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マクロ経済学クイズとは
マクロ経済学クイズは、経済学部3・4年の専門レベルのマクロ経済学を、全40問の4択で学べる無料の学習ゲームです。国民所得の決定、IS-LM分析、失業とインフレ、経済成長、金融政策、学派の対立の6分野から出題し、乗数、IS-LM、フィリップス曲線、ソローモデルから、ケインズ派とマネタリストの考え方の違いまで解説つきで一周できます。同じ問題に2回正解すると卒業となり、マクロ印が集まっていきます。
「学派が違えば、処方箋も違う。」がテーマです。学説・学派が分かれる論点はどの立場も差別なく両論併記し、同じ不況にどの学派がどう答えるかを比べながら学べます。定期試験や大学院入試、公務員試験の経済学対策にどうぞ。
📝 問題と解説の全文(40問)
マクロ経済学クイズ の全40問を、解説つきで読める形に並べています。アプリを起動しなくても、ここだけで内容を確かめられます。各見出しを開くと、問題文・選択肢・正解・解説が出ます。
国民所得の決定
GDPの定義
国内総生産(GDP)の定義として最も適切なものはどれか。
- 国内で取引されたすべての財・サービスの売上総額
- 一定期間に国内で新たに生み出された付加価値の合計
- 国民が海外で得た所得を含む生産物の総額
- 政府支出を除いた民間部門の生産額
正解:2番
GDPは中間投入を除いた付加価値の合計で、売上総額を足すと二重計算になる点がポイント。国内という場所に着目する属地主義の概念であり、海外からの純所得を加える国民概念のGNIと区別される。生産・分配・支出のどの面から測っても一致する(三面等価の原則)。
GDPデフレーター
ある年の名目GDPが550兆円、実質GDPが500兆円のとき、GDPデフレーター(基準年=100)はいくらか。
- 90.9
- 105
- 50
- 110
正解:4番
デフレーター=名目GDP÷実質GDP×100=550÷500×100=110。90.9は分子と分母を逆にした典型的な誤りである。GDPデフレーターはパーシェ型の物価指数で、固定バスケットに基づくラスパイレス型のCPIとは対象範囲も算式も異なるため、両者の動きは乖離しうる。
均衡国民所得
消費関数C=20+0.8Y、投資I=30、政府支出G=30の閉鎖経済(税は考えない)で、45度線分析による均衡国民所得Yはいくらか。
- 400
- 80
- 320
- 500
正解:1番
均衡条件Y=C+I+Gより、Y=20+0.8Y+60。整理すると0.2Y=80でY=400。検算するとC=20+0.8×400=340、総需要は340+30+30=400で一致する。80は独立支出の合計をそのまま答えた誤りで、乗数1/(1−0.8)=5を掛ける必要がある。
政府支出乗数
限界消費性向が0.8の閉鎖経済(定額税)で、政府支出を10増やすと均衡国民所得はいくら増えるか。
- 10
- 8
- 50
- 40
正解:3番
政府支出乗数は1/(1−0.8)=5なので、ΔY=5×10=50。40は租税乗数(0.8/0.2=4)との混同、10は乗数効果を無視した誤りである。なお現実の財政乗数の大きさは金融政策の反応や経済の開放度に依存し、実証研究では推定値が大きく割れている点に注意。
減税の乗数効果
限界消費性向0.8の閉鎖経済で、定額税を10減税すると均衡国民所得はいくら増えるか。
- 50
- 40
- 10
- 8
正解:2番
租税乗数は−c/(1−c)=−4なので、減税10でΔY=4×10=40。減税はまず可処分所得を通じて消費を0.8×10=8だけ増やすところから始まるため、初回から全額が需要になる政府支出の乗数5より1段階小さい。50は政府支出乗数との混同。同額の支出増と増税を組み合わせた均衡予算乗数は1になる。
貯蓄のパラドックス
ケインズ体系における「貯蓄(節約)のパラドックス」の内容として適切なものはどれか。
- 人々が一斉に貯蓄率を高めると、需要減少により所得が低下し、経済全体の貯蓄は増えない(減ることもある)
- 貯蓄が増えるほど利子率が必ず上昇する
- 個人の貯蓄は常に社会全体の貯蓄を増やす
- 貯蓄と投資は互いに無関係である
正解:1番
需要不足の短期モデルでは、貯蓄意欲の上昇が消費減→所得減を招き、意図した貯蓄増が実現しないという合成の誤謬が生じる。ただし古典派的な長期の見方では、貯蓄は投資の原資として資本蓄積と成長を支える。どちらの視点が妥当かは、対象とする時間軸に依存すると整理される。
所得税と乗数
限界消費性向0.75、所得税率0.2(比例税)の閉鎖経済における政府支出乗数はいくらか。
- 4
- 2
- 3
- 2.5
正解:4番
可処分所得は(1−0.2)Yなので、乗数=1/(1−0.75×0.8)=1/(1−0.6)=2.5。4は税を無視した1/(1−0.75)の誤りである。比例税は所得が変動したとき自動的に可処分所得の変動を和らげるビルトイン・スタビライザーとして働き、乗数を小さくすることがこの計算から確認できる。
IS-LM分析
IS曲線
IS曲線の説明として最も適切なものはどれか。
- 貨幣市場を均衡させる利子率と所得の組合せで、右上がり
- 労働市場を均衡させる賃金と雇用の組合せ
- 財市場を均衡させる利子率と所得の組合せで、通常右下がり
- 財市場を均衡させる組合せで、常に垂直
正解:3番
利子率が下がると投資が増え、乗数を通じて均衡所得が増えるため、ISは右下がりに描かれる。傾きは投資の利子弾力性と乗数の大きさに依存する。拡張的な財政政策はIS曲線を右にシフトさせる。貨幣市場の均衡を表すのはLM曲線であり、混同に注意。
LM曲線
LM曲線が通常右上がりになる理由として適切なものはどれか。
- 所得が増えると取引需要で貨幣需要が増え、貨幣市場の均衡には利子率の上昇が必要になるから
- 所得が増えると貨幣供給が自動的に増えるから
- 利子率が上がると投資が増えるから
- 物価が常に一定の速度で上昇するから
正解:1番
貨幣供給一定の下で所得の増加は貨幣需要を増やし、均衡の回復には投機的需要を減らす利子率の上昇が必要になる。金融緩和はLMを右下方にシフトさせる。なお現代の中央銀行は金利を操作目標とするため、LMを金利設定ルール(MP曲線)に置き換えて教える教科書も増えている。
金融緩和の効果
IS-LMモデル(閉鎖経済・物価一定)で貨幣供給を増加させた場合の標準的な効果はどれか。
- 利子率が上昇し、国民所得が減少する
- 利子率が低下し、国民所得が増加する
- 利子率も国民所得も変化しない
- 利子率が低下し、国民所得も減少する
正解:2番
金融緩和はLM曲線を右にシフトさせ、利子率低下→投資増加→所得増加という経路で働く。効果の大きさは投資の利子弾力性や貨幣需要の性質に依存し、流動性の罠ではこの経路が機能しにくくなる。物価や期待が変化する中長期には結論が修正される点にも注意が必要である。
クラウディングアウト
IS-LMモデルで拡張的財政政策を行ったときに生じる「クラウディングアウト」の説明として適切なものはどれか。
- 物価上昇によって輸出が減少すること
- 減税によって貯蓄が増えること
- 利子率の上昇が民間投資を抑制し、財政政策の所得拡大効果の一部が相殺されること
- 政府支出が輸入品にのみ向かうこと
正解:3番
ISの右シフトは所得と貨幣需要を増やして利子率を押し上げるため、民間投資が抑制される。その程度は学派間の争点で、マネタリストは大きい(財政政策に懐疑的)とみる一方、ケインジアンは不完全雇用下では小さいとみる。流動性の罠や中央銀行が金利を据え置く場合にはほとんど生じない。
流動性の罠
IS-LM分析における「流動性の罠」の状況で成り立つとされる標準的な結論はどれか。
- 金融政策の効果が最大になる
- 財政政策が完全に無効になる
- 利子率が急上昇する
- 貨幣需要の利子弾力性が無限大となり、金融緩和では利子率を下げられず、財政政策はクラウディングアウトなしで効く
正解:4番
LMが水平になる領域では貨幣を増やしても退蔵されるだけで、ISシフトの効果は減殺されない。ゼロ金利下の日本を巡っては、クルーグマンが期待インフレへの働きかけにより金融政策は依然有効と論じ、財政政策を重視する立場と対立した。量的緩和やフォワードガイダンスはこの文脈の政策である。
IS-LMと学派
IS-LMモデルの枠組みで、ケインジアンが金融政策より財政政策の有効性を主張する際に置かれた典型的な想定はどれか。
- 投資の利子弾力性が小さく(ISが急勾配)、貨幣需要の利子弾力性が大きい(LMが緩やか)
- 投資の利子弾力性が無限大である
- 貨幣需要が利子率に全く反応しない(LMが垂直)
- 物価が完全に伸縮的である
正解:1番
ISが急でLMが緩やかなら、LMシフト(金融政策)の所得効果は小さく、ISシフト(財政政策)の効果は大きい。逆にマネタリストは貨幣需要の利子弾力性が小さい(LMが急)と想定し、貨幣的要因を重視した。この対立は理論構造ではなく、パラメータの大きさを巡る実証問題として整理された。
失業とインフレ
フィリップス曲線
フィリップス(1958)が英国の長期データで見出した元々の関係はどれか。
- 物価と貨幣供給の正の関係
- 名目賃金上昇率と失業率の負の相関
- 利子率と投資の正の関係
- 財政赤字とインフレ率の正の相関
正解:2番
原型は賃金上昇率と失業率の関係であり、後にインフレ率と失業率のトレードオフとして政策運営に利用された。1970年代のスタグフレーションで安定的なトレードオフは崩れ、期待を組み込んだ期待修正フィリップス曲線や、粘着価格に基づくニューケインジアン・フィリップス曲線へと発展した。
自然失業率仮説
フリードマン=フェルプスの自然失業率仮説の主張として最も適切なものはどれか。
- 失業率は金融政策で恒久的に引き下げられる
- インフレと失業のトレードオフは長期でも安定的に存在する
- 自然失業率はゼロである
- インフレ期待が調整される長期では失業率は自然失業率に戻り、長期フィリップス曲線は垂直になる
正解:4番
予想外のインフレは短期的に失業を下げるが、期待が追いつくと効果は消え、インフレだけが残るとする主張で、1970年代の経験がこの見方を後押しした。一方、履歴効果(ヒステリシス)論は深い不況が自然失業率自体を押し上げると指摘し、長期の垂直性にも留保を付ける立場が存在する。
失業の分類
景気後退による総需要の不足から生じる失業は、次のうちどれに分類されるか。
- 摩擦的失業
- 構造的失業
- 需要不足失業(循環的失業)
- 自発的失業
正解:3番
摩擦的失業は職探しの過程で生じる一時的なもの、構造的失業はスキルや地域のミスマッチによるもので、両者は完全雇用の状態でも存在し自然失業率を構成する。循環的失業は景気変動に伴い変動する部分で、総需要管理などの安定化政策の主な対象とされるのはこの部分である。
ルーカス批判
ルーカス批判(1976)の内容として最も適切なものはどれか。
- 政策が変わると人々の期待形成や行動を規定するパラメータ自体が変化するため、過去のデータで推定した計量モデルによる政策効果の予測は信頼できない
- 計量モデルはデータ量が足りないだけで、増えれば政策評価は正確になる
- 金融政策はいかなる場合も無効である
- 人々は将来を全く予想しない
正解:1番
従来の大規模マクロ計量モデルに対する根本的批判で、ミクロ的基礎と期待の明示的なモデル化(DSGEなど)が広がる契機となった。他方、政策レジームが安定的なら誘導形モデルも実用上有効だとする再評価もあり、批判の実践的な射程については現在も議論が続いている。
犠牲率
ディスインフレ政策の文脈で用いられる「犠牲率(sacrifice ratio)」の定義はどれか。
- 失業率を1%下げるのに必要な政府支出の増加率
- インフレ率を1%上げたときの実質賃金の低下率
- 金利を1%上げたときの為替レートの変化率
- インフレ率を1%ポイント低下させるために失われる産出(GDP)の累積的な減少の大きさ
正解:4番
名目硬直性を重視するケインジアン的な見方では、ディスインフレは景気悪化という高い犠牲率を伴う。一方、サージェントら合理的期待の立場は、政策転換が信認されれば期待が速やかに調整され犠牲率は小さくなりうると主張した。実証的にも信認や制度によって推定値は大きく異なる。
オークンの法則
オークンの法則が示す経験的な関係はどれか。
- インフレ率と貨幣供給の比例関係
- 失業率の変化と実質GDP成長率の間の負の相関関係
- 賃金と物価の比例関係
- 金利と投資の正の相関関係
正解:2番
成長率が高い(潜在成長率を上回る)ほど失業率が低下するという経験則で、理論法則ではなく統計的な規則性である。係数は国や時代によって異なり、日本は雇用調整が緩やかなため米国より係数が小さいとされる。GDPギャップと失業率を結び付ける推計にも利用される。
経済成長
ソローモデル
技術進歩のないソロー・モデルの定常状態に関する記述として正しいものはどれか。
- 一人当たり資本は無限に成長し続ける
- 貯蓄率を上げると一人当たり所得の成長率が恒久的に高まる
- 投資と(減耗や人口成長のために必要な)資本維持が釣り合い、一人当たり資本と所得の成長が止まる
- 資本の限界生産力は一定である
正解:3番
資本の限界生産力逓減により、資本蓄積だけでは一人当たりの成長を持続できない。貯蓄率の上昇は定常状態の水準を引き上げるが、長期の成長率は変えない(水準効果)。持続的成長の源泉は外生的な技術進歩に求められ、この部分を内生化したのが内生的成長理論である。
定常状態の計算
一人当たり生産関数y=√k、貯蓄率0.2、資本減耗率0.05、人口成長・技術進歩なしのソロー・モデルで、定常状態の一人当たり産出y*はいくらか。
- 4
- 16
- 2
- 8
正解:1番
定常状態の条件はsf(k)=δk、つまり0.2√k=0.05k。整理すると√k=4なのでk*=16、y*=√16=4。検算すると投資0.2×4=0.8と減耗0.05×16=0.8が一致する。16は資本k*の値を産出と取り違えた典型的な誤りである。
技術進歩と成長
ソロー・モデルにおいて、定常状態での一人当たり所得の持続的成長を可能にする要因はどれか。
- 貯蓄率の上昇
- 外生的な技術進歩
- 人口成長率の上昇
- 資本減耗率の低下
正解:2番
貯蓄率や減耗率の変化は定常状態の水準を変えるだけで、長期の一人当たり成長率は技術進歩率に一致する。モデルの中で技術進歩率を説明しないのが「外生的」の意味であり、研究開発や知識の蓄積によって成長率そのものを説明しようとするローマーらの内生的成長理論が後に登場した。
収束仮説
経済成長の実証研究における「条件付き収束」の意味として適切なものはどれか。
- すべての国の所得水準が無条件に均等化すること
- 先進国だけが成長を続けること
- 為替レートが購買力平価に収束すること
- 貯蓄率や制度など構造が似た国の間では、初期所得が低い国ほど速く成長し、各国が自国の定常状態へ近づくこと
正解:4番
世界全体では絶対的収束は観察されないが、構造的な要因をコントロールすると収束が検出されるというのが多くの実証結果である。OECD内など同質的なグループでは絶対収束に近い動きも見られる。もっとも推定手法や期間により結果は揺れ、成長実証の主要な論争領域であり続けている。
内生的成長理論
ローマーらの内生的成長理論がソロー・モデルと本質的に異なる点はどれか。
- 知識の外部性や研究開発を通じて資本蓄積の収穫逓減を打ち消し、政策や行動が長期成長率そのものに影響しうるとした点
- 技術進歩を完全に無視した点
- 貯蓄率が成長に全く影響しないとした点
- 人口成長のみが成長の源泉だとした点
正解:1番
AKモデルや知識のスピルオーバーを組み込むと限界生産力の逓減が働かなくなり、教育や研究開発補助などの政策が長期成長率を変えうる。ソロー・モデルでは同じ政策は水準効果しか持たない。どちらがデータと整合的かは、収束の実証分析などを通じて現在も検証が続いている。
成長会計
成長会計において、産出の成長のうち資本と労働の投入増加では説明できない残差部分を何と呼ぶか。
- インフレ率
- オークン残差
- ソロー残差(全要素生産性=TFPの伸び)
- 経常収支
正解:3番
ソロー残差は技術進歩の指標とされるが、測定誤差や資源配分の変化なども含むため「我々の無知の測度」との批判もある。アジアの奇跡を巡っては、成長が投入拡大主導かTFP主導かでクルーグマンとその批判者の論争が起き、成長会計の解釈自体が主要な争点となった。
金融政策
テイラールール
テイラー・ルール i=π+r*+0.5(π−π*)+0.5×(産出ギャップ) に従うとき、実質均衡金利r*=2%、目標インフレ率π*=2%、実際のインフレ率4%、産出ギャップ0%なら名目政策金利は何%か。
- 4%
- 5%
- 6%
- 7%
正解:4番
i=4+2+0.5×(4−2)+0=7%。6%はインフレ乖離への上乗せ0.5×2を忘れた誤りである。インフレが1%上がったとき名目金利を1%超引き上げて実質金利を高める性質はテイラー原理と呼ばれ、物価安定の条件とされる。ルールは記述的な指針であり、機械的に従うべきかは裁量との対比で議論がある。
公開市場操作
中央銀行が短期金利を誘導する伝統的な手段である「公開市場操作」の説明はどれか。
- 民間銀行の貸出金利を法律で直接規制すること
- 国債などの売買を通じて銀行システムの準備(資金量)を調節し、短期金利を誘導すること
- 政府の予算を編成すること
- 為替レートを固定すること
正解:2番
買いオペは準備を増やして短期金利を低下させ、売りオペはその逆に働く。現代の中央銀行は翌日物金利などの操作目標を公表し、オペによってそれを実現する。政策金利がゼロ近傍に達するとこの伝統的手段の余地がなくなり、量的緩和などの非伝統的政策が用いられることになる。
量的緩和
「量的緩和(QE)」と呼ばれる政策の内容として最も適切なものはどれか。
- 政策金利がゼロ近傍に達した後、国債等の資産を大規模に購入して中央銀行のバランスシートを拡大し、長期金利や期待に働きかける政策
- 法定準備率を引き上げて貸出を抑制する政策
- 政策金利を大幅に引き上げる政策
- 財政支出を直接拡大する政策
正解:1番
ポートフォリオ・リバランス効果やシグナリング効果を通じた緩和を狙う非伝統的政策である。実証研究では長期金利の引き下げ効果は比較的広く確認される一方、実体経済や物価への効果の大きさについては評価が分かれており、金融面の歪みや出口リスクなど副作用を巡る議論も続いている。
貨幣数量説
数量方程式MV=PY(Vは流通速度)で、M=400、V=5、実質産出Y=1000のとき物価水準Pはいくらか。
- 0.5
- 5
- 2
- 4
正解:3番
P=MV/Y=400×5÷1000=2。0.5は分子と分母を逆にした誤りである。VとYが安定的なら貨幣量と物価は比例するというのが貨幣数量説で、マネタリズムの土台となった。ただし短期にはVが変動するためケインジアンは機械的な適用に批判的で、長期の関係とみる見方が一般的である。
信用乗数の計算
現金・預金比率が0.2、準備・預金比率が0.1のとき、貨幣乗数(マネーストック÷マネタリーベース)はいくらか。
- 10
- 5
- 3
- 4
正解:4番
貨幣乗数=(c+1)/(c+r)=(0.2+1)/(0.2+0.1)=1.2/0.3=4。10は現金保有を無視した1/rの値である。なお乗数を安定とみなしてベースからマネーストックが機械的に決まるという見方には批判もあり、内生的貨幣供給論は銀行の貸出が預金を生む逆向きの因果を強調する。量的緩和期には乗数が大きく低下した。
動学的非整合性
キドランド=プレスコットの「動学的(時間的)非整合性」の議論が金融政策に対して持つ含意はどれか。
- 裁量政策は常にルールより優れている
- 裁量に任せると事後的に約束を破ってインフレを起こす誘因が生じ、それを見越されて平均インフレ率だけが高まるため、ルールや中央銀行の独立性に意義がある
- 中央銀行は物価に影響を与えられない
- インフレ期待は政策と無関係に決まる
正解:2番
低インフレを約束しても、人々の期待形成後には雇用拡大を狙って緩和したくなる誘因が残るため、約束が信認されずインフレバイアスが生じる。独立した保守的な中央銀行やインフレ目標はコミットメント装置と解釈できる。他方、危機対応など柔軟性の価値を強調し「制約された裁量」を支持する立場も有力である。
学派の対立
ケインズ派の主張
ケインズ派(オールド・ケインジアン)の立場に最も近い主張はどれか。
- 貨幣供給の一定率成長ルールを守るべきだ
- 景気変動はすべて技術ショックへの最適な反応である
- 価格・賃金の硬直性の下では有効需要の不足が失業を生むため、裁量的な財政・金融政策による安定化が有効である
- 予想された政策は実物経済に影響しない
正解:3番
ケインズ派は市場の自動調整の遅さを重視し、総需要管理政策を正当化する。これに対しマネタリストは政策ラグと裁量の失敗を、新しい古典派は期待の合理性を根拠に懐疑を唱えた。各学派の違いは価格調整の速さと期待形成の仮定に整理でき、その優劣は前提の妥当性を巡る実証問題である。
マネタリズム
フリードマンに代表されるマネタリストの主張として最も適切なものはどれか。
- 財政政策が景気安定化の最も確実な手段である
- 貨幣は長期的に実物経済を恒久的に拡大させる
- 金融政策は毎月裁量的に微調整すべきである
- 「インフレは常に貨幣的現象」であり、政策ラグの不確実性から裁量よりもk%ルールのような貨幣量の安定的成長が望ましい
正解:4番
マネタリストは貨幣数量説の長期的な妥当性と、裁量政策が認知・実行・効果のラグによってかえって景気を攪乱する危険を強調した。大恐慌も貨幣供給の収縮で説明する。ケインジアンは貨幣需要の不安定性や波及の不確実性を根拠に反論し、この論争が現代のルール対裁量の議論につながっている。
政策無効命題
新しい古典派(合理的期待学派)のサージェント=ウォレスらによる「政策無効命題」の内容はどれか。
- 合理的期待と伸縮価格の下では、事前に予想された金融政策は実質産出や雇用に影響を与えられない
- すべての政策は予想外であっても無効である
- 金融政策は長期にのみ実物効果を持つ
- 財政政策だけが常に有効である
正解:1番
人々が政策ルールを織り込んで行動すると、予想された貨幣量の変化は物価にのみ反映されるという主張で、体系的な安定化政策の有効性を否定した。実物効果を持つのは「サプライズ」のみとなる。ニューケインジアンは名目硬直性を導入すれば予想された政策も実物効果を持つと反論し、現代の主流はこちらに近い。
リカード等価定理
リカードの等価定理(バローによる再定式化)の主張はどれか。
- 減税は常に消費を大きく増やす
- 政府支出一定の下で国債発行により減税しても、家計が将来の増税を見越して貯蓄を増やすため、消費や総需要は変化しない
- 国債発行は必ずインフレを引き起こす
- 財政赤字は為替レートに影響しない
正解:2番
成立には、先を見通す合理的な家計、流動性制約がないこと、世代間の利他性(バローの王朝モデル)など強い仮定が必要である。批判側は流動性制約や近視眼的行動を挙げ、実証でも完全な等価は支持されにくい。一方、赤字財政の刺激効果が仮定に依存することを明確にした理論的貢献は広く認められている。
ニューケインジアン
ニューケインジアン経済学の特徴として最も適切なものはどれか。
- 価格は常に完全に伸縮的だと仮定する
- 期待の役割を完全に否定する
- 合理的期待などのミクロ的基礎を採り入れつつ、メニューコストや賃金契約などによる名目硬直性を根拠に、金融政策の実物効果と安定化政策の意義を説明する
- 貨幣の存在そのものを否定する
正解:3番
新しい古典派の方法論(ミクロ的基礎・合理的期待)を受け入れた上で、価格の硬直性を理論的に基礎づけた点が特徴で、現代の中央銀行が用いるDSGEモデルの中核となった。RBC派とは景気変動の主因が需要ショックか技術ショックかを巡って対立し、統合的な検証が続いている。
RBC理論
リアル・ビジネス・サイクル(RBC)理論の主張として最も適切なものはどれか。
- 景気変動は主に技術ショックなど実物的要因に対する合理的主体の最適反応であり、変動それ自体は必ずしも非効率ではない
- 景気変動はすべて貨幣供給の変動で説明される
- 景気変動は市場の失敗そのものであり、常に政府介入を必要とする
- 技術は経済に影響を与えない
正解:1番
RBCは貨幣を捨象しても主要な変動をかなり再現できると示し、安定化政策の意義に懐疑的な含意を持つ。対してニューケインジアンは、金融政策ショックの実物効果を示す実証や需要要因の重要性を挙げて批判した。両者の動学的一般均衡という手法は融合し、現代マクロの共通言語となっている。
MMTの主張
現代貨幣理論(MMT)と呼ばれる立場の主張の内容として最も適切なものはどれか。
- 政府は税収の範囲内でしか支出できない
- 中央銀行の独立性を強化すべきだ
- インフレは貨幣量と全く無関係である
- 自国通貨建てで借り入れる政府に財政破綻の必然性はなく、支出の制約は資金調達ではなくインフレであり、財政政策を機能的に用いるべきだ
正解:4番
MMTはラーナーの機能的財政論の系譜にあり、完全雇用の達成まで財政を活用すべきだと主張する。主流派からは、インフレ制御を財政に委ねることの実行可能性、金利や通貨への影響、中央銀行の独立性を損なう懸念などが批判として示される。MMT側は徴税力が通貨価値を支えると再反論しており、論争が続く。
財政乗数論争
財政乗数の大きさに関する近年の実証研究の状況を最もよく表す記述はどれか。
- 乗数は常に正確に1であると確定した
- 乗数は常にゼロであると確定した
- 推定値は手法や状況により幅があり、不況期やゼロ金利制約下では大きく、金融引締めで相殺される平時には小さいという状況依存性が指摘されている
- 乗数は5を下回らないことが確定した
正解:3番
ブランシャール=リーは金融危機後の乗数が事前想定より大きかったと指摘し、バローらは戦時データから小さい乗数を報告するなど、結果は割れている。金融政策の反応・経済の開放度・債務水準に依存するという点では合意が広がりつつあり、単一の「真の乗数」を仮定しない見方が主流である。
大恐慌の解釈
大恐慌の原因を巡り、フリードマン=シュワルツ『米国金融史』が強調した説明はどれか。
- 技術進歩が停止したことが原因である
- FRBの対応の失敗により貨幣供給が約3分の1も収縮したことが恐慌を深刻化させた
- 財政黒字の拡大が唯一の原因である
- 労働組合の弱体化が原因である
正解:2番
マネタリストは銀行危機と貨幣収縮という貨幣的要因を強調し、ケインズ派は投資・消費の崩壊による有効需要の不足を重視した。近年は金本位制による国際的なデフレ伝播を重視する説明(アイケングリーンら)も有力で、複数要因の複合とみる立場が一般的である。どの説明も一定の実証的支持を持つ。