
ニコチン離脱症状
習慣的な喫煙により、血中ニコチン濃度の低下によって現れるイライラ感、集中困難、落ち着かない等の症状(禁断症状)。通常、禁煙開始から1〜2週間の間に起きることが多い。

例題 禁煙補助剤の咀嚼剤はどのように噛む?

手引きでは、菓子のガムのように噛むと唾液が多く分泌されてニコチンが飲み込まれ、口腔粘膜からの吸収が十分なされないため、ゆっくりと断続的に噛むこととされている。1度に2個以上の使用は避ける。

例題 銅クロロフィリンナトリウムの配合目的は?

内服の歯槽膿漏薬で、炎症を起こした歯周組織の修復を促す作用のほか、歯肉炎に伴う口臭を抑える効果も期待して配合される。止血成分(カルバゾクロム等)との入れ替えに注意。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第3章 ⅩⅠ 歯や口中に用いる薬/ⅩⅡ 禁煙補助剤

滋養強壮・漢方・衛生・検査

滋養強壮保健薬

医薬品として扱われる保健薬の範囲と、各ビタミン・カルシウム・アミノ酸成分・生薬の働きや注意(特にビタミンAと妊婦)を区別できるようになります。

滋養強壮保健薬は、体調不良を生じやすい状態や体質の改善、特定の栄養素の不足による症状の改善又は予防等を目的として、ビタミン成分、カルシウム、アミノ酸、生薬成分等が配合された医薬品である。同様にビタミン等の補給を目的とするものとして医薬部外品の保健薬があるが、その効能・効果の範囲は滋養強壮、虚弱体質の改善、病中・病後の栄養補給等に限定されている。神経痛、筋肉痛、関節痛、しみ・そばかす等のような特定部位の症状に対する効能・効果は、医薬品においてのみ認められている。また、カシュウ、ゴオウ、ゴミシ、ジオウ、ロクジョウ等の生薬成分や、1日最大量が既定値を超えるビタミン成分も、医薬品としてのみ認められている。

1種類以上のビタミンを主薬とし、そのビタミンの有効性が期待される症状及びその補給に用いられることを目的とする内服薬を、ビタミン主薬製剤(いわゆるビタミン剤)という。ビタミンは「微量で体内の代謝に重要な働きを担うにもかかわらず、生体が自ら産生することができない、又は産生されても不十分であるため外部から摂取する必要がある化合物」と定義され、微量でビタミンと同様に働く又はビタミンの働きを助ける化合物はビタミン様物質と呼ばれる。ビタミン成分等は、多く摂取したからといって適用となっている症状の改善が早まるものではなく、むしろ脂溶性ビタミンでは、過剰摂取により過剰症を生じるおそれがある。

ビタミンAは、夜間視力を維持したり、皮膚や粘膜の機能を正常に保つために重要な栄養素で、レチノール酢酸エステル、肝油等が主薬とされ、目の乾燥感、夜盲症(とり目)の症状の緩和等に用いられる。一般用医薬品におけるビタミンAの1日分量は4000国際単位が上限となっているが、妊娠3ヶ月前から妊娠3ヶ月までの間にビタミンAを1日10000国際単位以上摂取した妊婦から生まれた新生児において先天異常の割合が上昇したとの報告があり、妊娠3ヶ月以内の妊婦、妊娠していると思われる女性及び妊娠を希望する女性では、医薬品以外からのビタミンAの摂取を含め、過剰摂取に留意する必要がある(なお、野菜類のβ-カロテンは必要な分だけがビタミンAに転換されるため、過剰摂取につながる心配はないとされる)。ビタミンDは、腸管でのカルシウム吸収及び尿細管でのカルシウム再吸収を促して骨の形成を助ける栄養素で、エルゴカルシフェロール又はコレカルシフェロールが主薬とされ、くる病の予防等に用いられる。過剰症として高カルシウム血症、異常石灰化が知られており、高カルシウム血症は自覚症状がないこともあるが、初期症状として便秘、吐きけ、嘔吐、腹痛、食欲減退、多尿等が現れる。ビタミンEは、体内の脂質を酸化から守り、細胞の活動を助ける栄養素で、血流を改善させる作用もあり、トコフェロール等が主薬とされる。下垂体や副腎系に作用してホルモン分泌の調節に関与するとされ、ときに生理が早く来たり、経血量が多くなったりすることがある。これは一時的なものであるが、出血が長く続く場合には他の原因による不正出血も考えられるため、医療機関の受診が必要である。

ビタミンB1は、炭水化物からのエネルギー産生に不可欠な栄養素で、神経の正常な働きを維持する作用があり、腸管運動を促進する働きもある。チアミン塩化物塩酸塩等が主薬とされ、神経痛、筋肉痛・関節痛、眼精疲労、脚気等に用いられる。ビタミンB2は、脂質の代謝に関与し、皮膚や粘膜の機能を正常に保つ栄養素で、リボフラビン酪酸エステル等が主薬とされ、口角炎、口内炎、にきび等に用いられる。摂取により尿が黄色くなることがある。ビタミンB6は、タンパク質の代謝に関与し、皮膚や粘膜の健康維持、神経機能の維持に重要な栄養素で、ピリドキシン塩酸塩等が主薬とされる。ビタミンB12は、赤血球の形成を助け、神経機能を正常に保つために重要な栄養素で、シアノコバラミン等としてビタミン主薬製剤や貧血用薬等に配合される。ビタミンCは、体内の脂質を酸化から守る作用(抗酸化作用)を示し、皮膚や粘膜の機能を正常に保つ栄養素で、メラニンの産生を抑える働きもあるとされ、アスコルビン酸等が主薬とされ、しみ、そばかす等に用いられる。このほか、皮膚や粘膜などの機能維持を助ける栄養素として、ナイアシン、パントテン酸カルシウム、ビオチン等が配合されている場合がある。

カルシウムは骨や歯の形成に必要な栄養素で、筋肉の収縮、血液凝固、神経機能にも関与する。過剰症として高カルシウム血症が知られ、カルシウムを含む成分は胃腸薬等にも配合されているため、併用による過剰摂取に留意する。システインは髪や爪、肌などに存在するアミノ酸の一種で、皮膚におけるメラニンの生成を抑え、メラニンの排出を促す働きのほか、肝臓においてアセトアルデヒドの代謝を促す働きがあるとされる。アミノエチルスルホン酸(タウリン)は、筋肉や脳、心臓、目、神経等、体のあらゆる部分に存在し、細胞の機能が正常に働くために重要な物質で、肝臓機能を改善する働きがあるとされる。アスパラギン酸ナトリウムは、エネルギーの産生効率を高め、骨格筋に溜まった乳酸の分解を促す等の働きを期待して用いられる。ヘスペリジンはビタミン様物質のひとつでビタミンCの吸収を助け、コンドロイチン硫酸は軟骨組織の主成分で軟骨成分を形成及び修復する働きがあるとされる。グルクロノラクトンは、肝臓の働きを助け、肝血流を促進する働きがあり、全身倦怠感や疲労時の栄養補給を目的として配合される。ガンマ-オリザノールは、米油及び米胚芽油から見出された抗酸化作用を示す成分である。

生薬成分では、ニンジン、ジオウ、トウキ、センキュウが既定値以上配合されている生薬主薬保健薬に、虚弱体質、肉体疲労、病中病後のほか、胃腸虚弱、食欲不振、血色不良、冷え症における滋養強壮の効能が認められている。ニンジンはウコギ科のオタネニンジンの細根を除いた根等を基原とする生薬で(根を蒸したものはコウジンとも呼ばれる)、神経系の興奮や副腎皮質の機能亢進等の作用により、外界からのストレス刺激に対する抵抗力や新陳代謝を高めるとされる。インヨウカクやハンピ(ニホンマムシ等の皮及び内臓を取り除いたもの)は強壮、血行促進、強精等の作用を期待して用いられ、ヨクイニン(イネ科のハトムギの種皮を除いた種子)は肌荒れやいぼに用いられる。そのほか強壮作用を期待してタイソウ、ゴミシ、サンシュユ、サンヤク、オウギ等が配合される場合がある。数種類の生薬をアルコールで抽出した薬用酒も滋養強壮に用いられるが、血行を促進させる作用があるため手術や出産の直後等で出血しやすい人では使用を避け、アルコールを含有するため服用後は乗り物又は機械類の運転操作等を避ける。滋養強壮に用いられる漢方処方製剤には十全大補湯、補中益気湯があり、いずれも構成生薬としてカンゾウを含む。滋養強壮保健薬は、1ヶ月位服用しても症状の改善がみられない場合には、栄養素の不足以外の要因が考えられるため、漫然と使用を継続せず、症状によっては医療機関を受診する等、適切な対処が図られることが重要である。

主なビタミンの働きと注意(手引き 第3章ⅩⅢ)
ビタミン主な働き注意など
A夜間視力の維持、皮膚や粘膜の機能を正常に保つ1日分量の上限4000国際単位。妊娠3ヶ月以内の妊婦・妊娠を希望する女性等は過剰摂取に留意
D腸管でのカルシウム吸収・尿細管での再吸収を促し骨の形成を助ける過剰症として高カルシウム血症、異常石灰化
E脂質を酸化から守り細胞の活動を助ける。血流改善作用ホルモン分泌の調節に関与し、生理が早く来ることがある
B1炭水化物からのエネルギー産生に不可欠。神経の正常な働きの維持、腸管運動の促進脚気、神経痛、眼精疲労等に用いられる
B2脂質の代謝に関与し、皮膚や粘膜の機能を正常に保つ摂取により尿が黄色くなることがある
B6タンパク質の代謝に関与し、皮膚や粘膜の健康維持、神経機能の維持口角炎、口内炎、手足のしびれ等に用いられる
B12赤血球の形成を助け、神経機能を正常に保つ貧血用薬等にも配合される
C抗酸化作用。皮膚や粘膜の機能を正常に保つ。メラニン産生を抑えるしみ・そばかす、歯ぐきからの出血・鼻血の予防等に用いられる
ビタミン主薬製剤
1種類以上のビタミンを主薬とし、そのビタミンの有効性が期待される症状及びその補給に用いられることを目的とする内服薬。いわゆるビタミン剤のこと。
ビタミン様物質
不足した場合に欠乏症を生じるかどうか明らかにされていないが、微量でビタミンと同様に働く又はビタミンの働きを助ける化合物。ヘスペリジンはそのひとつでビタミンCの吸収を助けるとされる。
高カルシウム血症
血液中のカルシウム濃度が非常に高くなった状態。ビタミンDやカルシウムの過剰症として知られる。自覚症状がないこともあるが、初期症状として便秘、吐きけ、嘔吐、腹痛、食欲減退、多尿等が現れる。
くる病
ビタミンDの代謝障害によって、カルシウムやリンの吸収が進まなくなるために起こる乳幼児の骨格異常。ビタミンD主薬製剤はその予防等に用いられる。

例題 妊娠を希望する女性がビタミンA主薬製剤を求めてきた。留意すべきことは。

手引きでは、妊娠3ヶ月前から妊娠3ヶ月までの間にビタミンAを1日10000国際単位以上摂取した妊婦から生まれた新生児で先天異常の割合が上昇したとの報告があり、妊娠3ヶ月以内の妊婦、妊娠していると思われる女性及び妊娠を希望する女性では、医薬品以外からの摂取を含め過剰摂取に留意する必要があるとされている。

例題 滋養強壮保健薬を多めに服用すれば早く効くと考えてよいか。

手引きでは、多く摂取したからといって適用となっている症状の改善が早まるものではなく、滋養強壮の効果が高まるものでもないとされ、脂溶性ビタミンではむしろ過剰摂取により過剰症を生じるおそれがあるとされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第3章 ⅩⅢ 滋養強壮保健薬

漢方処方製剤・生薬製剤の考え方

漢方医学の基本(証・しばり)と、カンゾウ・マオウ・ダイオウを含む代表的な処方(防風通聖散・大柴胡湯・黄連解毒湯・防已黄耆湯・清上防風湯)の適応と注意を区別できるようになります。

漢方医学は、古来に中国から伝わり、日本において発展してきた日本の伝統医学である。漢方薬は漢方医学で用いる薬剤全体を広く表現する言葉で、基本的に生薬を組み合わせて構成された漢方処方に基づく漢方処方製剤(漢方方剤)として存在する。現代中国の中医学に基づく薬剤は中薬、韓国の韓医学で用いられる薬剤は韓方薬と呼ばれ、いずれも漢方薬とは明らかに別物である。漢方処方は、処方自体が一つの有効成分として独立したものという見方をすべきもので、使用する人の体質や症状その他の状態に適した処方を既成の処方の中から選択して用いられる。なお、漢方医学の考え方に基づかない、生薬を使用した日本の伝統薬も存在し、漢方処方製剤と合わせて生薬製剤と呼ばれる。

漢方薬を使用する場合、漢方独自の病態認識である「証」(虚実、陰陽、気血水、五臓など)に基づいて用いることが、有効性及び安全性を確保するために重要である。一般用漢方処方の効能効果では、「証」という専門用語を避け、「しばり」(使用制限)として記載されている。虚実の概念では、実の病態には「体力が充実して」、中間の病態には「体力中等度で」、虚の病態には「体力虚弱で」、虚実に関わらず幅広く用いられるものには「体力に関わらず」と表現される。陰陽では、「陽」の病態は「のぼせぎみで顔色が赤く」などの熱症状、「陰」の病態は「疲れやすく冷えやすいものの」などの寒性の症状で表現される。証に合った処方が選択されれば効果が期待できるが、合わないものが選択された場合には、効果が得られないばかりでなく、副作用を生じやすくなる。

一般の生活者においては「漢方薬はすべからく作用が穏やかで、副作用が少ない」などという誤った認識がなされていることがあるが、漢方処方製剤においても間質性肺炎や肝機能障害のような重篤な副作用が起きることがあり、証に適さない処方が使用されたために症状の悪化や副作用を引き起こす場合もある。漢方処方製剤は、用法用量において適用年齢の下限が設けられていない場合であっても、生後3ヶ月未満の乳児には使用しないこととされている。また、症状の原因となる体質の改善を主眼としているものが多く、比較的長期間(1ヶ月位)継続して服用されることがある。処方によっては服用によりまれに症状が進行することがあるものもあり、一定期間使用した後も専門家に相談する等、症状の経過や副作用の発現に留意する。

構成生薬としてカンゾウ又はマオウを含む漢方処方、ダイオウを含む漢方処方には、それぞれ共通する留意点がある。この節の処方では、防已黄耆湯・清上防風湯はカンゾウを、大柴胡湯はダイオウを、防風通聖散はカンゾウ・マオウ・ダイオウの3つすべてを構成生薬として含む。また、肥満症又は肥胖症に用いられる漢方処方製剤(防已黄耆湯、防風通聖散、大柴胡湯)は、どのような肥満症にも適すわけではない。基本的に肥満症には、糖質や脂質を多く含む食品の過度の摂取を控える、日常生活に適度な運動を取り入れる等、生活習慣の改善が図られることが重要である。

黄連解毒湯は、体力中等度以上で、のぼせぎみで顔色赤く、いらいらして落ち着かない傾向のあるものの鼻出血、不眠症、神経症、胃炎、二日酔い、血の道症、めまい、動悸、更年期障害、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ、口内炎に適すとされるが、体の虚弱な人では不向きとされる。まれに重篤な副作用として肝機能障害、間質性肺炎、腸間膜静脈硬化症が起こることが知られ、鼻出血、二日酔いに用いられる場合には、5〜6回使用しても症状の改善がみられないときは、いったん使用を中止して専門家に相談する。防已黄耆湯は、体力中等度以下で、疲れやすく、汗のかきやすい傾向があるものの肥満に伴う関節の腫れや痛み、むくみ、多汗症、肥満症(水ぶとり)に適すとされる。まれに重篤な副作用として肝機能障害、間質性肺炎、偽アルドステロン症が起こることが知られている。防風通聖散は、体力充実して、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの高血圧や肥満に伴う動悸・肩こり・のぼせ・むくみ・便秘、蓄膿症、湿疹・皮膚炎、ふきでもの、肥満症に適すとされるが、体の虚弱な人、胃腸が弱く下痢しやすい人、発汗傾向の著しい人では不向きとされる。小児に対する適用はなく、他の瀉下薬との併用は避ける。まれに重篤な副作用として肝機能障害、間質性肺炎、偽アルドステロン症、腸間膜静脈硬化症が起こることが知られ、便秘に用いられる場合には1週間位使用しても改善がみられないときは、いったん使用を中止して専門家に相談する。

大柴胡湯は、体力が充実して、脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく、便秘の傾向があるものの胃炎、常習便秘、高血圧や肥満に伴う肩こり・頭痛・便秘、神経症、肥満症に適すとされるが、体の虚弱な人、胃腸が弱く下痢しやすい人では不向きとされる。まれに重篤な副作用として肝機能障害、間質性肺炎が起こることが知られ、常習便秘、高血圧に伴う便秘に用いられる場合には1週間位使用しても改善がみられないときは、いったん使用を中止して専門家に相談する。清上防風湯は、体力中等度以上で、赤ら顔で、ときにのぼせがあるもののにきび、顔面・頭部の湿疹・皮膚炎、赤鼻(酒さ)に適すとされるが、胃腸の弱い人では食欲不振、胃部不快感の副作用が現れやすく不向きとされる。まれに重篤な副作用として肝機能障害、偽アルドステロン症、腸間膜静脈硬化症が起こることが知られ、服用によりまれに症状が進行することもある。

相互作用として、漢方処方を構成する生薬には複数の処方で共通しているものもあり、同じ生薬を含む漢方処方製剤が併用された場合、作用が強く現れたり、副作用を生じやすくなるおそれがある。漢方処方はそれ自体が一つの有効成分として独立したものであり、自己判断によってみだりに生薬成分が追加摂取された場合、生薬の構成が乱れて処方が成立しなくなるおそれもある。小柴胡湯とインターフェロン製剤の相互作用のように、医療用医薬品との相互作用も知られている。また、生薬成分は医薬品的な効能効果が標榜又は暗示されていなければ食品(ハーブ等)として流通することが可能なものもある。生薬製剤は、生薬成分を組み合わせて配合された医薬品で、漢方処方製剤のように使用する人の体質等に適した配合を選択するという考え方に基づくものではなく、個々の有効成分(生薬成分)の薬理作用を主に考えて相加的に配合された、西洋医学的な基調の上に立つものであり、定まった処方というものはない。代表的な生薬成分として、ブシ(心筋の収縮力を高めて血液循環を改善。プロスタグランジンを抑えないため胃腸障害等の副作用は示さない。生のままでは毒性が高いため減毒加工して用いる)、カッコン(解熱、鎮痙)、サイコ(抗炎症、鎮痛)、ボウフウ(発汗、解熱、鎮痛、鎮痙)、ショウマ(発汗、解熱、解毒、消炎)、ブクリョウ(利尿、健胃、鎮静)、レンギョウ(鎮痛、抗菌)、サンザシ(健胃、消化促進)等がある。

代表的な漢方処方製剤とカンゾウ・マオウ・ダイオウの有無(手引き 第3章ⅩⅢ・ⅩⅣ)
処方名カンゾウ/マオウ/ダイオウ適する人注意
黄連解毒湯記載なし体力中等度以上。のぼせぎみで顔色赤く、いらいらして落ち着かない傾向(鼻出血・不眠症・二日酔い等)体の虚弱な人は不向き。鼻出血・二日酔いは5〜6回で改善なければ中止し相談
防已黄耆湯カンゾウ体力中等度以下。疲れやすく汗のかきやすい傾向(肥満症・水ぶとり、多汗症等)まれに肝機能障害、間質性肺炎、偽アルドステロン症
防風通聖散カンゾウ・マオウ・ダイオウ体力充実して腹部に皮下脂肪が多く便秘がち(高血圧や肥満に伴う諸症状、肥満症等)小児に適用なし。他の瀉下薬との併用は避ける。便秘は1週間位で改善なければ中止し相談
大柴胡湯ダイオウ体力が充実して脇腹からみぞおちあたりにかけて苦しく便秘の傾向(胃炎・常習便秘・肥満症等)胃腸が弱く下痢しやすい人は不向き。便秘は1週間位で改善なければ中止し相談
清上防風湯カンゾウ体力中等度以上。赤ら顔でときにのぼせ(にきび、顔面・頭部の湿疹・皮膚炎、赤鼻)胃腸の弱い人は不向き。まれに症状が進行することもある
十全大補湯カンゾウ体力虚弱なものの病後・術後の体力低下、疲労倦怠等胃腸の弱い人は不向き。まれに肝機能障害
補中益気湯カンゾウ体力虚弱で元気がなく、胃腸の働きが衰えて疲れやすいものまれに間質性肺炎、肝機能障害
漢方独自の病態認識で、虚実、陰陽、気血水、五臓などがある。証に基づいて漢方薬を用いることが、有効性及び安全性を確保するために重要とされる。
しばり
一般用漢方処方の効能効果において、「証」という専門用語を避けて記載される使用制限のこと。実の病態は「体力が充実して」、虚の病態は「体力虚弱で」などと表現される。
間質性肺炎
漢方処方製剤でも起きることがある重篤な副作用のひとつ。黄連解毒湯、防已黄耆湯、防風通聖散、大柴胡湯等で、まれに重篤な副作用として起こることが知られている。
生薬製剤
生薬成分を組み合わせて配合された医薬品で、個々の生薬成分の薬理作用を主に考えて相加的に配合された、西洋医学的な基調の上に立つもの。漢方処方製剤と異なり、定まった処方というものはない。

例題 「漢方薬は副作用がないから安心」と言う購入者にどう説明するか。

手引きでは、漢方処方製剤においても間質性肺炎や肝機能障害のような重篤な副作用が起きることがあり、証に適さない処方が使用されたために症状の悪化や副作用を引き起こす場合もあるとされている。誤った考えで使用することを避けられるよう、積極的な情報提供を行う。

例題 防風通聖散と便秘薬(瀉下薬)を一緒に使ってよいか。

手引きでは、防風通聖散を使用するときには他の瀉下薬との併用は避けることとされている。防風通聖散は構成生薬としてダイオウを含む。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第3章 ⅩⅣ 漢方処方製剤・生薬製剤

公衆衛生用薬と一般用検査薬

消毒薬の特徴と誤用時の応急処置、殺虫剤の作用機序の分類、忌避剤の注意、一般用検査薬(偽陰性・偽陽性、尿検査、妊娠検査薬)の考え方が分かるようになります。

殺菌・消毒は生存する微生物の数を減らすために行われる処置であり、滅菌は物質中のすべての微生物を殺滅又は除去することである。消毒薬が微生物を死滅させる仕組み及び効果は、殺菌消毒成分の種類、濃度、温度、時間、消毒対象物の汚染度、微生物の種類や状態などによって異なる。手指又は皮膚の殺菌・消毒を目的とする消毒薬のうち、配合成分やその濃度等があらかじめ定められた範囲内である製品は医薬部外品として流通が認められているが、器具等の殺菌・消毒を併せて目的とする製品は医薬品としてのみ製造販売されている。

クレゾール石ケン液は、結核菌を含む一般細菌類、真菌類に対して比較的広い殺菌消毒作用を示すが、大部分のウイルスに対する殺菌消毒作用はない。刺激性が強いため原液が直接皮膚に付着しないようにし、付着した場合には直ちに石けん水と水で洗い流す。エタノール、イソプロパノールは、アルコール分が微生物のタンパク質を変性させることにより、結核菌を含む一般細菌類、真菌類、ウイルスに対する殺菌消毒作用を示す。ただし、イソプロパノールのウイルスに対する不活性効果はエタノールよりも低い。脱脂による肌荒れを起こしやすく、粘膜刺激性があり、粘膜面や目の周り、傷がある部分への使用は避ける。揮発性で引火しやすい点にも注意する。次亜塩素酸ナトリウムやサラシ粉などの塩素系殺菌消毒成分は、強い酸化力により一般細菌類、真菌類、ウイルス全般に対する殺菌消毒作用を示すが、皮膚刺激性が強いため通常人体の消毒には用いられない。金属腐食性があり、プラスチックやゴム製品を劣化させ、漂白作用があるため色・柄物等への使用は避ける。酸性の洗剤・洗浄剤と反応して有毒な塩素ガスが発生するため、混ざらないように注意する。吐瀉物や血液等がこぼれたときの殺菌消毒にも適しているが、有機物の影響を受けやすいので対象物を洗浄した後に使用した方が効果的である。ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等の有機塩素系殺菌消毒成分は、塩素臭や刺激性、金属腐食性が比較的抑えられており、プール等の大型設備の殺菌・消毒に用いられることが多い。

消毒薬の誤用・事故等による中毒への対処は、基本的に応急処置の後、すみやかに医療機関に受診する。誤って飲み込んだ場合は、通常は牛乳など(卵白水や小麦粉を水で溶いたものでもよい)を飲ませるが、手元に何もないときはまず水を飲ませる。中毒物質の消化管からの吸収を遅らせ、粘膜を保護するために、誤飲してから数分以内に行う。原末や濃厚液を誤って飲み込んだ場合には、自己判断で安易に吐き出させることは避ける。誤って目に入った場合は、顔を横に向けて上から水を流すなどにより、流水で十分に(15分間以上)洗眼する。水流が強いと目に障害を起こすことがある。酸やアルカリが目に入った場合は早期に十分な水洗が重要で、特にアルカリ性物質の場合には念入りに水洗する。酸をアルカリで中和したり、アルカリを酸で中和するといった処置は、熱を発生して刺激をかえって強め、状態が悪化するおそれがあるため適切ではない。誤って皮膚に付着した場合は、流水をかけながら着衣を取り、石けんを用いて流水で15分間以上水洗し、中和剤は用いない。誤って吸入し、意識がない場合は新鮮な空気の所へ運び出し、人工呼吸などをする。

衛生害虫(ハエ、蚊、ゴキブリ、シラミ、トコジラミ、ノミ、イエダニ、ツツガムシ等)の防除を目的とする殺虫剤・忌避剤は、医薬品又は医薬部外品として法による規制の対象とされている。殺虫剤使用に当たっては、殺虫作用に対する抵抗性が生じるのを避けるため、同じ殺虫成分を長期間連用せず、いくつかの殺虫成分を順番に使用していくことが望ましい。有機リン系殺虫成分(ジクロルボス、ダイアジノン、フェニトロチオン等)の殺虫作用は、アセチルコリンを分解する酵素(アセチルコリンエステラーゼ)と不可逆的に結合してその働きを阻害することによる。ほ乳類や鳥類では速やかに分解されて排泄されるため毒性は比較的低いが、高濃度又は多量に曝露した場合には神経の異常な興奮が起こり、縮瞳、呼吸困難、筋肉麻痺等の症状が現れるおそれがあり、直ちに医師の診断を受ける必要がある。ピレスロイド系殺虫成分(ペルメトリン、フェノトリン、フタルスリン等)は除虫菊の成分から開発され、比較的速やかに自然分解して残効性が低いため家庭用殺虫剤に広く用いられる。殺虫作用は神経細胞に直接作用して神経伝達を阻害することによる。フェノトリンは、殺虫成分で唯一人体に直接適用されるものである(シラミの駆除を目的とする製品の場合)。カーバメイト系殺虫成分(プロポクスル等)とオキサジアゾール系殺虫成分(メトキサジアゾン等)は、有機リン系と同様にアセチルコリンエステラーゼの阻害によって殺虫作用を示すが、その結合は可逆的で、ピレスロイド系に抵抗性を示す害虫の駆除に用いられる。有機塩素系殺虫成分は残留性や体内蓄積性の問題から、現在ではオルトジクロロベンゼンがウジ、ボウフラの防除の目的で使用されているのみである。昆虫成長阻害成分のうちメトプレンやピリプロキシフェンは幼若ホルモンに類似した作用により幼虫が蛹になるのを妨げる(蛹にならない不完全変態の昆虫やダニには無効)。ジフルベンズロンは脱皮時の新しい外殻の形成を阻害する。

忌避剤は人体に直接使用されるが、虫さされによる痒みや腫れなどの症状を和らげる効果はない。ディートは最も効果的で効果の持続性も高いとされるが、外国において動物実験で神経毒性が示唆されているため、ディートを含有する忌避剤は生後6ヶ月未満の乳児への使用を避けることとされている。生後6ヶ月から12歳未満までの小児については、顔面への使用を避け、1日の使用限度(6ヶ月以上2歳未満は1日1回、2歳以上12歳未満は1日1〜3回)を守って使用する。イカリジンは、年齢による使用制限がない忌避成分で、蚊やマダニなどに対して効果を発揮する。スプレー剤を顔面に使用する場合は、いったん手のひらに噴霧してから塗布し、直接顔面に噴霧しない。

専ら疾病の診断に使用されることが目的とされる医薬品のうち、人体に直接使用されることのないものを体外診断用医薬品といい、一般用検査薬は薬局又は医薬品の販売業(店舗販売業、配置販売業)において取り扱うことが認められている。検体は尿、糞便、鼻汁、唾液、涙液など採取に際して侵襲のないものであり、悪性腫瘍、心筋梗塞や遺伝性疾患など重大な疾患の診断に関係するものは一般用検査薬の対象外である。検出反応が起こるための最低限の濃度を検出感度(検出限界)という。検体中に対象物質が存在しているにもかかわらず、その濃度が検出感度以下であったり、検出反応を妨害する他の物質の影響等によって検査結果が陰性となった場合を偽陰性という。逆に、検体中に存在していないにもかかわらず、検査対象外の物質と非特異的な反応が起こって検査結果が陽性となった場合を偽陽性という。いかなる検査薬においても偽陰性・偽陽性を完全に排除することは困難である。

尿糖・尿タンパク検査では、採尿のタイミングが重要である。尿糖検査の場合は食後1〜2時間等、検査薬の使用方法に従って採尿する。尿タンパクの場合は原則として早朝尿(起床直後の尿)を検体とし、激しい運動の直後は避ける。尿糖・尿タンパク同時検査の場合は早朝尿を検体とし、尿糖が検出された場合には食後の尿について改めて検査して判断する。出始めの尿では尿道や外陰部等に付着した細菌や分泌物が混入することがあるため、中間尿を採取して検査することが望ましい。採取した尿は放置すると雑菌の繁殖等により検査結果に影響を与えるおそれがあるため、なるべく速やかに検査する。通常、尿は弱酸性であるが、食事その他の影響で中性〜弱アルカリ性に傾くと正確な検査結果が得られなくなることがある。検査結果をもって直ちに疾患の有無や種類を判断することはできず、陽性の場合には早期に医師の診断を受け、陰性でも何らかの症状がある場合は再検査又は受診する。

妊娠が成立すると、胎児(受精卵)を取り巻く絨毛細胞からヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)が分泌され始め、やがて尿中に検出されるようになる。妊娠検査薬は尿中のhCGの有無を調べるもので、通常、実際に妊娠が成立してから4週目前後の尿中hCG濃度を検出感度としている。一般的な妊娠検査薬は、月経予定日が過ぎて概ね1週目以降の検査が推奨されており、それよりも早い時期に検査して陰性の結果が出たとしても、妊娠していないのか、hCGが検出感度に達していないことによる偽陰性なのか判別できない。検体としては早朝尿が向いているが、尿が濃すぎるとかえって正確な結果が得られないこともある。hCGの検出反応は抗体や酵素を用いた反応であるため温度の影響を受けることがあり、室温が極端に高いか低い場合にも正確な結果が得られないことがある。絨毛細胞が腫瘍化している場合や、経口避妊薬・更年期障害治療薬などのホルモン剤を使用している人、閉経期に入っている人では、妊娠していなくても陽性となることがある。妊娠検査薬は妊娠の早期判定の補助であり、その結果をもって直ちに妊娠しているか否かを断定することはできず、確定診断には専門医による問診や超音波検査などが必要である。検査結果が陰性で月経の遅れが著しい場合には、偽陰性の可能性のほか続発性無月経等の病気のおそれもあり、医療機関の受診が必要である。

消毒薬・殺虫剤・忌避剤の分類と特徴(手引き 第3章ⅩⅤ)
区分成分・分類対象・作用特徴・注意
消毒薬クレゾール石ケン液結核菌を含む一般細菌類、真菌類大部分のウイルスには殺菌消毒作用がない。原液の皮膚付着に注意
消毒薬エタノール・イソプロパノール結核菌を含む一般細菌類、真菌類、ウイルスイソプロパノールのウイルス不活性効果はエタノールより低い。粘膜刺激性・引火性
消毒薬次亜塩素酸ナトリウム等(塩素系)一般細菌類、真菌類、ウイルス全般皮膚刺激性が強く人体には用いない。金属腐食・漂白作用。酸性洗剤と混ぜると塩素ガス発生
消毒薬ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等(有機塩素系)プール等の大型設備塩素臭・刺激性・金属腐食性が比較的抑えられている
殺虫剤有機リン系(ジクロルボス等)アセチルコリンエステラーゼと不可逆的に結合し阻害高濃度曝露で縮瞳・呼吸困難・筋肉麻痺のおそれ
殺虫剤ピレスロイド系(ペルメトリン、フェノトリン等)神経細胞に直接作用して神経伝達を阻害残効性が低い。フェノトリンは唯一人体に直接適用される殺虫成分
殺虫剤カーバメイト系・オキサジアゾール系アセチルコリンエステラーゼを可逆的に阻害ピレスロイド系に抵抗性を示す害虫の駆除に用いる
殺虫剤昆虫成長阻害成分(メトプレン等)昆虫の脱皮や変態を阻害メトプレン等は不完全変態の昆虫やダニには無効
忌避剤ディート/イカリジン衛生害虫が人体に取り付いて吸血・病原体を媒介するのを防止ディートは生後6ヶ月未満に使用を避ける。イカリジンは年齢による使用制限がない
滅菌
物質中のすべての微生物を殺滅又は除去すること。生存する微生物の数を減らすために行われる殺菌・消毒とは区別される。
検出感度(検出限界)
検査薬において検出反応が起こるための最低限の濃度。検出感度を鋭敏にしようとすると非特異的な反応が起こりやすくなり、偽陽性を生じる可能性が高くなる。
偽陰性
検体中に対象物質が存在しているにもかかわらず、その濃度が検出感度以下であったり、検出反応を妨害する他の物質の影響等によって、検査結果が陰性となった場合をいう。
偽陽性
検体中に対象物質が存在していないにもかかわらず、検査対象外の物質と非特異的な反応が起こって、検査結果が陽性となった場合をいう。
ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)
妊娠が成立すると胎児(受精卵)を取り巻く絨毛細胞から分泌され始めるホルモン。妊娠検査薬は尿中のhCGの有無を調べるものである。

例題 家庭で消毒薬を誤って飲み込んでしまった場合の応急処置は。

手引きでは、通常は牛乳などを飲ませるが、手元に何もないときはまず水を飲ませ、誤飲してから数分以内に行うとされている。原末や濃厚液の場合は自己判断で安易に吐き出させることは避け、応急処置の後はすみやかに医療機関に受診する。

例題 月経予定日の前に妊娠検査薬を使ってもよいか。

手引きでは、一般的な妊娠検査薬は月経予定日が過ぎて概ね1週目以降の検査が推奨されており、早い時期に検査して陰性でも、妊娠していないのか偽陰性なのか判別できないとされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第3章 ⅩⅤ 公衆衛生用薬・ⅩⅥ 一般用検査薬

法の目的と医薬品の分類

法の目的と登録販売者

医薬品医療機器等法第1条の目的と、登録販売者の販売従事登録の手続がわかる。

一般用医薬品の販売に関連する法令のうち、最も重要な法令は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」である。法第1条は「この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行うとともに、指定薬物の規制に関する措置を講ずるほか、医療上特にその必要性が高い医薬品、医療機器及び再生医療等製品の研究開発の促進のために必要な措置を講ずることにより、保健衛生の向上を図ることを目的とする」と定めている。対象は医薬品だけでなく、医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品にまで及ぶ点、指定薬物の規制と研究開発の促進も目的に含まれる点が問われやすい。

関係者の責務も条文で定められている。法第1条の4は医薬品等関連事業者等の責務(相互間の情報交換その他必要な措置を講じ、品質、有効性及び安全性の確保等に努める)、法第1条の5第1項は医薬関係者の責務(医師、歯科医師、薬剤師、獣医師その他の医薬関係者は、適正な使用に関する事項に関する正確かつ適切な情報の提供に努める)、法第1条の6は国民の役割(医薬品等を適正に使用するとともに、有効性及び安全性に関する知識と理解を深めるよう努める)である。登録販売者も医薬関係者として、購入者等に対して正確かつ適切な情報提供が行えるよう、日々最新の情報の入手、自らの研鑽に努める必要がある。薬局開設者、店舗販売業者又は配置販売業者は、業務に従事する登録販売者に対し、厚生労働大臣に届出を行った研修実施機関が行う研修を毎年度受講させなければならない。

登録販売者は、法第4条第5項第1号において「法第36条の8第2項の登録を受けた者をいう」と規定されている。一般用医薬品の販売又は授与に従事しようとする者がそれに必要な資質を有することを確認するために都道府県知事が行う試験に合格した者であって、医薬品の販売又は授与に従事しようとするものは、都道府県知事の登録(販売従事登録)を受けなければならない。かつては受験に一定の学歴や実務経験を要したが、平成27年度以降の試験では受験資格が撤廃され、代わりに管理者又は管理代行者となる登録販売者に一定の実務・業務経験が必要とされた。

販売従事登録を受けようとする者は、申請書を「医薬品の販売又は授与に従事する薬局又は医薬品の販売業の店舗の所在地の都道府県知事(配置販売業にあつては、配置しようとする区域をその区域に含む都道府県の知事)」に提出しなければならない。二以上の都道府県において販売従事登録を受けようと申請した者は、当該申請を行った都道府県知事のうちいずれか一の都道府県知事の登録のみを受けることができる。登録されると都道府県の登録販売者名簿に、登録番号及び登録年月日、本籍地都道府県名(日本国籍を有していない者については、その国籍)、氏名、生年月日及び性別、登録販売者試験合格の年月及び試験施行地都道府県名等が登録され、都道府県知事から登録証が交付される。名簿の登録事項に住所地は含まれない。

登録後の手続は期限とセットで覚える。登録事項に変更を生じたときは30日以内に届出(変更届に事実を証する書類を添え、登録を受けた都道府県知事に提出)。一般用医薬品の販売又は授与に従事しようとしなくなったときは30日以内に登録の消除を申請。登録販売者が死亡し、又は失踪の宣告を受けたときは、戸籍法による死亡又は失踪の届出義務者が30日以内に登録の消除を申請しなければならない。精神の機能の障害を有する状態となり業務の継続が著しく困難になったときは、遅滞なく、登録を受けた都道府県知事にその旨を届け出る。

販売従事登録の手続(規則第159条の7〜10)
場面手続・期限
登録の申請従事する薬局・店舗の所在地の都道府県知事(配置販売業は配置しようとする区域を含む都道府県の知事)に申請書を提出
二以上の都道府県で申請いずれか一の都道府県知事の登録のみを受けることができる
登録事項の変更30日以内に届出(登録を受けた都道府県知事に変更届を提出)
従事しようとしなくなったとき30日以内に登録の消除を申請
死亡・失踪の宣告戸籍法による死亡又は失踪の届出義務者が30日以内に登録の消除を申請
精神の機能の障害で業務継続が著しく困難遅滞なく、登録を受けた都道府県知事に届出
販売従事登録
登録販売者試験に合格した者が医薬品の販売又は授与に従事するために受ける都道府県知事の登録。従事する薬局・店舗の所在地(配置販売業では配置しようとする区域を含む都道府県)の知事に申請し、二以上の都道府県で申請してもいずれか一の知事の登録のみを受けられる。
登録販売者名簿
販売従事登録を行うため都道府県に備えられる名簿。登録番号及び登録年月日、本籍地都道府県名(外国籍の者はその国籍)、氏名、生年月日及び性別、試験合格の年月及び試験施行地都道府県名等が登録される。住所地は登録事項に含まれない。
医薬関係者の責務
法第1条の5第1項の規定。医師、歯科医師、薬剤師、獣医師その他の医薬関係者は、医薬品等の有効性及び安全性その他適正な使用に関する知識と理解を深め、使用者や購入者等に対し正確かつ適切な情報の提供に努めなければならないとされる。登録販売者もこの責務を負う。

例題 二つの都道府県で店舗販売業の店舗に勤務する予定の者が、両方の都道府県で販売従事登録を申請した。登録はどうなるか。

申請を行った都道府県知事のうち、いずれか一の都道府県知事の登録のみを受けることができる(規則第159条の7第3項)。複数の登録を同時に受けることはできない。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第4章 Ⅰ 医薬品等の法律の目的等

医薬品の定義と区分

医薬品の定義、要指導医薬品と一般用医薬品、毒薬・劇薬の取扱い、一般用医薬品のリスク区分がわかる。

医薬品は法第2条第1項で、(一)日本薬局方に収められている物、(二)人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって機械器具等でないもの、(三)人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって機械器具等でないもの、と定義される。日本薬局方(日局)は、厚生労働大臣が医薬品の性状及び品質の適正を図るため、薬事審議会の意見を聴いて、保健医療上重要な医薬品について必要な規格・基準及び標準的試験法等を定めたもので、日局収載医薬品の中には一般用医薬品として販売されているものも少なくない。第2号の医薬品には、検査薬や殺虫剤、器具用消毒薬のように人の身体に直接使用されない医薬品も含まれる。医薬品の製造には厚生労働大臣の製造業の許可、製造販売には製造販売業の許可が必要で、品目ごとに品質、有効性及び安全性の審査等を受けて承認を受けなければならない。

一般用医薬品は「医薬品のうち、その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであつて、薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているもの(要指導医薬品を除く。)」(法第4条第5項第4号)。要指導医薬品は、人体に対する作用が著しくなく需要者の選択により使用される医薬品のうち、適正な使用のために薬剤師の対面等(対面又は映像及び音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をする方法等)による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導が必要なものとして、厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定するもの(同項第3号)。このうち薬剤師の対面による販売又は授与が特に必要なものとして指定されるものが「特定要指導医薬品」である。要指導医薬品は、所定の期間を経過し、薬事審議会において一般用医薬品として取り扱うことが適切と認められたものは、一般用医薬品に分類される。

医療用医薬品は「医師若しくは歯科医師によって使用され又はこれらの者の処方箋若しくは指示によって使用されることを目的として供給される医薬品」である。一般用医薬品・要指導医薬品では、注射等の侵襲性の高い使用方法は用いられず、血液を検体とするなど検体の採取に身体への直接のリスクを伴う検査薬は認められていない。用量は、医療用が医師又は歯科医師が患者の容態に合わせて処方量を決めるのに対し、一般用・要指導はあらかじめ定められた用量に基づく。効能効果の表現は、医療用が診断疾患名(胃炎、胃・十二指腸潰瘍等)であるのに対し、一般用・要指導は一般の生活者が判断できる症状(胃痛、胸やけ、むかつき、もたれ等)で示され、がん、心臓病等、医師等の診療によらなければ一般に治癒が期待できない疾患に対する効能効果は認められていない。医療用医薬品の販売は、薬局及び卸売販売業者に限られる。

毒薬は毒性が強いものとして、劇薬は劇性が強いものとして、いずれも厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定する医薬品(法第44条第1項・第2項)。単に毒性・劇性が強いものだけでなく、薬用量と中毒量が接近しており安全域が狭いため取扱いに注意を要するもの等が指定される。毒薬又は劇薬は、要指導医薬品に該当することはあるが、現在のところ一般用医薬品のものはない。業務上毒薬又は劇薬を取り扱う者(薬局開設者・医薬品の販売業者を含む)は、他の物と区別して貯蔵、陳列しなければならず、特に毒薬を貯蔵、陳列する場所にはかぎを施さなければならない。表示は、毒薬が黒地に白枠、白字で品名及び「毒」の文字、劇薬が白地に赤枠、赤字で品名及び「劇」の文字。14歳未満の者その他安全な取扱いに不安のある者への交付は禁止され、一般の生活者に販売・譲渡する際は、品名、数量、使用目的、譲渡年月日、譲受人の氏名、住所及び職業が記入され署名又は記名押印された文書(電子的ファイルでも可)の交付を受けなければならない。開封しての販売等は、店舗管理者が薬剤師である店舗販売業者及び医薬品営業所管理者が薬剤師である卸売販売業者以外の医薬品の販売業者には認められない。

生物由来製品は「人その他の生物(植物を除く。)に由来するものを原料又は材料として製造をされる医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器のうち、保健衛生上特別の注意を要するものとして、厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定するもの」(法第2条第10項)。製品の使用による感染症の発生リスクに着目して指定され、感染症の発生リスクの蓋然性が極めて低いものは指定の対象とならない。現在のところ、生物由来製品として指定された一般用医薬品又は要指導医薬品はない。

一般用医薬品は保健衛生上のリスクに応じ、第一類・第二類・第三類医薬品に区分される(法第36条の7第1項)。第一類は「その副作用等により日常生活に支障を来す程度の健康被害が生ずるおそれがある医薬品のうちその使用に関し特に注意が必要なものとして厚生労働大臣が指定するもの」及び新規性の高い承認から所定期間を経過しない医薬品(スイッチOTC・ダイレクトOTC等)。第二類は「日常生活に支障を来す程度の健康被害が生ずるおそれがある医薬品(第一類医薬品を除く。)であつて厚生労働大臣が指定するもの」で、そのうち特別の注意を要するものとして厚生労働大臣が指定するものが指定第二類医薬品。第三類は第一類及び第二類以外の一般用医薬品で、リスクは比較的低いが、副作用等により身体の変調・不調が起こるおそれはある。厚生労働大臣は必要に応じて指定を変更しなければならず、新たに一般用医薬品となった医薬品は承認後の一定期間第一類に分類された後、情報の評価結果に基づいて分類され、第三類医薬品が第一類又は第二類に変更されることもある。

毒薬と劇薬の対比(法第44〜48条)
項目毒薬劇薬
指定毒性が強いものとして厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定(法第44条第1項)劇性が強いものとして厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定(法第44条第2項)
容器等の表示黒地に白枠、白字で品名及び「毒」の文字白地に赤枠、赤字で品名及び「劇」の文字
貯蔵・陳列他の物と区別し、かぎを施す他の物と区別(かぎの義務は毒薬のみ)
交付の制限14歳未満の者その他安全な取扱いに不安のある者への交付は禁止(共通)同左
譲渡手続の文書品名・数量・使用目的・譲渡年月日・譲受人の氏名・住所・職業を記入し署名又は記名押印(共通・電子的ファイル可)同左
開封販売店舗管理者が薬剤師の店舗販売業者・医薬品営業所管理者が薬剤師の卸売販売業者以外は不可(共通)同左
要指導医薬品
人体に対する作用が著しくなく需要者の選択により使用される医薬品のうち、適正な使用のため薬剤師の対面等による情報の提供及び薬学的知見に基づく指導が必要なものとして厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定するもの。所定期間経過後、一般用医薬品に分類され得る。
毒薬・劇薬
毒性又は劇性が強いものとして厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定する医薬品。薬用量と中毒量が接近し安全域が狭いもの等も指定される。要指導医薬品に該当することはあるが、現在のところ一般用医薬品のものはない。
指定第二類医薬品
第二類医薬品のうち「特別の注意を要するものとして厚生労働大臣が指定するもの」。容器・外箱等には枠の中に「2」の数字を記載することが法定表示として義務づけられている。
生物由来製品
人その他の生物(植物を除く)に由来するものを原料又は材料として製造される医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器のうち、保健衛生上特別の注意を要するものとして厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定するもの。感染症の発生リスクに着目して指定される。

例題 「劇薬の容器等には、黒地に白枠、白字で品名及び『劇』の文字を記載する」という記述は正しいか。

誤り。黒地に白枠、白字は毒薬の表示である。劇薬は白地に赤枠、赤字をもって品名及び「劇」の文字を記載する(法第44条第2項)。色・枠の入れ替えは定番のひっかけ。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第4章 Ⅱ 医薬品の分類・取扱い等

容器・外箱等への記載事項と記載禁止事項

医薬品の法定表示事項、記載禁止事項、指定濫用防止医薬品の表示がわかる。

医薬品は、法第50条に基づきその直接の容器又は被包に必要な事項が記載されていなければならず、毒薬・劇薬は法第44条第1項又は第2項に基づく表示が義務づけられている。容器等が小売りのために包装されている場合、容器等への記載が外部の容器又は被包(外箱等)を透かして容易に見ることができないときは、外箱等にも同様の事項を記載しなければならない(法第51条)。これらの規定に基づく記載を総称して法定表示といい、各記載事項を法定表示事項という。

一般用医薬品・要指導医薬品に関連する主な法定表示事項は、(a)製造販売業者等の氏名又は名称及び住所、(b)名称(日局収載医薬品では日局において定められた名称、その他の医薬品で一般的名称があるものではその一般的名称)、(c)製造番号又は製造記号、(d)重量、容量又は個数等の内容量、(e)日局収載医薬品では「日本薬局方」の文字等、(f)「要指導医薬品」の文字、(g)一般用医薬品のリスク区分を示す字句、(h)日局収載以外の医薬品における有効成分の名称及びその分量、(i)誤って人体に散布、噴霧等された場合に健康被害を生じるおそれがあるものとして厚生労働大臣が指定する医薬品(殺虫剤等)における「注意-人体に使用しないこと」の文字、(j)適切な保存条件の下で3年を超えて性状及び品質が安定でない医薬品等、厚生労働大臣の指定する医薬品における使用の期限、(k)配置販売品目以外の一般用医薬品にあっては「店舗専用」の文字、(l)指定第二類医薬品にあっては枠の中に「2」の数字、などである。

指定濫用防止医薬品は、①薬局開設者が当該薬局における設備及び器具をもって製造し、当該薬局において直接需要者に販売し、又は授与する医薬品、②要指導医薬品、③一般用医薬品のいずれかであって、その濫用をした場合に中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚を生ずるおそれがあり、その防止を図る必要がある医薬品として厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定する医薬品(法第36条の11第1項)。指定成分は、エフェドリン、コデイン、ジヒドロコデイン、ジフェンヒドラミン、デキストロメトルファン、プソイドエフェドリン、ブロモバレリル尿素、メチルエフェドリン(いずれも外用剤を除く)並びにその水和物及びそれらの塩類を有効成分として含有する製剤である。法定表示として、内容量が省令に規定する数量以下のものは「要確認」の字句、その他のものは「要確認」の「要」を丸囲み又は四角囲みにした字句を記載する。

一方、医薬品に添付する文書、その容器等又は外箱等に記載されていてはならない事項(記載禁止事項)が法第54条に定められている。「一 当該医薬品に関し虚偽又は誤解を招くおそれのある事項」「二 承認を受けていない効能、効果又は性能」「三 保健衛生上危険がある用法、用量又は使用期間」である。また、法定表示事項及び添付文書等への記載は、他の文字、記事、図画、又は図案に比較して見やすい場所にされていなければならず、かつ、購入者等が読みやすく理解しやすい用語による正確なものでなければならない(法第53条)。特に明瞭に記載され、かつ、邦文でされていなければならない。

法定表示や添付文書等への記載が適切になされていない医薬品、記載禁止事項に該当する内容が記載されている医薬品は「不正表示医薬品」として販売等してはならない(法第55条第1項)。この規定は製造販売元の製薬企業のみならず、薬局及び医薬品の販売業においても適用される。

主な法定表示事項(一般用医薬品・要指導医薬品関連)
記載事項補足
製造販売業者等の氏名又は名称及び住所製造業者ではなく製造販売業者等
名称日局収載医薬品は日局において定められた名称
製造番号又は製造記号/内容量重量、容量又は個数等
「日本薬局方」の文字等日局収載医薬品
「要指導医薬品」の文字要指導医薬品
リスク区分を示す字句一般用医薬品(「一般用医薬品」の文字ではない)
有効成分の名称及びその分量日局収載以外の医薬品
「注意-人体に使用しないこと」の文字誤って人体に散布・噴霧等されると健康被害のおそれがある殺虫剤等
使用の期限適切な保存条件の下で3年を超えて性状及び品質が安定でない医薬品等
「店舗専用」の文字配置販売品目以外の一般用医薬品
枠の中に「2」の数字指定第二類医薬品
「要確認」の字句等指定濫用防止医薬品(規定数量超は「要」を丸囲み又は四角囲み)
法定表示事項
法第44条第1項及び第2項、第50条並びに第51条の規定に基づき、医薬品の直接の容器・被包や外箱等に記載が義務づけられている事項の総称。名称、製造販売業者等の氏名又は名称及び住所、リスク区分を示す字句などが含まれる。
記載禁止事項
法第54条により医薬品の添付文書、容器等又は外箱等に記載されていてはならない事項。虚偽又は誤解を招くおそれのある事項、承認を受けていない効能、効果又は性能、保健衛生上危険がある用法、用量又は使用期間の3つ。
指定濫用防止医薬品
濫用をした場合に中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚を生ずるおそれがあり、その防止を図る必要がある医薬品として厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定する医薬品。エフェドリン、コデイン等8成分(外用剤を除く)を有効成分として含有する製剤が指定されている。

例題 「一般用医薬品の外箱には『一般用医薬品』の文字を記載しなければならない」という記述は正しいか。

誤り。法定表示として求められるのは「一般用医薬品のリスク区分を示す字句」であり、「一般用医薬品」の文字ではない。「要指導医薬品」の文字の記載が必要なのは要指導医薬品である。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第4章 Ⅱ 医薬品の分類・取扱い等

医薬部外品・化粧品・食品

医薬部外品と化粧品の定義・規制、保健機能食品等の食品の区分、いわゆる健康食品の扱いがわかる。

医薬部外品は法第2条第2項に定義され、(イ)吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止、(ロ)あせも、ただれ等の防止、(ハ)脱毛の防止、育毛又は除毛、の目的のために使用される物(機械器具等でないもの)、人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物などが該当する。医薬部外品は、効能効果があらかじめ定められた範囲内であって、成分や用法等に照らして人体に対する作用が緩和であることを要件として、医薬品的な効能効果を表示・標榜することが認められている。製造販売には製造販売業の許可が必要で、厚生労働大臣が基準を定めて指定するものを除き品目ごとに承認を得る必要があるが、販売については医薬品のような販売業の許可は必要なく、一般小売店で販売等することができる。

医薬部外品の直接の容器又は直接の被包には「医薬部外品」の文字の表示が義務付けられている(法第59条)。このうち、衛生害虫類の防除のため使用される製品群には「防除用医薬部外品」、かつては医薬品であったが医薬部外品へ移行された製品群には「指定医薬部外品」の識別表示がなされている。これらは用法用量や使用上の注意を守って適正に使用することが他の医薬部外品と比べてより重要なためである。不良医薬部外品及び不正表示医薬部外品の販売は医薬品と同様に禁止されている。

化粧品は「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なもの」(法第2条第3項)。この範囲内においてのみ効能効果を表示・標榜することが認められ、医薬品的な効能効果を表示・標榜することは一切認められていない。成分本質(原材料)も原則として医薬品の成分を配合してはならず、配合が認められる場合でも添加物として使用されているなど薬理作用が期待できない量以下に制限される。製造販売業の許可を受けた者があらかじめ品目ごとの届出を行う必要があり(厚生労働大臣が指定する成分を含有する場合は品目ごとの承認)、販売業の許可は不要で一般小売店で販売できる。医薬品的な効能効果の表示・標榜がなされた場合には、虚偽又は誇大な広告に該当するほか、その標榜内容等によっては医薬品又は医薬部外品とみなされ、無承認無許可医薬品等として取締りの対象となる。なお、医薬部外品には薬用化粧品類、薬用石けん、薬用歯みがき類等として化粧品的な効能効果を標榜することが認められているものがある。

食品とは、医薬品、医薬部外品及び再生医療等製品以外のすべての飲食物をいう。医薬品には品質、有効性及び安全性の確保のための規制があるのに対し、食品には専ら安全性の確保のために必要な規制等が図られている。外形上食品として販売されていても、成分本質や効能効果の標榜内容等に照らして医薬品とみなされる場合には、無承認無許可医薬品として法第55条第2項に基づく取締りの対象となる。「医薬品の範囲に関する基準」では、(a)専ら医薬品として使用される成分本質を含むこと、(b)医薬品的な効能効果が標榜又は暗示されていること、(c)アンプル剤や舌下錠、口腔用スプレー剤等、医薬品的な形状であること、(d)服用時期、服用間隔、服用量等の医薬品的な用法用量の記載があること、が医薬品に該当する要素として示されている。錠剤、丸剤、カプセル剤等の形状は、食品である旨が明示されている場合に限り、形状のみをもって医薬品への該当性の判断がなされることはない。

特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品を総称して「保健機能食品」という。特定保健用食品は、健康増進法の規定に基づく許可又は承認を受けて特定の保健の目的が期待できる旨の表示をする食品で、個別に生理的機能や特定の保健機能を示す効果や安全性等に関する審査を受ける必要がある。許可の際に必要とされる効果の科学的根拠のレベルに達しないものの一定の効果が確認されるものは、限定的な科学的根拠である旨の表示をすることを条件として許可され、「条件付き特定保健用食品」と区分される。栄養機能食品は、個別の許可申請を行う必要がない自己認証制度で、1日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量が基準の下限値・上限値の範囲内にあることや、栄養成分の機能と摂取をする上での注意事項の表示、消費者庁長官の個別の審査を受けたものではない旨の表示が必要である。機能性表示食品は、事業者の責任において科学的根拠に基づいた機能性関与成分が有する機能性を表示し、販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたもので、特定保健用食品と異なり個別の許可を受けたものではない。特別用途食品(特定保健用食品を除く)は、乳児、幼児、妊産婦又は病者の発育又は健康の保持若しくは回復の用に供することが適当な旨を医学的・栄養学的表現で記載し用途を限定した食品で、健康増進法に基づく許可又は承認を受け、消費者庁の許可等のマークが付されている。

いわゆる「健康食品」という単語は法令で定義された用語ではない。保健機能食品以外の食品には、容器包装に保健機能食品と紛らわしい名称、栄養成分の機能及び特定の保健の目的が期待できる旨を示す用語を表示することはできない。特定の保健の用途に適する旨の効果等が表示・標榜されている場合は医薬品の効能効果を暗示するものとみなされ、製品中に医薬品成分が検出される場合もあり、いずれも無承認無許可医薬品として法に基づく取締りの対象となる。

医薬部外品・化粧品・保健機能食品等の比較
区分位置づけ・手続表示に関するポイント
医薬部外品製造販売業の許可+原則品目ごとの承認。販売業の許可は不要定められた範囲内で医薬品的な効能効果の表示・標榜が可。「医薬部外品」の文字(防除用・指定医薬部外品は識別表示)
化粧品製造販売業の許可+品目ごとの届出(指定成分含有は承認)。販売業の許可は不要医薬品的な効能効果の表示・標榜は一切不可
特定保健用食品健康増進法に基づく許可又は承認(個別審査)特定の保健の目的が期待できる旨を表示。許可等のマークあり
条件付き特定保健用食品限定的な科学的根拠である旨の表示を条件として許可条件付きのマークあり
栄養機能食品個別の許可申請が不要な自己認証制度栄養成分の機能と注意事項を表示。個別の審査を受けたものではない旨の表示が義務
機能性表示食品販売前に消費者庁長官へ届出事業者の責任で機能性を表示。個別の許可を受けたものではない
特別用途食品(特保を除く)健康増進法に基づく許可又は承認特別の用途に適する旨を表示。許可等のマークあり
医薬部外品
吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止、あせも、ただれ等の防止、脱毛の防止、育毛又は除毛等の目的で使用される物。効能効果があらかじめ定められた範囲内で人体に対する作用が緩和であることを要件に、医薬品的な効能効果の表示・標榜が認められる。販売業の許可は不要。
化粧品
人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なもの。医薬品的な効能効果の表示・標榜は一切認められない。
保健機能食品
特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品の総称。あくまで食生活を通じた健康の保持増進を目的として摂取されるもので、食品表示基準において1日当たりの摂取目安量、摂取の方法、摂取をする上での注意事項等の表示の方法が規定されている。
無承認無許可医薬品
外形上食品として販売等されている製品であっても、成分本質、効能効果の標榜内容等に照らして医薬品とみなされ、必要な承認・許可を受けずに製造販売等されたもの。法第55条第2項に基づく取締りの対象となる。

例題 「化粧品は、人体に対する作用が緩和であれば、医薬品的な効能効果を表示してもよい」という記述は正しいか。

誤り。医薬品的な効能効果を定められた範囲で表示・標榜できるのは医薬部外品であり、化粧品は医薬品的な効能効果を表示・標榜することが一切認められていない。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第4章 Ⅱ 医薬品の分類・取扱い等

販売業の許可と法令遵守

医薬品の販売業の許可の種類

薬局・店舗販売業・配置販売業・卸売販売業の違い(許可の単位、取り扱える医薬品、管理者の要件)を整理します。

法第24条第1項において、「薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ、業として、医薬品を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列(配置することを含む。)してはならない」と規定されている。医薬品の販売業の許可は、店舗販売業の許可、配置販売業の許可又は卸売販売業の許可の3種類に分けられており(法第25条)、このうち、一般の生活者に対して医薬品を販売等することができるのは、店舗販売業及び配置販売業の許可を受けた者だけである。薬局における医薬品の販売行為は、薬局の業務に付随して行われる行為であるので、医薬品の販売業の許可は必要としない。卸売販売業は、医薬品を薬局や他の医薬品の販売業、製薬企業又は医療機関等に対して販売等する業態であり、業として一般の生活者に対して直接医薬品の販売等を行うことは認められていない。

これらの許可は、6年ごとに、その更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失う(法第24条第2項)。また、「薬局開設者又は店舗販売業者は店舗による販売又は授与以外の方法により、配置販売業者は配置以外の方法により、それぞれ医薬品を販売し、授与し、又はその販売若しくは授与の目的で医薬品を貯蔵し、若しくは陳列してはならない」(法第37条第1項)とされている。これは、露天販売や現金行商のような、購入者側の安全性の確保や販売側の責任・所在の追及が困難となる形態での販売を禁止する趣旨(いわゆる「売り逃げ」の防止)による。薬局、店舗販売業及び卸売販売業では、特定の購入者の求めに応じて医薬品の包装を開封して分割販売(いわゆる「量り売り」「零売」)することができるが、配置販売業では分割販売は禁止されている(法第37条第2項)。医薬品をあらかじめ小分けし、販売する行為は、無許可製造、無許可製造販売に該当するため、認められない。

薬局は、「薬剤師が販売又は授与の目的で調剤の業務並びに薬剤及び医薬品の適正な使用に必要な情報の提供及び薬学的知見に基づく指導の業務を行う場所(その開設者が併せ行う医薬品の販売業に必要な場所を含む。)」(法第2条第12項)と定義され、医薬品の調剤と併せて、店舗により医薬品の販売を行うことが認められている。調剤を実施する薬局は、医療提供施設としても位置づけられている。薬局は、その所在地の都道府県知事(所在地が保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合は市長又は区長)の許可を受けなければ開設してはならない(法第4条第1項)。薬局では、医療用医薬品の他、要指導医薬品及び一般用医薬品を取り扱うことができ、第二類医薬品・第三類医薬品の販売等に関しては、薬剤師のほかに、登録販売者が購入者等への情報提供や相談対応を行うこともできる。薬局として開設の許可を受けていないものは、病院又は診療所の調剤所を除き、薬局の名称を付してはならない(法第6条)。薬局の管理者は薬剤師でなければならず、管理者は薬局開設者に対して必要な意見を書面により述べなければならない(法第7条、第8条)。

他の医療提供施設と連携し、地域における薬剤・医薬品の適正な使用の推進等に必要な機能を有する薬局は、都道府県知事の認定を受けて地域連携薬局と称することができる(法第6条の2第1項)。専門的な薬学的知見に基づく指導を実施するために必要な機能を有する薬局は、傷病の区分ごとに都道府県知事の認定を受けて専門医療機関連携薬局と称することができる(法第6条の3第1項)。また、患者が継続して利用するために必要な機能及び個人の主体的な健康の保持増進への取組を積極的に支援する機能を有する薬局を健康サポート薬局といい、その旨を表示するときは、厚生労働大臣が定める基準に適合するものとしなければならない。開店時間のうち、調剤に従事する薬剤師が薬局以外の場所で業務を行うため、やむを得ず、かつ、一時的に薬剤師が不在となる時間を薬剤師不在時間という。学校薬剤師の業務やあらかじめ予定されている定期的な業務によって恒常的に薬剤師が不在となる時間は認められない。薬剤師不在時間内は調剤室を閉鎖し、掲示を行う。薬剤師不在時間内であっても登録販売者が販売できる医薬品は第二類医薬品又は第三類医薬品であり、要指導医薬品陳列区画又は第一類医薬品陳列区画は閉鎖しなければならない(鍵をかけた陳列設備に陳列する場合を除く)。

店舗販売業の許可は、要指導医薬品又は一般用医薬品を店舗において販売し、又は授与する業務について、店舗ごとに、その店舗の所在地の都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合は市長又は区長)が与える(法第26条第1項)。薬局と異なり、薬剤師が従事していても調剤を行うことはできず、要指導医薬品又は一般用医薬品以外の医薬品の販売等は認められていない(法第27条)。要指導医薬品は薬剤師に販売又は授与させなければならず(法第36条の5第1項)、第一類医薬品は薬剤師により、第二類医薬品又は第三類医薬品は薬剤師又は登録販売者に販売又は授与させなければならない(法第36条の9)。このため、要指導医薬品及び第一類医薬品は、その店舗において薬剤師がいない場合には販売又は授与を行うことができない。店舗を実地に管理する店舗管理者は、薬剤師又は登録販売者でなければならず、要指導医薬品又は第一類医薬品を販売し、授与する店舗では薬剤師、第二類医薬品又は第三類医薬品を販売し、授与する店舗では薬剤師又は登録販売者とされている(規則第140条第1項)。登録販売者が店舗管理者となるには、原則として過去5年間のうち通算して2年以上の従事期間等が必要である。第一類医薬品を販売する店舗で薬剤師を店舗管理者とすることができない場合には、一定の要件を満たす登録販売者(3年以上の業務従事等)を店舗管理者とすることができるが、この場合には店舗管理者を補佐する薬剤師を置かなければならない(規則第141条)。

配置販売業の許可は、一般用医薬品を配置により販売又は授与する業務について、配置しようとする区域をその区域に含む都道府県ごとに、その都道府県知事が与える(法第30条第1項)。配置販売業は、購入者の居宅等に医薬品をあらかじめ預けておき、購入者がこれを使用した後でなければ代金請求権を生じない(「先用後利」という)といった販売形態であるため、一般用医薬品のうち経年変化が起こりにくいこと等の基準(配置販売品目基準)に適合するもの以外の医薬品を販売等してはならない(法第31条)。預ける「配置箱」は法上、陳列に該当する。第一類医薬品は薬剤師により、第二類医薬品又は第三類医薬品は薬剤師又は登録販売者に販売又は授与させなければならない。区域管理者は、第一類医薬品を販売する区域では薬剤師、第二類・第三類医薬品を販売する区域では薬剤師又は登録販売者でなければならない(法第31条の2第2項)。配置販売業者又はその配置員は、配置販売に従事しようとするときは、氏名及び住所、区域及びその期間を、あらかじめ、配置販売に従事しようとする区域の都道府県知事に届け出なければならず(法第32条)、その住所地の都道府県知事が発行する身分証明書の交付を受け、かつ、これを携帯しなければ、医薬品の配置販売に従事してはならない(法第33条第1項)。薬局開設者又は店舗販売業者が配置による方法で販売しようとする場合は別途配置販売業の許可が、配置販売業者が店舗による方法で販売しようとする場合は別途薬局の開設又は店舗販売業の許可が必要である。

薬局と医薬品の販売業(3類型)の比較
区分許可の単位・許可権者取り扱える医薬品特徴
薬局所在地の都道府県知事等の開設許可(販売業の許可は不要)医療用医薬品、要指導医薬品、一般用医薬品調剤可。医療提供施設。管理者は薬剤師
店舗販売業店舗ごとに、店舗の所在地の都道府県知事等要指導医薬品、一般用医薬品のみ薬剤師が従事していても調剤は不可
配置販売業配置しようとする区域を含む都道府県ごとに、都道府県知事一般用医薬品のうち配置販売品目基準に適合するもの先用後利。分割販売は禁止。身分証明書の携帯義務
卸売販売業医薬品を薬局・他の販売業・製薬企業・医療機関等に販売一般の生活者への直接販売は不可
先用後利
配置販売業の販売形態。購入者の居宅等に医薬品をあらかじめ預けておき、購入者がこれを使用した後でなければ代金請求権を生じないというもの。手引きでは配置箱を預けることは法上「陳列」に該当するとされている。
分割販売
特定の購入者の求めに応じて医薬品の包装を開封して販売すること。「量り売り」「零売」とも呼ばれ、薬局・店舗販売業・卸売販売業では可能だが配置販売業では禁止。あらかじめ小分けして販売する行為は無許可製造等に該当し認められない。
店舗管理者
店舗販売業の店舗を実地に管理する者。薬剤師又は登録販売者でなければならず、要指導医薬品又は第一類医薬品を販売する店舗では原則薬剤師でなければならない。店舗販売業者に対し必要な意見を書面により述べる義務がある。
薬剤師不在時間
開店時間のうち、調剤に従事する薬剤師が薬局以外の場所で業務を行うため、やむを得ず、かつ、一時的に薬局において薬剤師が不在となる時間。恒常的な不在は認められず、その間は調剤室を閉鎖し掲示を行う。

例題 店舗販売業の店舗に薬剤師が勤務している場合、調剤を行うことができるか。

できない。手引きでは、店舗販売業は薬局と異なり、薬剤師が従事していても調剤を行うことはできず、要指導医薬品又は一般用医薬品以外の医薬品の販売等は認められていない(法第27条)とされている。

例題 医薬品の販売業の許可の有効期間は何年か。

許可は6年ごとに、その更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失う(法第24条第2項)。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第4章 Ⅲ 医薬品の販売業の許可

リスク区分に応じた販売方法・情報提供・陳列

要指導・第一類・第二類・第三類ごとの販売従事者、情報提供の義務の違い(義務/努力義務/規定なし)、陳列のルールを押さえます。

薬局開設者又は店舗販売業者は、法第36条の5の規定に基づき、要指導医薬品を販売し、授与する場合には、薬剤師に販売させ、授与させなければならない。その際は、購入しようとする者が当該要指導医薬品を使用しようとする者であることを確認させること、他の薬局開設者又は店舗販売業者からの当該要指導医薬品の購入又は譲受けの状況を確認させること、確認した事項を勘案し、適正な使用のために必要と認められる数量に限り販売させること、情報の提供及び指導を受けた者が内容を理解したこと並びに質問がないことを確認した後に販売させること、販売した薬剤師の氏名、薬局又は店舗の名称及び電話番号その他連絡先を購入者に伝えさせること等が定められている(規則第158条の11)。また、特定要指導医薬品については、薬剤師に、対面により、販売させ、又は授与させなければならない(法第36条の5第3項)。

一般用医薬品については、法第36条の9の規定に基づき、第一類医薬品は薬剤師に、第二類医薬品及び第三類医薬品は薬剤師又は登録販売者に、販売させ、授与させなければならない。第一類医薬品の販売に当たっては、情報の提供を受けた者が内容を理解したこと及び質問がないことを確認した後に販売させること、販売した薬剤師の氏名・薬局等の名称・連絡先を購入者に伝えさせること等が定められている。

情報提供については、要指導医薬品を販売する場合には、薬剤師に、対面等により、所定の事項を記載した書面を用いて、必要な情報を提供させ、必要な薬学的知見に基づく指導を行わせなければならない(法第36条の6)。これらができないときその他要指導医薬品の適正な使用を確保することができないと認められるときは、要指導医薬品を販売又は授与してはならない。使用しようとする者が、薬剤服用歴その他の情報を一元的かつ経時的に管理できる手帳(お薬手帳)を所持しない場合はその所持を勧奨し、所持する場合は必要に応じお薬手帳を活用した情報の提供及び指導を行わせることとされており、お薬手帳には要指導医薬品についても記録することが重要である。第一類医薬品を販売する場合には、薬剤師に、所定の事項を記載した書面を用いて、必要な情報を提供させなければならない(法第36条の10第1項)。いずれの場合も、あらかじめ、年齢、他の薬剤又は医薬品の使用の状況、性別、症状、症状に関して医師等の診断を受けたか否か、現にかかっている他の疾病、妊娠しているか否か(妊娠中の場合は妊娠週数)、授乳しているか否か、購入・譲受け・使用の経験の有無、副作用歴等を確認させなければならない。ただし第一類医薬品については、購入する者から説明を要しない旨の意思の表明があり、薬剤師が、当該第一類医薬品が適正に使用されると認められると判断した場合には、この情報提供の規定は適用しないこととされている(法第36条の10第6項)。

第二類医薬品を販売する場合には、薬剤師又は登録販売者に、必要な情報を提供させるよう努めなければならない(努力義務)。第二類医薬品のうち、特定の使用者(小児、妊婦等)や相互作用に関して使用を避けるべき注意事項があり、それに該当する使用がなされた場合に重大な副作用を生じる危険性が高まる成分、又は依存性・習慣性がある成分が配合されたもの(指定第二類医薬品)については、積極的な情報提供の機会がより確保されるよう陳列方法を工夫する等の対応が求められ、購入者が禁忌事項を確認すること及び薬剤師又は登録販売者に相談することを勧める旨を確実に認識できるようにするために必要な措置を講じなければならない。第三類医薬品を販売する場合には、薬剤師又は登録販売者に、必要な情報提供をさせることが望ましいが、法上の規定は特にない。一方、購入者等から相談があった場合の応答は、リスク区分によらず義務であり、薬局開設者、店舗販売業者又は配置販売業者は、相談があった場合には、情報の提供を行った後に、販売し又は授与しなければならない。

薬局開設者は薬局医薬品、要指導医薬品又は第一類医薬品を、店舗販売業者は要指導医薬品又は第一類医薬品を販売したとき、配置販売業者は第一類医薬品を配置したときは、品名、数量、販売・授与・配置した日時、販売・授与・配置した薬剤師の氏名と情報提供を行った薬剤師の氏名、購入者等が情報提供の内容を理解したことの確認の結果を書面に記載し、2年間保存しなければならない。第二類医薬品又は第三類医薬品については、これらの事項を書面に記載し、保存するよう努めなければならない(努力義務)。医薬品を購入した者の連絡先を書面に記載し、保存することも努力義務とされている。

陳列については、薬局開設者又は店舗販売業者は、医薬品を他の物と区別して貯蔵し、又は陳列しなければならない(法第57条の2第1項)。要指導医薬品は、鍵をかけた陳列設備に陳列する場合、又は購入しようとする者等が直接手の触れられない陳列設備に陳列する場合を除き、要指導医薬品陳列区画の内部の陳列設備に陳列しなければならず、要指導医薬品及び一般用医薬品を混在しないように陳列しなければならない。第一類医薬品も同様に、鍵をかけた陳列設備又は直接手の触れられない陳列設備に陳列する場合を除き、第一類医薬品陳列区画の内部の陳列設備に陳列しなければならない。指定第二類医薬品は、鍵をかけた陳列設備に陳列する場合、又は陳列設備から1.2メートル以内の範囲に購入しようとする者等が進入することができないよう必要な措置が採られている場合を除き、「情報提供を行うための設備」から7メートル以内の範囲に陳列しなければならない。第一類・第二類・第三類医薬品は混在しないように陳列しなければならない。配置販売業者も、一般用医薬品を区分ごとに、混在させないように配置しなければならない。要指導医薬品又は一般用医薬品を販売しない時間は、これらを通常陳列し又は交付する場所を閉鎖しなければならず、要指導医薬品又は第一類医薬品を販売しない時間は、要指導医薬品陳列区画又は第一類医薬品陳列区画を閉鎖しなければならない(鍵をかけた陳列設備に陳列している場合を除く)。また、薬局開設者又は店舗販売業者は、薬局又は店舗の管理及び運営に関する事項と、要指導医薬品・一般用医薬品等の販売制度に関する事項を、薬局又は店舗の見やすい位置に掲示板で掲示しなければならず、配置販売業者は、区域の管理及び運営に関する事項等を記載した書面を添えて配置しなければならない。

リスク区分に応じた対応する専門家・情報提供・相談対応(手引きの要約表)
リスク区分対応する専門家購入者側から質問等がなくても行う積極的な情報提供購入者側から相談があった場合の応答
要指導医薬品薬剤師対面等により、書面を用いた情報提供及び薬学的知見に基づく指導を義務づけ義務
第一類医薬品薬剤師書面を用いた情報提供を義務づけ義務
第二類医薬品薬剤師又は登録販売者努力義務義務
第三類医薬品薬剤師又は登録販売者法上の規定は特になし義務
指定第二類医薬品
第二類医薬品のうち、特定の使用者(小児、妊婦等)や相互作用に関して使用を避けるべき注意事項があり、該当する使用で重大な副作用を生じる危険性が高まる成分、又は依存性・習慣性がある成分が配合されたもの。情報提供設備から7メートル以内の陳列等が求められる。
お薬手帳
薬剤服用歴その他の情報を一元的かつ経時的に管理できる手帳。要指導医薬品の販売時、所持しない者には所持を勧奨し、所持する者には必要に応じ活用した情報提供・指導を行う。要指導医薬品や一般用医薬品についても記録することが重要とされる。
要指導医薬品陳列区画
構造設備規則に規定される、要指導医薬品を陳列する区画。要指導医薬品は原則この区画の内部の陳列設備に陳列するが、鍵をかけた陳列設備や購入者等が直接手の触れられない陳列設備に陳列する場合は例外とされる。

例題 第一類医薬品の書面を用いた情報提供を行わずに販売できるのはどのような場合か。

購入する者から説明を要しない旨の意思の表明があり、薬剤師が、当該第一類医薬品が適正に使用されると認められると判断した場合には、情報提供の規定は適用されない(法第36条の10第6項)。

例題 指定第二類医薬品はどこに陳列しなければならないか。

鍵をかけた陳列設備に陳列する場合、又は陳列設備から1.2メートル以内に購入者等が進入できないよう必要な措置が採られている場合を除き、「情報提供を行うための設備」から7メートル以内の範囲に陳列しなければならない。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第4章 Ⅲ 医薬品の販売業の許可

特定販売と指定濫用防止医薬品

インターネット販売等(特定販売)のルールと、濫用防止のため販売方法が規制される指定濫用防止医薬品(成分・数量・年齢確認)を学びます。

「その薬局又は店舗におけるその薬局又は店舗以外の場所にいる者に対する要指導医薬品(特定要指導医薬品を除く。)、一般用医薬品又は薬局製造販売医薬品(毒薬及び劇薬であるものを除く。)の販売又は授与」を「特定販売」という(規則第1条の2第2項第2号)。薬局開設者又は店舗販売業者が特定販売を行う場合には、当該薬局又は店舗に貯蔵し、又は陳列している要指導医薬品(特定要指導医薬品を除く)、一般用医薬品又は薬局製造販売医薬品を販売し、又は授与しなければならない。

特定販売を行うことについて広告をするときは、インターネットを利用する場合はホームページに、その他の広告方法を用いる場合は当該広告に、薬局又は店舗の管理及び運営に関する事項、販売制度に関する事項に加え、特定販売に伴う事項として、①薬局又は店舗の主要な外観の写真、②薬局製造販売医薬品、要指導医薬品(特定要指導医薬品を除く)又は一般用医薬品の陳列の状況を示す写真、③現在勤務している薬剤師又は登録販売者の別及びその氏名、④開店時間と特定販売を行う時間が異なる場合にあっては、その開店時間及び特定販売を行う時間、⑤特定販売を行う医薬品の使用期限を、見やすく表示しなければならない。また、広告をするときは、要指導医薬品(特定要指導医薬品を除く)、第一類医薬品、指定第二類医薬品、第二類医薬品、第三類医薬品及び薬局製造販売医薬品の区分ごとに表示すること、インターネットを利用して広告をするときは、都道府県知事(薬局又は店舗の所在地が保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合は市長又は区長)及び厚生労働大臣が容易に閲覧することができるホームページで行うこととされている。

特定販売を行う場合であっても、要指導医薬品(特定要指導医薬品を除く)及び一般用医薬品を購入しようとする者等から、対面又は電話により相談応需の希望があった場合には、薬局開設者又は店舗販売業者は、その薬局又は店舗において医薬品の販売又は授与に従事する薬剤師又は登録販売者に、対面又は電話により情報提供を行わせなければならない。

指定濫用防止医薬品については、法第36条の11第1項において、薬局開設者、店舗販売業者又は配置販売業者は、その適正な使用のため、販売等する場合には、薬剤師又は登録販売者に、所定の事項を記載した書面を用いて必要な情報を提供させなければならないとされている(薬剤師等に販売するときを除く)。書面記載事項には、当該指定濫用防止医薬品の濫用をした場合における保健衛生上の危害の発生のおそれがある旨が加えられる。また、情報の提供を行わせるに当たっては、あらかじめ、①年齢、②購入しようとする者が18歳未満である場合は当該者の氏名、③当該指定濫用防止医薬品及びそれ以外の指定濫用防止医薬品の購入又は譲受けの状況、④厚生労働大臣が定める数量を超えて購入しようとする場合はその理由、⑤適正な使用を目的とする購入であることを確認するために必要な事項等を確認させなければならない。

薬局開設者、店舗販売業者又は配置販売業者は、指定濫用防止医薬品ごとに定める数量を超えて販売してはならず、また、定める年齢(18歳)に満たない者に販売してはならない(薬剤師等に販売するとき、又は18歳以上の者等に対面等により情報提供を行わせるとき等を除く)。厚生労働大臣が定める数量は、指定濫用防止医薬品ごとに、一包装であって、かつ、用法及び用量からみて所定の日数分(エフェドリン・コデインは5日分、ジヒドロコデイン・ジフェンヒドラミン・デキストロメトルファンは5日分でかぜ薬は7日分、プソイドエフェドリン・メチルエフェドリンは5日分でかぜ薬又は鼻炎用内服薬は7日分、ブロモバレリル尿素は5日分で解熱鎮痛薬は7日分。いずれも外用剤を除く)の数量を超えないものとされている。情報の提供ができない場合その他適正な使用を確保することができないと認められる場合には、指定濫用防止医薬品を販売してはならない。また、販売等する場合には、販売の方法、情報提供・確認、陳列、数量超過時等の対応等の手順を記載した指定濫用防止医薬品販売等手順書を作成し、薬剤師又は登録販売者に手順書に基づき業務を行わせなければならない。

陳列については、薬局開設者又は店舗販売業者は、指定濫用防止医薬品(第二類医薬品又は第三類医薬品に限る)を、①指定濫用防止医薬品陳列区画の内部の陳列設備に陳列する(鍵をかけた陳列設備その他直接手の触れられない陳列設備に陳列する場合を除く)か、②情報を提供するための設備から7メートル以内の範囲に陳列し、当該設備に薬事に関する実務に従事する薬剤師又は登録販売者を継続的に配置するか、いずれかの方法により陳列しなければならない(法第57条の2第4項、規則第218条の5)。

指定濫用防止医薬品の成分と厚生労働大臣が定める数量(一包装であって、かつ、用法及び用量からみた日数分)
成分(いずれも外用剤を除く)日数分の上限
エフェドリン5日
コデイン5日
ジヒドロコデイン5日(かぜ薬としての効能又は効果を有すると認められる製剤は7日)
ジフェンヒドラミン5日(かぜ薬としての効能又は効果を有すると認められる製剤は7日)
デキストロメトルファン5日(かぜ薬としての効能又は効果を有すると認められる製剤は7日)
プソイドエフェドリン5日(かぜ薬又は鼻炎用内服薬としての効能又は効果を有すると認められる製剤は7日)
ブロモバレリル尿素5日(解熱鎮痛薬としての効能又は効果を有すると認められる製剤は7日)
メチルエフェドリン5日(かぜ薬又は鼻炎用内服薬としての効能又は効果を有すると認められる製剤は7日)
特定販売
その薬局又は店舗におけるその薬局又は店舗以外の場所にいる者に対する要指導医薬品(特定要指導医薬品を除く)、一般用医薬品又は薬局製造販売医薬品(毒薬及び劇薬を除く)の販売又は授与。インターネット販売等が該当し、当該薬局・店舗に貯蔵・陳列している医薬品を販売する。
指定濫用防止医薬品
濫用防止のため販売方法が規制される医薬品。書面を用いた情報提供、年齢等の確認、厚生労働大臣が定める数量(一包装かつ原則5日分)を超える販売の禁止、18歳未満の者への販売の原則禁止、手順書の作成等が義務づけられている。
特定要指導医薬品
薬剤師に、対面により、販売させ、又は授与させなければならないこととされている要指導医薬品(法第36条の5第3項)。特定販売の対象から除かれている。

例題 特定販売のホームページに表示しなければならない写真は何か。

薬局又は店舗の主要な外観の写真と、薬局製造販売医薬品、要指導医薬品(特定要指導医薬品を除く)又は一般用医薬品の陳列の状況を示す写真を見やすく表示しなければならない。

例題 指定濫用防止医薬品を購入しようとする者が18歳未満のとき、何を確認させなければならないか。

あらかじめ確認させる事項として、年齢のほか、購入しようとする者が18歳未満である場合は当該者の氏名を確認させなければならない(規則第159条の18の5)。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第4章 Ⅲ 医薬品の販売業の許可

適正な販売広告・販売方法と行政庁の監視指導

誇大広告の禁止(法第66条)・承認前広告の禁止(法第68条)、広告該当性の3要件、課徴金制度、不適正な販売方法、薬事監視員による監視指導を学びます。

誇大広告等については、法第66条において「何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない」(同条第1項)とされ、「医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布する」ことはこれに該当するものとされている(同条第2項)。さらに、何人も、堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない(同条第3項)。また、承認前の医薬品については、法第68条により、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告が禁止されている。これらの規定に違反して広告を行った者については、「2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」こととされている。法第66条及び第68条は、広告等の依頼主だけでなく、その広告等に関与するすべての人が対象となる。一般用医薬品の販売広告には、マスメディアを通じて行われるもののほか、薬局、店舗販売業又は配置販売業において販売促進のため用いられるチラシやダイレクトメール(電子メールを含む)、POP広告等も含まれる。

医薬品の広告に該当するか否かについては、(1)顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること、(2)特定の医薬品の商品名(販売名)が明らかにされていること、(3)一般人が認知できる状態であることの、いずれの要件も満たす場合には、広告に該当するものと判断されている。違反広告については、厚生労働大臣又は都道府県知事が、その行為の中止、再発防止等の措置命令を行うことができる(法第72条の5)。また、厚生労働大臣が、医薬品、医療機器等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する虚偽・誇大な広告を行った者に対して、違反を行っていた期間中における対象商品の売上額×4.5%の課徴金を納付させる命令を行う課徴金制度がある(法第75条の5の2)。

医薬品等適正広告基準では、事実に反する認識を得させるおそれがある広告と、過度の消費や乱用を助長するおそれがある広告が不適正なものとされている。漢方処方製剤等の効能効果に付された一定の前提条件(いわゆる「しばり表現」)を省いて広告することは原則として認められず、漢方処方製剤の構成生薬の作用を個別に挙げて説明することも不適当である。一般用医薬品と同じ有効成分を含有する医療用医薬品の効能効果をそのまま標榜することも、承認されている内容を正確に反映した広告といえない。医師による診断・治療によらなければ一般に治癒が期待できない疾患(例えば、がん、糖尿病、心臓病等)について自己治療が可能であるかのような広告表現は認められない。医薬品の有効性又は安全性について、それが確実であることを保証するような表現がなされた広告は、明示的・暗示的を問わず、虚偽又は誇大な広告とみなされる。効能効果又は安全性について最大級の表現又はこれに類する表現等を行うことも不適当とされている。「天然成分を使用しているので副作用がない」「いくら飲んでも副作用がない」といった事実に反する広告表現は、過度の消費や乱用を助長するおそれがあるだけでなく、虚偽誇大な広告にも該当する。医薬関係者、医療機関、公的機関、団体等が、公認、推薦、選用等している旨の広告については、仮に事実であったとしても、原則として不適当とされている。

不適正な販売方法として、キャラクターグッズ等の景品類を提供して販売することは、不当景品類及び不当表示防止法の限度内であれば認められているが、医薬品を懸賞や景品として授与することは、原則として認められていない。購入者の利便性のため異なる複数の医薬品又は医薬品と他の物品を組み合わせて販売する場合には、組み合わせた医薬品について、購入者等に対して情報提供を十分に行える程度の種類の範囲内であって、かつ、組み合わせることに合理性が認められるものでなければならず、効能効果が重複する組合せや、相互作用等により保健衛生上の危害を生じるおそれのある組合せは不適当である。組み合わせた個々の医薬品等の外箱等に記載された法に基づく記載事項が、組み合わせ販売のため使用される容器の外から明瞭に見えるようになっている必要がある(法第51条)。許可を受けた薬局又は店舗以外の場所に医薬品を貯蔵又は陳列し、そこを拠点として販売等に供する行為や、配置販売業において医薬品を先用後利によらず現金売りを行うことは、法第37条第1項の規定に違反する。「医薬品を多量に購入する者」等に対しては、積極的に事情を尋ねるなど慎重に対処し、状況によっては販売を差し控えるべきである。

行政庁の監視指導については、厚生労働大臣、都道府県知事、保健所を設置する市の市長及び特別区の区長は、その職員のうちから薬事監視員を命じ、監視指導を行わせている。都道府県知事等は、必要があると認めるときは、薬局開設者又は医薬品の販売業者に対して必要な報告をさせ、又は薬事監視員に、医薬品を業務上取り扱う場所に立ち入り、構造設備若しくは帳簿書類等を検査させ、従業員その他の関係者に質問させることができ、無承認無許可医薬品、不良医薬品又は不正表示医薬品等の疑いのある物を、試験のため必要な最少分量に限り、収去させることができる(法第69条)。命ぜられた報告を怠ったり、虚偽の報告をした場合、立入検査や収去を拒んだり、妨げたり、忌避した場合、また、薬剤師や登録販売者を含む従業員が、薬事監視員の質問に対して正当な理由なく答弁しなかったり、虚偽の答弁を行った場合には、「五十万円以下の罰金に処する」こととされている。

行政庁による処分として、都道府県知事等は、構造設備の改善命令・施設の使用禁止処分(法第72条第4項)、業務体制の整備命令(法第72条の2)、業務運営の改善に必要な措置を採るべきことを命ずる改善命令(法第72条の4第1項)、許可の際に付された条件への違反を是正する改善措置命令(法第72条の4第2項)、管理者の変更命令(法第73条)を行うことができる。配置販売業の配置員に法令違反行為があったときは、配置販売業者に対して配置員による配置販売の業務の停止を命ずることができ、必要があるときは配置員に対しても業務の停止を命ずることができる(法第74条)。法令違反等があったときは、許可の取消し又は業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる(法第75条第1項)。厚生労働大臣は、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があるときは、医薬品の販売又は授与を一時停止することその他の応急措置を採るべきことを命ずることができる(法第69条の3の緊急命令)。また、不正表示医薬品、不良医薬品、無承認無許可医薬品等について、廃棄、回収その他公衆衛生上の危険の発生を防止するに足りる措置を採るべきことを命ずることができる(法第70条第1項)。行政庁による命令がなくても、医薬品等の製造販売業者等は、保健衛生上の危害の発生・拡大のおそれを知ったときは、廃棄、回収、販売の停止、情報の提供その他必要な措置を講じなければならず、薬局開設者や医薬品の販売業者、薬剤師その他の医薬関係者は、その措置の実施に協力するよう努めなければならない(法第68条の9)。苦情相談窓口としては、薬事監視員を任命している行政庁の薬務主管課、保健所、薬事監視事務所等のほか、(独)国民生活センター、各地区の消費生活センター又は消費者団体等の民間団体にも生活者からの苦情等が寄せられており、医薬品の販売関係の業界団体・職能団体においても相談窓口を設置し、業界内における自主的なチェックと自浄的是正を図る取り組みがなされている。

医薬品の広告規制のまとめ
規制・制度内容措置・罰則
誇大広告等の禁止(法第66条)何人も、名称・製造方法・効能・効果・性能に関して、明示的・暗示的を問わず、虚偽又は誇大な記事を広告・記述・流布してはならない。医師等が保証したと誤解されるおそれがある記事もこれに該当2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金(併科あり)
承認前の医薬品の広告の禁止(法第68条)未承認の医薬品の名称・製造方法・効能・効果・性能に関する広告の禁止2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金(併科あり)
措置命令(法第72条の5)厚生労働大臣又は都道府県知事が、違反して広告等を行った者に対して行為の中止、再発防止等を命令
課徴金制度(法第75条の5の2)厚生労働大臣が、虚偽・誇大な広告を行った者に対して、違反期間中の対象商品の売上額×4.5%の課徴金納付を命令
広告該当性の3要件
(1)顧客を誘引する(購入意欲を昂進させる)意図が明確であること、(2)特定の医薬品の商品名(販売名)が明らかにされていること、(3)一般人が認知できる状態であること。いずれの要件も満たす場合に広告に該当すると判断される。
課徴金制度
厚生労働大臣が、医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する虚偽・誇大な広告を行った者に対して、違反を行っていた期間中における対象商品の売上額×4.5%の課徴金を納付させる命令を行う制度(法第75条の5の2)。
しばり表現
漢方処方製剤等で、使用する人の体質等を限定した上で特定の症状等に対する改善を目的として、効能効果に付されている一定の前提条件。これを省いて広告することは原則として認められていない。
薬事監視員
厚生労働大臣、都道府県知事、保健所設置市の市長及び特別区の区長がその職員のうちから命じる監視指導の担当者。立入検査、帳簿書類等の検査、関係者への質問、疑いのある物の試験のため必要な最少分量に限った収去等を行う。

例題 医薬品の広告に該当すると判断されるのはどのような場合か。

(1)顧客を誘引する意図が明確であること、(2)特定の医薬品の商品名(販売名)が明らかにされていること、(3)一般人が認知できる状態であることの、いずれの要件も満たす場合に広告に該当すると判断されている。

例題 医薬品を懸賞や景品として授与することは認められるか。

原則として認められていない。なお、キャラクターグッズ等の景品類を提供して販売することは、不当景品類及び不当表示防止法の限度内であれば認められている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第4章 Ⅳ 医薬品販売に関する法令遵守

適正使用情報と製品表示

添付文書の読み方

一般用医薬品の添付文書に何がどの順で書かれているか、改訂年月から製造販売業者の名称・所在地までを通しでたどれるようになります。

手引きでは、医薬品は、効能・効果、用法・用量、起こり得る副作用等、その適正な使用のために必要な情報(適正使用情報)を伴って初めて医薬品としての機能を発揮するものであるとされている。要指導医薬品又は一般用医薬品の場合、そのリスク区分に応じた販売又は授与する者その他の医薬関係者から提供された情報に基づき、一般の生活者が購入し、自己の判断で使用するものであるため、添付文書や製品表示に記載されている適正使用情報は、その適切な選択、適正な使用を図る上で特に重要であるとされている。それらの記載は一般の生活者に理解しやすい平易な表現でなされているが、その内容は一般的・網羅的なものとならざるをえない。そのため専門家には、記載内容を的確に理解した上で、個々の生活者の状況に応じて、積極的な情報提供が必要と思われる事項に焦点を絞った効果的かつ効率的な説明が求められるとされている。

法第52条第2項の規定により、要指導医薬品、一般用医薬品及び薬局製造販売医薬品には、それに添付する文書(添付文書)又はその容器若しくは被包に、「用法、用量その他使用及び取扱い上の必要な注意」等の記載が義務づけられている。記載の構成は、①改訂年月、②添付文書の必読及び保管に関する事項、③販売名、薬効名及びリスク区分、④製品の特徴、⑤使用上の注意、⑥効能又は効果、⑦用法及び用量、⑧成分及び分量、⑨病気の予防・症状の改善につながる事項(いわゆる「養生訓」)、⑩保管及び取扱い上の注意、⑪消費者相談窓口、⑫製造販売業者の名称及び所在地、という順である。

①改訂年月について、手引きでは、一般用医薬品を含めて医薬品の添付文書の内容は変わるものであり、有効性・安全性等に係る新たな知見、使用に係る情報に基づき、必要に応じて随時改訂がなされているとされている。重要な内容が変更された場合には、改訂年月を記載するとともに改訂された箇所を明示することとされており、以前からその医薬品を使用している人が変更箇所に注意を払えるようになっている。定期的な改訂が義務づけられているのではなく、あくまで「必要に応じて随時」である点が押さえどころである。

②添付文書の必読及び保管に関する事項は、添付文書の販売名の上部に「使用にあたって、この説明文書を必ず読むこと。また、必要なときに読めるよう大切に保存すること。」等の文言として記載される。添付文書は開封時に一度目を通されれば十分というものではなく、実際に使用する人やその時の状態等によって留意されるべき事項が異なってくるため、必要なときにいつでも取り出して読めるよう保管される必要があるとされている。販売時に専門家から直接情報提供を受けた購入者以外の家族等が使用する際にも添付文書に目を通すこと、一般用医薬品を使用した人が医療機関を受診する際にはその添付文書を持参して医師や薬剤師に見せて相談することが重要であるとされている。

③販売名、薬効名及びリスク区分(人体に直接使用しない検査薬では「販売名及び使用目的」)では、通常の医薬品では承認を受けた販売名が記載される。薬効名とは、その医薬品の薬効又は性質(例えば、主たる有効成分など)が簡潔な分かりやすい表現で示されたもので、販売名に薬効名が含まれているような場合には薬効名の記載は省略されることがある。各製品のリスク区分も記載される。④製品の特徴は、医薬品を使用する人にその製品の概要を分かりやすく説明することを目的として、簡潔に記載される。

⑤使用上の注意は、「してはいけないこと」、「相談すること」及び「その他の注意」から構成され、適正使用のために重要と考えられる項目が前段に記載される。枠囲い、文字の色やポイントを変えるなど他の記載事項と比べて目立つように記載されており、「使用上の注意」、「してはいけないこと」及び「相談すること」の各項目の見出しには、それぞれ例示された標識的マークが付されていることが多い。なお「その他の注意」には、容認される軽微なものについて「次の症状が現れることがある」として記載されるとされている。

⑥効能又は効果(一般用検査薬では「使用目的」)には、一般の生活者が自ら判断できる症状、用途等が示され、「適応症」として記載されている場合もある。⑦用法及び用量(一般用検査薬では「使用方法」)には、年齢区分、1回用量、1日の使用回数等が、表形式で示されるなど分かりやすく工夫して記載される。小児における使用に関して認められていない年齢区分(使用年齢の制限)がある場合は、当該年齢区分に当たる小児に使用させない旨が記載される。効能又は効果、用法及び用量に関連する注意事項がある場合には、それぞれの項目に続けて、これと区別して記載される。

⑧成分及び分量(一般用検査薬では「キットの内容及び成分・分量」)には、有効成分の名称(一般的名称のあるものについてはその一般的名称。有効成分が不明なものにあってはその本質及び製造方法の要旨)及び分量が記載され、併せて添加物として配合されている成分も掲げられる(人体に直接使用しない検査薬等を除く)。手引きでは、医薬品の添加物はそれ自体積極的な薬効を期待して配合されるものでなく、製剤としての品質、有効性及び安全性を高めることを目的として配合されているが、アレルギーの原因となり得ることが知られているものもあり、その成分に対するアレルギーの既往歴がある人では使用を避ける必要があるとされている。尿や便が着色することがある旨の注意等も、この項目に続けて記載される。

⑨病気の予防・症状の改善につながる事項(いわゆる「養生訓」)は、医薬品の使用のみに頼ることなく日常生活上どのようなことに心がけるべきかを記載するもので、必須記載ではない。⑩保管及び取扱い上の注意に続き、⑪消費者相談窓口には、製造販売元の製薬企業(製造販売業者)において購入者等からの相談に応じるための窓口担当部門の名称、電話番号、受付時間等が記載される。⑫製造販売業者の名称及び所在地には、製造販売業の許可を受け、その医薬品について製造責任を有する製薬企業の名称及び所在地が記載され、販売を他社に委託している場合には販社等の名称及び所在地も併せて記載されることがある。

添付文書情報の扱いについては、令和3年8月1日から、医療用医薬品への紙の添付文書の同梱を廃止し、注意事項等情報は電子的な方法により提供されることとなった。具体的には、医薬品の容器又は被包に当該情報を入手するために必要な符号(バーコード又は二次元コード)を記載することが求められている。一方で、一般用医薬品等の消費者が直接購入する製品は、使用時に添付文書情報の内容を直ちに確認できる状態を確保する必要があるため、添付文書がある場合は引き続き紙の添付文書が同梱される、とされている。

一般用医薬品の添付文書の記載構成(①〜⑫の順)
記載項目押さえどころ
改訂年月必要に応じて随時改訂。重要な変更時は改訂年月を記載し改訂箇所を明示
添付文書の必読及び保管に関する事項販売名の上部に記載。必要なときにいつでも読めるよう保管
販売名、薬効名及びリスク区分販売名に薬効名が含まれる場合は薬効名を省略できる
製品の特徴製品の概要を分かりやすく簡潔に説明
使用上の注意してはいけないこと/相談すること/その他の注意。枠囲い等で目立つように
効能又は効果一般用検査薬では「使用目的」。「適応症」と記載される場合もある
用法及び用量一般用検査薬では「使用方法」。年齢区分・1回用量・1日の使用回数等
成分及び分量有効成分の名称と分量。添加物も掲げられる
病気の予防・症状の改善につながる事項いわゆる「養生訓」。必須記載ではない
保管及び取扱い上の注意保管条件、小児の手の届かないところ、他の容器への入れ替え禁止等
消費者相談窓口製造販売業者の窓口担当部門の名称、電話番号、受付時間等
製造販売業者の名称及び所在地製造責任を有する製薬企業。販社等が併記されることもある
適正使用情報
効能・効果、用法・用量、起こり得る副作用等、医薬品の適正な使用のために必要な情報。手引きでは、医薬品はこれを伴って初めて医薬品としての機能を発揮するものであるとされている。
改訂年月
添付文書の記載①。内容は必要に応じて随時改訂され、重要な内容が変更された場合には改訂年月を記載するとともに改訂された箇所を明示することとされている。
薬効名
その医薬品の薬効又は性質(例えば、主たる有効成分など)が簡潔な分かりやすい表現で示されたもの。販売名に薬効名が含まれている場合は記載が省略されることがある。
養生訓
添付文書の記載⑨「病気の予防・症状の改善につながる事項」の通称。日常生活上心がけるべきことを分かりやすく記載するもので、必須記載ではない。
消費者相談窓口
添付文書の記載⑪。製造販売元の製薬企業において購入者等からの相談に応じるための窓口担当部門の名称、電話番号、受付時間等が記載される。
標識的マーク
「使用上の注意」「してはいけないこと」「相談すること」の各項目の見出しに付されることが多いマーク。枠囲いや文字の色・ポイントの変更と併せ、目立つ記載とするための工夫。

例題 添付文書の改訂は、定期的に行うことが義務づけられているか。

いいえ。手引きでは、有効性・安全性等に係る新たな知見、使用に係る情報に基づき、必要に応じて随時改訂がなされているとされている。重要な内容が変更された場合には、改訂年月を記載するとともに改訂された箇所を明示することとされている。

例題 「養生訓」は添付文書に必ず記載しなければならないか。

いいえ。⑨病気の予防・症状の改善につながる事項(いわゆる「養生訓」)は、記載されていることがあるとされるもので、必須記載ではない。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第5章 Ⅰ 医薬品の適正使用情報 1)添付文書の読み方

「してはいけないこと」

別表5-1の「してはいけないこと」を、記載・主な成分や薬効群・理由の三つ組で結び付けられるようになります。

手引きでは、「してはいけないこと」には、守らないと症状が悪化する事項、副作用又は事故等が起こりやすくなる事項について記載されるとされている。一般用検査薬では、その検査結果のみで確定診断はできないので、判定が陽性であれば速やかに医師の診断を受ける旨が記載される。項目は(a)「次の人は使用(服用)しないこと」、(b)「次の部位には使用しないこと」、(c)「本剤を使用(服用)している間は、次の医薬品を使用(服用)しないこと」、(d)その他「してはいけないこと」から成る。

(a)「次の人は使用(服用)しないこと」には、アレルギーの既往歴、症状や状態、基礎疾患、年齢、妊娠の可能性の有無、授乳の有無等からみて重篤な副作用を生じる危険性が特に高いため使用を避けるべき人が、生活者が自らの判断で認識できるよう記載される。重篤な副作用としてショック(アナフィラキシー)、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症、喘息等が掲げられている医薬品では、アレルギーの既往歴がある人等は使用しないこととして記載される。小児が使用した場合に特異的な有害作用のおそれがある成分を含有する医薬品では、通常、この項に「15歳未満の小児」「6歳未満の小児」等として記載される。(b)「次の部位には使用しないこと」は、局所に適用する医薬品について、使用を避けるべき患部の状態、適用部位等に分けて簡潔に記載される。

(c)併用に関する記載では、要指導医薬品又は一般用医薬品は複数の有効成分が配合されている場合が多く、使用方法や効能・効果が異なる医薬品同士でも、同一成分又は類似の作用を有する成分が重複することがあるため、併用すると作用の増強、副作用等のリスクの増大が予測されるものについて注意が喚起される。ここで重要なのは、医療用医薬品との併用は「してはいけないこと」ではなく、「相談すること」の項において「医師(又は歯科医師)の治療を受けている人」等として記載されるという点である。医療機関で治療を受けている人が、治療のために処方された医薬品の使用を自己判断で控えることは適当でないためとされている。

(d)その他「してはいけないこと」の主なものとして、「服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないこと」(成分の作用によって眠気や異常なまぶしさ等が引き起こされると重大な事故につながるおそれがあるため)、「授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること」(体に吸収されると一部が乳汁中に移行して乳児に悪影響を及ぼすおそれがあることが知られている成分が配合された医薬品)、「服用前後は飲酒しないこと」(摂取されたアルコールによって医薬品の作用の増強、副作用を生じる危険性の増大等が予測される場合)、「長期連用しないこと」等(連用すると副作用等が現れやすくなる成分、効果が減弱して医薬品に頼りがちになりやすい成分又は比較的作用の強い成分が配合されている場合)がある。

別表5-1のアレルギーの既往歴の欄では、「本剤又は本剤の成分によりアレルギー症状を起こしたことがある人」として、かぜ薬・解熱鎮痛薬のほか、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、チペピジンヒベンズ酸塩、アミノフィリン水和物、テオフィリン、リドカイン、メキタジン、ロペラミド塩酸塩、ブチルスコポラミン臭化物、ポビドンヨードが配合された含嗽薬・口腔咽喉薬・殺菌消毒薬、ヨードチンキを含有するみずむし・たむし用薬等が挙げられている。理由は、アレルギー症状の既往歴のある人が再度使用した場合、ショック(アナフィラキシー)、皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)、中毒性表皮壊死融解症(ライエル症候群)等の重篤なアレルギー性の副作用を生じる危険性が高まるためとされている。また「喘息を起こしたことがある人」にはインドメタシン、フェルビナク、ケトプロフェン又はピロキシカムが配合された外用鎮痛消炎薬(喘息発作を誘発するおそれ)、「本剤又は他のかぜ薬、解熱鎮痛薬を使用(服用)して喘息を起こしたことがある人」にはアセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリン等の解熱鎮痛成分(アスピリン喘息を誘発するおそれ)が挙げられている。

症状・状態や基礎疾患等の欄も出題が多い。胃酸過多にはカフェインを含む成分を主薬とする眠気防止薬(カフェインが胃液の分泌を亢進し症状を悪化させるおそれ)、前立腺肥大による排尿困難にはプソイドエフェドリン塩酸塩(交感神経刺激作用により尿の貯留・尿閉を生じるおそれ)、激しい腹痛又は吐き気・嘔吐にはヒマシ油が配合された瀉下薬(急性腹症の可能性)が挙げられている。基礎疾患等では、心臓病にプソイドエフェドリン塩酸塩・芍薬甘草湯、胃潰瘍にカフェインを含む成分を主薬とする眠気防止薬、高血圧・甲状腺機能障害・糖尿病にプソイドエフェドリン塩酸塩が挙げられ、「日常的に不眠の人、不眠症の診断を受けた人」には抗ヒスタミン成分を主薬とする催眠鎮静薬(睡眠改善薬)が挙げられている。透析療法を受けている人にはアルミニウムを含む成分が配合された胃腸薬、胃腸鎮痛鎮痙薬(アルミニウム脳症及びアルミニウム骨症の報告)、口の中に傷やひどいただれのある人にはクロルヘキシジングルコン酸塩が配合された製剤(口腔内への適応を有する場合)が挙げられている。

小児における年齢制限は、そのまま問われやすい。「15歳未満の小児」はアスピリン、アスピリンアルミニウム、サザピリン、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩、サリチル酸ナトリウム(ライ症候群の発症との関連性が示唆)、プロメタジン塩酸塩等のプロメタジンを含む成分(乳児突然死症候群、乳児睡眠時無呼吸発作のような致命的な呼吸抑制の報告)、イブプロフェン及びオキセサゼイン(小児向けの製品はないため)、抗ヒスタミン成分を主薬とする催眠鎮静薬(神経過敏、興奮のおそれ)、ロペラミド(中枢神経系障害、呼吸抑制、腸管壊死に至る麻痺性イレウスの報告)である。「12歳未満の小児」はコデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩(重篤な呼吸抑制のおそれ)、「6歳未満の小児」はアミノ安息香酸エチル(メトヘモグロビン血症を起こすおそれ)、「3歳未満の小児」はヒマシ油類である。

妊婦・授乳婦等の欄では、「妊婦又は妊娠していると思われる人」にヒマシ油類(腸の急激な動きに刺激されて流産・早産を誘発するおそれ)、ジフェンヒドラミン塩酸塩を主薬とする催眠鎮静薬(妊娠に伴う不眠は睡眠改善薬の適用症状でないため)、エチニルエストラジオール、エストラジオール(胎児の先天性異常の発生が報告)、オキセサゼイン(妊娠中における安全性は確立されていないため)が、「出産予定日12週以内の妊婦」にアスピリン、アスピリンアルミニウム、イブプロフェン(妊娠期間の延長、胎児の動脈管の収縮・早期閉鎖、子宮収縮の抑制、分娩時出血の増加のおそれ)が挙げられている。「授乳中の人は本剤を服用しないか、本剤を服用する場合は授乳を避けること」は、ジフェンヒドラミンを含む成分(乳児に昏睡)、アミノフィリン水和物・テオフィリン(乳児に神経過敏)、ロートエキス(乳児に頻脈。なお授乳婦の乳汁分泌が抑制されることがある)、センノシド・センナ・ダイオウ又はカサントラノール(乳児に下痢)、ヒマシ油類、コデインリン酸塩水和物・ジヒドロコデインリン酸塩(母乳への移行により乳児でモルヒネ中毒が生じたとの報告)である。

「服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないこと」は、抗ヒスタミン成分(かぜ薬、催眠鎮静薬、乗物酔い防止薬、鎮咳去痰薬、口腔咽喉薬、鼻炎用内服薬、アレルギー用薬、内服痔疾用薬)、コデインリン酸塩水和物やデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物等、ブロモバレリル尿素・アリルイソプロピルアセチル尿素、ロペラミド塩酸塩・ロートエキス、そしてスコポラミン臭化水素酸塩水和物・メチルオクタトロピン臭化物等の抗コリン成分やピレンゼピン塩酸塩水和物に記載される。手引きでは、抗コリン成分では眠気、目のかすみ、異常なまぶしさを生じることがあるため、ピレンゼピン塩酸塩水和物では目のかすみ、異常なまぶしさを生じることがあるためとされている。

連用に関する注意では、かぜ薬・解熱鎮痛薬・抗菌性点眼薬・鼻炎用内服薬・鎮静薬・アレルギー用薬は成分によらず薬効群のすべてに「長期連用しないこと」が記載される(他に原因がある可能性があるため)。鼻炎用点鼻薬も成分によらず記載され、理由は二次充血、鼻づまり等を生じるおそれである。眠気防止薬のカフェインは「短期間の服用にとどめ、連用しないこと」、グリチルリチン酸を含む成分(1日用量がグリチルリチン酸として40mg以上、又はカンゾウとして1g以上)は偽アルドステロン症を生じるおそれ、ステロイド性抗炎症成分は副腎皮質の機能低下、アルミニウムを含む成分はアルミニウム脳症・骨症、芍薬甘草湯は「症状があるときのみの服用にとどめ、連用しないこと」(うっ血性心不全、心室頻拍)、ビスマスを含む成分は「1週間以上継続して服用しないこと」(海外において長期連用した場合に精神神経症状が現れたとの報告)、浣腸薬は「連用しないこと」(感受性の低下、いわゆる「慣れ」)である。刺激性瀉下成分が配合された瀉下剤には「大量に使用(服用)しないこと」が記載される。

食品との相互作用、併用薬、部位の注意も別表5-1に含まれる。「服用前後は飲酒しないこと」はかぜ薬・解熱鎮痛薬(肝機能障害、胃腸障害)、ビスマスを含む成分(吸収増大による精神神経系障害)、ブロモバレリル尿素又はアリルイソプロピルアセチル尿素が配合された解熱鎮痛薬等(鎮静作用の増強)、抗ヒスタミン成分を主薬とする催眠鎮静薬に記載される。「コーヒーやお茶等のカフェインを含有する飲料と同時に服用しないこと」はカフェインを主薬とする眠気防止薬である。併用では、他の瀉下薬(下剤)とダイオウを含む漢方処方製剤等、ヒマシ油と駆虫薬が相互に挙げられている。部位では、みずむし・たむし用薬を目や目の周囲、粘膜、陰のう、外陰部等、湿疹に使用しないこと、うおのめ・いぼ・たこ用薬を目の周囲、粘膜、やわらかな皮膚面、顔面等に使用しないこと、ケトプロフェンが配合された外用鎮痛消炎薬では天候にかかわらず戸外活動を避け貼付部を衣服等で覆い紫外線に当てないこと(重篤な光線過敏症)等が記載される。

別表5-1「してはいけないこと」の主な記載と対象成分・薬効群・理由
区分記載主な成分・薬効群等理由
アレルギー本剤又は本剤の成分によりアレルギー症状を起こしたことがある人かぜ薬、解熱鎮痛薬、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物、チペピジンヒベンズ酸塩、アミノフィリン水和物、テオフィリン、リドカイン、メキタジン、ロペラミド塩酸塩、ブチルスコポラミン臭化物、ポビドンヨードが配合された含嗽薬・口腔咽喉薬・殺菌消毒薬再度使用した場合、ショック(アナフィラキシー)、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症等の重篤なアレルギー性の副作用を生じる危険性が高まるため
アレルギー喘息を起こしたことがある人インドメタシン、フェルビナク、ケトプロフェン又はピロキシカムが配合された外用鎮痛消炎薬喘息発作を誘発するおそれがあるため
アレルギー本剤又は他のかぜ薬、解熱鎮痛薬を使用して喘息を起こしたことがある人アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリン等の解熱鎮痛成分アスピリン喘息を誘発するおそれがあるため
アレルギー本剤又は本剤の成分、牛乳によるアレルギー症状を起こしたことがある人タンニン酸アルブミン、カゼイン・カゼインナトリウム等(添加物)タンニン酸アルブミンは乳製カゼインを由来としているため/カゼインは牛乳タンパクの主成分であるため
症状・状態胃酸過多カフェイン、無水カフェイン、カフェインクエン酸塩等のカフェインを含む成分を主薬とする眠気防止薬カフェインが胃液の分泌を亢進し、症状を悪化させるおそれがあるため
症状・状態前立腺肥大による排尿困難プソイドエフェドリン塩酸塩交感神経刺激作用により、尿の貯留・尿閉を生じるおそれがあるため
症状・状態激しい腹痛又は吐き気・嘔吐ヒマシ油が配合された瀉下薬急性腹症(腸管の狭窄、閉塞、腹腔内器官の炎症等)の症状である可能性があるため
基礎疾患心臓病プソイドエフェドリン塩酸塩、芍薬甘草湯徐脈又は頻脈を引き起こし、心臓病の症状を悪化させるおそれがあるため
基礎疾患胃潰瘍カフェインを含む成分を主薬とする眠気防止薬胃液の分泌が亢進し、胃潰瘍の症状を悪化させるおそれがあるため
基礎疾患高血圧/甲状腺機能障害/糖尿病プソイドエフェドリン塩酸塩高血圧=交感神経興奮作用により血圧を上昇させるため/甲状腺機能障害=交感神経系を興奮させる成分は症状を悪化させるため/糖尿病=肝臓でグリコーゲンを分解して血糖値を上昇させるため
基礎疾患日常的に不眠の人、不眠症の診断を受けた人抗ヒスタミン成分を主薬とする催眠鎮静薬(睡眠改善薬)睡眠改善薬は慢性的な不眠症状に用いる医薬品でないため
その他透析療法を受けている人スクラルファート、水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、アルジオキサ等のアルミニウムを含む成分が配合された胃腸薬、胃腸鎮痛鎮痙薬長期間服用した場合にアルミニウム脳症及びアルミニウム骨症を発症したとの報告があるため
その他口の中に傷やひどいただれのある人クロルヘキシジングルコン酸塩が配合された製剤(口腔内への適応を有する場合)傷やただれの状態を悪化させるおそれがあるため
小児15歳未満の小児アスピリン、アスピリンアルミニウム、サザピリン、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩、サリチル酸ナトリウム/プロメタジンを含む成分/イブプロフェン/抗ヒスタミン成分を主薬とする催眠鎮静薬/オキセサゼイン/ロペラミドライ症候群/致命的な呼吸抑制の報告/小児向けの製品はないため/神経過敏、興奮のおそれ/麻痺性イレウス等の報告
小児12歳未満の小児コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩重篤な呼吸抑制があらわれるおそれがあるため
小児6歳未満の小児アミノ安息香酸エチルメトヘモグロビン血症を起こすおそれがあるため
小児3歳未満の小児ヒマシ油類(別表5-1 小児における年齢制限の欄に記載)
妊婦妊婦又は妊娠していると思われる人ヒマシ油類/ジフェンヒドラミン塩酸塩を主薬とする催眠鎮静薬/エチニルエストラジオール、エストラジオール/オキセサゼイン流産・早産の誘発/妊娠に伴う不眠は適用症状でない/胎児の先天性異常の報告/妊娠中の安全性未確立
妊婦出産予定日12週以内の妊婦アスピリン、アスピリンアルミニウム、イブプロフェン妊娠期間の延長、胎児の動脈管の収縮・早期閉鎖、子宮収縮の抑制、分娩時出血の増加のおそれがあるため
授乳授乳中の人は本剤を服用しないか、服用する場合は授乳を避けることジフェンヒドラミンを含む成分/アミノフィリン水和物、テオフィリン/ロートエキス/センノシド、センナ、ダイオウ、カサントラノール/ヒマシ油類/コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩乳児に昏睡/乳児に神経過敏/乳児に頻脈/乳児に下痢/—/母乳への移行により乳児でモルヒネ中毒の報告
運転服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないこと抗ヒスタミン成分/コデイン類、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物/ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素/ロペラミド塩酸塩、ロートエキス/スコポラミン臭化水素酸塩水和物等の抗コリン成分/ピレンゼピン塩酸塩水和物眠気等/抗コリン成分は眠気、目のかすみ、異常なまぶしさ/ピレンゼピン塩酸塩水和物は目のかすみ、異常なまぶしさ
連用長期連用しないこと(成分によらず薬効群すべてに記載)かぜ薬、解熱鎮痛薬、抗菌性点眼薬、鼻炎用内服薬、鎮静薬、アレルギー用薬一定期間又は一定回数使用しても症状の改善がみられない場合は、ほかに原因がある可能性があるため
連用長期連用しないこと(成分によらず薬効群すべてに記載)鼻炎用点鼻薬二次充血、鼻づまり等を生じるおそれがあるため
連用短期間の服用にとどめ、連用しないことカフェイン、無水カフェイン等のカフェインを含む成分(眠気防止薬)/グリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸、カンゾウ等連用によって睡眠が不要になるものではないため/偽アルドステロン症を生じるおそれがあるため
連用症状があるときのみの服用にとどめ、連用しないこと芍薬甘草湯うっ血性心不全、心室頻拍の副作用が現れることがあるため
連用1週間以上継続して服用しないこと次没食子酸ビスマス、次硝酸ビスマス等のビスマスを含む成分(止瀉薬)海外において、長期連用した場合に精神神経症状が現れたとの報告があるため
連用連用しないこと浣腸薬(成分によらず記載)感受性の低下(いわゆる「慣れ」)が生じて、習慣的に使用される傾向があるため
連用長期連用しないことステロイド性抗炎症成分(外用痔疾用薬、化膿性皮膚疾患用薬、鎮痒消炎薬、しもやけ・あかぎれ用薬)副腎皮質の機能低下を生じるおそれがあるため
大量大量に使用(服用)しないことセンナ、センノシド、ダイオウ、カサントラノール、ビサコジル、ピコスルファートナトリウム等の刺激性瀉下成分が配合された瀉下剤腸管粘膜への刺激が大きくなり、腸管粘膜に炎症を生じるおそれがあるため
飲酒服用前後は飲酒しないことかぜ薬、解熱鎮痛薬/ビスマスを含む成分/ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素/抗ヒスタミン成分を主薬とする催眠鎮静薬肝機能障害、胃腸障害/吸収増大による精神神経系障害/鎮静作用の増強
飲食物コーヒーやお茶等のカフェインを含有する飲料と同時に服用しないことカフェインを含む成分を主薬とする眠気防止薬カフェインが過量摂取となり、中枢神経系、循環器系等に作用が強く現れるおそれがあるため
併用本剤を使用している間は次の医薬品を使用しないこと他の瀉下薬(下剤)=茵蔯蒿湯、大黄甘草湯、大黄牡丹皮湯、麻子仁丸、桃核承気湯、防風通聖散、三黄瀉心湯、大柴胡湯、乙字湯(ダイオウを含む場合)等/ヒマシ油と駆虫薬激しい腹痛を伴う下痢等の副作用が現れやすくなるため/駆虫成分が腸管内で吸収されやすくなるため
部位次の部位には使用しないことみずむし・たむし用薬(目や目の周囲、粘膜、陰のう、外陰部等、湿疹)/うおのめ・いぼ・たこ用薬(目の周囲、粘膜、やわらかな皮膚面、顔面等、炎症又は傷のある患部)/殺菌消毒薬(液体絆創膏)(ただれ、化膿している患部)強い刺激や痛み/角質溶解作用が強く目に入ると障害を与える危険性/湿潤した患部では分泌液が貯留して症状を悪化させることがあるため
乱用過量服用・長期連用しないことコデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩が配合された鎮咳去痰薬(内服液剤)倦怠感や虚脱感等が現れることがあり、依存性・習慣性がある成分が配合され乱用事例が報告されているため
してはいけないこと
守らないと症状が悪化する事項、副作用又は事故等が起こりやすくなる事項の記載。「次の人は使用しないこと」「次の部位には使用しないこと」「本剤を使用している間は次の医薬品を使用しないこと」「その他」から構成される。
アスピリン喘息
別表5-1で「本剤又は他のかぜ薬、解熱鎮痛薬を使用(服用)して喘息を起こしたことがある人」の記載理由とされるもの。対象はアセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリン等の解熱鎮痛成分。
ライ症候群
15歳未満の小児にアスピリン、アスピリンアルミニウム、サザピリン、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩、サリチル酸ナトリウムを使用しないこととされる理由。外国において発症との関連性が示唆されているためとされる。
メトヘモグロビン血症
アミノ安息香酸エチルを6歳未満の小児に使用しないこととされる理由。別表5-1の小児における年齢制限の欄に記載されている。
偽アルドステロン症
グリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸、カンゾウ等のグリチルリチン酸を含む成分を1日用量40mg以上(カンゾウとして1g以上)連用した場合に生じるおそれがあるとされるもの。
光線過敏症
ケトプロフェンが配合された外用鎮痛消炎薬で、使用中又は使用後しばらくしてから重篤なものが現れることがあるとされ、天候にかかわらず戸外活動を避け、貼付部を衣服・サポーター等で覆う旨が記載される。

例題 医療用医薬品との併用は、添付文書のどの項目に記載されるか。

「相談すること」の項に「医師(又は歯科医師)の治療を受けている人」等として記載される。医療機関で治療を受けている人が処方された医薬品の使用を自己判断で控えることは適当でないためとされている。

例題 アミノ安息香酸エチルはどの年齢の小児に使用しないこととされ、その理由は何か。

6歳未満の小児。理由はメトヘモグロビン血症を起こすおそれがあるためとされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第5章 Ⅰ 医薬品の適正使用情報 1)添付文書の読み方/別表5-1 主な使用上の注意の記載とその対象成分・薬効群等(してはいけないこと)

「相談すること」

別表5-2の「相談すること」を対象者ごとに整理し、「してはいけないこと」との取り違えを防げるようになります。

「相談すること」は、その医薬品を使用する前に、その適否について専門家に相談した上で適切な判断がなされるべきである場合の記載である。手引きでは(a)「医師(又は歯科医師)の治療を受けている人」、(b)「妊婦又は妊娠していると思われる人」、(c)「授乳中の人」、(d)「高齢者」、(e)「薬などによりアレルギー症状を起こしたことがある人」、(f)「次の症状がある人」、(g)「次の診断を受けた人」が挙げられている。

(a)医師又は歯科医師の治療を受けているときは、何らかの薬剤の投与等の処置がなされており、その人の自己判断で要指導医薬品又は一般用医薬品が使用されると、治療の妨げとなったり、処方された薬剤(医療用医薬品)と同種の有効成分の重複や相互作用等を生じることがある。そのため、治療を行っている医師又は歯科医師にあらかじめ相談して使用の適否について判断を仰ぐべきであり、特に医療用医薬品を使用している場合には、その薬剤を処方した医師若しくは歯科医師、又は調剤を行った薬剤師に相談するよう説明がなされる必要があるとされている。

(b)妊婦又は妊娠していると思われる人は、胎児への影響や妊娠という特別な身体状態を考慮して、一般的に医薬品の使用には慎重を期す必要がある。「してはいけないこと」の項で「次の人は使用(服用)しないこと」として記載されている場合と異なり、必ずしもヒトにおける具体的な悪影響が判明しているものでないが、妊婦における使用経験に関する科学的データが限られているため安全性の評価が困難とされている場合も多い。そのため、一般の生活者の自己判断による医薬品の使用は最低限にとどめることが望ましく、既に妊娠が判明し定期的な産科検診を受けている場合には担当医師に相談するよう説明がなされる必要があるとされている。(c)授乳中の人は、摂取した医薬品の成分の一部が乳汁中に移行することが知られているが、「してはいけないこと」の項で記載するほどではない場合に「相談すること」に記載される。

(d)使用上の注意の記載における「高齢者」とは、およその目安として65歳以上を指す。一般に高齢者では加齢に伴い副作用等を生じるリスクが高まる傾向にあり、何らかの持病(基礎疾患)を抱えていること等も多い。ただし65歳以上の年齢であっても、どの程度リスクが増大しているかを年齢のみから一概に判断することは難しく、専門家に相談しながら個々の状態に応じて使用の適否について慎重な判断がなされるべきであるとされている。(e)薬などによりアレルギー症状を起こしたことがある人は、その医薬品でアレルギー症状を起こしたことはなくても、他の医薬品でアレルギーの既往歴がある人やアレルギー体質の人は一般にアレルギー性の副作用を生じるリスクが高いためとされている。

(f)「次の症状がある人」は、一般の生活者において適切な判断を行うことが必ずしも容易でなく、軽率な使用がなされると状態の悪化や副作用等を招きやすい症状(その医薬品では改善が期待できないにもかかわらず、誤って使用してしまいやすい症状を含む)や、その状態等によっては医療機関を受診することが適当と考えられる場合について記載される。(g)「次の診断を受けた人」は、現に医師の治療を受けているか否かによらず、その医薬品が使用されると状態の悪化や副作用等を招きやすい基礎疾患等が示されるものである。

使用後の記載も重要である。副作用と考えられる症状を生じた場合には、i)「使用(服用)後、次の症状が現れた場合」としてまず一般的な副作用が関係部位別に記載され、続いてii)「まれに下記の重篤な症状が現れることがあります。その場合はただちに医師の診療を受けること」として、まれに発生する重篤な副作用が副作用名ごとに記載される。一般的な副作用は重篤ではないものの、そのまま使用を継続すると状態の悪化を招いたり回復が遅れるおそれのあるものであり、発疹や発赤などのように重篤な副作用の初期症状である可能性があるものも含まれているので軽んじることのないよう説明がなされることが重要であるとされている。重篤な副作用は入院相当以上の健康被害につながるおそれがあり、その初期段階において速やかに医師の診療を受ける必要がある。

薬理作用等から発現が予測され容認される軽微な症状(例えば、抗ヒスタミン薬の眠気等)であっても、症状の持続又は増強がみられた場合には、いったん使用を中止した上で専門家に相談する旨が記載される。また、一定期間又は一定回数使用したあとに症状の改善が見られない場合は、その医薬品の適用範囲でない疾患による症状や合併症が生じている可能性等が考えられ、要指導医薬品又は一般用医薬品で対処できる範囲を超えており、医師の診療を受けることが必要な場合もあるとされている。漢方処方製剤では、ある程度の期間継続して使用されることにより効果が得られるとされているものが多いが、長期連用する場合には専門家に相談する旨が記載されている(本記載がない漢方処方製剤は、短期の使用に限られるもの)。一般用検査薬では、検査結果が陰性であっても何らかの症状がある場合は、再検査するか又は医師に相談する旨等が記載される。

別表5-2の「妊婦又は妊娠していると思われる人」には、アスピリン、サザピリン、エテンザミド、サリチルアミド、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリン、アセトアミノフェンが配合されたかぜ薬・解熱鎮痛薬(妊娠末期のラットに投与した実験で胎児に弱い動脈管の収縮がみられたとの報告)、ブロモバレリル尿素が配合された医薬品(胎児障害の可能性)、コデインリン酸塩水和物・ジヒドロコデインリン酸塩(胎盤関門を通過して胎児へ移行)、瀉下薬・浣腸薬・外用痔疾用薬(流産・早産の誘発のおそれ)が挙げられている。また「妊娠3ヶ月以内の妊婦、妊娠していると思われる人又は妊娠を希望する人」にはビタミンA主薬製剤、ビタミンAD主薬製剤が挙げられ、理由はビタミンAを妊娠3ヶ月前から妊娠3ヶ月までの間に栄養補助剤から1日10,000国際単位以上を継続的に摂取した婦人から生まれた児に、先天異常(口裂、耳・鼻の異常等)の発生率の増加が認められたとの研究報告があるためとされている。

「授乳中の人」(乳汁中に移行する可能性がある主な成分等)には、メチルエフェドリン塩酸塩、トリプロリジン塩酸塩水和物、プソイドエフェドリン塩酸塩、ペントキシベリンクエン酸塩、アスピリン、イブプロフェン、カフェイン(1回分量100mg以上を含有する場合)、メチルオクタトロピン臭化物・メチキセン塩酸塩・ジサイクロミン塩酸塩、ロペラミド塩酸塩、エチニルエストラジオール・エストラジオールが挙げられている。「高齢者」には、解熱鎮痛薬・鼻炎用内服薬・グリセリンが配合された浣腸薬(効き目が強すぎたり副作用が現れやすいため)、アドレナリン作動成分又はマオウ(心悸亢進、血圧上昇、糖代謝促進を起こしやすいため)、グリチルリチン酸を含む成分(偽アルドステロン症を生じやすいため)、抗コリン成分又はロートエキス(緑内障の悪化、口渇、排尿困難又は便秘の副作用が現れやすいため)が挙げられている。

基礎疾患等の欄は特に問われやすい。てんかんにジプロフィリン(中枢神経系の興奮作用)、胃・十二指腸潰瘍にアスピリン等の解熱鎮痛成分やビスマスを含む成分、肝臓病に小柴胡湯(間質性肺炎の副作用が現れやすいため)、解熱鎮痛成分、サントニン、ピペラジンを含む成分、甲状腺疾患にポビドンヨード等のヨウ素系殺菌消毒成分が配合された口腔咽喉薬・含嗽薬(ヨウ素の体内摂取が増える可能性)、甲状腺機能障害・甲状腺機能亢進症にアドレナリン作動成分やマオウ、ジプロフィリン、高血圧・心臓病・糖尿病にアドレナリン作動成分やマオウ、腎臓病にアルミニウムを含む成分や制酸成分を主体とする胃腸薬、マグネシウムを含む成分、緑内障に眼科用薬、パパベリン塩酸塩、抗コリン成分、ペントキシベリンクエン酸塩、ジフェニドール塩酸塩、抗ヒスタミン成分、血栓のある人にトラネキサム酸(内服)・セトラキサート塩酸塩、全身性エリテマトーデス・混合性結合組織病にイブプロフェン(無菌性髄膜炎の副作用を起こしやすいため)が挙げられている。併用薬等では、瀉下薬(下剤)を使用している人に柴胡加竜骨牡蛎湯・響声破笛丸、モノアミン酸化酵素阻害剤で治療を受けている人にプソイドエフェドリン塩酸塩、インターフェロン製剤で治療を受けている人に小柴胡湯が挙げられている。

別表5-2「相談すること」の主な記載と対象成分・薬効群・理由
区分記載主な成分・薬効群等理由
妊婦妊婦又は妊娠していると思われる人アスピリン、アスピリンアルミニウム、サザピリン、エテンザミド、サリチルアミド、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリン、アセトアミノフェンが配合されたかぜ薬、解熱鎮痛薬妊娠末期のラットに投与した実験において、胎児に弱い動脈管の収縮がみられたとの報告があるため
妊婦妊婦又は妊娠していると思われる人ブロモバレリル尿素が配合されたかぜ薬、解熱鎮痛薬、催眠鎮静薬、乗物酔い防止薬胎児障害の可能性があり、使用を避けることが望ましいため
妊婦妊婦又は妊娠していると思われる人コデインリン酸塩水和物、ジヒドロコデインリン酸塩が配合されたかぜ薬、鎮咳去痰薬麻薬性鎮咳成分であり、吸収された成分の一部が胎盤関門を通過して胎児へ移行することが知られているため
妊婦妊婦又は妊娠していると思われる人瀉下薬、浣腸薬、外用痔疾用薬(坐薬、注入軟膏)腸の急激な動きに刺激されて流産・早産を誘発するおそれがあるため
妊婦妊娠3ヶ月以内の妊婦、妊娠していると思われる人又は妊娠を希望する人ビタミンA主薬製剤、ビタミンAD主薬製剤妊娠3ヶ月前から妊娠3ヶ月までの間に栄養補助剤から1日10,000国際単位以上を継続的に摂取した婦人から生まれた児に、先天異常の発生率の増加が認められたとの研究報告があるため
授乳授乳中の人メチルエフェドリン塩酸塩、トリプロリジン塩酸塩水和物、プソイドエフェドリン塩酸塩、ペントキシベリンクエン酸塩、アスピリン、イブプロフェン/カフェイン(1回分量100mg以上)/メチルオクタトロピン臭化物、メチキセン塩酸塩、ジサイクロミン塩酸塩/ロペラミド塩酸塩/エチニルエストラジオール、エストラジオール乳汁中に移行する可能性がある成分であるため
高齢者高齢者解熱鎮痛薬、鼻炎用内服薬、グリセリンが配合された浣腸薬効き目が強すぎたり、副作用が現れやすいため
高齢者高齢者メチルエフェドリン塩酸塩、プソイドエフェドリン塩酸塩、トリメトキノール塩酸塩水和物、メトキシフェナミン塩酸塩等のアドレナリン作動成分又はマオウ心悸亢進、血圧上昇、糖代謝促進を起こしやすいため
高齢者高齢者グリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸又はカンゾウが配合された内服薬等偽アルドステロン症を生じやすいため
高齢者高齢者スコポラミン臭化水素酸塩水和物、メチルオクタトロピン臭化物、イソプロパミドヨウ化物等の抗コリン成分又はロートエキス緑内障の悪化、口渇、排尿困難又は便秘の副作用が現れやすいため
小児発熱している小児、けいれんを起こしたことがある小児テオフィリン、アミノフィリン水和物けいれんを誘発するおそれがあるため
小児水痘(水ぼうそう)もしくはインフルエンザにかかっている又はその疑いのある乳・幼・小児(15歳未満)サリチルアミド、エテンザミド構造が類似しているアスピリンにおいてライ症候群の発症との関連性が示唆されており、原則として使用を避ける必要があるため
小児1ヶ月未満の乳児(新生児)マルツエキス身体が非常に未熟であり、安易に瀉下薬を使用すると脱水症状を引き起こすおそれがあるため
アレルギー薬によりアレルギー症状や喘息を起こしたことがある人黄色4号(タートラジン)(添加物)/ガジュツ末・真昆布末を含む製剤喘息誘発のおそれがあるため/まれにアナフィラキシーを起こすことがあるため
症状高熱かぜ薬、鎮咳去痰薬、鼻炎用内服薬、小児五疳薬かぜ以外のウイルス性の感染症その他の重篤な疾患の可能性があるため
症状むくみグリチルリチン酸二カリウム、グリチルレチン酸、カンゾウ等のグリチルリチン酸を含む成分偽アルドステロン症の発症のおそれが特にあるため
症状排尿困難ジフェンヒドラミン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩等の抗ヒスタミン成分/ジフェニドール塩酸塩/マオウを含む漢方処方製剤/抗コリン成分/ロートエキス排尿筋の弛緩と括約筋の収縮が起こり、尿の貯留を来すおそれがあるため。特に前立腺肥大症を伴っている場合には尿閉を引き起こすおそれがあるため
症状痔出血グリセリンが配合された浣腸薬腸管、肛門に損傷があると、傷口からグリセリンが血管内に入って溶血を起こすことや、腎不全を起こすおそれがあるため
症状はげしい目の痛み眼科用薬急性緑内障、角膜潰瘍又は外傷等の可能性が考えられるため
基礎疾患てんかんジプロフィリン中枢神経系の興奮作用により、てんかんの発作を引き起こすおそれがあるため
基礎疾患胃・十二指腸潰瘍アスピリン、エテンザミド、イソプロピルアンチピリン、アセトアミノフェン、サリチルアミド/ビスマスを含む成分潰瘍を悪化させるおそれ/ビスマスの吸収が高まり精神神経障害等が発現するおそれ
基礎疾患肝臓病小柴胡湯/アスピリン、エテンザミド、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリン、アセトアミノフェン/サントニン/ピペラジンを含む成分/ガジュツ末・真昆布末を含む製剤間質性肺炎の副作用が現れやすいため/肝機能障害を悪化させるおそれ/体内への蓄積によって副作用が現れやすくなるため
基礎疾患甲状腺疾患ポビドンヨード、ヨウ化カリウム、ヨウ素等のヨウ素系殺菌消毒成分が配合された口腔咽喉薬、含嗽薬ヨウ素の体内摂取が増える可能性があり、甲状腺疾患の治療に影響を及ぼすおそれがあるため
基礎疾患甲状腺機能障害・甲状腺機能亢進症アドレナリン作用成分が配合された鼻炎用点鼻薬、アドレナリン作動成分、マオウ/ジプロフィリン/沈降炭酸カルシウム等交感神経系を興奮させる成分は症状を悪化させるおそれ/中枢神経系の興奮作用/甲状腺ホルモンの吸収を阻害するおそれ
基礎疾患高血圧アドレナリン作動成分、マオウ/グリチルリチン酸を含む成分交感神経興奮作用により血圧を上昇させるため/ナトリウム貯留、カリウム排泄促進によりむくみ等が現れるため
基礎疾患心臓病アドレナリン作動成分、ジプロフィリン、マオウ/抗コリン成分、ロートエキス/解熱鎮痛成分/グリチルリチン酸の塩類、カンゾウ/硫酸ナトリウム/グリセリンが配合された浣腸薬心臓に負担をかけるため/むくみ・循環体液量の増加/電解質バランスの乱れ/排便直後の急激な血圧低下等
基礎疾患腎臓病アスピリン等の解熱鎮痛成分/グリチルリチン酸を含む成分/アルミニウムを含む成分/制酸成分を主体とする胃腸薬/マグネシウムを含む成分、硫酸ナトリウム/ピペラジンを含む成分、プソイドエフェドリン塩酸塩むくみ・循環体液量の増加/アルミニウム脳症、アルミニウム骨症/無機塩類の排泄遅延・体内貯留/排泄が円滑に行われず副作用が現れやすくなるため
基礎疾患糖尿病アドレナリン作動成分が配合された鼻炎用点鼻薬、アドレナリン作動成分、マオウ肝臓でグリコーゲンを分解して血糖値を上昇させる作用があるため
基礎疾患緑内障眼科用薬/パパベリン塩酸塩/抗コリン成分/ペントキシベリンクエン酸塩/ジフェニドール塩酸塩/抗ヒスタミン成分眼圧が上昇し緑内障を悪化させるおそれ/抗コリン作用によって房水流出路が狭くなるため
基礎疾患血栓のある人(脳血栓、心筋梗塞、血栓静脈炎等)トラネキサム酸(内服)、セトラキサート塩酸塩生じた血栓が分解されにくくなるため
基礎疾患全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病イブプロフェン無菌性髄膜炎の副作用を起こしやすいため
既往胃・十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、クローン病にかかったことのある人イブプロフェンプロスタグランジン産生抑制作用によって消化管粘膜の防御機能が低下し、再発するおそれがあるため
併用瀉下薬(下剤)を使用している人柴胡加竜骨牡蛎湯、響声破笛丸腹痛、激しい腹痛を伴う下痢が現れやすくなるため
併用モノアミン酸化酵素阻害剤(セレギリン塩酸塩等)で治療を受けている人プソイドエフェドリン塩酸塩モノアミン酸化酵素阻害剤との相互作用によって、血圧を上昇させるおそれがあるため
併用インターフェロン製剤で治療を受けている人小柴胡湯、小柴胡湯が配合されたかぜ薬インターフェロン製剤との相互作用によって、間質性肺炎を起こしやすくなるため
高齢者
使用上の注意の記載における「高齢者」とは、およその目安として65歳以上を指す。加齢に伴い副作用等を生じるリスクが高まる傾向にあるが、年齢のみからリスクの程度を一概に判断することは難しいとされる。
次の診断を受けた人
「相談すること」の記載の一つ。現に医師の治療を受けているか否かによらず、その医薬品が使用されると状態の悪化や副作用等を招きやすい基礎疾患等が示されている。
一般的な副作用
重篤ではないものの、そのまま使用を継続すると状態の悪化を招いたり回復が遅れるおそれのあるもの。関係部位別に症状が記載され、発疹や発赤など重篤な副作用の初期症状である可能性があるものも含まれる。
重篤な副作用
入院相当以上の健康被害につながるおそれがあるもの。「まれに下記の重篤な症状が現れることがあります。その場合はただちに医師の診療を受けること」として副作用名ごとに症状が記載される。
無菌性髄膜炎
全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病の診断を受けた人がイブプロフェンについて相談することとされる理由。この副作用を起こしやすいためとされている。
間質性肺炎
肝臓病の診断を受けた人が小柴胡湯について相談することとされる理由。またインターフェロン製剤で治療を受けている人では、相互作用によって起こしやすくなるためとされる。

例題 「妊婦又は妊娠していると思われる人」が「相談すること」に記載される場合、必ずヒトでの悪影響が判明しているのか。

いいえ。手引きでは、「してはいけないこと」として記載される場合と異なり、必ずしもヒトにおける具体的な悪影響が判明しているものでないが、妊婦における使用経験に関する科学的データが限られているため安全性の評価が困難とされている場合も多いとされている。

例題 漢方処方製剤で「長期連用する場合には専門家に相談する」旨の記載がないものは、どのようなものか。

手引きでは、本記載がない漢方処方製剤は、短期の使用に限られるものであるとされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第5章 Ⅰ 医薬品の適正使用情報 1)添付文書の読み方/別表5-2 主な使用上の注意の記載とその対象成分・薬効群等(相談すること)

製品表示と保管

外箱等に何が書かれ、使用期限や可燃性ガスの表示が何に基づくのかを、保管及び取扱い上の注意と合わせて説明できるようになります。

手引きでは、毒薬若しくは劇薬又は要指導医薬品に該当する医薬品における表示や、その一般用医薬品が分類されたリスク区分を示す識別表示等の法定表示事項のほかにも、医薬品の製品表示として、購入者等における適切な医薬品の選択、適正な使用に資する様々な情報が記載されているとされている。医薬品によっては添付文書の形でなく、法第52条第2項の規定に基づく「用法、用量その他使用及び取扱い上の必要な注意」等の記載を、外箱等に行っている場合がある。

添付文書がある医薬品にあっても、添付文書は通常、外箱等に封入されていることから、購入者等が購入後に製品を開封して添付文書を見て初めて、自分(又は家族)にとって適当な製品でなかったことが分かるといった事態等を防ぐため、医薬品の適切な選択に資する事項として、添付文書の内容のうち、効能・効果、用法・用量、添加物として配合されている成分等のほか、使用上の注意の記載から一定の事項が外箱等にも記載されている。

外箱等に記載される使用上の注意の内容は次の4つである。①「してはいけないこと」の項において、「次の人は使用(服用)しないこと」、「次の部位には使用しないこと」、「授乳中は本剤を服用しないか本剤を服用する場合は授乳を避けること」、「服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないこと」等、副作用や事故等が起きる危険性を回避するため記載されている内容。②「使用にあたって添付文書をよく読むこと」等、添付文書の必読に関する事項。③専門家への相談勧奨に関する事項。④「保管及び取扱い上の注意」の項のうち、医薬品の保管に関する事項である。

②について、手引きでは、包装中に封入されている医薬品(内袋を含む)だけが取り出され、添付文書が読まれないといったことのないように記載されているとされている。③については、症状、体質、年齢等からみて副作用による危険性が高い場合若しくは医師又は歯科医師の治療を受けている人であって、一般使用者の判断のみで使用することが不適当な場合について記載され、記載スペースが狭小な場合には「使用が適さない場合があるので、使用前には必ず医師、歯科医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください」等と記載される。④については、購入者によっては購入後すぐ開封せずにそのまま保管する場合や持ち歩く場合があるため、添付文書を見なくても適切な保管がなされるよう、その容器や包装にも保管に関する注意事項が記載されるとされている。なお、1回服用量中0.1mLを超えるアルコールを含有する内服液剤(滋養強壮を目的とするもの)については、例えば「アルコール含有○○mL以下」のように、アルコールを含有する旨及びその分量が記載される。

使用期限の表示については、適切な保存条件の下で製造後3年を超えて性状及び品質が安定であることが確認されている医薬品において法的な表示義務はないが、流通管理等の便宜上、外箱等に記載されるのが通常となっている(配置販売される医薬品では「配置期限」として記載される場合がある)。表示された「使用期限」は、未開封状態で保管された場合に品質が保持される期限であり、いったん開封されたものについては記載されている期日まで品質が保証されない場合がある。購入後、開封されてからどの程度の期間品質が保持されるかについては、医薬品それぞれの包装形態や個々の使用状況、保管状況等によるので、購入者等から質問等がなされたときには、それらを踏まえて適切な説明がなされる必要があるとされている。

法の規定による法定表示事項のほか、他の法令に基づいて製品表示がなされている事項として、次のものが挙げられている。可燃性ガスを噴射剤としているエアゾール製品や消毒用アルコール等、危険物に該当する製品に対する消防法(昭和23年法律第186号)に基づく注意事項(「火気厳禁」等)、エアゾール製品に対する高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号)に基づく注意事項(「高温に注意」、使用ガスの名称等)、資源の有効な利用の促進に関する法律(平成3年法律第48号)に基づく容器包装の識別表示(識別マーク)である。これらは法律上、その容器への表示が義務づけられているが、添付文書においても「保管及び取扱い上の注意」として記載されるとされている。

添付文書の⑩保管及び取扱い上の注意では、(a)「直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい場所に(密栓して)保管すること」等の保管条件に関する注意が挙げられている。医薬品は適切な保管がなされないと化学変化や雑菌の繁殖等を生じることがあり、特にシロップ剤などは変質しやすいため、開封後は冷蔵庫内に保管されるのが望ましいとされている。一方で、錠剤、カプセル剤、散剤等では、取り出したときに室温との急な温度差で湿気を帯びるおそれがあるため、冷蔵庫内での保管は不適当であるとされている。なお、凍結すると変質したり効力が減弱する場合があること、家庭における誤飲事故等を避けるため医薬品は食品と区別して誰にも分かるように保管されることも重要であるとされている。

(b)「小児の手の届かないところに保管すること」については、乳・幼児は好奇心が強く、すぐ手を出して口の中に入れることがあり、また家庭内において、小児が容易に手に取れる場所(病人の枕元など)や、まだ手が届かないと思っても小児の目につくところに医薬品が置かれていた場合に、誤飲事故が多く報告されているためとされている。(c)「他の容器に入れ替えないこと。(誤用の原因になったり品質が変わる)」については、旅行や勤め先等へ携行するために別の容器へ移し替えると、日時が経過して中身がどんな医薬品であったか分からなくなってしまうことがあり誤用の原因となるおそれがあること、また移し替えた容器が湿っていたり汚れていたりした場合に医薬品として適切な品質が保持できなくなるおそれがあることが理由とされている。(d)その他「他の人と共用しないこと」等は、点眼薬について、複数の使用者間で使い回されると、万一、使用に際して薬液に細菌汚染があった場合に別の使用者に感染するおそれがあるため記載される。

製品表示情報の活用について、手引きでは、添付文書情報が事前に閲覧できる環境が整っていない場合にあっては、製品表示から読み取れる適正使用情報が有効に活用され、購入者等に対して適切な情報提供がなされることが一層重要となるとされている。要指導医薬品並びに一般用医薬品のリスク区分のうち第一類医薬品及び第二類医薬品は、その副作用等により日常生活に支障を来す程度の健康被害が生ずるおそれがあるものであり、これらリスク区分に分類されている旨が製品表示から容易に判別できることによって、副作用等の回避、早期発見のため必要な注意事項に自ずと関心が向けられる。第三類医薬品に分類された医薬品については、その製品が医薬品であることが製品表示から明確となることにより、適正に使用された場合であっても身体の変調・不調が起こり得ることや、添付文書を必ず読む意義、用法・用量等を守って適正に使用する必要性等について、一般の生活者に認識できるとされている。

なお、添付文書や外箱表示は、それらの記載内容が改訂された場合、実際にそれが反映された製品が流通し購入者等の目に触れるようになるまでには一定の期間を要する。専門家においては、常に最新の知見に基づいた適切な情報提供を行うため、得られる情報を積極的に収集し、専門家としての資質向上に努めることが求められるとされている。一般の生活者が接する医薬品の有効性や安全性等に関する情報は、断片的かつ必ずしも正確でない情報として伝わっている場合も多く、購入者等に対して科学的な根拠に基づいた正確なアドバイスを与え、セルフメディケーションを適切に支援することが期待されている。

製品表示(外箱等)の記載と保管及び取扱い上の注意
区分記載内容・根拠理由・押さえどころ
外箱等の記載使用上の注意の一部「次の人は使用(服用)しないこと」「次の部位には使用しないこと」「授乳中は本剤を服用しないか本剤を服用する場合は授乳を避けること」「服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないこと」等副作用や事故等が起きる危険性を回避するため
外箱等の記載添付文書の必読「使用にあたって添付文書をよく読むこと」等包装中に封入されている医薬品(内袋を含む)だけが取り出され、添付文書が読まれないといったことのないように
外箱等の記載専門家への相談勧奨スペースが狭小な場合は「使用が適さない場合があるので、使用前には必ず医師、歯科医師、薬剤師又は登録販売者に相談してください」等症状、体質、年齢等からみて副作用の危険性が高い場合等に、一般使用者の判断のみで使用することが不適当なため
外箱等の記載保管に関する事項「保管及び取扱い上の注意」の項のうち保管に関する事項購入後すぐ開封せずに保管する場合や持ち歩く場合があるため
外箱等の記載アルコール含有量1回服用量中0.1mLを超えるアルコールを含有する内服液剤(滋養強壮を目的とするもの)で「アルコール含有○○mL以下」等アルコールを含有する旨及びその分量を示すため
使用期限使用期限(配置販売では配置期限)適切な保存条件の下で製造後3年を超えて性状及び品質が安定であることが確認されている医薬品では法的な表示義務なし。流通管理等の便宜上、記載されるのが通常未開封状態で保管された場合に品質が保持される期限。開封後は記載の期日まで品質が保証されない場合がある
他の法令火気厳禁 等消防法(昭和23年法律第186号)可燃性ガスを噴射剤としているエアゾール製品や消毒用アルコール等、危険物に該当する製品
他の法令高温に注意、使用ガスの名称 等高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号)エアゾール製品に対する注意事項
他の法令容器包装の識別表示(識別マーク)資源の有効な利用の促進に関する法律(平成3年法律第48号)法定表示事項のほかに他の法令に基づいて表示される事項
保管直射日光の当たらない(湿気の少ない)涼しい場所に(密栓して)保管することシロップ剤は開封後、冷蔵庫内に保管されるのが望ましい/錠剤、カプセル剤、散剤等は冷蔵庫内での保管は不適当適切な保管がなされないと化学変化や雑菌の繁殖等を生じることがあるため。錠剤等は室温との急な温度差で湿気を帯びるおそれがあるため
保管小児の手の届かないところに保管すること小児が容易に手に取れる場所(病人の枕元など)や目につくところ乳・幼児は好奇心が強くすぐ手を出して口の中に入れることがあり、誤飲事故が多く報告されているため
保管他の容器に入れ替えないこと誤用の原因になったり品質が変わる中身が分からなくなり誤用の原因となるおそれ。移し替えた容器が湿っていたり汚れていたりすると品質が保持できなくなるおそれ
保管他の人と共用しないこと点眼薬薬液に細菌汚染があった場合に、別の使用者に感染するおそれがあるため
使用期限
未開封状態で保管された場合に品質が保持される期限。適切な保存条件の下で製造後3年を超えて性状及び品質が安定であることが確認されている医薬品では法的な表示義務はないが、流通管理等の便宜上、外箱等に記載されるのが通常。
配置期限
配置販売される医薬品において、使用期限が「配置期限」として記載される場合があるとされるもの。
消防法に基づく注意事項
可燃性ガスを噴射剤としているエアゾール製品や消毒用アルコール等、危険物に該当する製品に対して表示される「火気厳禁」等の注意事項。消防法は昭和23年法律第186号。
高圧ガス保安法に基づく注意事項
エアゾール製品に対して表示される「高温に注意」、使用ガスの名称等の注意事項。高圧ガス保安法は昭和26年法律第204号。
容器包装の識別表示
資源の有効な利用の促進に関する法律(平成3年法律第48号)に基づく識別マーク。法の規定による法定表示事項のほかに、他の法令に基づいて製品表示がなされている事項の一つ。
他の容器に入れ替えないこと
保管及び取扱い上の注意の記載。別の容器へ移し替えると中身が分からなくなり誤用の原因となるおそれがあること、容器が湿っていたり汚れていたりすると適切な品質が保持できなくなるおそれがあることが理由。

例題 すべての医薬品の外箱等に、使用期限の表示が法的に義務づけられているか。

いいえ。適切な保存条件の下で製造後3年を超えて性状及び品質が安定であることが確認されている医薬品においては法的な表示義務はないが、流通管理等の便宜上、外箱等に記載されるのが通常であるとされている。

例題 シロップ剤と錠剤とで、冷蔵庫内での保管の扱いはどう違うか。

シロップ剤などは変質しやすいため開封後は冷蔵庫内に保管されるのが望ましいとされる一方、錠剤、カプセル剤、散剤等では取り出したときに室温との急な温度差で湿気を帯びるおそれがあるため、冷蔵庫内での保管は不適当であるとされている。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第5章 Ⅰ 医薬品の適正使用情報 2)製品表示の読み方

安全対策・救済制度・啓発

安全性情報の提供

緊急安全性情報(イエローレター)と安全性速報(ブルーレター)の違い、医薬品・医療機器等安全性情報、総合機構ホームページとPMDAメディナビの役割を区別できるようになります。

法第68条の2の6第1項の規定により、医薬品の製造販売業者等は、医薬品の有効性及び安全性に関する事項その他医薬品の適正な使用のために必要な情報を収集し、検討するとともに、薬局開設者、店舗販売業者、配置販売業者及びそこに従事する薬剤師や登録販売者に対して、提供するよう努めなければならないこととされている。また、製造販売業者等による情報提供がなされる場合にあっても、広範囲の医薬関係者へ速やかに伝達される必要があるときには、関係機関・関係団体の協力及び行政庁の関与の下、周知が図られている。

緊急安全性情報は、医薬品、医療機器又は再生医療等製品について緊急かつ重大な注意喚起や使用制限に係る対策が必要な状況にある場合に、厚生労働省からの命令、指示、製造販売業者の自主決定等に基づいて作成される。製造販売業者及び行政当局による報道発表、(独)医薬品医療機器総合機構(総合機構、PMDA)による医薬品医療機器情報配信サービスによる配信(PMDAメディナビ)、製造販売業者から医療機関や薬局等への直接配布、ダイレクトメール、ファックス、電子メール等による情報提供(1ヶ月以内)等により情報伝達されるものである。A4サイズの黄色地の印刷物で、イエローレターとも呼ばれる。医療用医薬品や医家向け医療機器についての情報伝達である場合が多いが、小柴胡湯による間質性肺炎に関する緊急安全性情報(平成8年3月)のように、一般用医薬品にも関係する緊急安全性情報が発出されたこともある。

安全性速報は、医薬品、医療機器又は再生医療等製品について一般的な使用上の注意の改訂情報よりも迅速な注意喚起や適正使用のための対応の注意喚起が必要な状況にある場合に、厚生労働省からの命令、指示、製造販売業者の自主決定等に基づいて作成される。総合機構によるPMDAメディナビによる配信、製造販売業者から医療機関や薬局等への直接の配布、ダイレクトメール、ファクシミリ、電子メール等による情報提供(1ヶ月以内)等により情報伝達される。A4サイズの青色地の印刷物で、ブルーレターとも呼ばれる。「緊急かつ重大」なら黄色(イエローレター)、「使用上の注意の改訂情報よりも迅速」なら青色(ブルーレター)という対応を取り違えないことが最大のポイントである。

医薬品・医療機器等安全性情報は、厚生労働省が、医薬品(一般用医薬品を含む)、医療機器等による重要な副作用、不具合等に関する情報をとりまとめ、広く医薬関係者向けに情報提供を行っているものである。その内容としては、医薬品の安全性に関する解説記事や、使用上の注意の改訂内容、主な対象品目、参考文献(重要な副作用等に関する改訂については、その根拠となった症例の概要も紹介)等が掲載されている。各都道府県、保健所設置市及び特別区、関係学会等へ送付されているほか、厚生労働省ホームページ及び総合機構ホームページへ掲載されるとともに、医学・薬学関係の専門誌等にも転載される。

総合機構のホームページでは、添付文書情報、厚生労働省より発行される「医薬品・医療機器等安全性情報」のほか、要指導医薬品及び一般用医薬品に関連した情報として、①厚生労働省が製造販売業者等に指示した緊急安全性情報、「使用上の注意」の改訂情報、②製造販売業者等や医療機関等から報告された、医薬品による副作用が疑われる症例情報、③医薬品の承認情報、④医薬品等の製品回収に関する情報、⑤一般用医薬品・要指導医薬品の添付文書情報、⑥その他、厚生労働省が医薬品等の安全性について発表した資料が掲載されている。また総合機構では、医薬品・医療機器等の安全性に関する特に重要な情報が発出されたときに、ホームページに掲載するとともに、その情報を電子メールによりタイムリーに配信する医薬品医療機器情報配信サービス(PMDAメディナビ)を行っている。このサービスは誰でも利用可能であり、最新の情報を入手することができる。

緊急安全性情報と安全性速報の対比
区分緊急安全性情報安全性速報
別名イエローレターブルーレター
外観A4サイズの黄色地の印刷物A4サイズの青色地の印刷物
どんなとき緊急かつ重大な注意喚起や使用制限に係る対策が必要な場合一般的な使用上の注意の改訂情報よりも迅速な注意喚起等が必要な場合
作成の根拠厚生労働省からの命令、指示、製造販売業者の自主決定等厚生労働省からの命令、指示、製造販売業者の自主決定等
伝達方法報道発表、PMDAメディナビ、直接配布、ダイレクトメール、ファックス、電子メール等(1ヶ月以内)PMDAメディナビ、直接の配布、ダイレクトメール、ファクシミリ、電子メール等(1ヶ月以内)
一般用医薬品の例小柴胡湯による間質性肺炎(平成8年3月)
緊急安全性情報
緊急かつ重大な注意喚起や使用制限に係る対策が必要な場合に作成される情報。A4サイズの黄色地の印刷物で、イエローレターとも呼ばれる。1ヶ月以内に情報伝達される。
安全性速報
一般的な使用上の注意の改訂情報よりも迅速な注意喚起等が必要な場合に作成される情報。A4サイズの青色地の印刷物で、ブルーレターとも呼ばれる。1ヶ月以内に情報伝達される。
PMDAメディナビ
総合機構が行う医薬品医療機器情報配信サービス。特に重要な安全性情報が発出されたとき、電子メールによりタイムリーに配信する。誰でも利用可能で、最新の情報を入手できる。

例題 A4サイズの青色地の印刷物で、一般的な使用上の注意の改訂情報よりも迅速な注意喚起が必要な場合に作成されるのは何か。

安全性速報(ブルーレター)。緊急かつ重大な注意喚起や使用制限に係る対策が必要な場合に作成される黄色地の緊急安全性情報(イエローレター)と対で覚える。どちらも厚生労働省からの命令、指示、製造販売業者の自主決定等に基づいて作成され、1ヶ月以内に情報伝達される。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第5章 Ⅰ 医薬品の適正使用情報 3)安全性情報など、その他の情報

副作用情報の収集と評価

医薬関係者による医薬品・医療機器等安全性情報報告制度と、企業からの副作用等報告制度(15日・30日・定期報告の期限)、再審査制度までの流れを押さえます。

1961年に起こったサリドマイド薬害事件を契機として、医薬品の安全性に関する問題を世界共通のものとして取り上げる気運が高まり、1968年、世界保健機関(WHO)加盟各国を中心に、各国自らが医薬品の副作用情報を収集、評価する体制(WHO国際医薬品モニタリング制度)を確立することにつながった。

医薬品・医療機器等安全性情報報告制度は、法第68条の10第2項の規定により、薬局開設者、病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者又は医師、歯科医師、薬剤師、登録販売者、獣医師その他の医薬関係者は、医薬品の副作用等によるものと疑われる健康被害の発生を知った場合において、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があると認めるときは、その旨を厚生労働大臣に報告しなければならないとするものである。実務上は、法第68条の13第3項の規定により、報告書を総合機構に提出することとされている。本制度は1967年3月、約3000の医療機関をモニター施設に指定して厚生省(当時)が直接副作用報告を受ける「医薬品副作用モニター制度」としてスタートし、1978年8月より約3000のモニター薬局で把握した副作用事例等の定期的な報告が始まった。1997年7月に「医薬品等安全性情報報告制度」として拡充され、2002年7月の薬事法改正で医師や薬剤師等の医薬関係者による副作用等の報告が義務化された。2006年6月の薬事法改正による登録販売者制度の導入に伴い、登録販売者も本制度に基づく報告を行う医薬関係者として位置づけられている。

報告の仕方について手引きでは、医薬品等によるものと疑われる、身体の変調・不調、日常生活に支障を来す程度の健康被害(死亡を含む)について報告が求められ、医薬品との因果関係が必ずしも明確でない場合であっても報告の対象となり得るとされている。安全対策上必要があると認めるときは、過量使用や誤用等によるものと思われる健康被害についても報告がなされる必要がある。報告様式(別表5-5)は総合機構ホームページから入手でき、記入欄すべてに記入がなされる必要はなく、購入者等(健康被害を生じた本人に限らない)から把握可能な範囲で報告がなされればよい。複数の専門家が販売等に携わっている場合であっても、健康被害の情報に直接接した専門家1名から報告書が提出されれば十分である。報告期限は特に定められていないが、報告の必要性を認めた場合は適宜速やかに、郵送、ファクシミリ又は電子メールにより報告書を総合機構に送付する。報告者には安全性情報受領確認書が交付される。令和3年4月からは、ウェブサイトに直接入力することによる電子的な報告が可能となった。

企業からの副作用等の報告制度では、製造販売業者等には、法第68条の10第1項の規定に基づき、その製造販売をし、又は承認を受けた医薬品について、副作用等によるものと疑われる健康被害の発生、使用によるものと疑われる感染症の発生等を知ったときは、その旨を定められた期限までに厚生労働大臣に報告することが義務づけられている(実務上は報告書を総合機構に提出)。報告期限は、使用上の注意から予測できない重篤(死亡含む)な副作用症例は15日以内、使用上の注意から予測できる重篤症例(死亡は15日以内)のうち新有効成分含有医薬品として承認後2年以内のものや市販直後調査などによって得られたものは15日以内、それ以外の重篤(死亡を除く)症例は30日以内、非重篤の予測できない国内症例は定期報告とされている(別表5-4)。また、薬局開設者、医薬品の販売業者又は医薬関係者(登録販売者を含む)は、法第68条の2の6第2項により、製造販売業者等が行う情報収集に協力するよう努めなければならないこととされている。本制度は1979年の薬事法改正により制度化され、1996年の薬事法改正により製造販売業者等が副作用等の情報収集の義務を負うことが明記された。2003年7月からは、血液製剤等の生物由来製品を製造販売する企業に対し、当該製品の安全性について評価し、その成果を定期的に国へ報告する制度が導入されている。

一般用医薬品に関しても承認後の調査が製造販売業者等に求められており、既存の医薬品と明らかに異なる有効成分が配合されたものについては、10年を超えない範囲で厚生労働大臣が承認時に定める一定期間(概ね8年)、承認後の使用成績等を製造販売業者等が集積し、厚生労働省へ提出する制度(再審査制度)が適用される。また、医療用医薬品で使用されていた有効成分をOTC医薬品で初めて配合したものについては要指導医薬品に指定され、承認条件として承認後の一定期間(概ね3年)、安全性に関する調査及び調査結果の報告が求められている。収集された副作用等の情報は、その医薬品の製造販売業者等において評価・検討され、必要な安全対策が図られる。各制度により集められた副作用情報については、総合機構において専門委員の意見を聴きながら調査検討が行われ、その結果に基づき、厚生労働大臣は、薬事審議会の意見を聴いて、使用上の注意の改訂の指示等を通じた注意喚起のための情報提供や、効能・効果や用法・用量の一部変更、調査・実験の実施の指示、製造・販売の中止、製品の回収等の安全対策上必要な行政措置を講じている。

企業からの副作用等の報告期限(別表5-4の要点)
報告の区分重篤性報告期限
使用上の注意から予測できない副作用死亡・重篤(死亡を除く)15日以内
使用上の注意から予測できない副作用非重篤(国内事例)定期報告
使用上の注意から予測できる副作用死亡15日以内
使用上の注意から予測できる副作用重篤:新有効成分含有医薬品として承認後2年以内/市販直後調査などによって得られたもの15日以内
使用上の注意から予測できる副作用重篤:上記以外30日以内
発生傾向が使用上の注意等から予測できないもの重篤(死亡含む)15日以内
発生傾向の変化が保健衛生上の危害の発生又は拡大のおそれを示すもの重篤(死亡含む)15日以内
外国での措置報告(製造、輸入又は販売の中止、回収、廃棄等)15日以内
研究報告(重大な疾病等のおそれ・発生傾向の著しい変化・効能を有しないことを示すもの)30日以内
医薬品・医療機器等安全性情報報告制度
医薬関係者(登録販売者を含む)が、副作用等が疑われる健康被害の発生を知り、必要と認めるときに厚生労働大臣に報告する制度(実務上は総合機構に提出)。報告期限は特に定められていない。
企業からの副作用等報告
製造販売業者等が、副作用等が疑われる健康被害等を知ったとき、定められた期限(重篤性等に応じて15日以内・30日以内・定期報告)までに報告する義務。法第68条の10第1項に基づく。
再審査制度
既存の医薬品と明らかに異なる有効成分が配合されたものについて、10年を超えない範囲で厚生労働大臣が承認時に定める一定期間(概ね8年)、承認後の使用成績等を集積し厚生労働省へ提出する制度。

例題 登録販売者が医薬品の副作用と疑われる健康被害の発生を知った場合、報告期限は何日以内か。

医薬関係者による医薬品・医療機器等安全性情報報告制度では、報告期限は特に定められていない。ただし保健衛生上の危害の発生又は拡大防止の観点から、必要性を認めた場合は適宜速やかに報告書を総合機構に送付する。期限(15日・30日)が定められているのは企業(製造販売業者等)からの報告のほうである。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第5章 Ⅱ 医薬品の安全対策・別表5-4

医薬品副作用被害救済制度

救済制度の仕組み(請求先・費用負担)、7種類の給付と請求期限、対象とならない場合、医薬品PLセンターまでを整理します。

サリドマイド事件、スモン事件等を踏まえ、1979年に薬事法が改正され、再審査・再評価制度の創設、副作用等報告制度の整備、緊急命令・廃棄・回収命令に関する法整備等と併せて、医薬品副作用被害救済基金法(現「独立行政法人医薬品医療機器総合機構法」)による救済制度が創設された。医薬品は、最新の医学・薬学の水準においても予見しえない副作用が発生することがあり、また、副作用による健康被害については、民法ではその賠償責任を追及することが難しい。このため、医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品を含む)を適正に使用したにもかかわらず副作用による一定の健康被害が生じた場合に、医療費等の給付を行い、被害者の迅速な救済を図ろうというのが医薬品副作用被害救済制度であり、製薬企業の社会的責任に基づく公的制度として1980年5月より運営が開始された。

健康被害を受けた本人(又は家族)の給付請求を受けて、その健康被害が医薬品の副作用によるものかどうか、医薬品が適正に使用されたかどうかなど、医学的薬学的判断を要する事項について薬事審議会の諮問・答申を経て、厚生労働大臣が判定した結果に基づいて、医療費、障害年金、遺族年金等の各種給付が行われる。救済給付業務に必要な費用のうち、給付費については、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法第19条の規定に基づいて、製造販売業者から年度ごとに納付される拠出金が充てられるほか、事務費については、その2分の1相当額は国庫補助により賄われている。医薬品の販売等に従事する専門家は、救済給付の対象となると思われる健康被害を受けた購入者等に対し、救済制度があることや、救済事業を運営する総合機構の相談窓口等を紹介し、相談を促すなどの対応が期待される。

給付の種類は、医療費、医療手当、障害年金、障害児養育年金、遺族年金、遺族一時金及び葬祭料の7種類である。給付の種類によっては請求期限が定められており、その期限を過ぎた分については請求できない。医療費(副作用による疾病の治療に要した費用の実費補償。ただし健康保険等による給付の額を差し引いた自己負担分)は支払いが行われたときから5年以内、医療手当(治療に伴う医療費以外の費用の負担に着目した定額給付)は請求に係る医療が行われた日の属する月の翌月の初日から5年以内に請求する。医療費・医療手当の給付対象となるのは、副作用による疾病が「入院治療を必要とする程度」の場合である。障害年金(副作用により一定程度の障害の状態にある18歳以上の人の生活補償等を目的とした定額給付)と障害児養育年金(一定程度の障害の状態にある18歳未満の人を養育する人に対する定額給付)には請求期限がない。遺族年金(生計維持者が死亡した場合。最高10年間を限度とする定額給付)は死亡のときから5年以内(死亡前に医療費等の支給決定があった場合や先順位者が死亡した場合は2年以内)、遺族一時金(生計維持者以外の人が死亡した場合の見舞等)と葬祭料の請求期限は遺族年金と同じである。

救済給付の対象となるには、添付文書や外箱等に記載されている用法・用量、使用上の注意に従って使用されていることが基本であり、医薬品の不適正な使用による健康被害は対象とならない。対象となる健康被害の程度は、副作用による疾病のため入院を必要とする程度の医療(必ずしも入院治療が行われた場合に限らず、入院治療が必要と認められる場合であって、やむをえず自宅療養を行った場合も含まれる)を受ける場合や、副作用による重い後遺障害(日常生活に著しい制限を受ける程度以上の障害)が残った場合であり、特に医療機関での治療を要さずに寛解したような軽度のものは給付対象に含まれない。また、救済制度の対象とならない医薬品が定められており、要指導医薬品又は一般用医薬品では、殺虫剤・殺鼠剤(人体に直接使用するものを除く)、殺菌消毒剤(人体に直接使用するものを除く)、一般用検査薬、一部の日局収載医薬品(精製水、ワセリン等)が該当する。このほか、製品不良など製薬企業に損害賠償責任がある場合や、無承認無許可医薬品(いわゆる健康食品として販売されたもののほか、個人輸入により入手された医薬品を含む)の使用による健康被害も対象から除外されている。

救済給付の請求に当たっては、医師の診断書、要した医療費を証明する書類(受診証明書)などのほか、その医薬品を販売等した薬局開設者、医薬品の販売業者が作成した販売証明書等が必要となる。医薬品の販売等に従事する専門家においては、販売証明書の発行につき円滑な対応を図る必要がある。なお、医薬品の副作用であるかどうか判断がつきかねる場合でも、給付請求を行うことは可能である。救済制度の対象とならないケースのうち、製品不良など製薬企業に損害賠償責任がある場合には、医薬品PLセンターへの相談が推奨される。医薬品PLセンターは、平成7年7月のPL法の施行と同時に日本製薬団体連合会において開設されたもので、消費者が、医薬品又は医薬部外品に関する苦情(健康被害以外の損害も含まれる)について製造販売元の企業と交渉するに当たって、公平・中立な立場で申立ての相談を受け付け、交渉の仲介や調整・あっせんを行い、裁判によらずに迅速な解決に導くことを目的としている。このほか、2002年の薬事法改正に際して、2004年4月1日以降に生物由来製品を適正に使用したにもかかわらず、それを介して生じた感染等による疾病、障害又は死亡について給付を行う「生物由来製品感染等被害救済制度」が創設されている。

救済給付の種類と請求期限
給付の種類内容請求の期限
医療費副作用による疾病の治療に要した費用を実費補償(健康保険等による給付の額を差し引いた自己負担分)支給の対象となる費用の支払いが行われたときから5年以内
医療手当治療に伴う医療費以外の費用の負担に着目して給付(定額)請求に係る医療が行われた日の属する月の翌月の初日から5年以内
障害年金一定程度の障害の状態にある18歳以上の人の生活補償等を目的として給付(定額)請求期限なし
障害児養育年金一定程度の障害の状態にある18歳未満の人を養育する人に対して給付(定額)請求期限なし
遺族年金生計維持者が死亡した場合に遺族の生活の立て直し等を目的として給付(定額)。最高10年間を限度死亡のときから5年以内(死亡前に医療費等の支給決定があった場合、先順位者が死亡した場合は2年以内)
遺族一時金生計維持者以外の人が死亡した場合に遺族への見舞等を目的として給付(定額)遺族年金と同じ
葬祭料死亡した人の葬祭を行うことに伴う出費に着目して給付(定額)遺族年金と同じ
医薬品副作用被害救済制度
医薬品を適正に使用したにもかかわらず副作用による一定の健康被害が生じた場合に医療費等の給付を行う、製薬企業の社会的責任に基づく公的制度。1980年5月より運営開始。
拠出金
救済給付業務の給付費に充てられる、製造販売業者から年度ごとに納付される費用。総合機構法第19条に基づく。事務費はその2分の1相当額が国庫補助により賄われる。
医薬品PLセンター
平成7年7月のPL法施行と同時に日本製薬団体連合会が開設。医薬品又は医薬部外品に関する苦情について交渉の仲介や調整・あっせんを行い、裁判によらずに迅速な解決に導くことを目的とする。

例題 7種類の給付のうち、請求期限が定められていないものはどれか。

障害年金と障害児養育年金の2つには請求期限がない。医療費・医療手当は5年以内、遺族年金・遺族一時金・葬祭料は死亡のときから5年以内(一定の場合は2年以内)と定められており、期限を過ぎた分は請求できない。「年金」でも遺族年金には期限がある点に注意する。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第5章 Ⅲ 医薬品の副作用等による健康被害の救済

主な安全対策の事例と啓発活動

アンプル入りかぜ薬・小柴胡湯・一般用かぜ薬・PPAの4事例で「何が起きて、どう対応したか」を対応づけ、薬と健康の週間とダメ。ゼッタイ。普及運動の期間を正確に覚えます。

アンプル入りかぜ薬では、解熱鎮痛成分としてアミノピリン、スルピリンが配合されたアンプル入りかぜ薬の使用による重篤な副作用(ショック)で、1959年から1965年までの間に計38名の死亡例が発生した。アンプル剤は他の剤形(錠剤、散剤等)に比べて吸収が速く、血中濃度が急速に高値に達するため、通常用量でも副作用を生じやすいことが確認されたことから、1965年、厚生省(当時)より関係製薬企業に対し、アンプル入りかぜ薬製品の回収が要請された。その後、アンプル剤以外の一般用かぜ薬についても、1970年に承認基準が制定され、成分・分量、効能・効果等が見直された。

小柴胡湯による間質性肺炎については、1991年4月以降、使用上の注意に記載されていたが、その後、小柴胡湯とインターフェロン製剤の併用例による間質性肺炎が報告されたことから、1994年1月、インターフェロン製剤との併用を禁忌とする旨の使用上の注意の改訂がなされた。しかし、それ以降も慢性肝炎患者が小柴胡湯を使用して間質性肺炎を発症し、死亡を含む重篤な転帰に至った例もあったことから、1996年3月、厚生省(当時)より関係製薬企業に対して緊急安全性情報の配布が指示された。

一般用かぜ薬による間質性肺炎については、2003年5月までに、一般用かぜ薬の使用によると疑われる間質性肺炎の発生事例が計26例報告された。厚生労働省では、一般用かぜ薬は一般の消費者が自らの選択により購入して使用するものであること、間質性肺炎は重篤な副作用でありその初期症状は一般用かぜ薬の効能であるかぜの諸症状と区別が難しく症状が悪化した場合には注意が必要なことを踏まえ、同年6月、一般用かぜ薬全般につき使用上の注意の改訂を指示した。それ以前も「5~6回服用しても症状が良くならない場合には服用を中止して、専門家に相談する」等の注意がなされていたが、それらに加えて、まれに間質性肺炎の重篤な症状が起きることがあり、その症状はかぜの諸症状と区別が難しいため、「症状が悪化した場合には服用を中止して医師の診療を受ける」旨の注意喚起がなされることとなった。

塩酸フェニルプロパノールアミン(PPA)は、鼻充血や結膜充血を除去し、鼻づまり等の症状の緩和を目的として、鼻炎用内服薬、鎮咳去痰薬、かぜ薬等に配合されていた。2000年5月、米国において女性が食欲抑制剤(日本での鼻炎用内服薬等における配合量よりも高用量)として使用した場合に、出血性脳卒中の発生リスクとの関連性が高いとの報告がなされ、米国食品医薬品庁(FDA)から米国内におけるPPA含有医薬品の自主的な販売中止が要請された。日本では食欲抑制剤として承認されていないことなどから、同年11月、直ちに販売を中止する必要はないものとして、心臓病の人や脳出血の既往がある人等は使用しないよう注意喚起を行っていた。しかし、2003年8月までに、PPAが配合された一般用医薬品による脳出血等の副作用症例が複数報告され、それらの多くが用法・用量の範囲を超えた使用又は禁忌とされている高血圧症患者の使用によるものであった。そのため、厚生労働省から関係製薬企業等に対して、使用上の注意の改訂、情報提供の徹底等を行うとともに、代替成分としてプソイドエフェドリン塩酸塩(PSE)等への速やかな切替えにつき指示がなされた。

啓発活動について手引きでは、登録販売者は、薬剤師とともに一般用医薬品の販売等に従事する医薬関係者(専門家)として、適切なセルフメディケーションの普及定着、医薬品の適正使用の推進のための活動に積極的に参加、協力することが期待されるとされている。医薬品の持つ特質及びその使用・取扱い等について正しい知識を広く生活者に浸透させることにより、保健衛生の維持向上に貢献することを目的とし、毎年10月17日~23日の1週間を「薬と健康の週間」として、国、自治体、関係団体等による広報活動やイベント等が実施されている。また、「6・26国際麻薬乱用撲滅デー」を広く普及し、薬物乱用防止を一層推進するため、毎年6月20日~7月19日までの1ヶ月間、国、自治体、関係団体等により「ダメ。ゼッタイ。」普及運動が実施されている。薬物乱用や薬物依存は、違法薬物(麻薬、覚醒剤等)によるものばかりでなく、一般用医薬品によっても生じ得る。特に青少年では、薬物乱用の危険性に関する認識や理解が必ずしも十分でなく、好奇心から身近に入手できる薬物(一般用医薬品を含む)を興味本位で乱用することがある。要指導医薬品又は一般用医薬品の乱用をきっかけとして違法な薬物の乱用につながることもあり、医薬品の適正使用の重要性等に関して、小中学生のうちからの啓発が重要である。

一般用医薬品に関する主な安全対策の4事例
事例何が起きたかどう対応したか
アンプル入りかぜ薬アミノピリン、スルピリン配合のアンプル入りかぜ薬による重篤な副作用(ショック)で1959~1965年に計38名の死亡例1965年、厚生省より関係製薬企業に製品の回収を要請。1970年に一般用かぜ薬の承認基準を制定
小柴胡湯による間質性肺炎インターフェロン製剤との併用例による間質性肺炎の報告。併用禁忌の改訂後も慢性肝炎患者で発症し死亡を含む重篤な転帰に至った例1994年1月、併用を禁忌とする使用上の注意の改訂。1996年3月、関係製薬企業に緊急安全性情報の配布を指示
一般用かぜ薬による間質性肺炎2003年5月までに間質性肺炎の発生事例が計26例報告2003年6月、一般用かぜ薬全般につき使用上の注意の改訂を指示(症状が悪化した場合には服用を中止して医師の診療を受ける旨)
PPA含有医薬品米国で食欲抑制剤としての使用で出血性脳卒中のリスク報告。日本でも2003年8月までに脳出血等の副作用症例が複数報告(多くが過量使用又は高血圧症患者の使用)使用上の注意の改訂、情報提供の徹底等とともに、プソイドエフェドリン塩酸塩(PSE)等への速やかな切替えを指示
アンプル入りかぜ薬事件
アミノピリン、スルピリン配合のアンプル入りかぜ薬によるショックで1959~1965年に計38名の死亡例が発生。1965年、厚生省より関係製薬企業に製品の回収が要請された。
PPA(塩酸フェニルプロパノールアミン)
鼻づまり等の緩和を目的に鼻炎用内服薬等に配合されていた成分。脳出血等の副作用症例の報告を受け、プソイドエフェドリン塩酸塩(PSE)等への速やかな切替えが指示された。
薬と健康の週間
医薬品の正しい知識を広く生活者に浸透させ保健衛生の維持向上に貢献することを目的に、毎年10月17日~23日の1週間実施される広報活動・イベント等。
「ダメ。ゼッタイ。」普及運動
「6・26国際麻薬乱用撲滅デー」を広く普及し薬物乱用防止を一層推進するため、毎年6月20日~7月19日までの1ヶ月間実施される運動。

例題 「製品の回収要請」「緊急安全性情報の配布指示」「代替成分への切替え指示」は、それぞれどの事例の対応か。

製品の回収要請はアンプル入りかぜ薬(1965年)、緊急安全性情報の配布指示は小柴胡湯による間質性肺炎(1996年3月)、代替成分(PSE等)への切替え指示はPPA含有医薬品。一般用かぜ薬による間質性肺炎への対応は使用上の注意の改訂指示(2003年6月)であり、事例と対応の組合せの入れ替えが定番の出題である。

出典:厚生労働省公表「試験問題の作成に関する手引き」(令和4年3月作成、令和8年4月一部改訂)第5章 Ⅳ 一般用医薬品に関する主な安全対策・Ⅴ 医薬品の適正使用のための啓発活動